/ぴるぐりっ! ~はちはち異界巡礼譚~ 日本語版
/摧一切善阿密哩多 胎蔵界編
/第一七夜 竜頭鰻尾
/第二錠
五メートルほど降りたところで、サンセットさんの足裏が闇を踏みました。いえ、それは闇ではありませんでした。のっぺりした一様な暗黒かと思われたそれは、夥しい量の黒い鰻だったのです。
サンセットさんの腕の太さほどはあろう鰻たちが、我先にと肉感的な脚に絡みついてきました。
サンセットさんがちょっぴり困ったように見上げてきました。
「あのう、ウルさん、どの方がトゥナさまなんでしょうかっ」
「全部ぢゃよ」
「えっ」
「切った数だけ、増えて再生なさるからのぅ」
「ええっ」
「ん……、聞いてた話と、ちがう」
「おや、そうであったかの? まぁヒュドラはそういうものぢゃし」
ウルさんは筵に座り、黒光りする尻尾をお腹に巻きつけました。
「切った頭それぞれがトゥナさまの肉体にも残って繋がっておるゆえ、地下から大地を通じて、トゥナさまは地上のウナギヤシそれぞれを自身の頭と見なして干渉あらせられる。そこからさらにエアを通して、トゥナさまはこの大地、この界そのものでもある。今わらわたちの前におわすは、トゥナさまの脳細胞のようなものに過ぎない――と知り合いの教授は言っておったかのぅ」
「なに言ってるか全然わからない……」
「ええと、ではどの御首をお慰めすればよいのでしょうかっ」
「率先して入ってくる、まだ切られていない若い頭だけでよいぞえ」
そうこうしているうちに、サンセットさんの甘ったるそうな褐色の素肌は、すっかり無数のトゥナさまに覆い尽くされ、鰻の絨毯に優しく引き倒されてしまいました。淫猥にまたぐら、腹、胸の間、腕にまとわりつき、しきりに粘液を塗りつけていきます。
サンセットさんはくすぐったそうに身をよじって笑いました。
「ふふっ、なんだかお肉のお風呂に入っているみたいですねっ」
サンセットさんが首筋に巻きついたトゥナさまを愛おしむ手つきでぬるりと撫であげているのを見て、ウルさんが嘆息します。
「ほぇ……、あの娘、とんでもない肝っ玉よのぅ……いったいなにものかえ」
「さぁ……、記憶がないらしいから」
(肝もないんだけど――)
と、はすのさんはこころのなかで付け加えます。
「それに、粘液も効いておられぬようぢゃし」
「粘液?」
「トゥナさまの体液には強壮媚薬作用があらっしゃってのぅ。処女でも背中をひと撫でされただけで、潮を噴いてぶっ倒れるほど強力なはずなのに……」
「ん……、初耳」
「おや、そうであったかの? まぁヒュドラはそういうものぢゃし、命にはかかわらぬし」
「そういえば、鰻の血も人間や眷属には毒でしたね――あ、この子ですねっ」
びちびち激しくほかの頭を押し退け、脚の間に潜りこもうとする活きのいい頭を、サンセットさんは難なく捕まえました。そのトゥナさまは暴れ狂い、サンセットさんの手中からすり抜け、再び秘めやかなる局部に特攻をかけますが、そのたびに易々とサンセットさんが掬い上げられ、いなされ、じゃれつくように弄ばれています。
ただしサンセットさんも単にかわしているだけではなく、さりげなく指先できゅっと軽く締めつけてみたり、撫でさすり、くすぐって、刺激を送り返しているようでした。
それがたまらなく絶妙に心地よいらしく、トゥナさまは半狂乱になって悶えています。
「なんと巧みな手つき……、勉強になるのぅ」
ウルさんは尾をぴちぴち、すっかりサンセットさんの手技に魅入っています。
(ぅ……、あつ……)
いつも同じように奉仕されている身としても、そのさまはいささか卑猥にすぎ、じっとり汗をかきはじめるはすのさん。
サンセットさんもいつしか無垢さを捨て、例の肉食獣モードに。
「ふふ……♥ トゥナさま、どうなさったんですか……♥ そんなにサンのなかに入りたいんですか……?♥」
むっちりした太ももで挟み込み、猫尾をもつれ合わさせ、逆にトゥナさまを拘束すると、フェザータッチで先っぽをかわいがりました。
「くす……♥ どうしちゃったんですか♥ 捕まっちゃったじゃないですか♥ もっとがんばらないと、サンのなかに入る前に――、手で――、太ももで――、尻尾で――、果ててしまいますよーぅ……♥」
「……っ」
高鳴る心臓にくらくら、生唾をごくりと飲み込むはすのさん。ウルさんも、自らの尻尾を噛み、おしりをもじもじしています。
「ぬむぅん……、えっちぢゃ……」
しかし異変はすぐに訪れました。トゥナさまの先端で自在に妖艶に一〇本の指を躍らせていたサンセットさんが、にわかにぴくんと華奢な肩を震わせ、お尻をもぞもぞさせました。
サンセットさんは責めの片手間に、やや焦った風に背後のトゥナさまを押し退けようとしています。
「……あのう、ウルさん、さっきから別の子が入ろうとして来ているようなんですけど……おしりにっ」
「ふぅむ、同時に二本など、前例がないのぅ。よっぽど気に入られたか、煽りすぎたか、あるいは毒が効いておられぬほどに、悦ばせようとしてくりゃっておるのか――」
「なる、ほどっ。まだ、サンの番は、終わってないっ、ですけどっ、意外に、せっかちっ、さん、なんですね……♥ わかりました、トゥナさま、ではそろそろ、サンと――繋がりましょうか……♥」
猫尾の束縛をほどき、そっと脚を開き気味にするサンセットさん。すかさず、トゥナさまが幼い陰唇めがけて飛び込みます。
「ん……♥ くすくす……♥ いらっしゃいませ……♥」
にゅるんと抵抗なく体内に侵入され、サンセットさんは痛がる気配もなく、容姿に似合わぬ、艶っぽい声で歓迎しました。
間をおかず、じゅぶじゅぶと出入りをはじめるトゥナさまを、サンセットさんは余裕たっぷりに愉しんでいるといったていで見下ろしています。
「ん……♥ あは♥ すごいですね……♥ トゥナさま、サンのなかで、びちびち♥ がつがつ♥ 暴れちゃってます……♥ サンのなか、そんなにいいですかーぁ……?♥」
抽挿はトゥナさまのなすがままにさせつつも、その長い胴体を太ももでむにゅっと挟んだり、背につつつと指を這わせたり、尾で腹をさわさわくすぐったり、サンセットさんは刺激を与えるのに余念がありません。若いトゥナさまはその首全体が、最高に具合の良い肉壺に包まれているかのごとく、天上の悦楽を堪能しているに間違いないでしょう。
相手の肉体をめくるめく性感に導くことにかけて、サンセットさんは手馴れているというより、もはや天賦の才の域と言っても過言ではないのでしょうね。
ことがはじまるまでは、仲間が身体を捧げる場面をそうまじまじと見つめるものではない――などと真面目に考えていたはすのさんは、前屈みになってサンセットさんの痴態から目を離せないでいました。
(うぅぅ……サン、ちいさいのに、あんなに……おっきくて……ながいのが……でたり、はいったり……うぅ)
耳まで真紅に染め、見守っているだけにもかかわらず、サンセットさんより、その場にいるだれよりも興奮してしまっていました。
そうこうしているうちに、だしぬけにびくんびくんとトゥナさまがのたうち、ピストン運動を停止。
「あ♥ くす……♥ イッちゃったみたいですね……♥ えらいえらい……♥」
完全に手玉を取り、ぴくぴく余韻に浸るトゥナさまの背を優しく撫でつつ、サンセットさんがウルさんを仰ぎ見ました。
「ウルさん、トゥナさまは何回ぐらい導いてさしあげればいいんでしょうかっ」
「ふぇっ!?」
陶然とした面持ちで尾を抱え込むようにしていたウルさんは、ぴんと背筋と側頭部の鰓を伸ばしました。はすのさんがかすかに嗅ぎとれる程度の、生ぬるい匂いを滲ませながら。
「え、えぇと、そうよの……、いつもなら五、六回ほどゆえ、あと一〇回ほど、かのぅ……そのうち力尽きて、とんと動かぬようになったら合図ぢゃ。わらわが飛び込んで、ちょっきんいたすからの」
ウルさんが濡れた手で釣り針をぽんと叩きました。いくら再生するとはいえ、界外のものが界神を手にかけるわけにはいかないため、断頭はウルさんのお役目です。
サンセットさんはこくんと頷きました。
「わかりましたっ。五〇、一〇〇は覚悟していましたけど、この調子であればお夕飯までに発散させきれそうですねっ」
溌剌とした頼もしい返事に、ウルさんは当惑します。
「あの娘、ほんになにものかえぇ?」
「さ、さぁ……?」
しかしサンセットさんのその展望は――やや浅慮だったと評せざるを得ないでしょう。
サンセットさんが、またぴくりと反応しました。膣内に収まったままのトゥナさまが回復するまでの間、別の頭が、お尻への侵略作戦を再開したようでした。
「ん、あの……っ、トゥナさま、そっちは、ちがいますからっ」
サンセットさんは必死に首根っこを押さえて阻止を図りますが、別の頭が尻尾の根元をきゅっと巻きつくやいなや――。
「にゃぅっ!?」
サンセットさんは、はすのさんがかつて耳にしたことのない小さな悲鳴を上げて、全身を突っ張らせました。いったい何事かと、はすのさんとウルさんが怪訝に思う間もなく、次いで――。
「っおぉぉうぅん――っ♥♥♥」
その隙をついて、ついに挿入を許してしまったサンセットさんが、熱い声を漏らしました。
「んっ! ぉふっ! っくぅ……、んんっ♥」
ぐねぐねとお尻の入口を掻きまわされ、お腹を抱えてぶるぶる震えて媚声を噛み殺すサンセットさん。
はすのさんがおそるおそる声をかけます。
「サン……? だいじょうぶ……?」
「……っ、へ、へっちゃら、です……っ! ぃ、痛くは、ない、ですから……っ、んっくぅ……っ! ぉっ、ぅっ♥ そん、な、前、まで……っ♥」
ぐっちょんぐっちょんと交互に前後の穴をほじくり返され、サンセットさんがたまらなそうに甘く喘ぎます。
「はっ♥ はっ♥ んっ♥ おっ♥ おぅっ♥ にゃぁあんっ♥」
初めて目にする、サンセットさんがみだりがましく感じ入る姿に、はすのさんは側頭部をしたたかに殴りつけられたよりも強烈な衝撃を受けていました。
(ぅ……っ、あつ……、くる、し……うぅ)
はすのさんに対し、絶対的な法悦を強いてきたサンセットさんがだれかに屈服することがあろうなど、夢にも思っていなかったからです。
「はぁあぁっ♥ ぅにゃっ♥ にゃぁっ♥ はっ♥ ぁはっ♥ ふーっ♥ ふふっ♥ はー……♥ あはぁ……♥♥」
しかしそれも束の間――サンセットさんは次第にもとの調子を取り戻しはじめるや、逆に愉しむように腰をくねらせました。
「くす……♥ くすくす……♥ さすがトゥナさま……♥ おじょうずなんですね……♥ サン、びっくりしちゃいましたよーぅ……♥ 前も、後ろもだなんて……♥ そんなに、サンと遊びたいんですか……♥ くすくす……♥ わかりました、そっちがそうくるなら……♥ サンだって本気、出しちゃいますね……♥」
今度はより奥まで迎え入れんと自ら下半身を浮かせ、揺するサンセットさん。たったそれだけで、二本のトゥナさまの動きは見るからにぎこちなく、たどたどしいものに。外からではわかりませんが、どうやら膣内の状態に変化があった模様です。
前のトゥナさまはむしろ懸命に抜け出そうとしてさえいましたが、粘膜の方が吸いつき、へばりついて離してくれないらしく、身もだえしています。
あっという間に形勢逆転。はすのさんはなんとなく、安堵の心地です。
(やっぱり……サンが負けるはず……ない――ん?)
と、眼下で繰り広げられる歓喜の狂宴に意識を奪われていたはすのさんは、やにわに現実に引き戻されました。
「っくぅ……、はっ、はっ、はっ……、んっ……」
隣から聞こえてくる、鼻にかかったようなかすかな吐息と、くちくちゃ粘液を掻きまわす音によって。
(ウル……!? もしかして……!?)
はすのさんの傍らでしゃがみ込んだウルさんは、己の股ぐらに手を突っ込み、どう見ても自慰にふけっていました。
「は……、はっ、は、ぅ、ぅんっ、ふ……っ」
幼い風貌のウルさんが汗で黒髪を額に張りつかせ、劣情に負けてひとり遊びに没頭するさまは、尋常ならざる昂揚をはすのさんにもたらし、平衡感覚を失わせるには、充分すぎました。
(うぅぅ……もう、はやく、おわって……!)
ウルさんから漂ってくる、ココナッツミルクのような凄まじく甘ったるい淫気にくらくらします。さきほどから一歩たりとも動いていないにもかかわらず、大粒の汗を浮かべ、はすのさんはただひたすらに祈りつづけました。
はたして、その願いが通じたのでしょうか(だれに、というのは野暮です)、幾度目かになる絶頂を迎えた二頭のトゥナさまが、ぐったり脱力しました。
サンセットさんがぺろりと舌をちらつかせました。
「くすくす……♥ 今度はたくさん頑張っていましたけど……♥ また、サンの勝ち、ですね……♥」
さすがサンセットさん、前々から並外れた性戯に違いないと感じていたはすのさんの思いは、確信へと変わっていました。よもや、界神まで手懐けてしまうとは――、と。
たしかにサンセットさんの技術は途方もなく卓越しています。きっとまひるさんにも匹敵すると、りんごさんですら認めることでしょう。ただしサンセットさんはあくまで、御業なき眷属――。対するトゥナさまは、何百年と女の子を悦ばせてきた実績と矜持と、御業があるのでした。
その変事は、誰の目にも歴然でした。なにせ、闇のなかでトゥナさまの体表面が、おもむろに淡く青白い光を放ちはじめたのですから、めしいるか、瞑していない限り、見落としようがありません。
ウルさんが真っ先に正気に戻り、反応しました。
「あ、まずい」
「……ん?」
「トゥナさまの――本気ぢゃ」
「あのう、いったいどういう――んに゛ゃっ!?」
ぱちん、と空気が爆ぜ燐光が膨らむとともに、唐突に、サンセットさんが尾っぽと爪先をぴんと伸ばして仰け反りました。
「あ゛っ! に゛っ! これ゛っ! ――っ! びりびりっ!?」
ぱちんぱちんと電光が弾けるたびに、がくがくと傍観している方が不安にさいなまれるほどのひくつき。
「――っ! ――っ! ――っ!」
声にならない声。
「サンっ!?」
思わずロープを引きそうになったはすのさんの目睫に、淡く光る巨大な釣り針が突きつけられました。
「ならぬ、はすの殿。まだお慰めは終わっておらぬゆえ」
「で、でも……っ!」
「トゥナさまも分別はあらっしゃるでの。痛めつけたりはせぬぞえ。負かされすぎて、ちびぃっとマナが傷つけられたほどに、ちびぃっとむきになりゃって、電気の御業を使いなさっただけのこと」
「で、電気って……」
「トゥナさまは雷鳴を司る神格と申したであろ?」
「ん……、かも」
「その電気を地中に流して、ウナギヤシを統べておられる。界全体を見守るために」
「デンキウナギみたい……」
「デンキウナギは鰻にあらずぢゃが、ともかく――トゥナさまにお慰めで御業を使わせるものが、わらわ以外にいようとは。サンセット殿、やはりただものでは……」
「っはぁぁあああっ♥♥♥」
そのトゥナさまの最大の寵愛――体内に淡い電気を流しこまれ、未知なる交合に目を白黒させるばかりだったサンセットさんの声色が、急変します。
「――捕まりゃった、かの」
「……つかまった?」
「一番良い具合を、ぢゃ。ここからは――快楽地獄ぞえ」
「んっ♥ んっ♥♥ んんん~~♥♥♥ こ、れ゛……♥ ら゛めっ♥ とめ゛てっ、くださっ♥♥ ~~♥♥♥」
お腹を抱えて、サンセットさんがもだえます。
「――っ♥♥ ――っ♥ これ゛……♥ イッてる゛の゛に゛……っ♥ からだがっ♥ かってに……♥ またイクっ……♥♥」
はすのさんはもちろん頭で理解していませんでしたが――。
サンセットさんの体内は、一様な機能性細胞で満たされています。その細胞ひとつひとつが万能かつ普遍であるため、サンセットさんには構造に由来する感覚の偏りというものがありません。要するに、どこでも同じように知覚するので、肉体的に感じやすいところがないのです(精神的理由を除けば、ですけども)。
それはいわゆる特定の性感帯が存在しないということを意味していますが、逆に言えば、ひとたびサンセットさんが気持ちよいと感じる性感さえ見つけてしまえば、それは全身のどこにでも有効だということです。
それゆえ、その性感を体内に直接たたきこまれ、総身で享受させられている今こそ、サンセットさんがもっとも性感に恭順している瞬間で――。
トゥナさまはさらにピストン運動を再開、ぴりぴり体内を内側から嬲りつつ首を突き入れ、引きずり出し、サンセットさんの押し広げられた陰唇からぷしゅぷしゅ透明な液体がしぶきを上げます。
「んに……っ♥♥ い゛ぅっ♥♥ ん゛ん゛ん゛~~っ♥♥♥ に゛ゃうん゛っ♥♥ ん゛っ、に゛ぃっ♥♥」
トゥナさまの本気はそれだけではありません。さらに、ダメ押しとばかりに胸やお腹、背中と身体じゅうのそこかしこに、別のトゥナさまたちがへばりついて、ぴりぴりぱちぱち全身電気責めにかかります。
「んはわぁああぁっ♥♥ ひぎゅっ♥ に゛ゃあ゛ぁんっ♥♥ っぐ♥ いっぐ♥♥」
サンセットさんらしからぬあられもない盛り声を聞いて、はすのさんは本能で察していました。
(サン……、本気で……、感じてるんだ――)
直後、得も言えぬぞくぞくが背筋を這いまわり、埋み火がごとく、腹腔でなにかがじわりと熱を持ったのを、はすのさんははっきりと実感していました。そして同時に、胸を焼き焦がすようなもどかしさと、いらだちも。
はすのさんの怒張は滾りきって着流しを押し上げ、秘裂はじっとり汗をかいています。
「ふ……っ♥ ん♥ ん……っ♥」
ウルさんが再び己を慰めるのに熱中しはじめたのを横目で確かめると、はすのさんは着流しのなかにそっと手を差し入れました。
「は……っ、はーっ、はぅ……」
付き人のはすのさんとウルさんがふたり揃ってそんなていでしたから――その瞬間に出遅れてしまったのでしょう。
「んに゛ぅっ♥♥ も゛ぉっ♥♥ だめ……っ♥♥♥ ~~♥♥♥ ――っ♥♥ ――っ♥♥♥」
ほどなくして、ひときわ大きく矮躯を跳ねさせ、サンセットさんが暴力的な享楽の極みに達します。それに引きずられたように、トゥナさまも無数の首をのたうちまわらせ、ほんの刹那、強くまばゆく輝き、弛緩しました――サンセットさんの首飾りに引っ掛かり、それを引きちぎりながら。
首飾りが転げ落ち、闇の底でむなしく硬い音を立てます。
「……ぁ」
サンセットさんを追いかけるようにして達する寸前だったはすのさんがそれに気づくや否や――どこからともなく頻闇のなかから女性の腕らしきものが幾本も、にゅにゅにゅっと伸びてきて、失神しているらしいサンセットさんの裸体に絡みつきました。そしてなんと――褐色の肌のその腕は、そのまま、どことも知れぬ深淵のなかにずぶずぶと引きずり込んでいくではありませんか。
「……ん!」
はすのさんは咄嗟に縄を引っ張りますが、それを見越していたかのように腕は縄を把握し、そのたおやかな指先で易々と切り裂いてみせました。
一切の躊躇なく、はすのさんは奈落に飛び込みました。
「げほ……! すごい、瘴気……」
粘液が揮発したのでしょうか、喉奥にこびりつく毒に噎せ返りつつ、トゥナさまたちの頭を踏みつけ、サンセットさんのところへ直行すると、謎の腕を振り払いかけたところで――突如として、腕たちはぱっと一斉にサンセットさんから離れました。
「……ん?」
どういうわけか、腕は素直にサンセットさんを返してくれるようでした。はすのさんは怪訝に思いつつも、奈落の入口に向かって声を張り上げました。
「――ウル!」
「……ほぇ……? なっ、そ、そなた、なにゆえそこに!?」
絶頂の余韻に浸りきっていたらしいウルさんは、はすのさんが闇のなかにいることを認めて激しく動転しています。
「受け取って」
それだけ言うと、はすのさんはサンセットさんを放り投げました。
「へ!? な、な……、ふぎゃ!」
狙い違わず、サンセットさんはウルさんの上に軟着陸。はすのさんはほっと一息、毒がまわりきる前に這い上がれそうな壁はないかと辺りを見回しかけ、しかし直後に殺到してきた例の腕で、視界が埋め尽くされました。
そして有無を言わさず――、真に苦痛なき全き暗黒へ、押し流されたのでした。