呆れたような声がする。優一郎はぼんやりと目を開けた。白い光が目の中に入ってくる。柔らかなものに包まれて眠っていた優一郎は目を開けて周囲を見回した。白い壁、白い天井、そして白い床。いつもと変わりない研究所の様子が目に入る。それを確認して、優一郎は安堵の息をついた。別に何か変わったことがある訳じゃない。そう思って優一郎は再び目を閉じようとした。
その時、視界の端で何かが動いた。優一郎は目を細めてその正体を確認しようとした。赤い靴下が見える。紺野プリーツスカートと、同色のブレザー。見慣れた絵美佳の制服の姿に優一郎は思わずため息を吐いた。
「姉さん? ……痛っ!」
身体を起こそうとした優一郎は局部に走った痛みに悲鳴を上げた。すると絵美佳が深々とため息をつく。どうやら動くと痛むらしい。ぼんやりとした頭でもそれだけは理解出来た。何故かは判らないまま、優一郎はのろのろと元の体勢に戻った。
「うーん。わたしが悪かったって感じかな」
珍しく絵美佳の声には本気で詫びる響きがあった。不思議に思いながら優一郎は首を傾げた。すると頭に柔らかなものが当たる。優一郎は眉を寄せて首だけをゆっくりと動かした。
一気に硬直する。優一郎は由梨佳の身体の上に横たわっていたのだ。
「いてっ!」
反射的に由梨佳の上から退こうとした優一郎を再び痛みが襲う。優一郎は恐る恐る痛む股間に目をやった。
由梨佳のスカートがめくれている。そして優一郎のズボンはいつの間にかなくなっている。剥き出しになったペニスは、何故かあるべき場所にない。優一郎は引きつりながらゆっくりと視線をずらした。出来るだけ痛みのない体勢を選びながら身体を起こす。
優一郎のペニスはしっかり由梨佳の陰部に飲み込まれていた。
「うわあっ!」
余りの出来事に優一郎は叫び声を上げた。何故、こんなことになっているのかが判らない。動転するあまり、優一郎はペニスを由梨佳の膣から力任せに抜こうとした。だが痛いばかりで頑として動かせない。優一郎は半泣きになりながら必死の面持ちで絵美佳を見やった。
「あーあーあーあー」
絵美佳が疲れた表情でため息をつく。優一郎は半泣きのままで絵美佳を見つめた。絵美佳は黙って歩み寄ってくると、由梨佳の開きっぱなしになった足の傍に座り、由梨佳の陰部を覗き込んだ。恥ずかしさに隠そうとする優一郎の手を押さえ、接合部をしみじみと覗き込む。
「ママってば、しっかり銜え込んじゃって……。これはバラすしかないわねえ」
当然、という顔をして絵美佳が掛け声をかけて腰を上げる。一気に蒼白になった優一郎は伸びをしている絵美佳を見上げた。ばらすって、と呟きながら引きつる。顔色が悪くなった優一郎を見ていた絵美佳が肩を竦めて、だって、と困ったように言う。
「あんたのペニスをちょん切るわけにはいかないでしょ?」
「当り前だよ!」
絵美佳が言ったことを想像してしまった優一郎は声を限りに叫び返した。だが絵美佳の方はあっさりとそうよね、と応える。優一郎はひくひくと頬を引きつらせながら恐る恐る自分の性器を見た。
「ママの性器は故障しやすいから、修理しやすいように簡単にバラせるようになってるの。えっと工具は……あったあった」
絵美佳は優一郎が蒼白になって接合部を眺めている間にさっさとラジオペンチを手に取った。笑顔で近づいてくる。優一郎は慌ててストップをかけるために両手を振り回した。だが待ってくれるような絵美佳ではない。
その後、絵美佳は由梨佳の女性器をペンチ一本で見事にばらし、優一郎の萎えきっていたペニスを救出することに成功した。だがそのことは優一郎の記憶には殆ど残らなかった。由梨佳とセックスしたことも、ペニスが酷い目にあったことも、何もかもが曖昧になってしまった。それをいいことに絵美佳はその日のことは全てを夢だったのだ、と強引に優一郎に教え込んだ。優一郎も深層意識で痛い記憶を封じたがっていたため、その日のことは夢だと思い込んだ。
やがてその日のことが酷いトラウマになっているのだと優一郎は自覚するのだが……それは少し先の未来の話である。