姫子が電話を止める。それに焦り、無垢は弱った身体に鞭を入れて走り出した。家の中に足音を響かせながら玄関へと向かい、自分の靴を急いで履いて玄関の扉に手を掛ける。
「駄目だよ、無垢」
「!?」
だが扉を開けようとしたその瞬間、無垢は後ろから優しく抱きしめられる。それが姫子の抱擁であるのは見ずとも明らかであり、自分が逃げる事に失敗したと悟るのも一瞬の事。度重なる絶頂で弱った小さな身体は軽々と姫子に抱えられ、靴を玄関に放られたまま無垢は元の部屋に運ばれてしまう。
「逃げようとするなんて、お姉ちゃん悲しいな……」
「(ぁ……ぃ、ゃ……)」
姫子の顔は変わらず優し気な微笑みを浮かべている。だがその笑顔に恐怖を覚えずにいられない無垢は、戻されたベッドの上で怯えながら姫子から距離を取ろうとした。すると、姫子は無垢をそのままに部屋の端っこへ。やがて鋏を手に戻って来た彼女は、無情にも告げる。
「服、全部切っちゃおうね」
「!?(ぃやぁぁ!)」
叫びたくなっても、無垢に声を上げる事は出来ない。下手に動けば怪我をする様な状況で、姫子は容赦無く無垢の着ている服の袖から鋏を入れ始める。それは無垢に決して消せない恐怖心を植え付けると共に、この場から逃げられない事を
「ふふっ、どんな格好でもやっぱり私の無垢は可愛いね」
既に服とはいえない程、ボロボロにされた布の残骸を纏う無垢の怯える姿に姫子はウットリとした表情で告げる。そして手に持った鋏を置くと、再び無垢に手を伸ばした。恐怖で抵抗出来なくなった無垢の身体を押し倒して、顔の両側に手を突きながら四つん這いの姿勢で覆い被さる姫子。その濁った様な瞳に、無垢は怯えて何も出来ない。
「お仕置きしてあげる。無垢が二度と、私の傍から離れられない様に」
「(ぁ……ぅ、ぁ……)」
もう真面な思考も動かない無垢を前に、姫子は彼女が逃げる際に持っていた遠隔操作出来るスマホを再び手にする。そして無垢から視線を外さずに見つめたまま、片手でそれを操作した。……その内容は無垢を自分へ縛り付けるための命令。
『佐伯 無垢は佐伯 姫子以外、見なくなる』
「(目、が……)」
「ふふっ、これからずっと。私だけを見てようね。他の誰も、見ちゃ駄目だよ?」
無垢の視界が姫子以外、灰色に染まる。視線は完全に姫子へ釘付けとなり、意思が無くとも勝手に目が姫子を追い掛ける様になってしまう。無垢の状況を理解した姫子は満足そうにそのスマホを適当な方向へ放り投げると、改めて無垢と愛し合う為に口付けをしながらその身体を小さな身体へ預けた。
二人の姉妹が住む家。その妹の部屋からは淫猥な水音と時折息継ぎをする女性の吐息が聞こえていた。
淫らな行為をしているのは、その家に住む姉妹張本人達。妹は声を出せぬまま、身体も動かせずに口付けをされ続ける。離れられない様に後頭部を片手で押さえつけられて引き寄せられながら時折身体を震わせ、姉は妹の頭を左手で固定して口付けをしながら、右手で好き勝手にその身体を弄り回している。
既に無垢が姫子に捕まってから数日。彼女達の元に届いていた連絡も鳴り止んでいた。姫子はしばらくの間、大学を休むと上手い理由も添えて予め伝えて。無垢の通う高校にも家庭の事情として姫子が電話をして伝えていた。その上で、無垢の電話に掛かって来る友達からの電話は全て姫子の手で着信拒否に。
当然、無垢の身体をスマホで弄ぼうとする別の人間が居る。しかし一人の人間に『命令がされている状況で二台目のスマホから送る命令は効かない』のか、全く無垢に遠隔操作による新たな被害は無かった。
無垢は永遠に変わらず、姫子だけを見続ける命令を強制され続けている。純粋に心配した者が例え姉妹の家を訪れようと、姫子が覗き穴から見た後に扉を開けずに居留守を決め込んで帰らせ、完全に外との関わりを無垢は遮断された。着れる服も全て処分され、家から出る事は許されない。
……そして、今日も……
「ぅん……また、ヒナタちゃんかな?」
「(ヒナタ……助、けて……)」
突然聞こえて来るインターホンの音。学校へ来なくなってから、心配したヒナタが毎日の様に無垢の様子を見る為に訪れていたのだ。だが無垢を家から出さない様にしている姫子が会わせる筈も無く、彼女は一旦反らして玄関の方へ向けた視線を再び無垢に戻して行為を続ける。
「はぁ……今日も居ないのね。何処行っちゃったのよ、無垢」
何度か繰り返されたインターホンも、やがては諦めてしまったのだろう。ヒナタが去って行く様に音が消えた事で、無垢は今日も救われない事を理解してしまう。何時か自分を救いだしてくれる人物が居るのか、それともこのまま永遠に姫子の玩具の様に愛され続ける事になるのか。
「まだヒナタちゃんの事、考えてるんだね。……言ったよね、私だけを見てって」
そんな無垢の感情を読み取った様に、光を失った様な姫子の瞳が無垢を見下ろす。喋らずとも感情を読み取れるのは、長年一緒に居た
「今日はまた、激しくなっちゃうかも。……でも何時か壊れちゃっても、ずっと私が面倒見てあげるから大丈夫だよ」
「!(もう、あれは……嫌ぁぁぁ!)」
『佐伯 無垢はキスされると絶頂する』
「はぁむっ」
「! ~~~~っ!」
姫子が何をしようとしているのか察し、必死に嫌がる無垢を無視して出された命令。そして姫子が無垢の頭を両手で逃げられない様に掴んだ上で口付けをすれば、一瞬で無垢は込み上げる快感に抗えず絶頂させられる。だが、無垢が嫌がったのはこれだけが理由では無い。
「じゅる、んっ……沢山、イこうね。ちゅ」
「~~~~っ! (イきっぱなしで……あたま、まっしろ……に……)」
姫子がする口付けは触れるだけの優しいものでは無かった。無垢の口内を味わい尽くす程に舌で蹂躙し続け、命令通りに無垢はキスされている間、絶頂し続ける事になる。身体が跳ね上がり、目から涙が流れても、顔を掴まれ避ける事の出来ない口付けが強制的に無垢を襲う。頭の中に白い光が飛び交い、真面な思考が出来なくなって意識が跳び掛けても、強制的に絶頂で覚醒させられてしまい……地獄の時間が無垢に訪れていた。
無垢にとって数時間にも感じる時間は実際には数分の出来事であり、ようやく姫子が口付けを止めた時には既に壊れる寸前にまで追い詰められていた。
虚空を見つめる無垢の頭を撫でて身体を起こした姫子は満足した様子で一度部屋を離れる。もう無垢が逃げ出そうとする事は無いと姫子は確信していた。それをすればどうなるかを、その華奢な身体に覚え込ませた過去があるからだ。そしてその通り、無垢はもう逃げられない。
少しの時間が経ち、やがて姫子は食べ物とスプーンの盛られた皿を手に再び姿を現す。そのまま無垢の傍へ近づくと、彼女の身体を座る姿勢になる様に起こしてから、スプーンで食べ物を掬って自分の口へ。それは決して無垢に食べてる瞬間を見せつける為の行為では無い。
「無垢、こっち向いて。……んむっ」
「っ!」
姫子は咀嚼したそれを口移しで無垢と口付けをしながら渡し、飲み込ませる。無垢も姫子も人であり、食事は必要。姫子は無垢に与える食事の方法すらも、自分を通さなければ許さない様になっていた。弱り切った無垢に出来るのは、流し込まれるそれを飲み込む事だけ。姫子は完全に無垢を依存させ、快楽で縛り付け様としていた。