※この作品はR-18です。

【完結】色無き少女と深紅の乙女達   作:ウルハーツ

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主人公は変わらず、メインストーリーとは別のお話です。


【穂波 ネイ編】第1話

 私の名前は穂波 ネイ。私の家はとある大企業であり、私の通う学園のスポンサーもしている。そして、私はその学園の生徒会長として何不自由なく過ごしていた。

 

 ただ親の七光りとしてそこに在籍している訳じゃ無い。それを証明する為に、私は誰もが認める様な成績を残してきた。生徒会長になれたのも、その実績と自ら作り上げた人望の結果だと言える。自分の生まれや環境に胡坐を掻く事無く、私は今までを過ごして来たつもりだ。

 

「それで、明後日の予定ですが」

 

 今日は生徒会として今後行う予定についての話し合いをしていた。近々行われる他校の生徒会との交流会議。私達が自ら別の高校へと赴き、会議をするというものだ。だがその本当の目的は、家がその学園に援助をするか品定めするため。大企業の社長であるパパは毎日忙しく、仕事の事ばかり。娘の私が会えるのは1年に2.3度で、それでも私にとっては大事なパパだ。少し他人の様に感じてしまう事もあるけれど、嫌いでは無い。そんな相手だから、パパの為になるのなら私に出来る事はしたい。そう思い、この交流会議を引き受けた。

 

 私にその会議で出来る事は、相手校が果たして家がスポンサーになるだけの価値があるかを見定める事。相手校の生徒会長に関する情報を見るに、少なくとも偏差値や生徒達の素行は悪く無さそうだ。

 

『生徒会長 鈴峰 彩花』

 

 相手校の生徒会長は私の時と同じ様に選挙で選ばれている。それだけ人望があるという事であり、容姿や彼女の周辺を探る事で分かったのは生徒会長が一種のアイドルの様な存在である事。しかし成績は校内で1位。運動神経の成績も高い。その上この容姿ともなれば、人気になるのも頷ける。きっと相手校の男子は彼女を高値の花として崇めているのだろう。何処の校であろうと、男が愚かなのは変わらない。

 

 私は予め手に入れる事の出来た情報を確認しながら、予定を聞いてその日までに何を観察するべきなのか候補を上げておく。……この時、私は思いもしなかった。もし運命などというものが本当に存在するのなら、私にとってその出会いが交流会議の当日に待っている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが我が校の教育方針となっています」

 

 そう言って座る姿は凛とした花の如く美しい。写真で見るのと実際に見るのでは、全く違う存在感。私と共に訪れた生徒会のメンバーでさえも思わず見惚れてしまいそうな程に美しい容姿をした生徒会長、鈴峰 彩花。この様な人物が在学している時点で、この学校には価値があると思わずにはいられない。

 

 表面上の挨拶から始まって、学校の主な教育方針や生徒達の様子を話し合う。何が目的かと聞かれれば、難しい内容だった。私にとっては品定めであり、向こうにとっては自分達とは違う学校の方針を聞いて刺激を与える。そんな風に捉えているのかもしれない。

 

 話し合いは1時間程で終わりを迎えた。お世辞にも楽しい時間とは言えなかったが、少なくとも目的は果たす事が出来た。まるで女神の様な微笑みを浮かべて退出する私達を見送る鈴峰生徒会長へお辞儀をして、私は校内の廊下を歩き始めた。傍には生徒会のメンバーと両校の教師達。私はパパに報告する内容を頭の中で整理しながら、迎えが来ているであろう校門へも向かい続ける。……そんな時だった。

 

「全く。またメモ帳を忘れるなんて……気を抜き過ぎよ、無垢」

 

『ごめんなさい』

 

「紙とペンが無かったら貴女は話せないんだから。気を付けなさい?」

 

 何気ない生徒の会話だった。但し聞こえる声は1人分。まるで独り言の様な話声に視線を向ければ、そこに居たのはこの学校の制服を着用した女子生徒2人。但し1人はまるで中学生。いや、小学生かと思う程に小さかった。真っ白な髪を伸ばしたその少女は私に背を向ける形で女子生徒と話をしていて、どうやらノートを使って相手と会話をしているらしい。聞こえて来る話の内容から察するに、彼女は声を出して話をする事が出来ない様だ。

 

「ほら、帰るわよ」

 

 私達の存在に気が付かないまま、女子生徒に言われて歩き始めた少女。そして場所を移動し始めた事で、私はその少女の横顔を見る。

 

「っ!」

 

「? 会長?」

 

 胸が高鳴った気がした。思わず足が止まってしまう。一瞬だけ見えた少女の横顔が忘れられなくなる。突然止まってしまった私に驚いて心配して来る生徒会の仲間達。だけどその声が何処か遠くに感じて、私はまるで別の世界に居る様な感覚に襲われた。あれは一体、何? 見た瞬間、胸が締め付けられて苦しくなった。もう1度、あの姿が見たいと思う自分が居る。……もう1人の言葉から予想するに、彼女達は今から帰宅しようとしている。

 

「少し急用が出来たわ。電話を一本掛けたいの。先に行っていて」

 

「分かりました。それでは」

 

 私は迎えが来ているけれど、全員に来ている訳では無い。だから他の人達を先へ行かせて、私は携帯電話を取り出した。電話を掛ける相手は今、迎えに来ているであろう車のドライバー。数コールの後に出た相手に、私はお願いという体でありながらも命令をした。『校内から出て来る生徒を出来る限り写真に納めて』と。迎えの者は私の家に雇われている者だから、少なくとも私がここへ来た本当の目的を察せる程には頭が良い筈。それが会社のためと思えば、断る筈がない。

 

 この気持ちが何なのか、分からない。今まで生きて来て感じた事の無い感情だったから。だけど絶対と言っていい程に分かる事もある。この気持ちになった原因である小さな女子生徒。彼女について知る事が、この感情を知る唯一の方法であると。

 

 電話を終えて私は迎えの車までゆっくりと歩いた。もしあの2人が遠回りなどをして私が外で出た後に校門をくぐってしまったら、写真を収める事は出来なくなってしまう。そうなってしまったなら、別の方法も確かにある。だけど私は出来るだけ早く、彼女の姿を見たかった。

 

「お疲れ様です、お嬢様」

 

「写真は撮れたの?」

 

「はい。此方に」

 

 迎えのリムジンは人目を集める。だけど慣れてしまった私は気にもせず、扉を開けて迎えるドライバーに確認をした。渡されたのはその場で現像された写真の束。私はそれを受け取って社内に入ると、車を出す様に指示してから写真を確認する。1枚1枚、生徒達の全体像が映っている写真。

 

「違う、違う……違う。っ! あった」

 

 ドライバーのカメラに関する腕は悪く無かった。髪の長い黒髪の女子生徒と並んで歩く小さな白髪の少女。それは正しく私が見掛けた2人だ。そして私は白髪の少女を確認する。

 

「ぁ……」

 

「お嬢様?」

 

「! な、何でも無いわ……」

 

 あの時感じた胸の高鳴りなんて比じゃない程の感情に私は支配された。幼げな容姿をした無表情な少女。それでも何処か優しさを感じる顔で隣の女子生徒へ視線を向ける彼女の写真に、私は思わず声が出そうになったのを咄嗟に手で口を覆いながら抑える。それでも気付かれて心配されてしまったけれど、誤魔化す事は出来ただろう。

 

「……」

 

 彼女をもう1度見たい。その目的を果たす事は出来た。しかしそれを果たした私は更なる目的を感じる様になる。それは『彼女の事を知りたい』というものだった。

 

 今分かっている事を整理しよう。彼女の容姿は幼く、白髪のロングだ。恐らく仲が良いと思われる女子生徒が1人居て、聞こえて来た会話から察するに声を出して話をする事が出来ない。……そうだ。確かあの女子生徒は彼女の名前を呼んでいた。確かそれは……。

 

「無垢。……これだけ情報があれば、簡単に調べられる筈ね」

 

 私は普段から家の力を私利私欲で利用する事なんて殆ど無かった。だけどこの日、私はそれを使ってでも彼女について調べる事を決意する。まだこの感情が何かは分からないけど、そうしなければ後悔する確信だけがあったから。




常時掲載

【Fantia】にて、オリジナルの小説を投稿しています。
また、一部二次創作の先行公開や没作の公開もしています。
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