もしも、立花響がちょっぴりエッチだったら 作:レスリングマン
第一話
「こ、これは生殺し状態だよ〜〜」
人間というのは三つの大きな欲求には抗えなくなっているらしい。
それすなわち、睡眠欲、食欲……、そして性欲。
かつて私は死にかけたことがある。
それからだろうか。三大欲求に対する執着が強くなったのは――。
まず、ご飯をよく食べるようになった。ご飯をオカズにしてご飯を食べるくらいに。
同年代の女子でも私ほどよく食べる子はそうはいない。
そして、びっくりするくらい長時間寝るようになる。
ちょっとでも寝不足だと、授業中に補わないとならなくなり大変なのだ。
おかげで先生にしょっちゅう叱られるんだよね。えへへ……。
しかし、このあたりはまだ全然問題がない範囲内におさまっている。
問題は最後の一つ……性欲が強くなったことである。
リハビリを終えて暫くは凄惨なイジメみたいなことをされていて気付かなかったが、私の性欲はとんでもないことになっていた。
最近は理性で抑えようにも抑えられない。
一人で慰めることもあるが……それでも悶々とした気持ちを我慢出来なくなってしまいそうになる。
だって、誘惑が多いんだもん。それはもう、罰ゲームかって言うくらい。
――私は可愛い女の子が好きだ。唐突にこんな告白をしてしまって、ごめん。
これもつい先日自覚したことなんだけど。
そのせいで今……ちょっと困った状況なんだよね。
私は女子校であるリディアン音楽院の高等部へと入学したわけだけど……寮のルームメイトがまた可愛いんだ。
名前は小日向未来。私の親友にして幼馴染である。
黒髪で笑顔が似合う私の心に太陽のような温もりを与えてくれた
未来とは前々からよく戯れていたりしたのだが、ここのところハグとかすると彼女の陽だまりのような匂いにやられてムラムラするようになってしまう。
親友にそんな感情を持ってはイケナイと思えば思うほど、その背徳感が私の興奮をさらに高める悪循環に陥ってしまっていた。
そして、今日は本当にやってしまったと思っている。
「い、一緒に寝てみる? なーんて、ね」
「うん。いいよ。じゃあ、ちょっと詰めるね」
冗談で二段ベッドの下で一緒に寝ようみたいなことを口走った私だが……未来は何を思ったのかそれにオッケーした。
目の前には吐息が当たる範囲内に無防備な寝顔をさらす未来がいる。
――な、な、なんて可愛いんだろう。
これはもう、抱きしめるしかないのでは?
世の中にある可愛いという概念の集合体が未来だと言っても過言ではない。私はそう信じる。
「ちょ、ちょっとだけなら。事故で済ませられる……、よね?」
私は目をつむり寝たふりを決め込む。何かあっても寝惚けていたと言い訳が出来るように。
そして、ゆっくりと……、ゆっくりと自らの顔を未来に近付ける。
も、もう少しだ。あと、たったの3cmで未来のその薄いピンク色の唇に。
「すー、すー」
規則正しい未来の可愛らしい寝息が聞こえる。否、顔に当たる……。
思ったよりも遠い。
指二本分の距離がこんなにも遠いなんて。
ああ、未来……大好きだよ。私はイケナイ子になっちゃったけど、この気持ちは本物だ。
でも、あと僅かで……、あと僅かで……
「う、う〜ん……」
「――っ!?」
未来から声が漏れて私は動きをフリーズさせる。
これはまずい。
お、起きちゃう? 起きちゃうんじゃ……。
「ひ、響ぃ〜〜。んっ……、ちゅっ……」
「んっ……、んんっ……」
何ということでしょう。未来の顔が奇跡的に動いて、私の唇を奪う。
彼女の唇は思ったとおり柔らかく、思った以上に心地の良い感触だった。
――一瞬ですべてを持っていかれる……。
サキュバスというのは人間の性を喰らうというが、未来の唇にもその悪魔的なナニカが宿っているのかもしれない。
「んっ……、んんんっ……、んっ……」
暫くの間、夢中になって未来とのキスに没頭する私。
本能のままに唇に全神経を集中させて彼女を感じる。
ああ、我が生涯に一片の悔いなし。今ここで死んでも私は後悔しないだろう……。
「んっ……、ひ、響? そろそろ気が済んだ?」
「――っ!? み、未来? お、お、起きてたんだ……」
夢中になって、未来の唇を啄んでいたら彼女と暗いベッドの上で目が合った。あはは、人生でこんなにも気まずい瞬間は無かったかも。
――もう死んでしまいたい。
お母さん、お祖母ちゃん、ついでにお父さん……先立つ不幸をお許し下さい。
やっぱり、私……呪われてるのかな?
ようやく、冷静になった私はめちゃめちゃ後悔していた……。
「うん……。ごめんね。響……、実はずっと気付いてたの。その、響が私のことを時々……え、エッチな目で見てること……」
何それ……やっぱり死にたい。誰か私を殺して。頼むから。
ノイズの群にダイブしたい。
あの日、「生きるのを諦めないで」と言われて今日まで頑張ってきたけども、親友にこんなことを言われてしまった私は消し炭になりたい。
「未来……、ごめん。ごめんじゃ済まないのは分かってる。とりあえずベッドから出るね」
「ま、待って……響。その、響のことが嫌とかそんなんじゃないんだよ? わ、私はそのう。響にそんなふうに意識されて……、う、嬉しかったの」
「未来……」
えっと。これって、そのう。私は未来にゴミクズみたいな奴とかそういう目で見られてないってこと?
だって、私は未来のことを性欲の対象として見て……一緒に風呂に入ったあととか凄まじい勢いで自家発電するくらいのことをしてるというのに。
未来の裸だけでご飯何杯も食べれるくらいの性欲モンスターになっているというのに。
そんな私を受け入れてくれるの……?
「良いんだよ。響は、響の思うままに生きて。私はどんな響だって大好きなんだから」
「で、でも。私は本当に……。んっ……、んんっ……」
私がそれでもまだ未来への罪悪感が消えないと口にしようとすると、そんな私の唇が未来の唇によって塞がれる。
彼女の無償の愛が伝わってくる。そうか、彼女は私の陽だまり……
脳髄まで響く、甘い口づけの感覚。お互いの舌の粘液を交換すると、それだけで達してしまいそうな錯覚に陥る。
ダメだ……。おかしくなる。もう、後戻り出来ない。
自分で自分を制御できなくなることを自覚した瞬間であった――。
「んっ……、ちゅっ……、んんっ……、こ、これで少しは伝わったかな? 私の響への気持ち」
「未来……。やっぱり未来は私の陽だまりだ」
気付いたら涙が出ていた。ずっと受け入れてもらえると思ってなかったのに……受け入れてもらえた。
未来はいつもそうだ。私のことをこんなにもあっさりと……取り込んでしまう。
で、でも……。あんなにキスをしちゃうと……、私は――。
「響……、私も欲しくなっちゃった……。響のこと……。慰めてもらっても良い?」
耳元で私に息を吹きかけながら声をかける未来。
お、お、大人の女じゃないか。未来っていつからこんなにもエロい表情できるようになったの?
いや、私はとっくに高まってるから、そんな誘惑をされると――。
「んんんっ……、い、いきなりだね。そこから、触るんだ……」
「み、未来のココ……、凄いことになってる」
「だから言ったでしょ? 響が欲しくなってるって」
色々と凄いことになっている未来に本能の思うままに突撃する私。
何をしたのか具体的に言うなんて、そんな恥ずかしいことは出来ない。
簡単に言えばレスリングに近いことをしたのである。
大体、3時間くらい……。
永遠とお互いを求め合った。もう、全身で未来を感じるくらいに……。
だって、これっていつ終わるのか分からなくなったんだもん。
体力があり余っている自分に嫌気がする。
気付いたら、ベッドのシーツは確実に交換する必要性が出来ており、私と未来は汗だくで抱き合って深い眠りについていた――。
この日から私の中でとんでもないモノが目覚める。
そう、性欲大魔王が目覚めてしまったのだ。
―――――――――――
「はぁ、何でこんなことになったんだろう? やっぱり私、呪われてるのかな〜〜?」
シンフォギアという奇妙なものを身に纏うことが出来るようになってから……私の生活は一変した。
ノイズと戦う力を手に入れたからだ。
特異災害対策機動部二課という所に所属して、私は絶え間ない呼び出しに応対するような日々に苛まれるようになったのである。
しかも、未来には秘密で……。
この罪悪感は半端ないもので、私を悩ませた。
だが、それ以上に私を悩ませるのは……風鳴翼――私の先輩であり、憧れの人である。
翼さんはシンフォギア装者であり、私の命の恩人なんだよね。
だから、私は彼女のいるリディアン音楽院に入学することを决めた。翼さんにお礼を言うために。
しかし、そのう。恩人にこんな感情を抱くのは本当に不埒な感情だと思うんだけど……翼さんが性的過ぎて辛い。
ただでさえ、自家発電するときに思い浮かべるランキングで未来とトップ争いをしてるのに、そんな翼さんがシンフォギアみたいに露出度の高い格好で大股を開いてグルグル回ったりするものだから、私はそこに目が釘付けになっちゃうのである。
もう、その生足に頬ずりしたい衝動に駆られる私の身になって欲しいと言いたい。
とにかく、未来とは忙しくて中々甘えられないし、翼さんがこんなふうに私を悶々とさせるので、私の中の魔王が暴発寸前になっているのである。
しかも彼女はとてつもなく冷たい視線を私に送ったりする。
はっきりと言おう。
――翼さんみたいな美人からそんな目つきで睨まれるとゾクゾクするし、興奮もする!
これは性癖の中でも至ってノーマルなんじゃないかな〜。
少なくともマニアックではないよね。
翼さんみたいな人が曇り顔すると、それもそれで唆られるし……。
恐らく、私を守るために亡くなった奏さんのことを想って……彼女の纏っていたガングニールのシンフォギアを纏ってる私に苛つきを覚えてるんだろうけど。
翼さんが冷たくすれば、冷たくするほど、私の心はキュンキュンしている。
もう、翼さんに襲いかかりそうになるくらい……。
だから私は戦闘中でも、ブリーフィング中でも、暇さえあれば翼さんの方をずっと見ていた。
そんな私を鬱陶しいと思ったのか、ある日の夜……。
ついに翼さんは私に――。
「あなたと私、戦いましょうか?」
殺気を剥き出しにされてしまう。
しまったな。ジロジロと性的な目で見ていたことがバレていたみたいだ。
「あなたが私の戦い方をずっと観察しているのは分かっている。戦士としての自覚無き者だと決めてかかっていたけど、それは早とちりだったのかもしれない。だからこそ、あなたの覚悟が知りたい。アームドギアを構えなさい。何者をも貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば――胸の覚悟を構えてごらんなさい!」
長セリフを要約すると、翼さんは私のいやらしい視線を戦士として翼さんを研究していたのだと解釈したみたいだ。
何という好意的な解釈なんだろう。でも翼さんって確かに性的な知識に疎そうな感じもするもんなぁ。
でも、翼さんと戦うなんてこと――。
いや、待てよ。翼さんと戦うフリをすれば、これってもしかして翼さんに触りたい放題なのでは?
事故を装って、押し倒して唇が触れ合うなんてことも可能なのでは?
もう、最近はあらゆる感覚が研ぎ澄まされて、翼さんの汗の匂いまで嗅ぎ分けることが出来るようになるほど昂ぶってしまっているし……。
これはもう。あらゆることを発散するチャンスなのかもしれない。
「分かりました。翼さん、これから何かあっても事故だと思ってくれますね?」
「むっ……、その殺気……。やはり立花もまた武人というわけか。アームドギア無しでここまでとは。……無論です。私から仕掛けたのだから、何が起きても文句など言うはずがありません」
言質が取れてしまった。何があっても事故だと思ってくれるって。
俄然やる気になってきたよ。これで翼さんとイチャイチャすることも出来るかもしれない。
あー、もう駄目だ。彼女の刺すような視線に耐えきれない。
押し倒してしまっても良いなら……お言葉に甘えよう。
「――っ!? き、消えた!? いや、これは跳躍!? 一瞬で何て高さまで――!」
しまった。足に力が入って跳び過ぎた。
でも、この高さから翼さんを――。
「そんな動きに惑わされると思うな! 何っ!? いつの間に背後にッ!?」
空気を蹴って翼さんの後ろに回り込む。
そして、彼女を後ろからギュッと抱きしめた。
ああ、肌が触れ合うとどうしてこんなにも温かく癒やされるんだろう。
「ま、まさか、こんなにも早く捕まるとは。まだまだ修練が足らないということか。そして立花、あなたの覚悟も……。……ん? た、立花?」
「翼さん、翼さん……。あっ、これダメなやつだ……」
私は翼さんのうなじの香りを吸い込んで軽いトランス状態になっていた。
駄目だ……。これ、我慢出来ないや。
「わ、私の負け……」
「ごめんなさい。翼さん……。もう私、我慢出来ません」
「ああっ……! た、立花、何を――」
素早く前に回り込み彼女を押し倒す私。
翼さんは、思わぬ動きをした私に呆気に取られたのか困惑した表情を浮かべていた。
普段は強気な翼さんがこんな表情を浮かべるなんて……。
キュンとしちゃうよ……。
私の心は翼さんにがっしりとホールドされてしまっていた。
「翼さん……、ずっと憧れていました。あなたのことを考えるだけで私は、私は!」
「お、落ち着きなさい。か、顔が近い……! 立花の顔が……!」
私は翼さんのその凛々しくも美しい顔に吸い寄せられるように顔を近付ける。
翼さんは、私を受け入れる覚悟をしたのか目を瞑った。これは、行ってもいいんだよね……?
「はっ……!?」
しかし、小刻みに震えて涙を流す翼さんを見て、私はハッと我に帰る。
何をしてるんだ。私は……。
性欲に駆られて暴走するなんて……。
「ご、ごめんなさい!」
私はこの場から逃げた。
力いっぱい走って遠ざかった。
明日から翼さんに会うのが怖い。
絶対に避けられるし。一緒に戦うなんて絶対にしてくれないだろう。
私は自分の強欲さ加減を呪った……。
―――――――――――
「た、立花……。そのう、私はまだお前の気持ちに応えられないかもしれないけど……。久しぶりにドキドキした。今後ともよろしく頼む」
翌日、メディカルチェックをしたあとに……翼さんから飲み物を渡されてそんなことを言われた私。
これって、私の愚行は許されたのだろうか?
しかし、こんなにも性欲が強くてシンフォギア装者として正義のためにやっていけるのか甚だ疑問である――。
一応、R15の範囲内で収まっているはず。
健全な小説を目指しますので、よろしくお願いします。