真の楽を求める方法 作:はすりー
「お」「あん?」
シャンフロ内で互いにリアバレをした翌日。
本当に偶然……いや、どちらも何気なく会えるかもしれないなと思ってしまったがゆえに、前回出会った場所に足を運んでいた二人は本当に遭遇することになった。
とはいえ、前回会った時とは関係性も大きく変わっている。
「ようサバイバアル。まさかマジで会えるとはな」
「おーサンラク……つかタメ口かよ。最初あった時はバリバリ敬語だったろうが」
「お前相手に敬語とかいるかよ?」
「はぁ……いいけどよ。つかリアルであっててその名前はどうなんだ」
「あーまあオフ会でもないしな……なんて呼べばいい? お前にさん付けするのなんか癪なんだけど」
「別に好きに呼べばいいだろ」
「んじゃ真澄で」
「名前かよ」
「どっちも似たような感じじゃねぇか。スミスミとか呼ぶか?」
「ハッ倒すぞ。……で、お前は?」
「ああ自己紹介してなかったか。陽務楽郎です。よろしく」
「よろしく」
いつもの軽いやり取り、まるでシャンフロ内のような空気に思わず楽郎が顔を綻ばせる。
「はは」
「んだよ」
「いーや? なんつーか面白くてな。まさかお前とリアルで会うことになるなんてさ!」
そう言いながらニッと笑う楽郎に、真澄は思わずたじろぐ。
脳裏に浮かんだのはかつてのμ-skY。
中身が同じなのだから当然と言えば当然だが、その楽しそうに笑う姿は、まさしく自分の癖を決めたキッカケのような存在と同じだった。
真澄はぼんやりと、あの日自らのモノが疼いていたのは、その既視感があったからだろうなと思っていた。
そしてそれを理解すると同時に、あの日と同じように下半身が熱を持ち出す。
「……(俺はロリコン、俺はロリコン……そもそも性別……!)」
脳内で自らの性癖を念仏のように唱え、静かに熱を抑えようとする。
そんな内心に気づくわけもない楽郎は、ズイッと真澄の顔を覗きこみ、怪訝な顔をして尋ねる。
「どうした? 体調でも悪いのか……?」
「……っ……い、いやちげえ、大丈夫だ」
「そっか? ならいいんだけど。つーかほんと偶然だな? もしかして近所なのか? あ、それともこの辺の女児を見に来たのか~? この変態ロリコンめ」
「人聞きの悪いこと言うな! ……そういうのはたまにしかしてねぇよ」
「お前マジでそのうち捕まるぞ」
「うるせぇっ急にマジトーンになるな! ……お前はどうなんだよ」
「俺? あーまあそうだな……特に今日は用事なかったんだが、もしかしたらお前に会えるかと思ってさ! あん時も言ったが、助けてくれてありがとな」
「お、おう……つかそのためにわざわざ出歩いてたのかよ」
「まあな―、あん時は正直ちょっと警戒もあったし、ちゃんと礼言えてなかったかもなって思ったからな。まあなんとなくだけどさ」
「……そうかよ」
シャンフロ内で話すのと同じように生意気で、そしてどこか楽しげに話す楽郎に、やはり真澄は内心冷静ではいられなかった。
未だ熱を持ちうずく下半身。隣にいる男子学生へと向いてしまう視線。徐々に高鳴りを増す鼓動。
これは紛れもなく情欲。
今、真澄はただ普通に話す男子学生に欲情しているのだ。
そしてそれは本人も、内心否定しながらも、どこか自覚しつつあった。
そんなことを知る由もない楽郎は、自らとは遠い職に就いている真澄に無邪気に問いかける。
「なあなあ、総合格闘家って言ってたろ? 見た目はなんつーか細マッチョって感じだけど、実際筋肉どんな感じ? ちょっと触ってみてもいいか?」
「はぁっ!?」
真澄の返事も待たず、ペタペタ胸板を触りだす楽郎。
総合格闘家と言う職に就いてから、何度も経験してきたことなのだが、今この状況では危険以外の何物でもなかった。
「おー……すげぇ……ガッチガチだな!」
にこやかに言う楽郎の言葉だが、無意識に違うように頭がとらえようとする。
それを必死に振り払い、真澄は少し話をそらすように、慌てたような声をだす。
「も、もういいだろうが……くすぐったいわ! つーかお前、今日はなんか妙にガキっぽいぞ! アレだ、お前のクランメンバーといる時はもう少し……落ち着きみたいなもんがあるだろ!」
「そうか? なんだろうな……こう、感覚が懐かしくて昔に戻っちまってるみたいでさ!」
話を逸らそうとしたはずだが、返ってきたのはより自らの心に響くものだった。
自分が魂の在り処と定めた場所を思い出させる言葉。
懐かしむような声色に、当時の記憶が鮮明によみがえる。
「……はっ、じゃああれだ、子守唄でも歌ってもらおうか? なんてな」
「っ!?」
当時を思い出したことで思わず出てしまった言葉だが、それは逆に、楽郎の動きを止めるのに最も適した言葉だった。
「ぅ……っ………………ぉ……」
「お、おい、どうした……」
突然立ち止まった楽郎に、少し慌てる真澄。
その楽郎は自らの歴史の最も黒い部分に触れられたことで、動悸が止まらなくなっていた。
甦る記憶と羞恥。
楽郎は顔を赤くしながら捲し立てる。
「お、おまえぇー……その話はなしだろぉ……!」
両手で顔を隠すようにしてうずくまる楽郎。
「うぉぉぉぉ……その話は反則だろぉ!」
「な…………ぉ……っ……っ……!!!?」
なんだそれは可愛すぎるぞ。お前の方こそ反則だぞ。ちくしょう可愛いな。それはわざとやってんのか。
頭に浮かぶのは今まで決して男になど言うはずもない言葉の数々。
自分の意思に反して思わず口に出してしまいそうだったものを必死に押しとどめる。
傍から見ると、男二人が互いに何か悶えている不思議な光景であった。
その後、それまでの真澄以上の動揺を見せた楽郎から、一旦落ち着つかせてくれとの提案があり、その場は連絡先だけ交換してわかれることになった。
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「……くそっ……」
楽郎とわかれた真澄はすぐさま家に帰り、部屋に入るなり下を脱ぎ、いきり立ったモノを晒し、そのまま扱き始めた。
頭に浮かべているのは、今まで出会った幼女や、R指定のVRゲームで抱いてきた幼いビジュアルのキャラクターなどではなく、先程まで会話していた男子高校生……間違いなく自分の範囲外と思ってきた男の姿だった。
自分と話していたときの声、自分に触れた時の体温、それら全てを思い出し、真澄はあっけなく果てる。
「っっ!」
しかし楽郎の姿を思い浮かべるだけで、またすぐに真澄のモノは固さを取り戻していく。
かつてあの場所が無くなった時……サバイバル・ガンマンのサービスが終了した時、一時は自らの命すらどうでもよく感じてしまっていた。
そんな真澄が、今の様に持ち直したのはまぎれもなく、あの場に幼い少女が通りかかったから……ではなく、その時に思い浮かべていた幼女の姿をしたサンラクとその幼女を関連付けたからである。
「くそ……くそ……」
真澄自身も何度も考えていたことだ。
自分は幼女が好きというよりは、μ-skYが好きだったのではないかと。
ティーアスという幼い見た目のキャラクターに傾倒していたのは、姿が幼女だからではなく、μ-skYを喚起させる〝強い〟幼女だったからなのではないかと。
これまで自らの性癖が揺らぎそうになったとき、何度か自分に「俺はロリコンだ」と言い聞かせてきた。
しかし思い返せばそれは全て近くにサンラク――陽務楽郎がいたからではなかっただろうか。
「~~っっ!!」
何度目かもわからない射精。
時間も忘れて扱き続けていた真澄は、下半身を丸出しにしたままその場に寝転がる。
そして――。
「……ちっくしょう…………何度考えても同じ結論に行きつきやがる……俺が求め続けてたのは幼女じゃねぇ……μ-skY、サンラク……あいつじゃねぇか……」
――そう、ようやく自らの気持ちを受け入れた。
今回はこれまででございます。
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