「初めまして。カムラの里・集会所での受付嬢をしているミノトです。早速ですが、どのようなクエストを引き受けますか?」
「“竜隠しの地”でのヤツカダキの狩猟クエストですか……このフィールドでの怪奇現象はご存知でしょうか?」
「人がモンスターになってしまう異常な地。ここの里では神隠しと例えて『竜隠しの地』と呼んでいます。これまで多くのハンターがモンスターに変えられてきました」
「……そんなことわかってるから早く手続きしろと? 失礼しました。竜隠しの地でのクエストを受託する事を許可します」
「お気をつけてください」
――溶岩洞
「くたばれぇぇぇッ!!」
大声を上げながら私は片手剣の盾を妃蜘蛛――ヤツカダキの頭に叩きつけた。糸に覆われていた四脚、頑丈な爪が傷だらけになっていたヤツカダキは、その一撃で沈んだ。
力無く脚を広げ、複眼から光が消えた母親の腹部――灯腹から次々と臣蜘蛛――ツケヒバキが離れ、地中に逃げ込んでいく。それらを見届けた私は片手剣を納刀し、剥ぎ取る為にヤツカダキの死体に近づく。
「和風な防具を期待してたんだけど……カムラの里の鍛冶屋って、ハンターの需要が分かってないよね……」
傘鳥から作られた防具は何故か騎士風、河童蛙から作られた防具は何故か防弾アーマー、そしてこの妃蜘蛛から作られた防具は何故か洋風のウェディングドレス。和風のモンスターから得た素材で、洋風の防具を作るハモンらの鍛冶屋達を愚痴っていた時だった。
ふと何かの視線に気づき、私は振り向いた。
ツケヒバキが一匹、私を睨んでいた。力尽きた母の腹から離れ、地中に逃げる事が多い虫けらにしては根性があるなと思いながら、私は手を振って追い払おうとする。
「母さんの仇討ち? 実力の差がまだ分からないのかしら。シッシッ」
そう言いながら手で払う動作をするも、ツケヒバキは逃げようとしない。「一寸の虫にも五分の魂」という諺があるとはいえ気に食わない。けど、殺すにしてもヤツカダキから剥ぎ取る時間が無くなってしまう。
私はツケヒバキを無視することにしてナイフを取り出し、文字通り複眼から光が消えたヤツカダキの亡骸へ近づく。
ナイフを持つ腕に何かが付着した。突然の感触に顔を向けると、私の腕に粘ついた糸が絡まっており、どこかに引っ張られている。それを辿ると、睨んできたツケヒバキから伸びていた。
「このクソ虫ッ! ママがいなければ何も出来ない癖にッ!」
剥ぎ取りを邪魔された私は頭に血が上り、腰に携わっている片手剣を片腕で抜刀しようとした。
しかし、もう片方の腕も別方向から飛んできた糸に絡みつかれ、両腕が使えなくなった。驚いた私はその方向に視界を移し、もう一匹のツケヒバキがいる事に気づいた。
いや、二匹だけじゃない。次々とツケヒバキが地上に這い上がり、五匹以上のそいつらが私に迫ってくる。
「く、来るな……来ないで……」
まるで自分達の母を殺した人間を復讐しに来た。そんな光景に恐怖を抱いた私は逃げ出そうと糸に絡まれた両腕を必死に動かす。だが、ヤツカダキとの戦闘で消散剤を使い切ってしまい、瞬間に糸を剥がす手段はなかった。
焦りのあまり、ツケヒバキから両足へ放たれた糸弾に気づかず被弾してしまい、引っ張られて体勢を崩され、四匹のツケヒバキに両腕両足を引っ張られた状態で地面に倒された。
地面に上半身を貼り付けられたまま、私の下半身が引っ張り上げられていく。視界に自分の足先、両脚全体、そして開かれた股が入った瞬間に、ツケヒバキ達が引っ張るのを止めた。
でんぐり返しの姿勢で糸に固定された事に気づき、恥ずかしく思いながらも臣蜘蛛の追撃から逃れるために体を揺さぶり始める私。そんな無意味な抵抗をしている獲物の体を一匹のツケヒバキが背中から登り、私の尻に到着した。
両足の間に割り込んだそれに私は一瞬動きを止めてしまう。虫系モンスターが私の体にしがみついてる生理的嫌悪だけではなく、そいつの腹部の先端に勃っている歪な形の生殖器を見てしまったからだ。
これから起こることを察した私は、素早く首を左右に振った。虫に体を許すなんてありえない。
「や、やめ――」
私の口から懇願の言葉が出たが、もう遅かった。ツケヒバキの男性器が私の膣にゆっくりと挿入し、その感触と痛みが下腹部から全身に広がった。
「あ、ああぁ……モンスターに……む、虫なんかに犯されたぁ……」
小型モンスターのツケヒバキに犯されている。否定したかったが、実際に己の目で間近に見てしまっている。
異種姦してしまったショックで動けなかった私を気にせず、ツケヒバキが腹部を動かし始める。虫の陰茎に膣穴を出し入れされ、膣壁を擦られる。そんな感覚が伝わる度に、私は糸で拘束された身体を震わせるだけだった。
呆然とツケヒバキの交尾を見ていた時だった。突然、視界が暗転して思わず私は不安になった。
「な、なに――ムグっ」
その直後、反射的に開けた口に何かが突っ込み、咥えさせられた。糸で目を塞がれて何も見えなかったが、歪な形と不快な味を舌で感じ取った。そして顔全体にかかる謎の重さで、その正体が分かってしまう。
別のツケヒバキに顔を張り付かれ、蜘蛛ペニスにイラマチオされている。
ツケヒバキとの交尾のショックに加え、鼻と口を塞がれて息苦しくなった私はもはや抵抗できず、口と膣を蜘蛛ペニスに犯されるしかなかった。
顔に張り付いているツケヒバキは生殖器を舌に擦りつけながら喉奥を突き、尻にしがみつくツケヒバキは腹部を動かし角度を変えながら膣奥を突く。それらによる淫らな水音と私のうめき声が、洞窟内にしばらく響いていた時だった。
二匹のツケヒバキが腹部の動きを早めたことに気づき、その意味を私はぼんやりと理解した。それでも抵抗の意思が込み上げて来なかった。
ツケヒバキ二匹が腹部を勢い良く叩き付け、ペニスの先端を奥まで押し込んだ。その後、下腹部の中で生暖かい何かが流れるのを感じ取り、口の中が射精された蜘蛛ザーメンで一杯になり、息苦しさが増していく。吐きたくなる味と熱が舌に伝わってくる。
私の体内に精液を出し尽くした二匹のツケヒバキが満足し、私の体から跳び離れてゆく。目隠しの上、でんぐり返しのまま拘束されている私は、中出しされた膣からの精液が顔に落ちていく感触しか分からなかった。
周りにいる他のツケヒバキ達がジリジリと迫ってきていると知らずに……
一時間くらい経ち、やっと糸から解放された今の私は酷い有様だった。
何匹のツケヒバキに射精された膣口と尻穴からは大量の精液が溢れ出ており、地面を白く汚している。口からも飲みきれながった白濁液が吐き出されていた。
交尾の邪魔だと防具を剥がされ、インナーまでも破かれてしまい、露わになった私の裸体は糸と精液でデコレーションされてしまっている。
乳首とクリトリスを蜘蛛の牙に甘噛みされてしまい、今でも疼いてしまっている。
「せっくす……も、もうやだ……」
白目を剥きながら声をかすかな精液と共に吐き出す私を、犯し尽くしたツケヒバキ達はじっと見ていた。自分らの母の仇を陵辱した彼らは、仕上げに取り掛かり始めた。
白濁液塗れな私の身体にツケヒバキ達が張り付き、糸を噴きかけていく。
「や、やめて……ごめんなさい、許してぇ……」
私は微力ながら抵抗するが、無駄だった。全身が糸に覆い尽くされ、手足を閉じた人型の繭が転がるのを見届けたツケヒバキ達は地中に潜っていった。
数時間後……
放置されてた人型の繭に亀裂が走り、そこから抜け出せた私は必死に腕を動かし、這いずり始めた。途中で大型モンスターに襲われる可能性もあったが、今はただキャンプまで逃げるしか頭になかった。
繭の中に閉ざされている間、私の身体に“何か”が起こったと気づいたのはしばらく這っていた時だ。
肘に鉤棘が生えている暗紫色の外骨格が視界の端に見えた。私は這いずるのを止め、それを注視した。
私が倒したヤツカダキの甲殻そのものだが、明らかに形が違う。球体関節の指がある人間の腕だ。
そんな人間用の籠手に加工されているようなヤツカダキの腕が私の意思に合わせて動いている。でも私はこんな装備を身に着けた覚えがない。
いや、装備じゃない。掴んでいる地面の感覚が直で分かる。私の腕そのものだ。
クエストを引き受ける時にミノトが言っていた“このフィールドの恐ろしさ”を思い出した私は、身体に起こっている現象を必死に否定しようと声を漏らした。
「い、いや……私は、人間……」
にんげんじゃなくなったよ
あなたはわたしたちのおかあさまになります
おまえがころしたおかあさんのかわりになってよ
背後から聞こえてくる幼く、恐ろしい声に口を止めてしまい、私は振り向いてしまう。私の子供になるかもしれない全身を糸で覆うツケヒバキの群れ、そして……
四脚が生えている胸部と腹部――朧気に光る灯腹に変化してしまっている私の下半身。
それを見た瞬間、私の頭が狂ってしまった。
ツケヒバキ達との異種姦の快楽で狂い始めていた私は、身も心もモンスターに成り下がってしまった。
寄ってくるツケヒバキ達を甘い声で出迎えるのだった。
「あ、赤ちゃん……わたし、子沢山のお母さんになって嬉しいぃ……」
――カムラの里 集会所
「ミノトや、ヤツカダキを狩猟しに行った他所のハンターなんだがゲコ……」
「ヤツカダキは討伐されたようです。しかし、迎えに行ったアイルー達からは『ハンターの姿はなかった』と……」
「訪れた人間がいなくなり、代わりにその者を模したモンスターが現れると例えられるフィールド――竜隠しの地かゲコ……」
「私とヒノエ姉さま、この里を救ったあの人なら、人がモンスターになる現象が明らかになるかもしれません」
「駄目だ、猛き炎を失うわけにはいかん。お主らが共鳴してしまった“あの二頭”を討伐してもらわねばならん」
「……」
――溶岩洞
下半身の四脚を動かして水辺まで歩いた私は、水面に反射する自分の姿をふと見た。
糸で出来た白いフードからは、光る複眼と左右に割れる顎が特徴的な紫色の仮面と、人間時の面影である黒い長髪が覗かせる。
上半身は外骨格で覆われた女体をしており、爪が折りたたまれている両腕先には糸を袖状に巻いていた。
それに比べて異質な下半身は糸に覆われた四脚が生えている胸部と、腹部である灯腹といった原型のヤツカダキと変わらない。
おかあさま、おなかがすきました
さいきんにんげんたべてないよ
にんげんのさとまでいかなくていいから、かりうどをかろうよ
灯腹に張り付いている複数のツケヒバキ――私の愛しい子供達がそう言ってくる。私がヤツカダキになった後に産んだツケヒバキもいるが、その子は私と同じ上半身が人型の個体だ。こういう子供が産まれるのも、竜隠しの地での特徴だろうか。
「そうね……そろそろ人間狩りをしましょうか」
私は両腕を伸ばしてその子を抱き寄せ、頭を優しく撫でるのだった。