・主人公はTS転生した少女、遠藤初来(えんどうはつき)だゾ
・中学入学初日の朝の出来事だゾ
・文書(ふみか)は初来の友人で同性愛者で、遠藤初来ガチ恋勢だゾ
・本編で、文書が仕込んだセクシーランジェリーを初来が発見した直後の話だゾ
カーテンの隙間から零れる朝日のまぶしさになんとか冷静さを取り戻したボクは、文書の余罪探しの為に朝っぱらから自分の部屋を隅々まで見て回ることとなった。
結果、見つかったのはセクシーランジェリー(下)だけだった。
これは、ギリギリ……本当にギリギリで執行猶予が認められるかもしれない。
「つい衝動的に」と言われたら納得してしまいそうだ。
……あ、いやダメだこれ。胸のサイズとかぴったりだ。完全に計画的な犯行だ。
極刑が確定した文書の事は頭から追い出して、ベッドに並べた証拠品を眺める。
上下共に薄紫色で、ブラの方は真ん中がパックリ割れていて乳首が丸出しになるようになっている。
パンティの方も同じくパックリ割れていて、女性器だけではなくお尻の穴まで丸見えになるようになっている。
非常に残念ながら、装飾は凄くいいのだ。控え目ながらもレースが可愛らしさを出していて、薄紫色という挑発的な色合いでありながら菫のようなかわいらしさを想起させる。
がっ、駄目っ……!
戦犯……圧倒的戦犯っ……!
デザイナーの努力を無に帰す、圧倒的解放感っ……!
文書に言うつもりはないが、穴あきじゃなきゃ普通に欲しいと思ってしまったくらいにはセンスがいい。
やはり元男だからか、服選びのセンスでは女の子に勝てそうもない。ウケ狙いのネタ服選びならワンチャン……
そんなことを考えながら、ふと何の気なしにオープンブラを手に持って、姿見鏡の前に立って何も着けてない胸に乗せてみる。
「エッ……」
いや、えっっっっろいなこれ。
前世でも今世でも触れることのなかったセクシーランジェリーだが、少しボクの性癖に刺さってるかもしれない。
好奇心のままにオープンブラを身に着け、ショーツを脱いでオープンショーツを履いてみる。
今日から中学生になるボクの身体は、年齢に不釣り合いな育ち方をしている。
Dカップの胸に、嬉しくはないが大きめなお尻。恐らく色素の薄目な乳首は、控え目ながらも自己主張をしていた。
対して女性器周辺はというと、薄く生えた陰毛はまだボクの性器を隠せる程ではなく、誰にも触れさせていないそこはピタリと閉じられていて、性器というよりはただの排泄器官の一部といった様相を見せている。
「……やべぇ」
言葉が出なかった。いや出たけど。
今まで、いくら前世が男だったとしても今の身体に興奮することなんてなかったし、自慰の経験もなかった。
けど、これは……背徳感というか、エロく育った肉体とまだ未成熟な性器というアンバランスさだけでも目が離せない。
その上、夜のお誘いの為の下着を着用しているのだ。
「……」
思わず生唾を飲み込む。
心臓の鼓動が伝播したかのように、下腹部にピリピリとした痺れが走る。
まるでそうする事が当然の事のように、鏡に映るボクが胸に両手を添えた。
「……ん」
ワイヤーの入っていないブラが手に押されて形を変え、出来た隙間から見える乳房は、部屋の薄暗さも相俟って見えずにいる。
触れた手の温もりがじんわりと全身に広がるように、心地の良さが脳を甘く融かす。
先端に触れないまま、胸の柔らかさを確かめるように力をいれる。
「ん、んぅ……」
感覚としては、性感2割心地よさ8割だろうか。
男としての自慰は成人していた前世でしっかり、しっかり経験している。
だからこそ、その違いが明確に理解できた。
男性の性感が跳ね上がるような波なら、女性の性感は緩やかな波だ。
迫る高波に押し流されるのではなく、海辺でさざ波に揺蕩うような、不確かなモノを探るようなそんな快楽。
力の具合を確かめるように強く、弱く、胸を愛撫する。
ふと視線を下げると、首筋を撫でる髪の感触に、悪寒にも似た痺れが腰に走った。
見下ろす先、ブラから顔を出す乳首は通常とは違い、硬く勃起していた。
恐る恐る、微かに震える指先をそっとあてがい、そっと乳首を摘まむ。
「ーーっ」
その瞬間、今まで感じていた心地よさが一斉に快楽へと変わった。
全身に一瞬で広がった快感に思わず尻もちをつき、腿とお尻で感じる床の冷たさに、ボクはようやく自分の身体の火照りに気付いた。
快感を逃すように吐いた息は熱く湿っていて、ふと視線を向けた先、姿見鏡に映るボクは呆けたような顔で、何かを期待するかのような目をしていた。
尻もちをついたときに腿に置いた手の感触を意識してしまう。
(どう、なるんだろう)
高鳴る心臓と、好奇心を抑え込むように身体を両手で抱きしめる。
ボクは依然として、自分の心は男だと思っている。
だから、どうしたって女性としての快楽に対しての拒否感というのがあって、だからこそ今まで自慰行為を避けていた。
……けれども、初めて触れた女性の性感は思っていたよりも深くボクの心に入り込んだようで。
身体を抱いていた腕を解いて、そっと右手を腿の内側に潜り込ませる。
せめてもの抵抗にと、女性器の快感に耐えようともう片方の手で胸を強く掴んで。
ボクは、そっと、女性器にーー
「ねーちゃん、起きてるかー?」
「おっっっきてるよぉぉぉぉぉっっっ?!」
最速だった。
妹の声がドアの向こうから聞こえた瞬間、ブラを掴んでベッドの下に放り込む。
かちゃりとドアノブが回された音が聞こえた時には既にボクはベッドの上で毛布を被っていた。
オナバレ回避RTA(リアルタイムアタック)があれば間違いなく世界最速を獲得したであろう挙動を終えたボクのもとへ、妹の水騎が近寄ってきた。
「おはよーねーちゃん、まーたブラジャーしてねーんだな」
母ちゃんに怒られるぞーと笑いながら、いつものように抱き着いてくる水騎を受け止めた。
「んー、ねーちゃん汗かいてる……?」
「あ、あはは、熱かったのかなー……?」
「んーまだ春だしそんな暑くねーと思うけど……? それになんか心臓どきどきしてるし……」
「あはははは、はは」
水騎とボクとであついの字が違う気がしたけど、そんな事よりも。
下を見られるかもしれない恐怖を誤魔化すように乾いた笑いをしながら。
一刻も早く妹が部屋から出ていくよう祈るのだった。