転生して17年、それまで男として生きてきた感覚が抜けていても、どうも自分が女であるという自覚は薄いようだ。
ここが異世界ではなく、慣れ親しんだ現代日本なのはある意味で救いだろう。強くてニューゲームではないが、人生イージーモードなのは確実で通っている中高一貫の女子高では『高嶺の花』などと呼ばれて中々にウハウハで女の子にキャーキャーされて楽しい人生である。
そして、今の私は前世含めて最大の岐路に立たされている。
私、佐倉夏乃の幼馴染である秋吉斗真の勉強の面倒を見ていたら、彼はベッドに体を預けて眠ってしまっていた。
精悍な顔立ちでイケメンの部類に入るであろう幼馴染は、運動神経バツグンでバスケ部のエースで将来はバスケで食っていけるんじゃないかってくらいセンスに溢れている。その代わり、オツムがセンスの欠片もないクソザコナメクジだった。
いや、決して悪いのではない。きちんと赤点回避してるのはいつだったかに見せてもらった点数表には記されている。ギリギリセーフだったけども。
そんな斗真に彼の両親は、私へと泣きついて「勉強を教えてあげて」と依頼。懇意にしている相手の頼みを無下に出来ないので許諾して勉強を教えていたら、オーバーヒート起こして気絶するように寝落ちしていたのが現在にまで至っている。
部活の練習から始まり、空いた時間は勉強。体を休める暇が無いのは解っている。
「ふむ」
しかし、顔はイケメンだな。体つきも昔と比べてガッシリとしている。折れればいいのに。
それだけ厳しい練習量を積み重ねてきたのだろう。細身ながら、引き締まってて脱力してるのに体が硬い。満遍なく鍛えているからだろう。
ペタペタと体を触りながら、私は最後に幼馴染の唇に目が引き寄せられる。
コイツが童貞であることは解っている。バスケばっかりにかまけて女遊びは二の次であることは一番近くて遠いところから見てきた私にはわかっている。決してEとDではないハズだ。
ちなみに私は処女だ。前世は童貞。何故って結婚するまでは清い体でないといけないからだ。一生に1度の機会、好きな人であり結婚する相手に貰われるのが普通であろう。いわば、私は戦略的童貞だったのだ。今は戦略的処女だが。
不貞を疑われないだろうけど、結婚するならば相手に貞操を捧げなければいけない。その時に非処女あるいは非童貞であったなら浮気や不倫を疑われかねないだろう。それを回避するため、私は処女を捧げるなら、結婚して子供を産むと決めた相手だけだ。でも、男と結婚しないといけないんだよな。はぁ、憂鬱だ。
「うわっ、危なかったぁ」
いつの間にか斗真の顔が近くにあり、唇を重ねようとしていた私がいて慌てて飛び退く。いや、別に男と女なんだからおかしく見られないんだろうけど、やっぱり前世ですらファーストキスがまだだったのに、こんな簡単にファーストキスを終わらせてしまうのはアカンだろう。
何か危険な魔法でも使ったんじゃないか。ここは現代日本とはいえ、もしかしたら異世界なのかもしれない。違っていても、出された飲み物に何かが混入していたのか? 例えば、キスをさせたくなるような怪しい薬とか。アカンだろ、こんな形で初めてはアカン。じゃなくて、初めてはやっぱり女の子がいい!
ドキドキ、と高鳴る心臓がヤケに煩く感じる。
私の頭の中にデフォルメされた私の姿で悪魔が囁く。
『やっちゃいなよ。今ならバレないぜ?』
今度は天使の姿をした私が反論する。
『駄目です。まだ付き合ってもないのにそんなこと……!』
『でも、やらないといつまでも進まないぜ? グダグダ本能寺じゃないんだからよ』
『キスまでならいいんじゃね?』
『よーし、やっちゃいなYO』
『やっちゃえ、やっちゃえ♪』
おい、もっと踏ん張れよ。即落ちしてるじゃないか。
ええい、ここは強い自制心が必要だ。
先ずは頬を引っ張り、本当は起きているのではないかと確認する。目を開ける気配がないな。
「ホントに寝てるんだな。よし」
いや、良くねーよ。なんで寝顔を眺めてほっこりしてるんだよ。面倒見てるんだから、ちゃんとやらないといけないんだ。
そう思った矢先、斗真は姿勢を崩す。
「危ない……!」
このままでは床に頭をぶつけてしまう。慌てた私は、咄嗟に引き寄せて斗真の頭を引き寄せて受け止める。
(うわぁー、やっちゃったぁー)
寝顔が近いやん。
倒れ込んで受け止めたまではいいとして、斗真の顔は私のHカップある胸に埋もれていた。
ムニュゥッと潰れた胸を見ると、女体の神秘を感じる。
「んんっ?」
そして、股間には斗真の下半身が当たっているのだが、妙に硬い。
筋肉ではない。当たり前か。なんでこんなところが大きくなってるんだ?
場所的に男の局部なのだろうが、こんな大きくなるものだっけ。何故かお腹の奥がキュンと疼いたが、女の体はよくわからんので割愛。
斗真の寝息が聞こえて安堵を浮かべたら、彼は寝惚けながらガッシリと力強くそれでいて優しく胸を鷲掴みする。
「んぅっ……!」
胸から電流が走り、ビクッと体を震わせる。なんだ、コレ。変な感じがするぞ。
戸惑いを浮かべたのも束の間、斗真は両手で胸を揉み始める。
変幻自在、自由自在に捏ねられて彼の手によって己の胸は様々な形へ変えていく。
柔らかさ、心地よさ、質感など覚えるかのように執拗な愛撫が続けられる。
ピリピリと微弱な電流が走ってるような感覚が胸から流れ、なんだか変な気持ちになってくる。
「んぅっ……とうまぁ……ダメだよぉ……」
何が何やら。いけない事をされてるのは解ってるのに、どうしてか体に力が入らなくて斗真が上にいて抜け出せない。
抵抗しないのを幸いとばかりに、最初は探るように優しく揉んでいた手が力強く激しくものへと変わる。
「ふぁっ……だめっ……激し……っ」
ジンジンと胸を中心に熱が集まり、それは全身へと伝播していくのが感じられる。
なにか大きな波が来そうになっている。怖い。でも、なんだかそれを味わいたいと思わされる。
いやいや、駄目だろ。流されるな私。どうにかして抜け出さねば!
「あっ……あっ……胸、そんな強く掴んじゃ……」
服と下着越しなのがもどかしくなってくる。直接触ってほしいなんて欲望が芽生え、それがいけない事だと解っていても止められない。
でも、それでも。
「いいかげんに、しろぉ!」
ゴスッ!!
「イッッテッッッ!!」
思いっきり振り下ろした拳骨は、斗真の頭を直撃し彼は痛みに悶えて転げ回る。
すぐさま距離をとり、私は頬を紅潮させて自分の胸を抱くようにして斗真をキツく睨みつける。
「オマエ、絶対起きてただろう!」
「なんの話?」
「とぼけるな! 人が無抵抗だからって調子に乗るな、この不埒者!」
それでも、とぼけるなら容赦しないぞと脅せば奴は観念して白状する。
「悪かったな。起きてたよ」
「いつから?」
「夏乃と一緒に倒れ込んだあたりからだ」
「おまっ……おまえ、マジでふざけんな!」
「目が覚めたら抱きしめられてるんだから、誘ってるのかと思ってつい」
「誰が誘うか! そんなことした覚えはない!」
「いや、それは無理があるだろ」
そもそも、斗真が倒れこもうとしたのがいけない。私は善意で助けただけなのにあまりにも酷いじゃないか。
もしもの事が起きたらどうするんだ。
「もし子供が出来たらどうするつもりなんだっ?」
「デキる訳ないだろ!?」
えっ、そうなの?