/ぴるぐりっ! ~はちはち異界巡礼譚~ 日本語版
/摧一切善阿密哩多 胎蔵界編
/第五夜 鉄樹開鹿
/第四錠
「やー、悪いっすね。見送りもできなくて」
横たわるギンバイカの毛並を整えてやりながら、泉に浸かったままライラさんが謝りました。
「いーっていーって。ってかふたりとも、ほんとにだいじょーぶなの?」
辛くも牛鬼を討伐したものの、ライラさんは全身大火傷を負い、ギンバイカは角を片方へし折られたためか著しく衰弱し、一時はどうなるかと焦った御同行。
例の洞窟に取って返して泉に浸したところ、ライラさんの負傷の方はひとまず回復の兆しをみせていましたが、ギンバイカの角がにょきにょき生えてくるような雰囲気はありません。峠は通り越したようですが、依然、弱々しく頭を伏せています。
エルシンシアさんも言葉にはしませんが、気遣わしげに見つめていて、落ち着きがありません。
「あたしはこのとーり、ほぼ治りかけてるっすから。頭領も、そのうち元気になるっすよ、きっと」
「角はもう生えてこないんですの? せっかく王冠のようで、きれいでしたのに……」
「角は魂っすから。名を失った死者が決して蘇らないように、砕けた魂が決して癒されないように、鉄獣の角は生え変わったりしないっす」
ひどく疲弊し、何十歳もふけこんだ様子で、ライラさんが呟きました。その視線の先には、顕微鏡や加工道具置き場となっているらしい作業台の上に並べられた、ギンバイカの黄金の角と、牛鬼の二本の鋼の角。
「……あの子のからだは、あのままでいいの」
はすのさんの問いに、ライラさんが苦笑します。
「引き揚げてやりたいのはやまやまなんすけどね。たぶん重すぎて、すぐには無理っす。そのうちほかの子たちと協力してなんとかするんで、気にしなくていーっすよ」
ライラさんは逆に御同行を励ますように明るく振舞い、下山を急かしました。
「さーさー、はやく行かないと、馬車に乗り遅れるっすよ! 落ち着いたときに、伝話でもしてくれたらいーっすから! ほらほら、行った行ったっす!」
ともに危機を乗り越えた連帯感に引きずられ、別れを惜しむ御同行を追いだそうとするライラさん。りんごさんは思いだしたように、梅色の縫い物を手渡しました。
「あ、伝話と言えば、お近づきのしるしに、はいどーぞ」
「お守り、ってやつっすか。文化制約のきついここで布教は界民に怒られそーっすよ?」
「んー、加護とかないし、そもそもあたし、神さまとしては偽物だし。どっちかっていうと名刺代わりかな。なかにうちの番号書いてるんだ。あたしらの巡礼が終わったら、ライラも伝話してよね」
「なるほど。さきにもらわなくてよかったっすね。危うく一緒に丸焦げになるとこだったっすから」
エルシンシアさんが屈んでギンバイカの頭を撫でてやりました。
「はやく元気になって、こどもをいっぱいつくっておくんですのよ? いつかわたくしがもらいに来てあげるですの」
「堂々と密猟宣言するのやめてもらえるっすか……」
「心配無用ですの。そのときには言い値で買い取ってやるですの」
「やー、金の問題じゃないっすけど……。あ、はすのさん」
ライラさんは、アメトリンの双眸にはすのさん――とフツノミタマを映しました。
「……ん」
「またいつか、話を聞かせてもらえるっすか。はすのさんのお父さんについて、その太刀について。やっぱり、気になるっすから」
「ん……、わたしが小さい頃にいなくなっちゃったから、あんまりは、知らないけど……わたしも鉄獣のこと、教えてほしい。ひょっとしたら、父さんの手掛かりに、なるかもしれないし……」
かくして謎多き狩人・ライラさんと縁を結び、命からがら試練を乗り越えた御同行。たった数時間の出来事でしたが、未熟者なりにこころなしか一日前より頼もしい顔つきになってきた気がします。
さてさて、そろそろお時間となってしまいました。名残惜しくも、今宵のお
次回もお楽しみにお待ちくださいませ。
巡礼済み天帝院:五/八八
蒐集済みホムスビ一六神:一/一六
海に沈められた界を転用した、世にも珍しい海底都市、メトロ・カイサリ。フタナ道沿いに位置していたこともあり、牛鬼退治で得た報酬で旅道具を調達せんとカイサリに立ち寄った御同行でしたが、諸事情により宿の確保にひと苦労。その上、いらんことしぃさんが身勝手な行動を取ったばっかりに――?
次回「第六夜 海角天涯」
棲み処に戻ってくるなり、引き締まった小ぶりなお尻に鼻面をしきりにこすり付けてくるギンバイカを、ライラさんがたしなめます。
「もー、ちょっと待つっす、頭領。荷物持ったままっすから」
――そんなもの、早く置いてしまえばいいでしょう。
しかしギンバイカは聞く耳を持たず、執拗に股ぐらに潜り込もうとしています。
「どーしたんすか、頭領、今日はやたら甘えん坊っすねー。
ライラさんは観念したように弓と矢筒を適当にほっぽりだし、寝台に腰を降ろすと、ギンバイカのなめらかな光沢を放つ首筋をさすってやりました。
常人であれば火傷するほどの体熱を感じながら、ライラさんは頬を緩めました。
「それか、そんなに気に入っちゃったんすか、エルシンシアさんのこと? まさか頭領が他人に懐いて、跨らせるだなんて。意外っすよ。いっつも上に乗りたがるくせに。なんなら、エルシンシアさんについてってもよかったんすよ?」
――すこし見惚れただけではありませんか。
ライラさんに撫ぜられ、不承不承に一旦は鎮まっていたギンバイカは、しかし揶揄され、癇に障ったと反抗するように息を荒げて首を振りました。
「もー、冗談っすよ。ちょっと妬いただけっすから。ほら、仲直りっすよ」
鼻の頭同士をくっつけ、軽く唇を合わせる程度の、親愛のこもったくちづけ――どちらからともなく繰り返し、繰り返し、それが言葉の代わりのように、互いの気持ちを確かめ合っていきます。
ギンバイカが落ち着きを取り戻したのを見計らって、ライラさんは脇机の銀筒に手を伸ばしました。栓を抜いて、その中身――香油を手に垂らし落とすと、両手を擦り合わせて塗り広げました。そして屈みこんで、ギンバイカの腹の下、きっとエルシンシアさんの細腕ほどはある、滾りきった黄金の管を捕まえました。
「んー? 大怪我負ったばかりのくせに、やる気満々っすね? どんだけこーふんしてたんすか……」
苦笑いをこぼしつつ、ギンバイカの外性器の表面に手を這わせ、香油を塗り付けていきます。
寝台に顎を乗せて、喉を鳴らすギンバイカ。
「んっふふー、エルシンシアさんはたぶん、こーゆー相手はしてくれないっすよー? よかったっすねー、おねえさんが寛容で」
慣れた手つきで金色の柱を油まみれにすると、ライラさんは脱衣、自分のあそこにも適量塗布し、寝台に横になりました。
「はい、準備おっけーっすよ。おいで、頭領」
ギンバイカを寝台に上がらせると、ライラさんは押しつけられる管を捕まえ、自らの陰部に導いて、両足でしがみつくようにしてギンバイカの身体を引き寄せました。
巨大な黄金の杭は、スムーズにライラさんのなかへ収まっていきます。
「んっ、……ん、ふ♥ あいかわらず、おっき……♥ おなか、ぱんぱんっすよ」
根元まで挿入しきったギンバイカの横腹をぽんぽんと叩いて――。
「お互い本調子じゃないんすから、ゆっくり、ゆっくり、っすよ」
――心得ていますよ。
言いつけどおり、ギンバイカは緩慢に腰を揺らし、心地よさそうに吐息を漏らします。
ライラさんはねぎらうように首筋を愛撫しました。
「気持ちよさそうっすねぇ。今日は頭領も頑張ってくれたっすから、おねえさんが特別にいっぱい気持ちよくしてあげるっすよ……ほれっ♥」
おもむろに、内部からぽっこり膨らんでいたライラさんの下腹部を走る回路が発光。ギンバイカを柔らかく受け止めていた媚肉が、ぞわぞわ蠢きはじめまた。
――それは、卑怯です……。
途端にギンバイカの腰が引き気味になりますが、ライラさんは足をがっちり絡めて逃がしません。かえって奥へといざなわれ、陽根をもぐもぐ咀嚼されてしまいます。
「頭領、何回してもこれに弱いっすねー……♥ うりうり♥ おねえさんのなかは、どーっすか……♥ こんなことできるの、おねえさんだけなんすからね……♥」
ただ挿入しているだけにもかかわらず、まとわりついてくる猛烈な肉の悦びに陽根がひくつき、先端が張り裂けんばかりに膨らんでくるのを、ライラさんは体内で感じていました。
――ライラ、本当に、もう――。
ライラさんは悪戯っぽくささめきます。
「あれ、もしかしてもうこーさんっすか……♥ 相変わらずはやいっすねー……♥ いーっすよ、いつでも♥ 我慢せずに、情けなーく♥ だらしなーく♥ おねえさんのなかに、吐き出すっす……♥」
ギンバイカが、がくがくと臀部を震わせます。外性器が激しく脈打ちつつ、灼けるような液体を噴出させ、びちゃびちゃライラさんの粘膜を叩きました。
「んっ♥ よーし、よしよし♥ どーどー♥ いっぱい、いっぱい出せてるっすねー……♥ じょーずっすよー……♥ ふふ……♥」
なかば体毛に埋もれるようにして、ぎゅうっとライラさんに抱きつかれて励まされ、ギンバイカはなかなか放精を終えることができない様子。
慈しむがごとき抱擁とは裏腹に、膣内では絶えず秘肉がむしゃぶりついて吸い上げてくるものですから、むしろそのギャップのせいで、緊張を溶かされ、次から次へとお漏らししてしまうのは、ある種必然なのでした(鉄獣の快楽の標準は正直わたしにもわかりかねるのですが、長く、激しい射精量からして、きっと凄まじく気持ちよい瞬間だったはずです)。
ところが射精を終えたギンバイカはむすっとして、どこか拗ねたような雰囲気です。
――ライラは、本当に、卑怯です。
ライラさんはおかしそうに言いました。
「もー、怒ったんすか? いーじゃないっすか。かわいくて好きっすよー。頭領の早漏なところ。っとと」
よほど昂揚していたのでしょう、結合部からごぼりと粘稠度の高い濁った体液が、逃げ場を求めて溢れてきました。
「頭領、出しすぎっすよー。ほんとにこども、つくる気っすかー?」
ライラさんは呆れた口調でからかいました。
――ライラが、いやらしく吸いついてくるせいですよ。
「そーしてほしかったくせに。ほーら、どいたどいたっす。寝台が汚れ――んゎ」
ギンバイカを押し退けようとするライラさんは、しかしいきり立ったままの陽根をより深く突きこまれ、寝台に押し戻されてしまいます。
――そちらがそういう手を使うのであれば。
「ちょっと頭領、今日はもうやんちゃしないで休んだ方が――んはぁぅっ!?」
ライラさんの抗議の途中――ギンバイカはやおら金毛をぞわりと波打たせ、ライラさんは不意を打たれたように裏返った声を出しました。ライラさんの体内に侵入したままだったギンバイカの陰茎が膨張し、ねじれ、隆起し、形状を変化させていたのでした。
――こちらにも、考えがあります。
「……っ! と、りょ……これ……っ!」
牛鬼――かつてのライラさんの想い人である、クルーエルの、それのかたちに。
「頭領、よけいな、ことを……はぁああんっ♥」
膣奥を貫く、ずしんと重い一撃に、ライラさんが溜まらず仰け反ります。頭は真っ白、瞼の裏はちかちか、完全に意表を突かれ、身動きが取れなくなっています。
ギンバイカの逆襲はもちろんそれだけにとどまらず、しっかり抽挿を開始。先ほどとはうってかわって、余裕のある、かつ重々しいピストンで、ライラさんの秘穴をほじくり返していきます。
「んっ! んっ! んんっ♥ と、りょ……っ! 待っ……♥ んんんっ♥」
おねえさんぶっていた態度はすっかり消え失せ、口元を手で押さえて嬌声を噛み殺すに努めるライラさん。
骨がとろけるような性感を味わっているのは、誰の目にも――ギンバイカの目にも明らかです。
――どうですか、ライラ。
「ふぅぅん……♥ んぅ♥ んぅっ……っ♥ と、りょ……♥ こんなの……♥ ずるいっすよぉっ♥ おっ♥ あっ♥ あ♥ こえ♥ でちゃ♥ あっ♥ あっ♥ やっ♥」
はじめはいじらしく耐え抜こうという危害を見せていたライラさんでしたが、クルーエルの形状のそれとはよほど相性がいいのか、あるいは別の要因か、いくらもしないうちに従順になり、出し入れに合わせて女の子らしい喘ぎ声で歌いはじめました。
「はうっ♥ ぁんっ♥ やっ♥ あっ♥ あぅっ♥」
獣らしく荒々しいようで、その実、粘膜の感触をたっぷり堪能するかのような長いストロークに、ライラさんの膣襞は隅々までごりごりと蹂躙され、押しつぶされて、喜悦に涙するごとく、さらさらした愛液を垂れ流させています。
「はっ♥ あぁぅんっ♥ とーりょーっ♥ とーりょーっ♥ っくぁっ♥ あむっ♥ んむぅっ♥」
ライラさんの喘ぎ混じりの甘い呼び声に応じたのか、ギンバイカが舌を伸ばし、ライラさんの口内にねじこみ、ねぶりました。翻弄され、陶酔するライラさんは、甘えるように長い舌を吸いました。
内臓を掘削せん勢いで穿たれ、ひとであれば激痛を感じる運動量でしたが、ライラさんは腰を浮かせて剛直をより奥へと受け入れようと貪欲に飲み込んでいきます。
「んむぅっ♥ むぅうっ♥ むぐっ♥ ふはっ♥ はぁあっ♥ あ゛っ♥ ゃうっ♥ もぅっ♥ い、くっす♥ イクっ♥ イっく♥ っくぅ、っきゅっ♥ ――っ♥♥♥」
五体が分裂しそうなほどの法悦の爆発。ライラさんはあまりに鋭い絶頂に、本当に吹き飛ばされ、消し飛んでしまうとでも錯覚したのか、ひっしとギンバイカにしがみつき、己を犯す金属の柱をぎちぎち締め上げます。
それでもなお、ギンバイカは止まりません。がつがつと暴力的に、優美なギンバイカらしくなく、獣欲のままに、ライラさんを貫き続けます。
それが、だれかの交配の模倣であるがごとく。
「っくはぁ――っ♥♥♥ ――っ♥♥ ん……――♥ ――♥♥♥ ……♥♥ ……♥♥♥」
強制的にエクスタシーを叩きこまれ続け、もはやライラさんには正常な理性はかけらもなく、前後不覚気味にギンバイカに凌辱されるのみ。ゆえに――。
「んぎゅうぅうっ♥ はげし♥ もっ♥ イッてる♥ イッてるのっ♥ おわんないっすからぁ♥ ――クリュちゃぁあんっ♥ クリュちゃんっ♥ ぅ――♥」
自分が何に抱かれ、何を口走っているのかも、さだかではなく。
「~~っ♥♥ ――っ!?♥ あづっ♥ クリュちゃんのっ♥ ぼこぼこ♥ ふくらんで……っ!?♥ イクっすね?♥ イッて♥ イッて♥ い――っ♥♥」
色褪せぬ黄金の追憶に囚われたまま、重金属の胤を受け――」
「ふっぅううんっ♥♥ っくぁあ♥ クリュちゃ……♥ すっご……♥ おなかのなか……♥ ぐつぐつ、いってるっす……♥ んあぁむ♥」
だれでもなくなった、魂さえ逸しただれかの幻のなかで、かりそめの安らぎによる慰撫を受くのでした。
しかしその至福は所詮、夢――偽り、飾られ、よるべなき、砕かるべき、うたかた。
満ち足りたくちづけを演じながら、ライラさんはかすれた声で呟きました。
「ああ――、クリュちゃんの子――、ほしかったなぁ――」
自嘲するような、自責するような、うつろな吐露。
「どうして――どうして産んであげられなかったのかなぁ――」
やがて嗚咽さえ混じらせはじめたライラさんのその存在を確かめるように、ギンバイカはじっと見守り続けるのでした。
やがて普段の飄々とした調子を取り戻したライラさんは、ギンバイカの傍らで寝そべったまま、鹿の耳をいじくりまわしました。
「……頭領」
――どうしましたか。
「あたしのことなんか……、あんま気負わなくて、いーんすよ? あたしはちゃんと、頭領らしい頭領が、好きっすから」
かと思いきや、ふくれっ面をつくって、頬の皮膚を軽くつねりました。
「てか、次やったら本気で怒るっすからね? さすがに悪趣味っすよ?」
――少し自覚はあります。
ギンバイカは鼻息ひとつで応じると、ライラさんから視線を外しました。
ライラさんはギンバイカの蹄の縁を、指でなぞりました。
「クリュちゃんのことは、絶対に忘れたくないっす。でも……、あたしにはちゃんと、嘘偽りない、頭領の――ギンの魂を、見せてほしいっすから。ギンのことも忘れないように、間違えて憶えちゃわないように、ありのままの、変わらないギンを見せててほしーっすから。ギンが牛鬼になっちゃうのが先か、もしくはあたしがまた忘れるのが先か、わからないっすから。ここでは――名前しか、残らないっすから」
ライラさんはおもむろに、指先を齧りました。赤く、青く瑞々しく滴る鮮血で、壁にかつてのつがいの名を綴りました。
今のライラさんにとってはひとつ目の――かつてのだれかにとっては、もう何度目かの。
びっしりと魂が連なった、その壁に。