※この作品はR-18です。

劇場版魔法少女リリィ5!! ~推しの物書きVtuberは百合小説の夢を見るか~    作:百合道いおりん

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1話 平凡な朝

 

 

三ヶ月前。

人知れず人類の存亡を賭けた戦いが行われていた。

世界線を越えて人類が生きる世界に表れた魔の名を冠する存在。

彼らは人類が住む世界を侵略するべく暗躍していた。

しかし彼らの世界侵略はたった五人の少女たちによって阻止される。

人の身に許されるはずがない魔の力をその身に宿し、命を懸けて戦った少女たち。

彼女たちを知る者はこう呼んだ。

魔法少女と。

 

 

 

 

 

今日も私は夢を見る。

血に濡れた拳と、辺り一面に広がる屍の山。

ヒトと同じ形をした、胴体に二本づつの手足が生え、五本の指がそろっているモノ。

だがそれは人間ではなかった。

いや、人間ではあったものだ。

その形が示すものは、それがかつては人間でありながらも魔の力によって歪められたという証。

彼らも昨日までは元気に日常を謳歌していた。

今日も同じように一日を過ごすはずだった。

携帯のアラームで目が覚めて。

慌てて着替えながら朝食を食べて。

電車に乗って。

学校に行って。

友達と他愛ない話で笑って。

ちょっぴり愚痴をこぼして喧嘩して。

また電車に乗って。

どう仲直りしようか悶々と考えながら眠りについて。

またアラームで目が覚める。

そんな毎日があるはずだった。

そんな日常はもう永遠に還って来ない

当たり前だ。

私が殺したのだから。

血に濡れた拳が熱い。

幾度も幾度も骨肉にぶつかった拳が奇妙な膨張感と痛みを訴え、行き場のない熱をどうにかしてくれと訴えかける。

その熱が、私が彼らを殺したという証だ。

それでも私は拳を振るう。

行き場のない熱と痛みをごまかす様に、拳を振るう。

闘っている間だけは全てを忘れられた。

痛みも、後悔も、哀しみも、涙を流すことも。

狂え。

狂え狂え。

 

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え

 

 

狂え──

 

血染山河の屍の上で。

小粋にダンスを踊ろう。

終わることのない円舞曲を踊ろう。

屍と共に。

踊れば踊るほどに心臓の鼓動がどんどんと拍子を上げていく。

やるじゃないかと私は笑う。

負けないよと私は拳を振るう。

不意に混じる不協和音。

ぴきり、と奏でられたその音はどこから鳴っているの?

拳だ。

私の拳だ。

手の甲から白い何かがはみ出ている。

折れた骨が皮膚を突き破ってはみでている。

ついに私の拳が籠った熱に耐えきれなくなり、湯を注がれて割れた陶器のように割れてしまったのだ。

困ったなぁ。

私は思う。

これじゃあ演奏に追い付かないじゃないか。

こう思っている間にも心臓はどんどん拍子を上げてきているのに。

どうしようかと思っている間にもダンスのお相手がやってくる。

肘が、相手の顔面を撃ち抜いていた。

おう、そうだ。

なにも拳だけが喧嘩じゃないよなぁ。

何を使ってもいいんだ。

なんでこんなこと忘れてたんだろう。

まだまだ私は踊れるぞ。

楽しいな。

あはははあはは。

楽しいな。

眼から何かがこぼれてくる。

熱い何かがあふれてくる。

やめてくれよ。

その熱さがこぼれるたびに、身体から熱が逃げて行ってしまう。

嫌だよ。

せっかく全部忘れてたのに、思い出しちゃうじゃないか。

身体が冷えていくほどに思い出す。

歪んだ拳が痛い。

肉が肉を打つ音が耳にこびりつく。

美しい円舞曲は消え去り、低く、鈍い、湿り気のある音だけが頭の中で鳴り響く。

ばちゃん、ばちゃんと動くたびに足元で水音が鳴る。

水たまりの様に一面に広がった血だまりの揺れる音だ。

嫌だ、嫌だいやだやだ嫌だややだ嫌。

狂わせてくれ。

涙が零れるたびに意識が鮮明になる。

異形と化した人間が迫り、首筋に痛みが走った。

異形が私の首にかみつき、頸動脈を食いちぎろうと力を籠める。

私は躊躇いなく指を異形の目に突き込んでいた。

異形が悲痛な鳴き声を上げながら私から離れ、抉り出された目玉が眼窩から零れ落ち、視神経に繋がれたままぷらぷらと揺れている。

その顔面を、壊れていない方の拳で思い切りぶん殴った。

ぶつん、異形が仰向けに倒れ、ぶつんと視神経が千切れた眼球が宙を舞う。

なんで狂わせてくれないの。

倒れた異形の顔面を踏む。

何度も何度も踏む。

潰れるまで踏む。

形がなくなるまで踏む。

そこまでしないと安心できなかった。

ずるりと異形の皮が剥がれ落ち、その下にあった肉が露になる。

肉を踏む。

肉がこそげ落ち、やがては骨が露になる。

骨を踏む。

肉と骨が混ざり、子供が適当に混ぜた白と赤の色粘土のような物体が生まれる。

楽にさせてよ。

私は肉がへばりつく靴底を粘土から引き剥がし、破裂しそうに鼓動を響かせる心臓を落ち着かせようと必死で呼吸をする。

靴底から酸化し黒く変色を始めた血がしたたり、次いで小さな肉片がいくつか地面へと落下する。

ぴくり、と異形の指先が動いた気がした。

許してください。

私はまた粘土を踏んだ。

粘土はさらに白と赤が混ざり、大きな丸い形をしていたものがどんどんと平らになっていく。

許してください。

踏む。

許してください。

踏む。

許してください。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

踏む。

 

許してください──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PIPIPIPIPIPIPIPIPIPI…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

永遠と続くような悪夢が携帯のアラームによってようやく終わりを迎え、立花(たちばな)クロエは目を覚ました。

汗で額に張り付いた前髪を手で払うと、掌がべっとりとしたぬめり気のある汗で濡れる。

もう12月だというのに真夏の熱帯夜を過ごした朝の様だった。

この様子だとシャワーを浴びないと学校には行けたものではなさそうだ。

携帯のアラームを止めながら、ふと隣に目をやる。

「すぅ…すぅ…。」

そこには双子の妹である立花シロエが穏やかな寝息をたてていた。

アラーム音でも一切起きる様子がない熟睡っぷりにクロエは小さく苦笑すると、指先でそっとその頬に触れる。

心地よい暖かさがそこにはあった。

生きている暖かみに触れ、早鐘のようになっていた心臓がようやく落ち着きを取り戻し始める。

そっとその頬を指先で撫で、柔らかい唇に触れる。

ほんの少しの間その柔らかさを堪能してから離し、そして指先に感じた感触が本物であったか確かめるように自分の唇に運ぶ。

汗をかいたせいで乾いてしまった自分の唇。

かさつくその感触にシロエの柔らかい感触が本物であったことをようやく実感すると、ようやく心臓が普段通りの拍子で鼓動を始めた。

シロエを起こさぬようにそっとベッドから起き上がり、制服のブレザー一式と下着の替えを手に取りながら部屋から出る。

母親もまだ寝ている様子であるため音をたてぬよう廊下を歩き、洗面所までたどり着く。

汗で濡れた寝間着を脱ぎ捨て、鏡で自分の顔を見た。

酷い顔だ。

幸いなことにクマはできていないがどこか疲れ切った顔をしている。

シロエには見せられない顔だ。

双子であるためシロエと瓜二つでありながら、どこか違う顔。

シロエはぱっちりとしていると言われる目だが私は目力が強いだなんて言われる。

すっきり通った鼻筋や綺麗な厚みを持った唇も、シロエは美人だと言われ、私はイケメンだと言われる。

似てるのに似てないなんて言われたこともあった。

でもそれはそれでよかった。

それが原因で悩んだこともあったが、そもそも生まれて間もない頃からシロエと私は妹と姉という違いを与えられている。

シャワーを浴びる前に顔を洗い、濡れた手で前髪を一気に後ろに撫でつける。

短くショートカットにした銀色の髪はそれだけで簡単に後ろへ撫でつけられた。

前髪で隠されていた顔が露になる。

昔は気に入らなかった自分の顔だが、今ではそれなりに気に入っていた。

そんな気持ちに少しむず痒い思いを感じながら私は浴室へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デデッデッデッデッデッデ~♪

貴女に届けこの想い♪恋の狐火が燃え上がる♪

365日貴女に寄り添いたいの~♪

 

 

 

シャワーを浴びたクロエは制服に着替え、朝のキッチンに立っていた。

2LDKの、三人で済むにも不自由しないマンションの一室。

そこがクロエの家であった。

適当にテレビを点ければなにやらアニメのオープニングらしき曲が流れており、そのリズムに身体を揺らしながら手慣れた様子で朝食の準備を始める。

画面を見てみれば肩がはだけた和服を身に纏った狐耳の女の子がノリノリで踊っていた。

夕飯の残り物である肉野菜炒めをレンジで温めながら二枚食パンを用意し、ピザソースを塗って細切れのチーズを載せる。

温まった肉野菜炒めをお弁当に詰め、オーブンにピザトーストと入れる。

ピザトーストが焼きあがるまでの間に卵焼き用の卵をかき混ぜ、専用のフライパンを使って火を入れる。

チーンとオーブンが音を立てる中、卵焼きをひっくり返す。

中々綺麗にひっくり返せた、形も悪くない。

こういうちょっとしたことでも上手くいくと朝から気分が良くなる。

焼きあがった卵焼きを皿の上に乗せ、切り分けてから肉野菜炒めと混ざらないよう仕切りを作ってお弁当に詰める。

残りの隙間にはカットサラダとプチトマトをつけてご飯を詰めればお弁当は完成だ。

作った数は三つ。

それぞれを好きな色のバンダナで包み、オーブンのピザトーストを取り出す。

ちょっぴり焦げ目がついてしまったがチーズはまだ熱々のまんまだ。

斜めに包丁を入れて食べやすくしたところでリビングの扉が開かれる。

「あぁ…おはよ…クロエ。」

「おはよう母さん、ご飯できてるよ。」

「ありがとぉ~できた娘で助かっちゃう~。」

スーツ姿の母がテーブルの座ったところでピザトーストが載った皿を起き、隣にアップルジュースが注がれたグラスを置く。

もそもそとピザトーストを頬張る母はもう三十路をとっくに通り越しているのに小動物の様だった。

クロエもシロエも背丈が163センチあるが、母は150センチあるかないかくらい。

顔もその背に見合ったように童顔であり、20代だと言われても別段おかしくない程だ。

我が母ながら末恐ろしい。

だがこれでも私たちが幼いころに父が病気で亡くなって以来、女手一つで双子を育ててきた立派な母親である。

「今日も帰りは遅いの?」

「いや、今日はそこまで遅くないよ~ただクリスマスは今年も早くに帰れそうにないかな。」

「分かったよ、シロエとどこか食べにでも行ってくるからこっちは心配しないで。」

実のところまだクリスマスの予定は決めていないが、シロエが自分以外と過ごすとも思えないし大丈夫であろう。

クロエも母の向かいに座って焼きたてのピザトーストにアイスコーヒーを添えて食事を始めた。

そのまま他愛ない世間話をしているうちにお互いピザトーストを食べ終え、母は時計を見ると慌ててカバンを片手に席を立つ。

そんな母親を呼び止めて包んだお弁当を渡し、いつも着ているコートを着せてから出勤を見送った。

そして時間を見計らってマグカップに牛乳を注いでレンジに入れ、食パンを一枚オーブンに入れる。

すると廊下からのそのそと足音が響いてきた。

「クロちゃ~んおはよ~。」

「おはようシロエ…って、まだ着替えてないのか。」

「クロちゃん着せてぇ~。」

「仕方ないな。」

苦笑しながらもシロエが持ってきた着替えを受け取り、シロエの寝間着をてきぱきと脱がせていく。

上半身が露になり、手からはみ出す程度に大きく形の良い胸を下着で覆って整える。

「あぁん。」

「…変な声を出すな。」

こちらまで変な気分になってしまうだろうと思いつつ一言忠告し、ワイシャツを着せてスカートを履かせる。

襟にリボンを結んで最後に厚手の白タイツを履かせてあげて一旦着替えは完了。

そしてとっくに温まっていた牛乳と焼きあがった食パンを取り出し、牛乳にはたっぷりの砂糖を入れ食パンにはたっぷりのいちごジャムとバター。

こうしないと口には出さないがシロエは少し嫌がるのだ。

クロエがシロエの前に好み通りの甘い朝食を出すと、シロエはご機嫌な様子で口に運び始める。

そしてクロエは食事中のシロエの背後に立つと髪を梳かし始めた。

これが姉妹の朝のルーティンであった。

クロエの髪は少し灰がかった銀髪だが、シロエの髪はまるで新雪のように白い。

まるで抵抗がないかのように櫛が通る滑らかさも相まって、まさしく絹の様な髪だった。

シロエが朝食を終えるころには髪は滑らかに梳かされ、綺麗なポニーテールへと整えられていた。

食事を終えたシロエの口元をクロエが拭い、食器を片付けて水に浸しておく。

その間にシロエは歯を磨きに洗面所へと向かっていた。

シロエは歯磨きまでやってくれとせがんでいたがさすがに平日は時間がかかるとクロエが断っている。

ただ磨き残しがないか心配なので休日は結局歯を磨いてあげているのだが。

歯磨きを終えたシロエにブレザーの上着を着せ、さらにその上から白いもふもふとしたファーがついたダッフルコートを着せた。

クロエはブレザーを着ずにワイシャツの上から黒いボア付きの革ジャンに袖を通す。

G-1と呼ばれているタイプのフライトジャケットだ。

亡くなった父親の遺品らしくかなり年季が入っていて少しサイズも大きいが、クロエはそれが気に入っていた。

背中にはかなり色褪せて消えかかっているがミサイルを抱いた女性と戦闘機に"GIANT KILLING"の文字がペイントされている。

そこがまたイカスと思っているのだがあまり理解されない。

クロエが身支度を整えたところでカバンに手を取るが、シロエはその手を引き留めジッとクロエの顔──唇をみつめる。

「…クロちゃん、唇乾いてるよ。」

「あ、ああ…冬だからかな」

「ダメだよ~リップ塗ってあげるから、じっとしてて!」

「…分かった。」

クロエが素直に待つと、シロエはまず自分の唇にリップを塗りだした。

少し多めにリップをつけると、ゆっくりとクロエの唇に自分の唇を近づける。

二人の唇が重なった。

シロエは多めに塗ったリップがクロエの唇にいきわたるようじっくりとキスを続け、名残惜しそうに唇を離す。

クロエは潤みを帯びた唇を指先でなぞり、小さく笑みを浮かべた。

「ありがと、シロエ。」

「えへへ~、どいたしまして。」

シロエがそう言って腕を絡めてくる。

しかし玄関に向かおうとリビングの扉を開いたところでテレビの音声が流れっぱなしであることに気づいた。

『はーい皆さまこやこや~、こんこんTV天気予報のお時間です、えーっと天気は…多分全体的に晴れです。』

「…相変わらずアバウトな天気予報だな。」

テレビを消そうとリモコンを手にしながら思わずツッコミを入れる。

これで結構的中率が高いのだからこの天気予報士?侮れない。

『次は朝のニュースのお時間です、それでは母さ…んんッ…じゃなくて…あー…ニュースの人お願いします。』

『くふっふふふふ…ちょ…ニュースの人って言い方なんなの…!?』

思わず続けてテレビを見てしまいそうになったがこのままでは遅刻してしまうと慌ててテレビの電源を切った。

何事もない平和な朝。

そのありがたみをかみしめながら今日も姉妹二人で学校に向かって歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ~えっと、皆さまこんこんは、ニュースの人で~す。』

 

 

『まず一つ目のニュースですが、このところ都内で行方不明者が多発しているということで、夜間の外出は極力控えるよう警察から要請が出ています。』

 

 

『クリスマス前に穏やかじゃないですねこれは…皆様どうかお気を付けください。』

 

 

 

 

 

 

 

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