ヒナタの家で泊まる事になった無垢は、彼女のベットで横になっていた。
みつとみここ、のぞみに続いて家族であった姫子にまで襲われてしまった事実は無垢にとって到底耐え切れない出来事だ。だからこそ、自分の関係者で最後に残った信頼するヒナタの優しさは無垢にとって大きい。小さい頃から自分を守ってくれた相手であり、今もこうして傍に居ながら彼女の服を纏う事で香るその匂いが無垢を安心させる。
ヒナタは宣言通り、無垢に起きた事を無理に聞き出そうとはしない。ただ静かに優しく寄り添い、傷ついた心を癒す様に努めていた。ヒナタの部屋で、彼女が普段使うベットで共に横になった時。無垢は今までの悲劇を忘れられる様な気がした。
……しかし、彼女の考えはまだ甘かった。
「……!? (また誰かが、私の身体を……!)」
隣で眠るヒナタの傍で、無垢は突然身体を撫でられた様な感覚に襲われる。肩を撫でるその手は実際には存在しない。だが確かにその感触があり、肩から腕へ。そして胸へとその感触は移動していた。
姫子の持っていたスマホは現在、ヒナタの家にある。つまり無垢に悪戯をしているのは他の3人の内、誰かなのだろう。無垢がどんな状況であるかなど、関係ないとばかりに悪戯をするその手の感触は胸を本格的に攻め始める。下から掬い上げる様にして揉みしだき、時折先端を弄る様な刺激は無垢の身体を震わせた。
「っ! !? (ヒナタが、起きちゃう……。こんなの、見られたくないのに!)」
「ぅ、ん……」
声は出ない。だが刺激に反応する身体はベットを揺らしてしまい、同じ場所で寝るヒナタは少しだけ寝苦しそうな顔で寝返りをした。まだ起きてはいないが、それも時間の問題であろう。刺激はより明確に激しく無垢の身体を攻め立てている。
手で弄られる様な感触が次に舌で舐め回される様な刺激へと変わる。声は出ないと分かっていても、必死にその息遣いや身体を抑える様に無垢は自身の手で口を抑えて身体を抱きしめる。相手のスマホにどの様な表示がされているのか、無垢は知らない。しかしまるで無垢がどれ程の快感を受けて絶頂へ近づいているのかを相手は知っているかの様に弄び続ける。……やがて、無垢はヒナタの傍で誰かも分からない相手の操作によって絶頂を迎えてしまった。
「~~~~~っ! ……」
震える身体を必死で抑えながら、やがて頭が真っ白になる程の快楽によって無垢は虚空を眺める。だが相手の弄りは一度絶頂を迎えた程度では満足をしなかったのか、再び攻めが再開された。胸だけに飽き足らず、今度は太腿を撫で回される様な感覚。足先を舌が這い回る感触。そして、大事な部分に手が添えられた様な感触。
「っ!」
「んっ……んぅ? ……! 無垢!」
今正に無垢の秘部に攻めが及ぼうとしたその瞬間、彼女の異変によって目を覚ましたヒナタが飛び起きながら無垢の手を握る。すると、先程まで無垢の身体を弄り回していた謎の感触が嘘の様にピタリと静まった事で無垢は目を見開いた。一度の絶頂と追い討ちの様な刺激に眼元から流れ出た涙が耳へ落ちる中、彼女はヒナタと目を合わせる。
「大丈夫、なの?」
「……」
ヒナタは急に静かになった無垢の姿に困惑する。すると、ゆっくり身体を起こした無垢はヒナタの身体へ飛び込む様に抱き着いた。何が起きたのか分からないまま、それでも怖がった様子の無垢をやがて受け入れる様に抱き締めたヒナタ。彼女は無垢が落ち着くまで、その姿勢で居続けた。
自分が得体の知れない何かから襲われていた瞬間を実際に見られてしまった事で、無垢は決心した様に自身の身に起きた出来事をヒナタへ打ち明ける。
みつ・みここ・のぞみ・姫子の4人が自分を性的に襲って来た事。彼女達の様子は一様におかしく、その原因が謎のスマホである事。それを使われてしまうと、頭の中で謎の声が響き渡った後にその通りに身体がなってしまう事。
「そんな事が……ありえない。ありえないけれど、私は信じるしかないのね」
「……」
「無垢、落ち着いて聞きなさい。皆が持っていたスマホなんだけど……私も、持ってるのよ」
「!?」
「大丈夫よ! さっきも言ったでしょ、私はこんなもの使わないわ」
ヒナタは自身が謎の女性から受け取ったスマホを取り出して無垢に見せる。無垢は目を見開いて一瞬怯える様に身体を震わせるが、ヒナタは即座にスマホを手放して無垢を安心させる様に抱き締めた。そして、その姿勢のまま話を続ける。謎のスマホを知らない女性から渡された事を。他の誰かにも渡したと言っており、恐らくそれが無垢を襲った皆である、と。
「目的は分からない。けど、あの女は明らかに私にスマホを使わせようとしていた。きっと、おかしくなった原因はそれよ」
「……」
皆が元からおかしかったのではなく、スマホのせいでおかしくなってしまった。それは些細な事の様で、無垢にとっては大きな事実だ。そして皆が元に戻る可能性もあると、無垢とヒナタは考える。果たして戻ってからも今までの様な関係で居られるか、それはまた別の話だが……。
「遠隔操作が出来る。確かにそう言っていた」
『さっきのがそう。誰かが私の身体を』
「姫子さん以外の誰かが貴女に悪戯をしていたのね」
『でも、ヒナタが起きたら止まった。どうして?』
「それは私も分からないわ。けど、止まったのが貴女の手を握った事で起きたんだとしたら……対処出来る方法があるって事よね」
その言葉で無垢は顔を上げる。その瞳からは、あの得体が知れない弄りから解放される希望で喜びを感じているのがヒナタにも伝わった。
他の皆がおかしくなった原因がスマホだとすれば、やるべき事は即座に思い付く。だが簡単にはいかないだろう。ヒナタは取り敢えず疲労からまだ回復し切れていない無垢を寝かせる様に、ベットへ横になった。その手をしっかりと握って。
「……」
「離さない様にね」
お互いに向き合い、握った手を上から更に握る様にして両手で繋いだ2人。再びヒナタの匂いや彼女に触れた感触が無垢の心を安堵させ……やがて彼女は眠りについた。
翌日。
朝を迎えたヒナタは自分の手を両手でしっかりと握ったまま、心地良さそうに眠る無垢の姿を最初に見て目覚める。その姿だけで心に暖かさを感じた彼女は空いていた片手で時間を確認しようと、元から持っている自分のスマホに触れた。
……そこには大量のメッセージが送られて来た後がある。相手の名は『佐伯 姫子』。
「!? 姫子さん……」
無垢から話を聞いたヒナタは、姫子が無垢に襲い掛かった事実もしっかり聞かされている。何が書かれているのか警戒しながら、ヒナタはメッセージに目を通した。
『ヒナタちゃん、無垢は貴女の家に居る!?』
『私、無垢に酷い事を……頭の中がおかしくなってたの!』
『急に冷静になって、でももう無垢は居なくて、私どうしたら!』
『無垢は家に居ないの! 貴女の家に居るよね? そうだよね?』
『ヒナタちゃん、お願い! 無垢を一緒に探して! あの子に謝らないと、私』
それは一方的に何度も来ていたメッセージの列。だが一様に焦った様子が見受けられ、同時にその内容が本当ならば姫子は無垢に襲い掛かった事を後悔していると捉えられる。おかしくなった彼女が元に戻っている。信じて良いのか分からないヒナタだが、彼女はふと自身が渡されたスマホを見た。
「確か、姫子さんのは無垢が……一度会って確かめるべきね」
「……っ……?」
「起きた? 無垢、こんなメッセージが姫子さんから来てるの」
「!?」
無垢が目を覚ます。それに気付いたヒナタが姫子からのメッセージが来た事を伝えれば、驚いた後に一瞬戸惑った様子を見せながらもやがて無垢はヒナタのスマホを受け取った。届いたメッセージに目を通した後、ヒナタへ戻すその視線には不安が込められている。
「貴女がスマホを持ち出した事で正気に戻ったのかもしれない。会って確かめましょう」
「……」
「大丈夫よ。私が傍に居るわ。何があっても、私が守る」
簡単にその案へ乗れる程、無垢が受けた心の傷は浅くない。だがヒナタの心強いその言葉に、無垢はやがて小さく頷いた。
ヒナタはまず、姫子へメッセージを送る。内容はヒナタが今から家へ行くというものであり、今日は学校を休むので、無垢の登校も休むと学校側へ連絡しておいて欲しいというもの。ヒナタが無垢の登校に関して休む連絡をするのは、学校側からすればおかしな話だ。家族である姫子からの連絡が自然なのである。そしてヒナタはメッセージに決して無垢と共に居る事を記載しなかった。
姫子から返って来る了承の返事は素早かった。ヒナタはそれを確認して自身が休む事を学校へ連絡。無垢がそれを見て謝罪の意思を示すが、ヒナタは「良いのよ」と告げて優しく微笑む。