※この作品はR-18です。

【完結】色無き少女と深紅の乙女達   作:ウルハーツ

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第2章 後輩少女・桃田 みここ
第0話 導入


 あたしの名前は桃田 みここ。全国レベルの腕前を持つテニスプレイヤーで、部活でも当然あたしが一番。そのせいか同じ部活の子達と戦っても何時だって物足りないのが悩み。だって目を瞑っててもボールの軌道が分かるし、相手が何処に居てどんな風に構えてるのかも予測出来ちゃうんだもん。

 

「はぁ……先輩とイチャイチャしたいなぁ~」

 

 だけどあたしを悩ませてるのは何もテニスの事だけじゃ無い。

 

 その人と出会ったのは今通っている学校の入学式の日。新入生だったあたしは思ったよりも早くついてしまって、まだ準備をしている先輩達の姿を眺める事になってしまった。その時はもっとゆっくり来れば良かったと少し後悔していたけど、今になって思えばあの時遅くに行っていたら先輩と出会えなかったかも知れない。

 

 佐伯 無垢先輩。あたしより1つ上の2年生で、生まれつき声が出ないらしい。だけどそんな事を知らないあたしはただ、入学式の準備をする先輩を見掛けて気になってしまった。別に当時は特別な気持ちなんて全然無かった。ただ少し目立つ先輩の姿を見て興味を持っただけ。真っ白な髪をしたあたしよりちょっと小さな可愛い先輩なんて、目立たない方が不自然だと思う。まぁ髪の色の話をしたら黒や茶、それにあたしみたいな桃色だって居るから切りが無いんだけど。

 

 とにかく、あたしはその時見つけた佐伯先輩が気になって自然と話し掛けてしまっていた。コミュ力って奴ならそこそこ自信があったけど、最初話し掛けても無表情で無言だった佐伯先輩に戸惑ってしまったのはちょっと恥ずかしい。少しして現れた藤浦 ヒナタ先輩に佐伯先輩が喋れない事を聞いて、しかも普段会話に使っているメモ帳を忘れてしまったって事も教えてもらって安心したけど。

 

 佐伯先輩が担当していた場所は殆ど終わりだったらしくて、早く来てしまったから時間を持て余しているとあたしが話した事で、佐伯先輩が時間になるまで一緒に居てくれる事になった。先輩が話せないから、一緒に話すと言うよりも話し相手になってくれたって感じだったけど。でも先輩との短い時間は間違い無く、テニスの時とは似た様で違う楽しい時間と言えた。

 

『実はあたし、テニスでは全国に行けるレベルなんですよ!』

 

『……』

 

 あたしが胸を張れる事。だけどそれを言っても殆どの人が面倒そうだったり嫌な顔をしたりで、真面に聞いてくれない。だけど先輩だけはしっかり聞いてくれた。凄いって、褒めてくれた。家族以外で褒めてくれる人の大概がお世辞だったりその場凌ぎ。でも先輩は本当に心からあたしを認めてくれる。……それが堪らなく嬉しかった。

 

『佐伯先輩!』

 

『先ぱぁぁい!』

 

『せ~んぱいっ!』

 

「あはは……あたし、先輩の事呼んでばっかだなぁ」

 

 気付けばあたしは先輩にばっかり話し掛けている。テニス部に入ってもそこの先輩達は全員あたしより弱くて、だけどあたしに負けた事が悔しいのか馬鹿みたいな意地悪ばかり。まぁ証拠を見つけては顧問の先生にチクって二度と意地悪出来ない様にしてるけど。全国レベルの腕前を持つあたしを学校としても手放したくないみたいで、証拠もあるから大体は停学処分にされる。中には部活から退部させられる人も居たけど、自業自得って奴。

 

「はぁ~……あれ? ……先、輩?」

 

 もう今のあたしは1日1回、先輩に会わないと心が落ち着かない。だけど今日は会えなくて、帰宅する身体からは自然と力が抜けてしまっていた。でもそんな時、あたしは見覚えのある後ろ姿を目にする。それは間違い無く佐伯先輩のもので、だけど先輩の隣に立っているのはあたしの知らない人だった。ちょっと露出の多い服を着た女の人。ヒナタ先輩でも、のぞみ先輩でも無い。もしかしてあれが噂に聞くお姉さん? 話に聞いてたのと大分違う気がするけど……。

 

「ふふっ」

 

「っ!」

 

「……ぇ」

 

 考えていたあたしはその後の光景に訳が分からなくなってしまった。だって、隣にいた女の人が突然先輩と手を繋ぎ始めたから。でも明らかにおかしいのは、それをされた先輩が女の人から顔を背けた事。照れてるって言うよりも、嫌がってる様に見える。そうあって欲しいって気持ちも確かにあるけど、間違い無い。一体どうして? なんで嫌なら先輩は抵抗しないの? そもそも、あの人は先輩の何?

 

「……っ! あれは……」

 

 先輩と手を無理矢理繋いだ女の人を観察していたら、その人が繋いだ手と反対の手に何かを持っているのに気付いた。そして、それはあたしには見覚えのある物。

 

 それから少しの間、2人を尾行する事にしたあたしはラブホテルへ連れ込まれる先輩を見てしまう。首を横に振って嫌がっているのに、その足は迷いなく建物の中へ入って行く姿を見てあたしは確信した。もうこれ以上、追い掛ける事は出来ない。先輩が心配だけど……今のあたしには何も出来ない。

 

 急いで家へ帰ったあたしは後日捨てるつもりで集めてあったゴミの袋を漁る。そしてそこから見つけ出したのは、1台のスマホ。

 

 以前、会った事も無い知らない女性に話し掛けられた事があった。そして何の説明もされずにこのスマホを強引に渡されて、何時の間にかその人は消えてしまっていた。『ちょっとした力のあるスマホ』と言われたものの、余りにも胡散臭かったから即捨てたんだけど……あの時先輩の隣に居た女の人が持っていたのは、間違い無くこれだった。

 

「……」

 

 起動したら取り返しのつかない事になる気がして、緊張してしまう。でもあたしは意を決してスマホの電源を入れた。見慣れたホーム画面。そして見た事も無い『遠隔操作』っていうアプリ。もしかして、これで先輩を……?

 

「あ、写真が必要なんだ。確か……あったあった」

 

 もしこのアプリが本物なら、あたしも先輩を操る事が出来るかも知れない。そう思ってアプリを起動した時、その使用方法に写真が必要だと分かった。幸いにもアタシは普段の学校生活で佐伯先輩を何度か写真に納めた事がある。家でも見える様に……したくなった時、おかずに出来る様に。推奨されていた全身の写真も、ある。あたしは躊躇する事も無く、私生活で使っているスマホから佐伯先輩の全身が映った写真をそのスマホへ転送する。

 

「これで、きっと……待っててね先輩。必ず解放してあげる」

 

 誰とも知らない人に先輩は渡さない。だって先輩は……あたしのモノになる人だから。




常時掲載

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