真の楽を求める方法 作:はすりー
支部の方が先行して公開する予定ですので、もしも、万が一先が気になる方はそちらをどうぞ。
深夜の公園、陽務楽郎はゲームのイベントに向けて、エナドリを買いにコンビニ足を運んでいた。
そしてその帰り道――。
「…………」
「おい……おいさっさと金出せ」
楽郎は強盗にナイフを突きつけられていた。
「……わかってるかもしれないけど、この辺りは防犯の設備が整ってるからさ……」
あきれた顔で監視カメラを指さしながら楽郎がそういうと強盗は慌てたように、それでいて、もはや引けないとでも言わんばかりの態度をとる。
「うっ、うるせぇ!! おいこれが見えねぇのか!?」
そう言ってナイフを目の前に突き付けてくる強盗だが、楽郎はさして気にせず、どちらかと言うと煩わしげにしていた。
「(正直その程度じゃな……)」
そう思い相手を軽く睨みつける。
とはいえ下手に刺激するのも面倒になると判断し、どうしたものかと考えていると、横からまた別の声がかかった。
「おい何やってる」
強盗のオッサンが慌てて声がした方へ振り向き、俺もそちらに目を向けるとそこには、妙に体格のいい男が呆れた顔をしてこちらを見ていた。
「は……今時強盗か。世の中ほとんど電子マネーじゃねぇか」
男の大きさに一瞬怯んだ強盗だったが、慌ててナイフを向けてて何かを言おうとした矢先。
「とっとと失せろ……」
「ひぃっ」
迫力のある声とそのまま殺してしまうのではと思ってしまうような目つきに、強盗は腰が抜けたかのようにたどたどしく、それでいて急いでその場から去っていった。
「情けねぇ……っと、ほっといて悪かったな坊主、平気か?」
「あはい、助かりました。ありがとうございます」
楽郎がそういうと男はニカッと笑いながら言う。
「おう、良いってことよ。それにしてもやるじゃねぇか、ちと見てたがナイフ突きつけられてもまるで怯んでなかった。俺が手を貸さなくても自力で何とかできたんじゃねぇのか?」
「いや、ケンカ自体が強いわけでもないし、どうしたものかと……って見てたって」
「ああ? ああ悪い悪い、ちょっとどうするか気になってな? もちろんちゃんと助けるつもりではいたぜ?」
何事もなかったかのように笑いながら言う男に、若干毒気を抜かれつつ、楽郎は何気ない会話の中で、楽郎は妙な感覚を覚える。
「(……サバガニウム?)」
かつて楽郎がシャンフロ内でエターナルゼロに対しても同様に感じたものだが、纏う空気が孤島を思い出すものだった。
「……さっきの睨みのせいか……?」
「あん?」
「ああいえ、随分ガタイがいいなと思いまして」
「ああ、一応総合格闘家やってっからな。美澄真澄って言うんだが、聞いたことねぇか? ……ねぇか!」
「あー……すみません」
「いいんだよ、最近はその辺テレビで放送してくれないしな。それに今の時代はeスポーツだ」
「そう……すね」
昨日もテレビでは魚臣慧の試合が行われていたのを思い出す。
確かにメディアが大きく取り上げているのはeスポーツだろう。
「派手さが違うわな! お前もゲームはやってるクチか?」
「ああはい。結構やり込んでるクチですね」
「そうかそうか、いや色々言ったが俺もやってんだよシャンフロとかな」
「あ、そうなんですね」
やはり神ゲーと呼ばれるゲームは伊達じゃないなとぼんやり考えていると、真澄はふと時計を確認し楽郎に話しかける。
「っと……こんな時間に話し込むもんでもねぇな。……一応送るか?」
「いえ、滅多にある事でもないんで」
「そりゃそうだ。じゃあ俺はもう行く。じゃあな」
「はい、ありがとうございました」
「いいって事よ」
そう言って離れた後、真澄は真澄で楽郎との会話で妙な感覚を抱いていた。
「っ……何だってんだ? あのガキと話してる間妙に疼いてやがったな……」
そう言いながら周りを確認し、そっと自らのモノの位置をそっと整える。
「マジかよ……ちょっと勃ってやがる……何だってんだ?」
自分の癖を理解しているからこそ、今の状態に疑問を持ちつつ真澄は静かに頭を掻きながら帰路につく。
一方で家に帰った楽郎は、何気なくゲームを始める前に、今自らを助けた総合格闘家の男を調べてみることにした。
「えー……確か、みすみますみっと……おお出た……へぇ、割と有名なんだな」
実際ページを開いてみると、それなりに有名な選手であることが分かった。
戦歴なんかも乗っていたが、楽郎自体は相手に詳しくないので、勝ちがすごいことなのかどうかはわからなかったが。
「……実際の戦歴が多いから懐かしく感じたってか? ……わからんとりあえずゲームだゲーム」
~~~~~~
翌日、シャンフロにインしたサンラクはとりあえずサバイバアルと駄弁ろうと蛇の林檎に足を運ぶ。
「おーサンラクか。まーたそっちなんだな? くはは……案外お前自身その姿の方が気に入ってんじゃねぇのか?」
サバイバアルが目を向けると、サンラクは聖杯を使った姿で、衣装はもはや定番となりつつあるバニー姿であった。
「うるせっ幼女先生はこっちの方がお気に入りなんだよ」
「なら絶対その姿じゃなきゃダメじゃねぇか」
「真顔になるなよ……」
ドリンクを飲みながらの他愛のないやり取りの後、ふとサンラクは思い至ったことを聞いてみる。
「……なあサバイバアル」
「あん?」
「お前格闘技とか興味ある?」
「んだよ唐突に」
「いやさ……お前さ、美澄真澄って総合格闘家知ってるか?」
思わぬ言葉に飲んでる酒を吐き出しかけるサバイバアル。
「っ!? お前それ……」
「ああやっぱそれなりに有名人なんだな」
「あぁ?」
自分のリアルの事を言っているのかと思っていたサバイバアルだったが、サンラクの様子はどうもそういう話ではなさそうであった。
「ああいや、昨日偶然そいつと出会う事があってさ……なんつーか……同じ匂い? というか、こう……鯖癌っぽさを感じたんだよなぁ……やっぱ格闘家ともなるとそういう雰囲気になるもんなんかなってさ」
「……………………」
サバイバアルの脳裏に浮かぶのは、一人の子供。
昨日の深夜に出くわした高校生くらいの姿だった。
「(昨日はアレ以外人に会った覚えはねぇし……ああ、昨日のアレはそういう……ちょっと待て、そういうってなんだ俺、おかしいだろ)」
「? ……サバ?」
「あ? おあ? おお! あー……」
サバイバアルは一巡する。
今この場で昨日のことを話してよいものかと。
ゲームでリアル関連の話は正直避けた方がいいとは考えたものの、自分だけが一方的に知ってるのも、と考えてしまったのだ。
「なんだよ? 言いたいことがあるなら言えよ」
「お、おう……」
それでも言いよどむサバイバアルに、サンラクはニヤリと笑い、煽るように上目遣いを作っていう。
「何言い淀んでんのかは知らねぇけど、何言ったって今更お前の評価なんてこれ以上落ちねぇよ~このへ・ん・た・い」
「ぬっ、おま……っ!」
「きゃ~変態が怒った~♪」
今度は女児のようなロールプレイまで入れながらサバイバアルをからかう。
「がっ!? お、おまえ……!!」
そしてそれは当然のごとくサバイバアルにクリティカルヒット。
そのサバイバアルの反応に満足したのか、サンラクはカラカラと笑い、で? と話の続きを促す。
強引に煩悩を打ち払ったサバイバアルも深く考えるのをやめ、周りに人がいないのを確認した上、そのまま話すことにした。
「別に大したことじゃねぇ。俺がその三澄真澄ってだけだ。そういうお前は昨日のガキって事だろ? ……道理でナイフにも怯まないわけだ」
「……………………はぁっ!?」
想定してなかった返しに驚愕の声を漏らすサンラク。
「いや俺だって最初お前が名前言ったとき身バレしたかと思ったわ! かと言って俺だけ気づいてるのもなんか微妙だしよ……」
「あーそういうことか……つーかだったら鯖癌の気配するとか当たり前じゃねぇか!」
「そりゃやってたからな」
「はー……マジかぁ……そんなことあるもんだな……っと、話は終わりみたいだな」
「!? 来たか!」
話を中断し、サンラクは身なりを整え身構え、サバイバアルは一挙手一投足見逃さないよう目を見開く。
毎度ティーアスの登場はそれぞれの一大イベントなのだ。