※この作品はR-18です。

【完結】色無き少女と深紅の乙女達   作:ウルハーツ

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【持田 あずさ編】第2話

 のぞみと再会して、佐伯と出会ってから数日。あれからスマホにはのぞみから色々なメッセージが送られて来る様になった。余程再会出来たのが嬉しかったらしい。まぁ、私も確かに嬉しくはあった。……でも、はっきり言って私とのぞみは親友といえる程に仲が良かった訳じゃない。小学校の女子グループで同じだっただけ。寧ろ5.6年生の頃には女子グループなんて上下関係が流行りに乗れてるか否かで簡単に変わってしまう世界だったから、ライバル的な存在とも言えた。他の女子に比べて、私ものぞみも間違い無く抜きんでていたから。

 

 そんなのぞみが送って来るメッセージは自分の事や懐かしむ内容から、あの時出会った佐伯の事。比率で言えば3.3.4ってところかな。明らかに佐伯に関する事が多い気はする。写真も多くて、後ろから抱きしめていたり佐伯だけのお菓子を食べる姿だったり。それを見るだけで、のぞみがどれだけ佐伯の事を好きなのかが充分に伝わって来る。

 

「でも、好き過ぎじゃない? これは」

 

 正にマスコット。同じ女子が可愛いと言う時、それは本当に可愛いと思ったかその場の空気に合わせているかの二択だ。でも写真に写る佐伯の姿は明らかに後の方。確かに可愛い。基本的に無表情ではあるけれど、食べてる時はなんとなくでも美味しそうな感じが伝わって来るし。……よっぽどのぞみにとって、彼女は大事なんだろう。

 

 さっきも思ったが、私とのぞみは確かに友達だったけど親友と言える程の仲じゃない。お互いにお互いを忘れていただろうし、何なら今だって友達『だった』って感じ。

 

 きっと、のぞみは私にこの写真を送る事で自慢したいんだ。『自分は今、こんなに幸せなんだ』って。あの頃は自分が輝く為の物ばかりを自慢し合っていたけれど、今の彼女は違う。それが分からされた気がして、私はのぞみから送られてきていた写真の画面を閉じた。

 

「幸せ、か……」

 

 思えば今の自分は幸せだろうか……。何か不自由がある訳じゃない。基本的には自由だし、学校でだって別に困った事は無い。グラビアアイドルとして活動するかって事に悩んでいるけど、それだって私には読モを貫くか新しい世界へ踏み込むかの選択肢が与えられている。なのに、何故だろう。もっと欲しい。何か私の世界が変わる様な、切っ掛けが。

 

「? 佐伯から?」

 

 ふと、真っ暗にした画面に通知が来る。それは佐伯からのメッセージで、内容は簡潔だった。

 

『のぞみがしつこい。どうにかする方法、教えて』

 

「はは。のぞみ、面倒に思われてんじゃん」

 

 佐伯とのぞみが共通の交友関係は知らないけど、私に相談するって事は余り長い相手は多分居ないって事だと思う。小学校の頃からってだけで、私とのぞみの関係が長いと思うのは仕方が無い。で、そんな私にしつこいのぞみへの対処法を聞いて来た。……ちょっと面白く思ってしまった。それに、ふと頭に浮かんだ思考がそのまま頭から離れない。

 

【のぞみから、あの子を奪ってしまえばいい】

 

 それが私の世界を変える切っ掛けになるかもしれない。確かに佐伯の隣は楽しそう。眺めているだけでも癒されそうだし、可愛がりたくも思う。もし私がのぞみと同じ場所に立つ事が出来れば、彼女の様な幸せを感じられる様になるんだろうか? 一度気になったら簡単には頭から離れない。

 

『なら、今度教えてあげる。難しいから、会って話せる?』

 

 これが通れば佐伯とは2度目の出会いになる。今度は先輩やのぞみが居ない2人だけの時間。それが叶うなら、佐伯についてもっと知ろう。どうしてあんなにのぞみが幸せそうなのか、それできっと分かる筈。それが本当に佐伯自身によるものだとするなら……

 

「私も、感じてみたい」

 

 佐伯から返ってきた返信は日程についてを決めたいというものだった。私は時間のある日を選んで佐伯に確認を取る。その結果、来週の週末に私達はまた会う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 約束の日。待ち合わせ場所には先に佐伯が待っていた。服装は初めて出会った時とは変わらない帽子とパーカーワンピ。あの時ははみ出た白髪が見えただけだったけれど、のぞみからの写真で私はもうその全容を知っている。かなり綺麗だったけど、本人はコンプレックスに感じているらしい。昔、それで虐められていたとか。……見る目が無い奴ってのは何処にでも居る。

 

「待った?」

 

『平気』

 

 私が声を掛ければ、気付いた佐伯がメモ用紙を見せて来る。書いている素振りが無かったって事は、予め用意してあった。つまり、例え私が遅くてもこれを出すつもりだったのかも。

 

「どうする? ちょっと遊んでからにする?」

 

 しつこいのぞみへの対処方法なんて話から始まった時間だけど、実際に思い付く内容なんて正直そんなに無い。だから時間稼ぎとしてした提案に佐伯は頷いた事で少し安心する。それから何処へ行くかについてを考えた結果、まずは適当に買い物をする事になった。といっても何か欲しい物がある訳じゃない。街を歩いて物を見ながらするウィンドウショッピングだ。

 

「これ、佐伯に似合いそうじゃない?」

 

『こっちは持田に似合うと思う。ちょっと子供っぽいけど』

 

「へぇー、中々見る目はあるじゃん?でも私読モだからさ、何でも似合うんだよね。 お互いに着てから見せ合ってみる?」

 

 読モをやっているから、色々な服を着る事はとても多い。そして着る度に言われる言葉、『似合ってる』。確かに似合ってるかもしれないけど、逆に似合わないと言う様な人は私の周りに居なくなった。読モをやっていると知っている友達からすれば、きっと私が似合っていないと言えないんだろう。そう思っても、自分が見る目が無いと見られてしまう事を恐れて本音を言わない。けど、佐伯は思った事を正直に言ってくる。……私、もしかしてちょろい?

 

『やっぱり、子供っぽい』

 

「そっちは似合ってるけど、サイズが合ってないね」

 

 お互いにお互いを似合ってないと正直に言い合って、思わず私は笑ってしまった。そして思う。先輩と一緒の買い物だって確かに楽しかった。でも佐伯を相手にしている私はあの時よりも砕けていて、とても癒されている。こんな時間が続いてくれれば、きっと毎日が楽しくて仕方が無いだろう。彼女には不思議とそう思わせてくれる何かがあった。

 

【だから、のぞみから奪いたい】

 

「っ!」

 

「?」

 

 まるでもう1人の自分が言う様に頭の中で響いた声を振り払いたくて、思いっきり頭を振る。少し髪が乱れてしまったけど、そんな私を気にして佐伯が首を傾げた後に『何かあった?』と聞いて来た。まさか思った事を言える訳がないから適当に誤魔化した私は、手櫛で髪を整えてから別の服を探して店の中を歩き回る。

 

 それから何度か佐伯を着せ替え人形にした。自分を着飾る事はあったけど、こんなにも誰かを可愛くする事が楽しいとは知らなかった。スタイリストとかメイクとか、読モの撮影で出会う人達は普段こんな思いで私達を飾っているのかもしれない。ちょっと気安い人も居るけど、多分気分が良かったんだと思う。今の私みたいに。

 

『疲れた』

 

「だね。どっか休めそうな場所……さっきの場所は騒がしかったし、静かな場所の方が良い?」

 

 のぞみから佐伯が比較的静かな場所を好きなのはメッセージで聞かされていた。そこで私が選んだのは漫画喫茶。あそこなら基本的には静かで食べ物もある。普段入った事は殆ど無いけれど、佐伯と休むには丁度良い場所。私の提案に頷いて答えた佐伯を連れて建物の中へ入り、受付で漫画喫茶の一室を借りる。佐伯は喋れないから、こういうのは自然と私がしなければならないけど……頼られてる気がして、少し気分が良くなった。




常時掲載

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