※この作品はR-18です。

劇場版魔法少女リリィ5!! ~推しの物書きVtuberは百合小説の夢を見るか~    作:百合道いおりん

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3話 鎌坂黄美

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄美は陽が落ちた歓楽街を一人歩いてた。

別に遊びに来たわけではない、ここが彼女の下校路なのである。

通りには帰宅前に遊びに来たらしき背広のサラリーマンの群れに、香水の匂いを漂わせる出勤途中らしき水商売風の女性やホストらしきは男性たちで溢れている。

彼らの間をするすると縫う様に黄美は歩く。

その速度に一切の淀みがない。

まるで誰もいない通りを歩くかのように自然に歩いているが、実際には多くの人に溢れた大通りである。

ゆらゆらと金髪を揺らしながらこともなげに彼女は歩いているが、それは並大抵のことではない。

やがて大通りから外れ、小さな小路に入ると、更に複雑な路地裏へと足を踏み入れる。

地面にはいつから置かれているのか分からないビールの空き箱や割れた空瓶に潰れた空き缶、そして煙草の吸殻が所狭しと落ちていた。

脇にはプレハブの様な小屋が立ち並び、人が住んでいるところもあれば場末の飲み屋をやっているところもある。

客たちは店内に入っても防寒具を外すことなく、隙間風に時折震えながらビール箱に座布団を敷いた簡易的な椅子に座り、思い思いの酒を飲んでいる。

そんな普段通りの光景を眺めつつスニーカーの靴底で小さなガラス片を踏み潰しながら歩いたところで、黄美はカバンから二つのものを取り出す。

それは煙草と年季の入ったジッポライターであった。

煙草はブラウンの下地に小さく馬が描かれたもので、銘柄の下にはDARK COCOA TASTEと書かれていた。

その文字の通り煙草からは甘いチョコの様な香りが微かに漂っている。

煙草の中でもリトルシガーという種類に分類されているものだ。

一般的に普及している紙巻き煙草と形は同じだが、刻み煙草を煙草葉を加工したシートで包んでいるため一応葉巻に分類されているものである。

黄美は慣れた様子で火を点けると口にくわえたまま煙を吐き、荒れた路地裏を歩く。

ここには黄美が未成年だからと煙草を取り上げるような輩はいない。

そういう場所だった。

この場所の空気を吸いながら黄美は産まれ、そして生きてきた。

ゆっくりと燃焼していくシガーの味を楽しみながら歩いていると、そこかしこから黄美に声がかけられる。

それはホームレスであったり、何をしているかわからないおっさんであったり、黄美より少しばかり年上なだけのホステスであったり、様々だ。

「黄美ちゃーん、今年もカレークリスマスやってくれんのかい!?」

「おーう山田のジジイ、参加費300円やから酒飲んですっからかんにならんときや~。」

「黄美ちゃん!それ俺も参加していいの!?」

「そういやマッさんは去年おらへんかったっけ、参加費だけで食い放題やさかい楽しみにしとき。」

「キミちゃーん!私アリマの競馬当てる!一緒にクリスマス行かない!?デート!?」

「期待せんで待っとくわシュウさん…ちゅうかえらい日本語上手なっとるやん。」

それぞれに適当に返事を返しながら路を歩く。

そうしてようやくわが家へとたどり着いた。

路地裏に所狭しと建っているボロ屋の隙間に挟み込まれるように建てられた二階建ての家。

一階は狭いながらも食事処兼居酒屋となっており、外見もボロいことにはボロいが他の店に比べればマシである。

どうにか年季が入った店だと言えないこともないが、それでも周りの雰囲気も相まってボロ屋だという印象はぬぐえない。

店名を掲げる黄色い看板には”八咫烏”という店名が書かれている。

黄美が昔に聞いた話では導きの神様らしく、この店にお客を導いてくれること、そしてこの店に来た客に良い導きがあってほしいと願掛けに名付けたらしい。

店内からはカレーの良い匂いと微かな煙草の香りが漂っている。

安心する実家の匂いだ。

「ただいまー。」

「お、黄美ちゃんおかえんなさい。」

店内に入るとこの店の常連である猫崎(ねこざき)がまず挨拶をしてきた。

背丈が150センチもない低身長で可愛らしい顔をしているが、性格は姉御肌で喧嘩っぱやい。

腕っぷしも小学生の様な体格のくせに異常に強く、猫崎だなんて苗字だが中身は猫というより虎である。

「オカンは仕込みしてるん?」

「ええ、なんかカレーの味が悪いとかで裏に籠ったっきりよ。」

「ほんま商売人に向いてない性格しとるわ…しゃーない、ウチが相手するからちょっと待っててな。」

黄美は呆れながらもカウンターに入り、裏から居住スペースになっている一階の半分に入る。

そこは黄美の母親の居住スペースになっているのだが、そこらに手製の調味料やら常温で保存できる食材が並び、半ば食品倉庫の様になっていた。

その一角で屋内だというのにサングラスをかけた長身の女性が一人、巨大な両手鍋を前に腕を組んでいた。

黄美が帰ったことに全く気付かない様子の女性を見て、黄美は肩をすくめながら大声で声をかける。

「オカン帰ったで!」

「あ…おかえり…黄美。」

黄美の母、鎌坂桐(きり)は一瞬だけ黄美に視線を向けると小声で言い、また鍋に視線を戻してしまう。

こうなると母は納得するまで動かないことを黄美は知っているので、それ以上は何も言わずに自分の部屋がある二階へ向かい、中にカバンを投げ入れブレザーを脱ぎ捨てる。

二階は半分が物置になっていて、黄美の自室は少し大きい物置のような狭さであったが、それでも自室をあてがってもらえているだけ感謝している。

自室にあるのは畳まれた布団に折り畳み式のちゃぶ台と、小さな衣装タンス。

後はカバンをおいてしまえば埋まってしまうような部屋だったが、気に入っていた。

黄美は一階に戻り、店に戻るとカウンター裏にかけておいた黄色いエプロンを手に取ってササッと身に着ける。

「またせてごめんな~猫崎さん、って、勝手にビール開けんといてや!」

「いいでしょ別に、客ほったらかして裏に引っ込んだままの店主がいる店なんだから。」

猫崎は勝手に店の冷蔵庫から瓶ビールを取り出し、グラスに注いで飲んでいた。

既に瓶の半分ほどはなくなっており、おそらく黄美が店の後ろに引っ込んですぐに飲みだしたと思われる。

仕方ないと注文票に瓶ビールと記入し、冷蔵庫からお通しを取り出す。

今日のお通しは牛肉のしぐれ煮だった。

既に母が小鉢にとりわけラップをしているそれをレンジに入れて少し加熱し、猫崎の前に出す。

「はいお通し、注文はなんにする?」

「じゃあチャーハンと餃子。」

「はいよ、ちょっと待ってな~。」

「あと…今夜どう?」

猫崎が注文の後にそう付け加えると、注文票に料理名を記入していた黄美の筆が止まった。

そしてじとっとした目を猫崎に向け、口をとがらせる。

「それ言うんやったら料理の後にしてや、手元が狂うかもしれへんやろ。」

「あら、始めからこんなことくらいで動揺する様な初心な子じゃなかったじゃない。」

「デリカシーないやっちゃなほんま…まぁ、ええよ…。」

「んじゃ、また連絡するわね、黄美ちゃん。」

笑みを浮かべる猫崎に黄美はべーと舌を出して答え、寝かされていた餃子の生地と冷蔵庫から餃子のタネを取り出した。

幼いころから母に背負われて厨房に立っていた黄美の手つきは慣れたもので、あっという間に生地を伸ばしてタネを包んでフライパンに並べて火を入れ始める。

さらに餃子を蒸し焼きしている間にチャーハンの調理に入るが、餃子が蒸しあがるまでの時間を体感で覚えており、良いタイミングで蓋を外して水気を飛ばしにかかる。

水気が飛ぶまでの間にチャーハンを綺麗にお玉で皿に盛り付け、小麦色の焼き色がついた餃子を皿の上に並べる。

「はい、おまちどさん。」

「いただきまーす!」

猫崎が軽く手を合わせてから軽くたれをつけた餃子を口に運び、一気にチャーハンをレンゲでかきこむ。

男子学生の様な勢いであったが、黄美はその食いっぷりは嫌いではなかった。

カウンター裏に肘をつきながらその様子を静かに眺める。

これが黄美の日常だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱いていた。

抱かれていた。

私が舌を這わせ、相手の秘部をくすぐる。

相手も同じように舌を被せ、私の秘部を撫でる。

幾度も繰り返したところで相手が焦れたように仰向けになった私に上から覆いかぶさり、唇を重ねながら指で秘部をこねるように撫でまわす。

唇の隙間に入り込んだ舌は乱暴に口内を動き回っているというのに、指先は同じ個所を小刻みに、執拗に刺激してきた。

ツボをじっくりと、指の腹を圧しつけるように柔らかく、それでいて強く突いてくる。

相手の指が動くたびに、私のナカはねだる様に締め付けを強くする。

圧されるたび、より深くツボを突いてほしいと肉壁がふくらんでいるのが自分でもわかる。

快感に耐え切れずに腰が跳ねた。

ツボを恥骨の裏側と指で挟み込むように刺激され、みっともなく私は果てた。

息が荒い。

私のナカから引き抜かれた相手の指から糸が引いていた。

その指を、相手が自分の口でしゃぶる。

しゃぶった指を、今度は私の口に近づけてくる。

私はそれを舐めた。

自分のナカから溢れたものと、相手の唾液が入り混じったものを舐めた。

指先を舐め、そのまま腕に舌を這わす。

起き上がりながら鎖骨まで舌を動かすと、相手が微かに身体を震えさせた。

鎖骨を、なぞる。

首元に行った舌を、今度は首筋に。

首筋から、頬に。

頬から、耳に。

くすぐるように耳で舌を動かすと、相手が可愛らしく声を出した。

私は耳を舐めながら相手の後ろに回り込む。

耳を刺激されたせいか、胸の先端が誘っているように膨らんでいた。

じっとりと執拗に耳を舐めながら背後から胸に手を回し、焦らす様に優しく胸を揉む。

相手の息がどんどんと荒くなっていく。

左右の耳を時間を置いて別々に虐めながら、不意に吐息を吹きかける。

びくん、と身体が震える。

同時に胸の先端を指先で軽く擦った。

相手が身をよじらせる。

逃さぬように胸を掴んだ掌に力を込めた。

先端を指先でつまむ。

つまんだまま引っ張る。

乱暴な指遣いだった。

痛みを感じたはずだった。

だがじっくりと虐め続けた相手の身体は、痛みではなく快感を感じていた。

嬌声が上がった。

その声を合図にするように私は背後から相手を押し倒し、尻を突き上げさせ、股ぐらに指を突っ込んだ。

指が二本、狭い入り口を潜り抜けた。

シーツに染みができるほどに、濡れていた。

ナカに入った指を動かし、相手の好きなツボを突く。

突く度に肉が蠢く。

膨らんだ肉壁が二本の指を痛いくらいに締め付ける。

やがて相手が果てた。

腰を震わせ、果てたことを自分から叫んだ。

果てた相手の股から指を抜き、うつぶせに寝転がった背中を舌で舐めた。

汗で湿った背中が、しょっぱい。

相手が身体を返して仰向けになり、両腕を突き出してきた。

私は腕の間に身体を預け、唇を重ねる。

抱きしめあった。

抱きしめながら身体の上下を入れ替えた。

抱きしめあいながら太ももを、互いの股の間に擦り合わせた。

それだけで果ててしまいそうだった。

私は声を上げた。

今度は相手が私の胸の先端を虐めだす。

気が付けば私は果てていた。

次は相手が果てた。

それから先は覚えていない。

ただひたすらに、身体を貪った。

それだけは覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄美がホテルのベッドで目を覚ました時にはもう猫崎の姿はなかった。

ただ灰皿に残った彼女が愛飲している煙草の吸殻と、お札だけで多めに置かれた宿泊料、それと別に添えられた一万円札が猫崎が昨晩ここにいた証である。

別に黄美は金が欲しくて猫崎と寝ている訳ではない。

関係を持つようになったのも、元は黄美が酔った猫崎を誘ったのが始まりである。

ちょっとした火遊びのつもりだったのだが、身体の相性が良く、そのまま今でも関係が続いていた。

それだけだ。

だが猫崎は黄美が何度いらないといってもケジメのように最低でも一万円、時にはそれ以上の額をおいて帰る。

しかし、黄美には猫崎の気持ちが少しばかり分かっていた。

本気になりたくないのだ。

黄美は、猫崎のことが嫌いではない。

猫崎も、黄美のことは嫌いではないだろう。

だが互いに身体以上の関係になる気はなかった。

だから黄美はもう猫崎が金を置いて帰ることに何も言わなくなっている。

特定の一人に入れ込むということが黄美にはできなかった。

故に、クロエとシロエ、蒼と桃姫の二人が時折羨ましく感じることもある。

黄美は二人分の汗や唾液でまみれた身体を起こし、シャワーに向かう前に甘い香りの漂うリトルシガーを口に咥え火を点けた。

煙を吸い込み、じっくりと燃えていくシガーを眺めながら口を外し、味わいつつ煙を吐く。

今日は少しばかりダウナーになっている。

昨日、シロエに男ができたなんて疑惑が出たからかもしれない。

その時に普段のクロエからは信じられないほど動揺する姿を見て、心がざわついていた。

「ガキかっちゅうの。」

シガーをくわえたまま、ベッドに再度寝転がる。

黄美は自分が恋愛をできない理由が少しばかり分かっていた。

相手と幸せにいる未来が思い浮かばない。

そのくせ信じた結果裏切られるという未来はありありと見えてくるのだ。

それなら他人のまま、距離を保ったままでいたほうが、ずっとましだ。

黄美はもし道端で猫崎が男と歩いているところを見かけても、何も思わないだろう。

いや、残念だなとは思う。

寂しいなとも思う。

また店に来てくれるかな、とも思うだろう。

ただ裏切られたとは一切思わない。

そういう関係だ。

それ以上の関係は持ちたくない。

普通の人間はそんなこと考えないのだろうか、いや、分かっていても踏み込んでいくんだろうか。

そうやって大人になっていくんだろうか。

分からない。

分からないまま身体だけ重ね続けてきた。

分からないまま何かに取り残されていくような、漠然とした不安のみが募っていく。

それでもまた猫崎に誘われれば私は彼女と寝るだろう。

彼女が離れたとしても、別の相手を見つけるだろう。

そんなことを考えたところで黄美がくわえていたシガーの灰が崩れ、ぽとりとシーツの上に落ちる。

灰を払い、短くなったシガーを灰皿にねじ込む。

口からふっ、と残っていた紫煙が吐き出された。

言いようのない孤独と甘い紫煙の香りに包まれながら、微かに残る猫崎の残り香を感じ、黄美は再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 

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