のぞみが戻って来るまで、無垢はメニュー表を広げて眺めていた。ショッピングセンターを回る事で抱えた疲労と電車での疲労によって、余り食欲は湧かない。しかし時間はもう昼を過ぎた頃であり、食べるにはちょうど良い時間である。カラオケに入ったからにはのぞみが歌うと考え、長く一緒に楽しむ為にも摘む食べ物は欲しかった。
「……」
唐揚げとポテトのプレート。おつまみの様なそれをまずは頼むと決めて、無垢はそのページに千切ったメモを挟む。そして微かに聞こえる別の部屋からの歌が知ってる歌だと気付けば、のぞみが何を歌うのか気にし始める。……すると、一瞬無垢の身体に何かが走った様な違和感が襲い掛かった。
「っ! (何……?)」
ただの寒気とは違う違和感。そして、微かに聞こえる隣からの歌声にムズムズし始める身体。だがそこで歌が終わりを迎えた事で、隣から聞こえる歌声が止まる。と同時にのぞみがグラスを2つ持って器用に扉を開けながら戻って来た。
「っ!」
「持って来たよ。何か食べるもの、決まった? って、どうしたの?」
扉が開いたその瞬間、店内に流れる歌を聞いた無垢は身体に電気が走った様な快感に襲われる。だがすぐに扉が閉まり、その刺激は掠れていった。訳が分からないまま、身体を跳ねさせた無垢に心配した様子で声を掛けたのぞみ。無垢は首を横に振って答えると、メモの挟んだページを開いて決めたメニューを指差した。
「唐揚げとポテトのプレートか。まぁ、定番だね。じゃあ、一緒に摘むとして……何か他には?」
「……」
「要らないんだ。私は……いいや。後で考えよ」
のぞみはそう言って部屋に備え付けられた受話器を手に取ると、慣れた様子で注文をする。そして無事に注文を終えると同時にやり遂げた様子で無垢の向かいに座ってストローでコーラを一口。無垢も同じ様にカルピスを飲んでおり、自然と上目遣いで見上げたのぞみは無垢と視線が合った。
「今思うとここじゃ無垢、楽しくないよね」
『平気。誰かが歌ってるのを聞くのも、楽しい』
「あはは。……それじゃあ、何か歌おっかな!」
心配そうなのぞみの言葉に首を横に振ってからメモで答えた無垢。そんな彼女の様子に安心したのぞみは、歌を選ぶ為に機械を手に取った。やがて注文したプレートも到着し、無垢がポテトを摘む中……のぞみは到頭曲を選ぶ。それは最近テレビのCMでも使われた曲。しかしその伴奏が始まった途端、無垢は身体に嫌な予兆を感じ始めた。
「(何か、変?)」
「ふぅ。はぁ~、~~~~♪」
「っ! ~~~~っ!(何、これ……!)」
そしてのぞみが歌い出した瞬間、無垢の身体を容赦の無い快感が襲い始めた。のぞみがマイク越しに声を響かせる度に、全身を無数の手や舌が這い回り愛撫する様な感覚。声を出す事の出来ない無垢はただひたすらに悶えるが、歌に夢中なのぞみは気付いていない様子。今すぐに止めようとメモに手を伸ばそうとするも、サビに入った瞬間にその快感は勢いを増し始める。
「(こんな…… ただ、歌を聞いてる、だけで……駄目っ……感じちゃう!)~~~~っ!」
もう曲やリズムに乗る事も出来なかった。誰に触られる事もなく、音楽とのぞみの歌だけで絶頂してしまった無垢。しかしまだ曲は1番を終えたところであり、2番が始まろうとしていた。間奏の間も決して快感が途切れる事は無い。絶頂した身体に追い打ちを掛けるが如く、襲い掛かる無数の手や舌が自分の身体を弄る様な快感に無垢はどうする事も出来なかった。……そして、無情にも2番は始まってしまう。
「~~~~♪」
「~~~~っ!」
のぞみが気持ち良く歌う傍で、強制的に気持ち良くさせられてしまう無垢。それから3番を終えて歌が終わるまで、何度も絶頂を繰り返した身体は1曲だけで既に限界を迎えていた。もう食べる余裕も飲む余裕も無く、ソファに倒れてしまう無垢。そんな彼女の姿を前に、のぞみは手に握っていたマイクを置いて微笑む。
「どう、良かった?」
歌の感想を聞いている様で、だが違和感のある質問に無垢は頭の中が混乱したまま答える事が出来なかった。
返事を返す事も出来ない無垢に、心配する様子の無いまま近づいたのぞみは無垢の身体を持ち上げる。自分より小さな身体と言えど、のぞみも女の子。その身体を持ち上げるのには多少苦労するが、無垢には抵抗する体力も残っていなかった故に比較的簡単に望んだ体勢を作る事が出来る。
「ふふっ、気持ち良かったでしょ?」
「っ!(のぞ、み……?)」
ソファに座った状態で足を開き、自分の股の間に無垢を座らせてまるでぬいぐるみの様に抱き締めたのぞみはその耳元で囁く様に告げる。そしてその言葉だけで、無垢は自分が歌を聞く事で気持ち良くなってしまった原因が彼女だと理解した。……だが、方法は分からない。考えたくも無い嫌な予感を感じながらも、無垢は不安を込めた瞳でのぞみへ振り返ろうとした。が、のぞみは自分よりも小さな無垢の頭に顎を乗せて優しく頭とお腹を撫で始める。
「無垢を抱きしめたいって、何度も思った。だけど最近は付き合いが悪くて全然一緒に居られなかったから、私も我慢出来なくなっちゃった。ねぇ、これ知ってるよね?」
「……」
のぞみが無垢に見せたのは、あのスマホだった。全ての理由をそれだけで察した無垢。するとのぞみはまるで自白する様に、電車での出来事を語り始める。
「感覚も操作出来たから、私だってばれずに電車でも色々出来たの。便利だよね、これ」
「!?(じゃあ、あれは……!)」
「ふふっ、そう。あれも私がやったの。友達に協力してもらってさ。いっぱいイけて、気持ち良かったでしょ?」
みつでもみここでも無い3人目の人物、のぞみに無垢は恐怖心を抱かずにはいられない。そして弱ったまま、それでもこのままでは不味いと無い力を振り絞ってのぞみから離れようとした。が、当然そんな小さな抵抗はのぞみを相手に意味を成さない。
「新しい命令をしてあげる。でも何かは教えてあげない」
「っ!」
のぞみは無垢を片手で抱くだけでその抵抗を無意味にし、片手でスマホの操作を始める。すると無垢は身体に一瞬、違和感を再び感じた。
「うん。それじゃあ、もう1曲歌っちゃおうかな」
歌を歌う。それが自分にどの様な効果を齎すのか身を持って体験した無垢は戦慄する。だが逃げる事の出来ないまま、無情にものぞみは機械で曲を入れてしまった。伴奏が流れ始めた途端に身体へ痺れる様な快感が襲い始めれば、もう無垢は抵抗する余裕も無くしてしまう。そして無垢の上でのぞみはマイクを手に歌い始めた。
「~~~~♪」
「~~~~!?(イクっ! ……!? イケ、ない……?)」
のぞみの歌声と曲が耳を伝って無垢の身体を陵辱する。無数の手と舌に身体中を犯される様な快感に震え、逃げる事も出来ずに絶頂……する事が出来なかった。まるで何かに塞き止められる様に、快感が無垢を襲い続けても絶頂には至れない。先程は1曲で何度も絶頂した無垢だが、今度は曲が終わるまでの4,5分間、一度も絶頂を許されなかった。
「ふぅ……ふふっ、辛そう。イケないって辛いよね?」
「……」
「イきたい?」
絶頂出来ない無垢は身体を小刻みに動かしながら強く目を閉じていた。そしてそんな無垢へ耳元で囁く様にのぞみは問い掛ける。頷くなりすれば、きっと今すぐにでもイカせてもらえる。だがそれはのぞみの思い通りになるという事であり、無垢は必死に耐える選択をした。……そんな様子を楽しむ事もまた、のぞみの目的であるとは考えずに。
「どれだけ耐えられるかな? 我慢比べしよっか」
また曲を追加したのぞみは無垢を抱いたまま歌い始める。襲い掛かる暴力的な快感。だが決してイク事は許されないもどかしさに無垢は考える事も出来ないまま、ただ悶え続ける。そして曲が終わる度に、負けたくないという意思を思い出してのぞみから告げられる絶頂への誘惑を振り払い続けた。
のぞみが10曲以上歌っても尚、無垢は絶頂出来ない身体のまま我慢し続けていた。
「(イキタイイキタイイキタイイキタイ!)」
「頑張るね。でも苦しいでしょ? ほら、素直になって……?」
だが無垢の頭の中はもう、絶頂を求めておかしくなり始めていた。僅かな理性とのぞみに負けたくないという意地だけが、今の無垢を抑え続けている。のぞみも無垢がここまで頑張るとは思わなかったのか、少し焦った様子で声を掛ける中、突然部屋にあった受話器から音が響き始める。思えば長い間歌い続けた事もあり、時間が来たのだ。
「(イキ、タイ……でも、後少しで……終わ、る……!)」
「はい。あ、はい。はい。一時間延長でお願いします」
「(ぇ……そんな……もう、無理……)っ!」
受話器の音で頭の中を支配する絶頂への欲が微かに晴れた無垢。だがのぞみが電話の相手に伝えたその言葉は、無垢を絶望へと突き落とす。受話器を戻して微笑んだのぞみの顔が恐ろしく、再び無言で歌を入れ始める姿を見た。
そして無垢は考える事を止めた。
曲が終わった時、無垢はもう真面な思考を維持する事も出来ていなかった。ただただ分かるのは、自分が求めるまでこの地獄は終わらないという事だけ。のぞみが決まり文句の様に「イキたい?」と質問した時、遂に無垢は頷いて肯定する。その瞬間、のぞみは嬉しそうに笑ってスマホを操作した。
「よく出来ました。それじゃあ、イカセてあげる。今までイケなかった分、残りの時間はたっぷり……ね?」
『佐伯 無垢は絶頂出来る』
「ふぅ~」
「~~~~っ!」
頭の中に響いた声。そして身体の奥底からまるで津波の様に流れ込んで来る絶頂の予兆。そこへのぞみが耳に息を吹きかけた途端、無垢の身体は引き金を引かれた様に絶頂を迎えた。今まで抑え込んだ分、凄まじい身体の痙攣と幸福感に包まれた無垢。だが、のぞみは1度で済ませる気など端から無かった。
「それじゃあ、改めて歌おうかな」
「!?(今、歌われたら……本当に壊れるっ!)」
無垢の心の声など伝わる訳もなく、のぞみは歌を入れてしまう。そして歌い始めた途端、今度は絶頂の波が無垢の身体を何度も襲い掛かり始めた。絶頂、絶頂。絶頂中にまた絶頂。1番が終わる頃には優に10を超えた絶頂の回数も、まだ終わらない。余りの強さに気絶しても、更に強すぎる快感を与えられて強制的に目を覚まし、絶頂を繰り返す。
「残り1時間、楽しもうね?」
間奏中に告げたのぞみの声は、もう無垢の耳には届かなかった。
常時掲載
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