嗜虐西遊記-白象宮《足癬》ver【投稿終了】 作:ドン・ドナシアン
「い、意地悪はやめて、小白香──。あなたに無断で、宝玄仙を金凰大王単独のものにするという兄さまの申し出に同意して申し訳なかったわよ──。で、でも、それがなんだというのよ──。その代わりに急遽、沙那という宝玄仙の供の女を呼んだわ。あ、あと、あなたが気に入りそうな人間族の童女も……。あ、ああ……。ま、股が痒い──。もう、助けて──」
「痒くても我慢するのじゃな、母者──。母者は、鬼も泣かすと称された二大王こと、白象魔王であろう。こんなわらわの与える痒み責めなど、涼しい顔で耐えて、わらわに王者としての見本を見せてもらわねば困るのう」
小白香はうそぶいた。
「だ、だって、我慢できないのよ──。だ、だったら、道術を解放してよ──。せ、せめて、もう、この下着を脱がして──。こ、この靴も──」
白象は悲鳴のような声をあげた。
誰も知らないことだが、小白香は、母親の白象に、自分の身体に痒みを感じると、その場所を自分の手で触れなくなる呪いの術をかけっぱなしにしている。
普段の生活には支障はないが、いまのように掻痒感を与えられてしまうと、たちまちに白象は、その身体の場所の近傍を手で触れなくなる。
だから、股間に痒みが襲っているいまは、自分で下着を脱ぎ捨てることもできないのだ。
それは靴も同じであるが、これはただの靴ではない。
足癬奴隷用として、小白香の強烈な道術がかかっている霊具の靴だ。
これを履かされると、絶対に小白香の道術なしでは脱げなくなる。
そして、道術で完全に足に密着し、足の指さえも靴の中で動かすことができなくして、あらゆる内外からの刺激を遮断してしまうのだ。
痒みという刺激を例外として……。
しかし、それはこの靴の恐ろしさではない。
この靴はもうひとつの特徴がある。
それこそが、この靴を履かされたが最後、この白象さえも、実の娘の小白香の奴隷に堕とされることになった恐怖の効果なのだ。
この靴の真の恐ろしさは、この靴の中が、小白香の操る足白癬病の苗床になっているということだ。
白象には、その靴を素足に履かせている。
足白癬病に足が侵されると、まずは皮膚に亀裂が入り、やがてそれがふやけて、強烈な痒みを発生させる汁が発生するようになる。
死に至ることはほとんどないが、一度その病にかかると、延々と終わることのない強烈な痒みが続く。
小白香は、この足癬病の苗床にした靴を『足癬靴』と呼んでいたが、この靴を履くと、わずか一日で重度の足癬の病に侵されて、足の裏が強烈な痒みに襲われるのだ。
だが、この靴は道術で脱ぐことができず、足の指を擦り合わせて痒みを癒すこともできない。
しかも、その痒みは一日ごとに強くなっていく。
小白香の開発した足癬の病の種は、侵された者を絶対に痒みに慣れさせることなどない。
これを履かされたが最後、どんな強靭な精神の持ち主でも、耐えられない足の痒みにのたうち回ってしまう。
絶対に最後には屈服する。
そして、その痒みを癒してもらうために、どんなものでも犠牲にしようとする。
そうやって、小白香の奴隷に成り下がるのだ。
実際に、小白香は、この足癬の病を道術として操ることで、母親の白象を罠にかけて陥れ、白象宮の事実上の支配権を奪ってやった。
小白香が、痒みを操る道術を手に入れるきっかけは、幼い時期の特殊な執着によるものだった。
最初は、単なる快楽に対する興味だ。
好奇心といってもいい。
いまにして思うと、あれこそが小白香が覚えた最初の自慰行為だったのかもしれない。
幼いころから小白香は、なぜか痒みというものに興味があった。
痒みが好きなのではなく、痒みが癒されるときの気持ちよさが大好きだったのだ。
しかし、その気持ちよさを味わうには、長く強烈な痒みを味わい続ける必要もある。
耐えられない痒みの向こう側にある快感……。
それは幼かった小白香をなぜか夢中にさせた。
小白香が『痒み』の探究に夢中になりだしたのは、まだ五歳くらいの頃だったと思う。
痒みを得るためにわざと虫に刺されたり、草に肌をかぶれさせたりするようになった。
最初にそれをやったときには、乳母が見つけ、驚いて止めさせた。
それ以来、小白香は、虫や草などの小白香の肌を侵す可能性のあるすべてのものから遠ざけられてしまった。
だが、痒みの快楽を取りあげられたことによって、小白香の痒みへの渇望は一層強いものになった。
やがて、小白香は、取りあげられた虫刺されや草のかぶれに代わる、新しい痒みの手段を見つけた。
それが「
白象宮の中にある図書庫の中で、古今東西の痒みに関する知識を集めるうちに、小白香は、ある書物から足白癬という病のことを知った。
その書物には、足癬病の症状について、死にまさる痒みの苦しみと記してあった。
それはまさに小白香が探し求めているもののような気がした。
それから、小白香は、さらにほかの書物を調べ、足癬病になる方法を得て、さっそく自分自身が、実際に足癬の病になってみることにした。
それは難しいことではなかった。
小白香は、書物などで得た知識ともとに、足の裏を不潔で湿った状態に保ち、できるだけ同じ革製の靴を長期間身に着けるようにした。
もちろん、靴を履くときは素足だ。
そうしているうちに、いつの間にか足の裏が侵されて、強烈な痒みが生じてきた。
それが小白香と足癬病の出会いだった。
足癬病の素晴らしいのは、虫や草やあるいは、山芋などの痒み成分の材料がなくても、痒みのために肌を侵すことができることだ。
小白香のおかしな性癖については、母者の白象や白象があてがった乳母たちも知り抜いていたので、小白香が自分の肌をそういうもので侵させて遊ぶことがないように、一切の痒みの原因になりそうなものを、小白香は、身の回りから取りあげられていたのだ。
かくして、小白香のひそかな足癬の研究が始まった。研究の材料は、自分の足だ。
八歳のときだったと思う。
同時に、この時期に小白香の道術は急激に成長した。
それは自分でも驚くほどであり、母者であって三魔王のひとりに数えられる白象に匹敵する霊気が集められるようになり、さまざまな道術が、急に遣えるようになったのだ。
その道術は、足癬病の探求に非常に役にたった。
まずは、かぶれたり、腫れたりした肌を簡単に道術で治癒したり、隠すこともできるようになったので、自分の肌をひそかに足癬に侵させつつも、見つかりそうになると、それを隠すことが簡単にできた。
それはまさに、『治療術』だったのだが、まだ八歳の小白香が、『治療術』を駆使するなど途方もないことだったようだ。
しかし、痒みの探求をしていることを隠したい小白香は、まだ幼い自分が『治療術』を遣えるほどの道術力があることを誰にも教えなかった。
それどころか、ほかのどんな道術もうまく扱えないように振る舞った。
小白香の霊気は、自分でも途方もないと思った自分の霊気を隠すこともできたのだ。
それはひとえに、痒みの快感を追い求めるためだ。
霊気が高く、道術力に秀でいていることがばれれば、それをおかしなことに遣っていることがわかるだろうと思った。
そうやって、小白香の足癬病の探求は続いた。
誰にも知られることなく……。
やがて、小白香には、足癬病とは、肌にできる“かび”だということがわかった。
湿った場所に放置していた食べ物などが、よくかびに汚染されていることがある。
あれと同じなのだ。
つまり、足癬病の原因は、かびと同じような風に混じる見えない種なのだ。
それが湿った肌で育てられて、皮膚を侵し、皮膚自体を栄養にして繁殖して、強烈な痒みを発生させるのだ。
それがわかってしまえば、あとは難しいことではなかった。
道術で足癬病の原因となる微小の種の成長や培養を制御してやればいい。
小白香が、足癬病を操ることが道術でできるようになるまでに、それほどの時間はかからなかった。
小白香が、足癬の病を完全に操ることができるようになったのは、小白香が足癬病を発見してから二年が経った十歳のときだ。
いまから二年前のことだ。
そして、小白香と白象の関係が変わったのも、その十歳のときだった。
それ以前は、この白象の気儘と自分勝手さは、彼女の部下や離宮に飼う女奴隷たちばかりではなく、娘の小白香にも向けられていた。
特に、白象の持ち前の嗜虐癖については、周りの者を閉口させるほど激しく、度を越したものだった。
そして、あのとき、事もあろうに、白象はわずか十歳の小白香の破瓜を伯父の
そのときの白象の行為に、金凰魔王がどれだけ関わっていたかはわからない。
しかし、小白香は、その企みを事前に知って激怒した。
だから、母親の白象を逆に道術で捕え、小白香の道術の支配に逆らえない性奴隷のような立場にしてやったのだ。
わずか十歳ではあるが、すでに小白香の道術は、三魔王のひとりにして、実の母親の白象を遥かに上回っていた。
だが、それをひた隠しにしていたので、母親の白象でさえも、その事実を知らなかったのだ。
小白香の真の道術力については、いまでも白象以外の誰も知らないことだ。
そのとき、白象を陥れたときの罠もこの足癬病だった。
編み上げの靴を準備し、その靴の中を足白癬の苗床のような状態にして、母親の白象を騙して履かせたのだ。
もちろん、解錠の難しい『道術錠』をその編み上げ靴に仕掛けた。
靴が脱げなくなったとき、白象は、それが小白香の道術だということはすぐにわかったようだったが、それが自分の道術で破れないことに激しい当惑と焦燥に陥った。
激怒した白象は、小白香を怒鳴りあげて、道術を解除するように命令したが、小白香はそれを無視した。
そして、その『足癬靴』によって、たったひと晩で白象の足の裏を重症の足癬病にしてやった。
小白香と異なり、女魔王の白象は、痒み責めに対する耐性が皆無だった。
足の裏を激しい痒みに襲われたままでは、白象にはうまく道術を刻むことができなくなり、白象は簡単に小白香の道術の支配下に陥った。
小白香は、実の母親の白象から道術を奪ってやったのだ。
道術を奪った白象を小白香は徹底的な痒み責めの拷問にかけた。
もちろん、それは拷問だけのことではない。
母親の白象に、小白香は、あの壮絶な痒みの向こう側にある途方もない快感を教えたのだ。
それを行うために、小白香は、白象を奴隷宮と称されていた離宮に一箇月のあいだ監禁した。
気儘な白象が、一時的に政務を放棄して、離宮に籠ることは珍しいことではなかったので、それだけの期間、離宮に閉じ込めても、宰相以下で怪しむ者はなかった。
また、離宮にもいる召使いや家人や衛兵は、小白香の強力な道術で操り、離宮の中で起きていることについて、外に漏らすことができないようにした。
そうやって、一箇月間がすぎた。
その間、小白香は、白象に強烈な痒み責めを与え続けた。
そして、白象は完全に小白香に屈伏した。
白象の道術を完全に支配し、小白香が解放しなければ、道術を遣うことができないようにもしてやった。
それ以来、小白香は、こうやって実の母親である白象の霊気を支配し、白象に小白香による痒み調教を受けさせている。
小白香は、母親であり、三魔王のひとりである白象を支配する立場になったのだ。
それから二年……。
白象は完全に小白香の痒み奴隷のひとりだ。
すでに娘に堕とされて、痒み奴隷として調教されているという事実を白象自身が兄の金凰魔王あたりに打ち明けて、助けを求めでもすれば事情も変わるかもしれないが、自意識の高い白象が自分からそんな恥を兄弟に晒すわけがない。
この二年、小白香は、表向きには、白象にこれまでと変わらない気儘で冷酷な女魔王として振る舞わせつつ、実際は、陰で調教を続けて、被虐の性癖を剝き出しにしてやった。
その結果、白象は、すっかりと小白香の施す嗜虐の虜になってしまった。いまでは、娘に調教されるという狂おしいほどの屈辱と苦痛が、途方のない快感と悦びにもなっているはずだ。
もう白象には、この関係を崩そうという性根も消えてしまっているに違いない。
「ね、ねえ、小白果、後生だから、股を掻きむしらせて──。靴を脱がせて、足を掻かせてよ。あ、足の指のあいだが死にそうに痒いのよ──」
「母者だけが痒いのではないわ。わらわも痒い。お互いに我慢しようではないか……」
小白果も自分のサンダルを床に擦りながら応じた。
こっちだって、最後に足を掻いてから、一日以上は経っている。
このサンダルも霊具だ。うっかりと小白果が足をなにかで擦ってしまい、限界点に達する以前に足に刺激を与えないように、両足を小さな結界に包ませている。
いまも、骨まで染みるような痒みが足の裏や足の指から爆発している。
「だ、だって……」
白象は泣くような声をあげている。
「母者、まあ、我慢はするもんじゃ。後で、じっくりと満足させてやるからな」
小白香は、ほんの少しだけ股間の触手を動かしてやった。
「うっ」
白象が電撃にでも当てられたように身体を震わせた。
しかし、すぐに小白香はその動きを静止させてしまった。
こんな少しの刺激だけでは、却って掻痒感が拡大するだけだ。白象はつらいに違いない。
「くううっ……。そ、そんな、もっと──。もっとよ──。意地悪しないで、小白香──」
白象が呻き声のようなものをあげて身体を悶えさせた。
その白象の苦しみの姿を見ていると、少し意地悪をしたくなった。
これだけ痒みにうめく白象の前で、これ見よがしに足を掻いてやれば、どんな反応をするか知りたくなったのだ。
「それよりも、わらわも足が痒い──。衛士──。母者の次の謁見の前に、裏に待機させておる今日の当番奴隷を入れよ。足を掻かせる」
小白香は、故意に横の白象を無視するような態度で背後の衛士に声をかけた。
操り術によって虚ろな表情の衛士が裏に下がっていく。
そして、すぐに美しい宝石の装飾の下着だけを身につけた女奴隷がやってきた。
足癬奴隷の
もともとは、白象の筆頭護衛隊長であり、歳は二十五くらいのはずだ。犬族の美しい女だ。
しかし、二年前に、小白香が、白象から事実上の宮廷の支配権を取りあげたとき、ひとりだけその事実に気がつき、小賢しくも小白香を諌めようとしたので、小白香の足癬奴隷にしてやったのだ。
いまでは、あのときの白象に対する忠誠心など完全な消滅している。
小白香の足癬奴隷のひとりだ。
足癬奴隷の特徴は、足首から下を完全に覆っている編み上げの革紐の靴だ。
白象に履かせているものと同じであり、完全に足の裏に対する刺激を遮断してしまう。
これを履かされると、小白香の道術で靴を脱ぐことを許されるか、道術で刺激を与えられるしか、痒みの苦痛を癒す方法はなくなる。
「ま、参りました、小白香様──。ど、どうか、お慈悲を……わたくしの足にお慈悲をお与えください──」
新蓮が小白香の座る副座の前にひれ伏した。新蓮が“お慈悲”と言っているのは、小白香の気紛れで与える足の裏への刺激のことだ。
足癬奴隷たちは、小白香の道術によらなければ、足の裏の痒みが癒されないので、それを“お慈悲”と呼んでいる。
小白香の足癬奴隷は、いま十数名いるが、彼女たちは数日に一度与えられる小白香の“お慈悲”を競い合って奪い合う。
小白香の痒みをうまく癒せない足癬奴隷は、痒みを癒されることができずに、狂い死にするしかないからだ。
四六時中、足癬の痒みに襲われ続けて、ほとんどその痒みを癒す手段を与えられずに放置されることで、彼女たちはいつしか一切の思考力がなくなってしまい、もう、小白香に足を掻いてもらうことしか、考えられなくなっているのだ。
それが足癬奴隷の末路だ。
新蓮も、元の主人である白象には目もくれない。
いまや、新蓮には、小白香がすべてなのだ。
小白香の慈悲が欲しくて、必死の形相で小白香に血走った視線を向けている。
「……わらわの足の裏を掻け。気持ちがよければ、お前の足の裏に褒美をやろうぞ。だが、大したものでなければ、それきりだ。もしかしたら、もう、呼び出してやらんかもしれんぞ」
「そ、そんな……。一生懸命に務めますから──。お慈悲をお願いします。お慈悲を──」
小白香は、返事の代わりに自分が履いているサンダルを脱いで、まずは右足の裏を新蓮に突きつけた。
匂いを抑えていた霊具のサンダルを脱ぐことで、小白香の足から悪臭が漂い出した。
白癬の病の特有の匂いだ。
小白香の両方の足の裏は、足白癬の病によって、肌が魚の鱗のように表面がひび割れるとともに、そのひびのすべてから汁があちこちから滲み出て、その汁が強烈な匂いを発散している。
その悪臭が謁見の間に漂い出す。
悪質の足白癬の病に侵させている小白香の足の裏の痒みは、放っておけば発狂するほどの強烈なものになる。
だが、それが耐えられなくなったときに、足癬奴隷その足を掻かせることによって得られる快感は、本当にこの世のものとは思えないほどの気持ちよさなのだ。
その痒みが堪らなくなった足の裏を指で掻くことが、足癬奴隷の役目なのだ。
「掻かせていただきます──。ありがとうございます──」
新蓮は、小白香が突き出した右足の足首を自分の左腕に乗せて、右の人差し指で足の裏を爪で掻き始めた。
新蓮の手には、左右一本ずつの指しかない。
足癬奴隷の役目は、小白香の足を掻くことだ。
だから、人差し指以外の指は不要だ。従ってほかの指は切断してしまった。
「おおおっ……。き、気持ちいい……」
狂うような痒みが爪で引っ掛かれて癒される快感に、小白香の全身はがくがくと身体を震わせた。
この途方もない快感にまさるものはない。
この気持ちよさこそ、この世で最高の愉悦だ。
「そこ、そこ、そこだ。その足の指のあいだを掻きむしってくれ……。ほおおっ──。き、気持ちいい──。はあああっ」
新蓮の一本指の爪が足の指の股に食い込んで水泡を突き破る。
肌が破け、中から汁気が飛び出す……。
耐えられないほどに苦しかった痒みが消失する……。
目の前が白くなるほどの快感が全身を貫く……。
まるで飛翔しているようだ……。
これがあればいい……。
ほかにはなんにもいらない……。
小白香は心からそう思った。
だから、わざわざ自分の足を故意に足癬という病に侵してまで、この快感をむさぼっているのだ。
小白香は、しばらくの間、うなされたように身をよじっては、声をあげて新蓮の指を十二分にも味わい尽くした。
「なかなかのものだったぞ、新蓮……」
左右の足の裏をたっぷりと時間をかけて新蓮に掻かせると、小白香は奉仕の終わりを告げる言葉を新蓮にかけた。
役目が終わり、頭を床につけたままの新蓮の足に、小白香は激痛を与える道術をかけた。
小白香の足を掻く役割である足癬奴隷のすべてには、彼女たちの足の裏を足癬の病に侵させている。
足癬奴隷に掻かせることによって痒みを癒す小白香とは異なり、足癬奴隷自身が痒みを癒せるのは、小白香の慈悲で足の裏の痒みを癒してもらえる瞬間だけだ。
足癬奴隷たちは、小白香にその痒みが癒されることだけを目的にして、いまは、足癬宮と呼ばれることが多くなった離宮で生きているのだ。
「はひいいっ──。あ、ありがとうございます──ふぎいいっ──」
足の裏に走る激痛に、新蓮はまるで淫行で昇天したような声をあげて身体を震わせた。
「わ、わたしにもお願いよ、小白香──。わたしだって、もう三日も靴を履かされたままなのよ──。もう、痒くて狂いそうよ──。お願いよ──。その足癬奴隷を貸してよ」
新蓮が足癬の痒みから解放された悦びに打ち震えると、それを見守っていた白象が、耐えられなくなったかのように声をあげた。
新蓮が小白香の足癬奴隷の二号だとすれば、第一号は母者の白象だ。
小白香は、白象の足にも悪性の足癬の病に侵させ、ほかの足癬奴隷たちと同じように、刺激を封じる靴を履かせて、痒みの苦しさにどっぷりと浸からせてやっている。
小白香の慈悲によらなければ、足の裏の痒みから解放されないという点では、この白象魔王も哀れな足癬奴隷と同じ境遇なのだ。
もっとも、小白香は、さすがに魔王である白象については、小白香と同程度には痒みから解放させて、足の裏の痒みを癒させてはいる。
だが、この三日については、この白象にはまったく足の裏の刺激を与えてはいない。
その痒みについても、白象はもう狂いそうな苦しみを味わい続けているはずだ。
しかし、小白香は、その白象の訴えを黙殺した。
小白香が合図をすると、新蓮は小白香だけに一礼をして退出していく。
かつての主人である白象を見事なほどに無視したその割り切った新蓮の態度には、小白香も苦笑してしまう。
「ま、ま、待って──。ああっ──。も、もう、気が狂いそう──。痒みをほぐして──。わたしが悪かったと言っているじゃないの──」
白象が頭をかきむしった。
「……母者、これは罰だと申し渡したはずだ……。わらわに断わりもなく、三魔王合意とやらで、宝玄仙とかいう人間の美女の足を切断させたであろう。わらわは、人間族の美女が家畜になって、三魔王の持ち周りになると耳にして、その美女を足癬の病で狂わせるのを愉しみにしておったのだぞ──。それなのに、その足がないのでは、足癬の病にすることができぬではないか──」
小白香は言った。
「だ、だって、政事については、わたしの自由にしてもいいと言ったはずよ──。それに、宝玄仙という雌畜の扱いについては金凰の発案で……」
「黙るのじゃ、母者──。確かに、政事にはわらわは口を出さぬ──。しかし、この宮廷の奴隷については、すべてがわらわの管轄なのじゃ。だから、宝玄仙の扱いについては母者は、わらわに相談する必要があったのじゃ──。それを断わりもなく──。とにかく、そのことについては、わらわはまだ怒っておる。その怒りが収まるまで、しばらくは、母者の足の裏を癒してやる気にはなれん」
小白香ははっきりと言った。
白象の顔が哀れに歪んだ。
宝玄仙という人間族の道術遣いを魔法石の雌畜にしようという企てについては、小白香も事前に承知していた。人間族の中でも美女中の美女とも聞いていたし、かなりの気の強い女だという話だったから、その女の足の裏を足癬病にして、苦しめるのを愉しみにしていたのだ。
だが、その宝玄仙の脚は、獅駝の城郭とやらで、彼女を捕らえた叔父の青獅子によって、あっという間に切断されたらしい。
それを事前に知らされていなかった小白香は、激怒して白象をなじるとともに、白象を通じて、もう白象宮には宝玄仙は回さなくもよいと青獅子と金凰に告げさせた。
気儘な白象のいつもの我が儘ということになっているが、実は、小白香の怒りによるものだ。
魔法石は途方もなく白象宮の力を向上させるはずであり、そのための雌畜化の処置のことなので、奴隷の話ではなく、政事の範疇だと判断したと白象は言い訳をしたが、小白香には、そんなことはどうでもよかった。
白象が昔から兄の金凰魔王に弱く、なにか言えば、金凰魔王の機嫌を伺うように行動することを小白香は気がついていた。今回のことも、金凰魔王の強い申し出に逆らえずに、白象は宝玄仙の雌畜処置について、三魔王合意として同意したのだ。
しかし、小白香には、すっかりと小白香に屈伏してしまった白象が、金凰魔王が関与すると、小白香に断わることなく、あっさりと金凰に従ってしまうことが気に入らない。
それで今回は、罰として足の裏の癒しをしばらくとりあげて、白象を苦しめることにした。
これで金凰魔王と小白香とどちらに従うべきか、白象もわかるというものだ。
それにしても、どうして、あの白象は兄の金凰魔王にだけは頭があがらないだろうか。
いまの白象はともかく、かつての白象は、自分勝手で気が強く、かなりの我が儘だった。
それがなぜか金凰魔王にだけは、昔から言いなりに近かった。
そもそも、小白香が白象と立場を逆転することになったきっかけも、実の娘の小白香を金凰魔王に抱かせようとしたのが発端だ。
白象と金凰魔王のあいだには、兄妹であるということのほかに、なにかの事情でもあるのだろうか……?
そんなことを思ったりもした。
「そ、そのことなんだけど、小白香──。宝玄仙については悪かったと思っているわ。その代わりに、沙那という宝玄仙の供がこの白象宮にやってくるわ──。それに、青獅子からは、三魔王合意だと思っていた宝玄仙の処置について、わたしが不同意だったことを知らなかった侘びとして、獅駝の城郭から人間族の童女を一緒に送るとも言ってきたわ。それで堪忍してよ」
白象が媚を売るような口調で言った。
「人間族の童女?」
「そ、そうよ──。貴族の娘だそうよ。歳は十歳──。可愛い娘だということよ。あなたの足癬奴隷にすればいい。沙那だって、気の強さについては、宝玄仙以上だということらしいわよ──。それもあげる──。だから──」
白象が必死に訴えている。
眼の前で小白香が足の裏の痒みを癒し、足癬奴隷の新蓮も痒みをほぐすことを許された。
それで、三日間も痒みに耐え続けている苦しさを思い出してしまったのだろう。白象は必死の表情だ。
「へえ、人間族の貴族の娘? いいところの一族?」
「きょ、興味を持った?
白象が言った。
小白香は頷いた。
貴族の娘だということは、きっと足の裏はきれいに違いない。そのきれいな足の裏を足癬の病で汚してやれば、耐性のないその娘は泣き狂うに違いない。
おそらく、いい足癬奴隷になるだろう。
それに宝玄仙以上に気の強い女というのも面白そうだ。
そういう女が、小白香の痒み責めで牙を抜かれ、抵抗の気を失っていく様子を眺めるのは愉しいものだ。
考えてみれば、かつての白象がそうだった。
あの気の強かった母者の白象の道術を支配し、徹底的な痒み責めによって屈服させていく過程は本当に面白かった。
雪蘭に沙那か……。
確かに強い興味が湧いた。
それなら、調教の期間が制限される持ち周りの宝玄仙よりも、そのふたりの方がいいかもしれない。
「ふうん……。まあ、愉しそうじゃな。だったら、許してあげてもよいぞ、母者──。そのふたりをわらわが自由にしていいなら、足の裏を掻く足癬奴隷を母者にも貸してやろう──。気が済むまで痒みを癒すがよいぞ、母者」
小白香は言った。
白象が破顔した。
「だが、それは今日の謁見の予定がすべて終わってからじゃ──。まだ、その触手下着の責めは始まったばかりだしのう」
小白香は笑った。
「そ、そんな──」
白象が声をあげた、一瞬だが、白象はいまの苦しみから解放されることを想像したに違いない。
それがまだ先のこととわかり、白象は本当に悲痛な表情になった。
「その代わり、一時的にだが、下着越しに手を触れることを許してやるぞ。この場で、下袍を脱いでその上に膝立ちになるのじゃ。その恰好であれば、自慰をするように股間を指で触れられるようにしてやるぞ、母者」
白象は一瞬だけ顔を歪めたが、すぐに玉座からおりて、下袍の留め具を外して、下半身を下着だけの姿になると、下袍を床に敷いて、膝立ちになった。
本当にそんな格好で自慰をするとは思わなかったので、少しだけ小白香はびっくりした。
白象はすぐに、下着の上から自分の股間を激しく擦りだした。
「ああっ」
甲高い声をあげて白象が悶えだした。
それくらい、股間の痒みも切羽詰ったものだったのだろう。
「次の謁見者を入れよ──」
小白香は、意地悪く呼び出し係に声をかけた。
小白香の術にかけられている係の兵は、白象がなにをやっていてもそれを知覚はしない。
係は、小白香の指示によって、次の面会者の入室を促す掛け声をあげた。
白象が悲鳴をあげて、自慰を中断して床の下袍をはき直し出した。
あまりに慌てたので、うまく下袍に脚が入れられずに、白象は下袍を履きかけたまま、ころりと転がった。
その滑稽な姿に小白香は、腹を抱えて笑い出してしまった。