劇場版魔法少女リリィ5!! ~推しの物書きVtuberは百合小説の夢を見るか~ 作:百合道いおりん
「いっつぅ…どこや…ここ…。」
黄美が痛む顎のあたりをさすりながら意識を取り戻した。
何か水音の様な音と、何かかすれる声の様なものが微かに聞こえるくらいで、周囲は暗かった。
窓から差す月明かりくらいしか光源がない。
月の光を目に入れて軽く目を覚まし、まばたきをして思考をはっきりさせる。
目を覚ました黄美はまず自分が今、どういう状況にいたかを思い出そうと再度目を閉じ、まだ微かに朦朧としている頭を動かす。
「たしかあの…牛頭…に肘ぶち込んで…折った!思たんやけど──」
「誰が牛頭だ。」
不意に響いた声に黄美がハッと目を開け、声の方に目を向ける。
「お前!牛頭ぁ!」
ゲスドランが寝台に腰掛ながら、黄美のことを眺めていた。
そのことに気づき黄美が立ち上がって距離をとろうとするが、足がもつれてしまう。
「まだダメージが残っているだろう、動くな。」
「なんや、随分とお優しいやないか…。」
「お前は私の眷属を産むための大切な素材だ、無碍にはせんよ。」
「は?」
「貴様には私の子を孕んでもらう。」
「…。」
突然の言葉に黄美が絶句する。
目の前にいる魔人、それは明らかに女性的な姿をしていた。
故に困惑するが、そもそも魔人は人ではない。
そう思いなおし、顔をしかめた。
「はん…今までウチが聞いた中で最悪の口説き文句やな。」
「…悪いな、今は気が利いたことが言えるほど、良い気分ではない。」
「あ~そういや、えらいあの女と…バディムと仲良さそうやったからな。」
バディム、その名前を口にすると、ゲスドランの眉がピクリと動いた。
「ふん、随分と強気だな。」
「ボケ、ウチかてお前といっしょで気悪いんじゃ。」
「…それもそうか。」
「いや納得すなや!」
調子を崩され、黄美が顔をしかめる。
やりづらい。
思った通りの答えが返ってこないことに対していら立ちを感じながらもどこか天然な雰囲気に流されそうになる。
それがさらにいら立ちを加速させていた。
「チッ…てか、お前、蒼と桃姫はどうした?」
「アオとモモヒメ…ああ、あの二人か。」
「どないしたんや…お前。」
「あれだ。」
「あれって…なッ!?」
「んッ──んぁッ…や…いやぁ…。」
「くふッッ…ふふッッ──ははッ…。」
ありえない光景を前に黄美が口を閉ざす。
目の前には桃姫を獣のように這わせた蒼が、同じく獣のように尻にまたがり、腰を振っていた。
蒼の股間からは通常ありえないモノが生え、一方的に桃姫を嬲っている。
「お前…お前があんなことさせとるんか!」
「違う…いや違わないと言えば違わないが違う。」
「訳の分からん事抜かすなや!」
「私も意味が分からんのだ!蒼とやらが力が欲しいと私の眷属になることを求めてきたのが始まりだからな!」
怒りを訴える黄美に対し、自分が原因にされるのは心外だと言わんばかりにゲスドランが声を荒げる。
その様子のせいで黄美の怒りは困惑に変わり、まぐわう二人を眺めて首を傾げた。
「…で、どうなったんや?」
「私の魔力を受けて目覚めた力で、あの桃姫とやらを嬲り始めた。」
「自分から?」
「自分でだ。」
「嘘やぁ…。」
「嘘じゃない。」
信じたくないと肩を落とす黄美に対し、ゲスドランは真っすぐに視線を返してきっぱりとそう言った。
その目のあまりの真っすぐさに、黄美も目の前の光景と言葉をあっさり受け入れてしまいそうになる。
意気消沈した黄美に対し、ゲスドランはゆっくり立ち上がるとその身体を抱え、寝台へと寝かした。
まだ身体の力が入らない黄美はされるがままに寝かされる。
「なんや…もうヤるんか。」
「あぁ、もう少し話をしたいというのなら話してやるぞ。」
「ボケが、気取るなや牛頭が。」
黄美は身体の力を抜き、好きにしろと身体を晒す。
しかしべーっと舌を出しながらゲスドランに笑って見せた。
「でもウチの身体に溺れんときや、気ぬいてウチの口にベロでも突っ込んでみ…ぶっつん噛み切ったるさかいな。」
「そうか、では気を付けよう。」
至極真面目な顔でゲスドランは黄美の言葉を受け入れると、服を脱がし始める。
しかし完全に脱がすまでもなく素肌の上から身に着けた革ジャンを開くと、それだけで閉じ込められた豊満な胸が露になった。
露になった胸をゆっくりと、こねるように揉みながらゲスドランは黄美の首筋に舌を這わせる。
小さな氷のつぶてが肌を滑り落ちていくような、肌が粟立つ繊細な舌遣いに、黄美が息をこぼす。
氷のつぶてが熱を帯びながら首から胸、胸からへそへ。
ゲスドランの舌先が肌に馴染むことに自身への嫌悪感と、微かな快感を感じながら黄美はされるがままになっていた。
たっぷり五分間は上半身を嬲られた。
舌で、指で、肌で、たっぷりと時間をかけて嬲られた。
黄美の息が荒くなり、心臓の鼓動が早まっている。
それを感じ取っているゲスドランはショートパンツへと手をかけ、下着ごと剥ぎ取った。
濡れていた。
ショーツと秘部が離れるとき、間には微かに透明な糸を引いていた。
潤みを持った秘部にゲスドランが指先を伸ばす。
指先で周囲をなぞり、入り口の潤みを指先で掬い取ると陰核を撫でる。
時間をかけて責められ、出来上がっていた黄美は思わず声を漏らしそうになるが、堪える。
しかし陰核を弄られる度に身をよじらせることは、我慢できなかった。
荒くなると吐息も。
早まる心臓も。
上がっていく体温も。
どんどんと湿っていく秘部も。
止められなかった。
「はぁ…──ぁ…この…下手糞が。」
反抗できるのは、口だけだった。
「ねちねち──…好き勝手…ぇ…やめろや。」
反抗している口も、どこか求めてしまっているようで。
「こん…ぼけェ──ッッ!」
黄美の言葉を合図にするように、ナカにゲスドランの指が入り込む。
あっさりと二本、入ったゲスドランの大きな指が、暴れた。
今までの繊細な責めが嘘のように強く、激しく、荒々しく。
かきまわされる。
ナカをかきまわされると、頭の中までかきまわされたような感覚が走る。
頭がぼぅっとして、とろけて、零れ落ちていく。
理性が零れ落ちてい──
「ぁ──はぁッ…はぁッ──ぁあ…んぁあッ!」
あえいでいた。
臆面もなく。
寝台の上で。
身体をくねらせ。
自ら腰を振り。
溶けていく理性の代わりにあふれ出る本能のままに。
反吐が出るほど相性が良かった。
いら立ちが加速する。
加速するほどに、信じたくなくて、こぼれおちる理性に溺れ、本能に縋る。
もう幾度感じたか覚えていない絶頂を感じ腰を震わせると、ゲスドランが指を引き抜いた。
ゲスドランの息も、荒い。
口から荒い吐息を漏らしながら、隠しきれない悦楽を表情に浮かべる黄美の頭を撫で、その金髪を掬い取る。
掬い取った癖のある金髪を、なにか感情を籠めて眺め、ゆっくりと掌からこぼす。
その姿を見て、黄美の頭が、冷えて固まるように微かに理性を取り戻した
「なんや…お前…。」
「…。」
「別の女のこと…思い出してんとちゃうで、ボケ…。」
「すまん。」
「謝んなや…ムカつくわ…。」
自分の顔を腕で隠しながら、黄美が言う。
「どうせあの女…バディムのことでも思い出しとったんやろ?」
「ああ…。」
「ほんまムカつくわ…。」
「…。」
不意に孤独感が、黄美を襲った。
自分に思い出せるような相手がいるだろうか。
いない。
思い出せない、いや、思い出さないような距離感で付き合ってきた。
それが心地よかった。
それがさみしくもあった。
故にゲスドランに腹が立ち。
羨ましくもあった。
「好きにせえや、あいつの代わりに、好きにせえや…。」
「己惚れるな…。」
「あ?」
「貴様にバディムの代わりは務まらん、絶対にな。」
強引に、顔を隠していた腕を動かされた。
両手首を片手で握られ、磔にされる。
それでも顔を横に向けて目を逸らしていたが、あごを掴まれ無理やり目を合わさせられた。
ゲスドランの真っすぐな目が、黄美を見つめる。
「バディムのことを思い出したのは私が悪い、すまなかったな。」
「な──。」
「だがバディムの代わりにする気は毛頭ない、貴様は貴様だ、そして私はそんな貴様を気に入っている。」
「…。」
「黄美と言ったな、私はお前が欲しい。」
ゲスドランはそう言いながら舌を口から這い出させた。
這い出させた舌を、そっと、黄美の唇へと近づけていく。
「なんの…マネや。」
口に舌でも入れようものなら食いちぎる、そう言ったのに、ゲスドランは舌を近づける。
真っすぐな目で黄美を見つめながら、舌を唇に触れさせた。
真っすぐな、嘘のない目。
黄美の孤独が揺らいでいた。
真っすぐな目で紡がれた言葉、
黄美だからこそほしいという言葉に、揺らいでいた。
目の前に、噛みつくのはたやすい距離にゲスドランの舌があるのに、黄美は動けない。
ゆっくりと舌が口の隙間をなぞる。
そして左右に舌が往復したとき、黄美は舌を口の中へと受け入れていた。
受け入れた舌を自身の舌と絡め、唾液を混ざらせあい、一つにする。
心地よかった。
心地よさと、相手を受け入れてしまった戸惑い。
戸惑いが、理性と共に溶けていく。
「ほんまに、ほんまにウチが欲しいんか…?」
「ああ、私の道に着いて来い…。」
絡ませた舌を離し、問いかける黄美を真っすぐに見つめ返して、ゲスドランが答える。
「考えたる…。」
そう言って黄美が再びゲスドランと唇を重ねた。
黄美の手助けによって、クロエは母とシロエを無事に病院に送り届けることができた。
二人ともどうにか命に別状はない。
母は全身裂傷に出血多量。
シロエは肋骨を三本折り、折れた肋骨が内臓を浅く傷つけていた。
それが医者からの診断だった。
都内にある病院、寝台に横たわるシロエを眺めながら、クロエは拳を握りしめる。
そして小さく深呼吸をすると、ぽつりぽつりと話し始めた。
「シロエ…ごめん。」
静かな病室に微かな声が響く。
「ずっと、隠してた、いろいろと。」
深呼吸。
「戦いが終わってから、ずっと夢を見てた、死体まみれの中で、延々と敵を殴り続ける夢。」
深呼吸。
「怖かった。」
深呼吸。
「でも言えなかった。」
深呼吸。
「戦いは終わったから、言いたくなかった。」
深呼吸。
「ごめん。」
すぅー、っと大きく息を吸う。
「あと、シロエが男の人と歩いてたのを見た。」
はぁー、っと吐く。
「バイトだって嘘ついて、会ってたのも知ってる。」
深呼吸。
「知ってて、隠してた。」
目頭を拭う。
「隠してた結果が、これだ。」
目頭を拭う。
「ごめん。」
情けなかった。
「ごめんなぁ。」
涙がこぼれた。
涙がこぼれて、シロエの頬に当たる。
深呼吸。
涙を拭う。
涙を拭った手をぎゅっと握り、拳を作る。
作った拳を、掌にぶつけた。
パン、と音が鳴る
大丈夫。
「もう、怖くない。」
拳に何かが触れる感触。
狂いでもしなければ受け入れられなかった感触。
もう怖くない。
本当に怖いことはさっき分かった。
死ぬよりも、なによりも怖いこと。
それはさっきシロエが教えてくれた。
これから血染山河の屍の道を進むことになろうとも、それでも守らなければならないものがある。
「かっこよかったなぁ…シロエ。」
シロエの頬に落ちた自分の涙を拭い、クロエが優しく呟く。
もう、その瞳から涙はこぼれていない。
「いってきます。」
クロエは革ジャンをひっつかみ袖を通す。
色褪せたバックプリントの"GIANT KILLING"の文字が、今日は一段と頼もしく見えた。