※この作品はR-18です。

【完結】色無き少女と深紅の乙女達   作:ウルハーツ

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【穂波 ネイ編】第2話

 『佐伯 無垢』

 家族構成は父・母・姉の4人。今は姉と共に生活しており、生まれつき声帯に問題があったため話す事が出来ない。そして、彼女と親しい人物は主に5名。

 

 『佐伯 姫子』

 無垢の姉であり、現在大学生でテニス部に所属している。ミスコンに推薦される程の美貌を持ち、妹である無垢を溺愛している。

 

 『黒羽 みつ』

 姉である佐伯 姫子の後輩であり、同大学内で唯一彼女の妹である無垢と面識を持つ。姉とは別の年上なお姉さんとして、無垢は彼女を慕っている様子。

 

 『桃田 みここ』

 無垢の後輩であり、テニス部のエース。後輩でありながら容赦無く先輩達を煽る様な性格をしているが、唯一無垢にだけは懐いている。その理由は不明だが、高校に入学する際に彼女が初めて対面した相手が無垢だった様子。妹が居る模様。

 

 『桜 のぞみ』

 無垢と同級であり、中学からの付き合いがある模様。姉と同じく無垢を溺愛している様で、互いの日程が合った日には共に遊びに行く程の仲。

 

「そして、彼女があの時一緒に居た生徒ね」

 

 『藤浦 ヒナタ』

 無垢と幼少期の頃から共に過ごしている幼馴染。嘗て無垢が髪色などから虐めを受けていた際、彼女を救った張本人。無垢自身も姉の次に懐く程に彼女を信頼している様で、恩義を感じている節もある。父親は会社を経営しており、大学生になった姉が居る。

 

 

 他にも細かい情報はあるが、主にこれが家の力を使ってまで私が調べた佐伯 無垢に関する情報だった。本人には気付かれない様に、その周辺の情報までを手に入れる事が出来た。私は初めて彼女の横顔を見た時、姿を見たいと思った。そして姿を見れた事で、今度は彼女を知りたいと思う様になった。それは今この時果たされたが、それでも私は満たされない。何かが足りない……そんな気がしている。

 

 最初はこれでも情報が足りないのかと思った。だけど、違う。私は自分の感情が分からないからこそ、分かるまで考え続けた。自らの内に知らない思いがあるなど、許せなかったから。その結果、出た結論は至極単純。

 

 彼女を知ってから、私は彼女の事を考える様になっていた。今頃授業を受けているのだろうか。友達と話をしているのだろうか。ご飯は食べたのか、夜は眠れたのか。眠っているのなら、どんな夢を見ているのか。そんな事を毎日の様に考えるこの感情。それは、『恋』。

 

「未だに信じられないわ。でも、他に説明が付かない」

 

 何時かは誰かと結ばれる時が来るかもしれない。そんなロマンチックな事を考えた事が無い訳ではない。だが、正直期待もしていなかった。今まで出会った男性に全て身を捧げたいと思える人は居らず、寧ろ男という存在に嫌悪感すら抱き始めていたから。だが、まさか同性を好きになるとは予想も出来ない。出来る筈がない。

 

 最初は否定しようとした。私は同性愛者では無い、と。だが彼女が私の傍で過ごしている光景を想像した時、足りなかった何かが満たされた様な気分になる。そして現実は傍に居ないと考えれば、心に穴が開いた様な気分になった。……誤魔化しようが無い。私は彼女に一目惚れをしたんだ。

 

「欲しいものは必ず手に入れる。それが人間であっても、例外は無いわ」

 

 今までそうして来た。自らの能力を示す為に勝ち取った、生徒会長の座の様に。だから今回も私は欲しいと思った彼女を手に入れる。例えどの様な手を使ってでもだ。

 

「他校の生徒で面識も無い。そんな相手にどうやって接触するか。まずはそれが問題ね」

 

 一方的な認識しか無い彼女を振り向かせるのは非常に難しい事だ。何より、彼女を振り向かせる時間も惜しい。同性を好きにさせる事は楽な道のりでは無く、私は今すぐにでも彼女が欲しいから。となれば半ば強引になってしまうのは仕方が無い。まずは私のモノとして、それからゆっくりと堕として行く。これが最速の方法だ。

 

「……彼女を利用すれば」

 

 私は纏まった情報の中から1人の資料を手に取る。佐伯 無垢が恩義を感じている幼馴染、『藤浦 ヒナタ』。彼女を利用すれば、無垢を私のモノに出来る筈だ。家の力を再び使う事にはなってしまうけど、その代償を支払って手に入る未来を思えば安い。

 

 佐伯 無垢が私のモノになるまでのシナリオを私は考える。どうしても少しは準備をする日が必要だが、それは仕方が無い。焦らず、だが確実に進めて行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日が経った。状況は面白い程、私の考えたシナリオ通りに進んでいた。

 

「……こんなの、払える訳無いじゃない……!」

 

 藤浦 ヒナタの父親が経営する会社は多額の借金を背負って倒産した。そして残った借金を返済する生活を余儀なくされる。姉妹が父親と共に死に物狂いで働いたとしても、返し切れない程の額だ。藤浦 ヒナタが通う高校は全面的にアルバイトを禁止している。規則を重んじる彼女がそれを破るかはともかくとして、例え破ったとしても返す事は困難だろう。

 

 彼女の父親が経営する会社にちょっかいを掛けて破滅へ追い込んだのは私。その結果、絶望する程の借金を背負わせたのも私。藤浦 ヒナタは返せる宛の無い現状に絶望している。そしてそんな彼女に一筋の光明を見出させる。だがそれは、彼女が絶対に選ばないであろう希望。

 

「私の傍にって……まさか、無垢の事を言っているの!? 彼女は関係ないわ!」

 

 借金取りとして派遣した彼女に提示した光明。それは彼女の傍に居る少女、無垢をある場所へ誘い出すというもの。しかし予想通り、彼女はそれを拒んだ。自分の家の問題に幼馴染である無垢を巻き込む事を、彼女は絶対に許さないだろう。だが、それを話に上がった無垢本人が聞けばどう反応するのか。……ここが唯一の賭けでもあった。

 

 何度もやって来る借金取り。少しずつ支払っても減らない借金。藤浦 ヒナタは絶望しながら徐々に憔悴していった。そして、そんな彼女の様子を無垢が気にならない訳が無い。藤浦 ヒナタの姉と父親は既に恥もプライドも捨てて、無垢を差し出そうと考えていた。それだけで借金がなくなるのだから、と。反対しているのは藤浦 ヒナタだけであり、無垢はそんな彼女を心配して家まで着いて行く。例え本人から拒まれたとしても、『放ってはおけない』と彼女の為になろうとした。

 

 予想通り、家へやって来た無垢へ藤浦 ヒナタの父親と姉は我が身可愛さに縋りついた。子供の頃から交流があったため、無垢がどんな存在か知らない訳では無いだろう。藤浦 ヒナタだけが無垢にその話を知られてしまった事を後悔して、忘れて欲しいと告げる中で……無垢はやはり私の思った通りの行動に出た。彼女の為になるならと、引き受けたのだ。自分が何をされるか分からないのだから、恐怖もある筈。だがそれでも引き受けたのは、嘗て自分を救った藤浦 ヒナタへの恩返しのつもりなのだろう。

 

 場は整った。定期的に彼女達の動向を監視し続け、父親からの連絡で無垢が来る日程も決まる。彼らは一生、彼女に感謝する事になるだろう。そして藤浦 ヒナタは一生、後悔する事になるかもしれない。何故なら、指定した場所に無垢が来たら最後。二度と藤浦 ヒナタの前には現れなくなるから。彼女だけでは無い。無垢を知る者達もまた、会う事は出来ない。……そう、藤浦 ヒナタとその家族は無垢を売ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 指定した建物の数部屋は私の家が管理する空き部屋だった。そこに様々な機材や道具を搬入して、それっぽい環境を作り上げる。そして私はその部屋を別の部屋からカメラ越しに監視していた。既に2人の女性が部屋の中で準備をしている。彼女達は私が自ら雇ったある事に関するスペシャリスト。

 

「っ! 来たのね」

 

 入り口に居た者から連絡が来る。無垢が来たら彼女達の居る部屋へ通す様に指示を出してあった事で、仕事を済ませたその者はもう必要ない。自由にしていいと伝えた上で、私はカメラ越しに部屋を眺める。……やがてノックの音が響き、中に居た2人が同時に入室を許可した事で無垢が部屋へと入って来た。

 

「……」

 

 喉が渇く。私は久しぶりに緊張していた。普段私は何かの行事があったとしても、緊張する事は無い。人の前へ立つのは慣れているからだ。強いて挙げるとするならば、パパと一緒に過ごす時間だろう。そんな私が手汗を流して冷や汗も流し、画面越しに映る無垢の姿を確認する。

 

『佐伯 無垢さんでよろしいですね?』

 

 女の質問に無垢は頷いた。そして持っていた荷物を部屋にあった籠へ預ける様に言われた無垢は、そのまま続けて指示を受ける。まず最初に彼女がする事は、入浴だ。別の部屋へ連れて行かれた彼女はこの後、用意したお風呂へ浸かってもらう。カメラを切り替えて見える様になった別の部屋。そこにはバスタブがあり、中には湯が張られている。既に冷めているその湯だが、先程まで暖かかったせいで僅かにカメラは曇っていた。

 

『こちらに着替えて、湯にお浸かりください』

 

『……』

 

 渡された白い無地の三角ビキニを手渡され、更衣室へ押し込まれた無垢はそれを眺めてから言われた通りに着替えを始める。そしてその姿もバッチリと私の見るカメラには映っていた。同じ女であり、子供の身体とも言える無垢の裸。だがそれを見る私の呼吸は何時の間にか荒くなっていた。自分でもよく分かる。興奮しているのだと。

 

 水着に着替えた無垢が更衣室から出ると、そのまま湯へ導かれる。無垢は最初、手で温度を確かめてからそのまま足からゆっくりと浸かり始めた。そして肩までしっかりと浸かる様に指示をされて、言われた通りに浸かり始める。特に女たちが何かをする訳では無い。ただお湯に浸かるだけの時間だが、当然これにも意味がある。

 

 今無垢が入っているお湯は、ただのお湯では無い。湯には薄い媚薬が混ぜてあり、これは時間を掛けて全身へそれを染み込ませる為の入浴。冷めて温(ぬる)くなった湯の中で自分が何をされているのかも分からないまま入り続ける無垢は、時間が経つにつれて徐々に呼吸を荒げ始めていった。

 

『そろそろ出てください。出たら此方で身体を拭いて、施術室へお戻りください。荷物を置いたあの部屋です』

 

『…………っ!』

 

 お湯から出た無垢が差し出されたタオルで身体を拭こうとして、自分の身体に起きた変化を察した様に見える。ぎこちない動作で身体を拭いて水気を拭った彼女は言われた通りに元の部屋へ。すると残っていた女が次は指示を出す。

 

『そこの施術台へ横になってお待ちください』

 

 言われた無垢は指示通りに部屋にあった施術台へ。やがてバスタブの部屋に居た女も戻って来ると、2人は薬瓶を無垢の横になるベッドの傍にあった台へ運び始める。……そして準備が整った時、女たちは無垢へ告げた。

 

『それではこれから、施術を始めます』

 

 お湯が準備だった様に、これから始まる事もまだ私へのお膳立てでしか無い。だが無垢からすればそんな事は関係ない事。2人の女が自分の身体を触り始めた事で、戸惑いながらも受け入れるしか無い無垢の姿がカメラの中にはあった。




常時掲載

【Fantia】にて、オリジナルの小説を投稿しています。
また、一部二次創作の先行公開や没作の公開もしています。
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