※この作品はR-18です。

聖櫻番長のセックスフレンドだらけの爛れた非日常   作:クビキリサイクル

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トップバッターを飾るなら、この二人かなって。




心実&野々花編
心実と野々花と新薬誤飲 その1


 

 

 

 

 椎名心実。

 笹原野々花。

 美少女率高めの聖櫻学園でも、特にレベルが高いと噂される二人。

 ただ可愛い、美しいだけでなく、その善良な精神性が高く評価され、男女分け隔てなくとてつもない人気を誇る。当人達もとても仲睦まじく、互いを尊敬し合う素晴らしい先輩後輩の間柄と言えよう。男友達(いわゆるボーイフレンドってやつ)である俺としても、胸を張って紹介できる人達だ。

 ……さて。

 そんなお二人ですが。

 

 

「はっ、ぁん……んぅ」

 

「ふぅー……んちゅ……」

 

 

 

 現在、揃って俺の体を味わっている。

 

 

 

 片や俺の唇に吸い付いて、舌で口腔内を舐り回し。

 片や俺の首筋に顔を埋め、匂いを肺いっぱいに吸い込んだり、唇を這わせたりしている。

 誤解しないでほしいが、今俺がこの二人に合意無しで襲われている訳ではない。証拠に、お互い舌は絡み合って舐り合っているし、両手は彼女達の肢体を服の上から這わせている。

 かといって、この状況に納得がいってるわけでは、お互い無いだろう。

 何故こんなことになったのか―――快感をしっかり味わいながらも、度を越してしまわぬよう冷静になろうとする頭で、ぼんやりと思い出していた。

 

 

 

 その間違いは、些細な事が始まりだった。

 そしてそういう事に限って、大体取り返しがつかない事態に陥るものである。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……初見だと完全に毒殺現場だよなぁ、これ」

 

 

 とある晴天の日。

 俺こと新城一也が喫茶コスモスに入店して、最初に発した言葉がそれである。

 視線の先には、テーブルに突っ伏して動かない椎名と笹原先輩の姿。

 本来なら、すわ何事か!? と慌てふためく場面ではあるだろうが、如何せんこのようなシチュエーションは何度も経験してきた。

 当事者としても。

 そして冷静に彼女等の周りを見てみれば、二人の前には青々とした色の”ナニカ”。

 恐らく、というか間違いなくあれを二人同時に食して、ダブルノックアウトしたのだろう。

 触れたくないので無視。

 

 

「あれの処理はまぁ、店長さんにでも任せるとして」

 

 

 問題は暗黒物質(ダークマター)を食べた二人だ。

 この店自体はまだ開店前とはいえ、うら若き少女二人が気絶しているのを放っておくというのは、紳士として恥ずべき行為である。かといって揺さぶって起きるものでもないので、起きるまでここに留まるか、安全な場所に運び出すかのどちらかとなるが……。

 俺は運び出すことにした。

 あの”ナニカ”と同じ空間に長時間いるというのも、二人にも俺にも悪い気がするから。

 何かしらの瘴気が店に染み付かないことを祈っておく。

 

 

「お手製コーヒー飲ませてくれるって言うから来てみたらこうなってるとか、普通はミステリーなんだけど、なっと」

 

 

 というわけで、二人を横脇に抱え、二階の先輩の部屋へ。

 最初の内は少し気後れしていたものの、今では勝手知ったるなんとやら。部屋に向かう足取り、ドアを開閉、ベッドに寝かせる、その全ての動作に淀みがない。物色する気なども毛頭ないので、安らかになってきた彼女達の寝顔を見届け、部屋から出る為にドアへと向かおうと踵を返す。

 と、そこで。

 笹原先輩のポケットの辺りから振動音が聞こえた。

 

 

「ん?」

 

 

 ……後になって思い返してみれば、俺はここで気にせず立ち去るべきだったかもしれない。

 そうであったなら、二人は自分達で解決出来たかもしれないし、そうなれば俺も共犯者になる事は無かった。

 しかしこの時の俺は大した警戒心も持たず、ポケットから零れ落ちたスマホの画面を見て、連絡してきた人物が知り合いであることを確認してしまった。

 致命的だったのが、その相手に笹原先輩は今気絶してるからしばらく電話に出れない、という事情を、無駄な親切心を出して伝えてやろうという気になってしまった事だ。

 後悔は先に立たず。

 結局俺は電話に出てしまった。

 電話口から、画面に表示された通りの名前の人物の声。

 

 

『もしもし。笹原殿でしょうか?』

 

「いいえ。新城殿です」

 

『おや……?』

 

 

 電話の向こうから相手―――湯川基世(ゆかわきせ)の首を傾げる気配を感じる。

 

 

「いや、電話番号間違えたとかじゃないぞ。先輩が出れないから、代わりに俺が出てるだけ」

 

『ふむぅ。何故近くに新城殿がいるのかは、まぁさておきとしましょう』

 

「なんか先輩に用でもあんのか?」

 

『ええ。大至急お伝えしないとならない案件がありまして~』

 

「ん……?」

 

 

 こいつがそこまで言うって、結構珍しいな。

 薬品が爆発して巻き添えになろうとけろっとしてる奴なんだが。

 

 

「おっけ。じゃあ俺から伝えとくわ。なんて伝えりゃいい?」

 

『話すと長いのですが……実は今日のお昼頃、我輩と笹原殿が突き当りの廊下でぶつかってしまいまして』

 

「うん」

 

『その時落としてしまった我輩の新薬と、笹原殿のエキスを取り違えてしまったようなのです』

 

「おい貴様」

 

 

 なんてことをしてくれてんだ、この渦巻眼鏡は!

 どっちも何が起こるのか怖過ぎる組み合わせじゃねぇかよ!

 

 

『いえ、我輩は事前に気付けたので事故は起こっていないですぞ。我輩もこのエキスが何なのか、そもそもエキスなのかも分からず、研究したい欲と手元に置いておきたくない恐怖とが鬩ぎ合っている最中でありますが、今はそれはいいのです』

 

「置いといていい案件かそれ。絶対研究しようとするんじゃないぞ」

 

『問題は我輩の新薬ですぞ』

 

「ん……」

 

「新薬、ね」

 

 

 椎名が身動ぎして起きる気配を見せる。

 ベッドに寝かせた二人の間に腰掛け、空いた左手で僅かに瞼を開いた椎名の前髪を撫でる。

 なんかめんどくさそうな案件だから、まだ寝ててもいいという気持ちを込めて。

 それだけ、のつもりだったが。

 

 

『あー、そのぉ……』

 

「口を濁らせるな。早く吐け」

 

『我輩としては、画期的な発明になったと思っているのですぞ? ただ、口に出すのは少々憚られるものというか、偏見な方は下品だと突っ撥ねてしまわれると申しますか』

 

「つまりどういう―――」

 

 

 はむ、と。

 左の人差し指を啄まれた。

 

 

「……ん?」

 

『…………あくまで副作用としてではありますが、一言で言うと』

 

 

 

 

 

『媚薬です』

 

 

 

 

 

「………………………………………………………」

 

『なので、笹原殿には決して、決してその小瓶に入った我輩の新薬を、エキスと取り違えて料理に混ぜるなどしないよう言い含めてほしいのですが…………? 新城殿? 何かご不明な点でも?』

 

「…………………そうだな」

 

 

 爆弾発言によって真っ白になった頭で、なんとか平静を取り戻そうと努めながら、応える。

 いや、混乱の真っただ中ではあるだろう。

 こんな状況で落ち着けってのも、無理がある。

 

 

「椎名と二人で既に料理に混ぜて食べたようなら、どうしたらいい?」

 

『うばぁ』

 

 

 俺の左手指に、椎名が吸い付いていた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『媚薬、といってもそれは副次的な効果でありまして、本来の用途は避妊薬なのです』

 

 

 ベッドに置いた先輩のスマホから、言い訳がましい湯川の説明が続く。

 

 

『避妊の方法として挙げられるのは、ピルの服用、ゴムの装着の二つですが、女性の健康を損なう、直接感触を得られないという不満から、避妊を正しく行わないケースが多くあります。所謂出来ちゃった婚のパターンですな。これが原因で家庭崩壊する事例も多いのですぞ?』

 

「それで?」

 

『そこで、我輩が発明した新薬です。身体を発情状態にする代わりに、卵子の周りに本来精子が侵入してから発生する受精膜を事前に張り、子宮内に精液を注入されようと精子が着床しないという、我ながら素晴らしい発明ですぞ。体内に残らないよう、子宮内からきっちり排出するようにもしてあるのです』

 

「それで?」

 

『これを元に不妊治療の新薬も発明して、我輩なりに少子高齢化の社会に一石を投じようとですな』

 

「それで?」

 

『あ、あの、機嫌を直してほしいですぞ。我輩もまさかこのような事態に陥るとは思っていなかったので……』

 

「…………俺は別にいいんだよ。問題は、実害を被った二人の方でさ……」

 

 

 学園の制服に身を包み、俺の指に吸い付いていた椎名は、今は俺の腕に全身を預け、両手で俺の左手を包み、握ったり撫でたりを繰り返している。

 これでも椎名はなんとか自分を落ち着かせようと試みているのだが、結果は芳しなく、息は荒くなり、顔の紅潮は深みを増すばかりである。

 椎名の柔らかな手に情熱的に触れられるのは、適温の湯に浸かってマッサージを受けてるような、正直心地良い感触だ。

 しかし、シチュエーションがシチュエーションなので、そんな気にはなりづらい。

 

 

「ぅ……ん…………」

 

 

 椎名の艶かしい声が、興奮を抑えた息遣いが、すぐそこから聞こえてくる。

 接触がこの程度なのは、椎名の理性が強く働いているからだ。

 俺から見て取れる椎名の発情度合いは、今すぐ俺に覆い被さってもおかしくない程。それだけ薬の効き目の強いのだろう。

 椎名と同じく学校の制服を来てベッドに寝転ぶ笹原先輩はまだ眠っているが、椎名と同じく身体が茹っているような様子が見られるので、同じように効いていると見て間違いなさそうだ。

 

 

『く、薬の効き目ですが、個人差があるものと推測出来ますぞ。人体実験の段階では無かったので、動物実験のサンプルからのデータではありますが……。……我輩、通話切りましょうか?』

 

「……って言ってるけど、どうする? 椎名」

 

「しんじょう、さん……」

 

 

 一際強く俺の左手を握って、椎名は言う。

 

 

「ごめん、なさい……。わたし、またご迷惑……おかけして……」

 

「……ふぅ」

 

 

 一度深呼吸。

 ……そんな気にはなりづらい、筈だが…………椎名の荒れた息遣いを聞いていると、自信が無くなってくる。

 椎名が身体を預けてきて、腕のあちこちから蠱惑的な感触が伝わってくるのも問題だ。

 落ち着け俺。ここで俺までその気になったら、本当に取り返しのつかないことになるから。マジで。いや湯川の言う通りなら子供出来る心配はないんだけど。

 

 

「お前が謝る事じゃないって。薬の管理を怠った湯川の責任なんだから」

 

「ですけどぉ……」

 

『……あー、ですな。では、最後に解毒というか解消法についてなのですが』

 

 

 これまた言い辛そうな湯川の声。

 

 

『元々が避妊薬で、本来使用する人は服用した方とそ(・)う(・)い(・)う(・)関係であることを想定しての副作用なので、服用後に性行為をする前提で作っていて……』

 

「…………」

 

『その、特効薬は男性の精液となっております』

 

「~~~~~~~~~~~~~っ!!!」

 

 

 椎名の顔が更に茹で上がった。

 うん、まあこの薄い本みたいな展開からして、そんな気はしてた。

 

 

『一応口からの経口摂取でも効果はあるのですが、一番効果が高いのは子宮から……つまりですな、膣内射精(ちつないしゃせい)が最も効果的ですな。はい』

 

「え、えっちなことをするってことですか……?」

 

『最悪自慰行為で済ませるという手もありはしますが、その場合短くとも数日は発情状態が続くかと思われますので……』

 

「何なんだよその、飲んだら最後何が何でもヤらせるという固い意志を感じさせる効力は」

 

 

 出回りでもしたら性被害者も増えそうな二面性を持つヤベー薬だ。

 

 

『我輩からは以上。……申し訳ありませぬ』

 

 

 そう言って、湯川からの連絡は途絶えた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 気まずい空気が流れる。

 ……二人が自分で慰めて鎮められるならそれがいいと思っていたが、それだと数日掛かると来たか。

 連休中ならそれでもなんとかなったかもしれないが、残念ながら明日も学校だ。こんな見るからに発情してますフェロモン出しながら学校に行こうものなら、この二人じゃ通学途中で襲われるのが目に見える。いや、うちの男子生徒は俺に遠慮して俺の女友達にはまるっきり接触しようとしないんだけども(超余計なお世話なのだが、今回は助かる、のか?)。体調不良を訴えて休むという手も考えられるが、こんなこと家族には言いたくないだろう。当然俺にだって知られたくなかっただろうが、知ってしまった後なのでそれはどうしようもない。

 あーくそ。

 なんで電話なんぞほっといて、ちゃっちゃか出て行かなかったんだ俺は。

 

 

「椎名」

 

「は、はいっ」

 

「まず、だ。俺に悪いとかそういうことは考えなくていいからな」

 

 

 ……腹括るか、俺だけでも。

 これで向こうに拒否られたら立ち直れたもんじゃないが。

 

 

「だから、お前がどうしたい……ってのもあれだから、どう済ませたいかに任せて」

 

「で、でも!」

 

 

 俺の言葉を遮り、椎名が言う。

 

 

「新城さんは、ただ事情を知ってしまっただけで……私の、その……相手をする事は無いんです。だから、私の事は放っておいてくださっても」

 

「立場が逆だったとして、お前は同じように言うか?」

 

「っ、それ、は……」

 

「……いや、お前の優しさにつけこむみたいな言い方だったな。そうじゃなくて、だな」

 

「…………」

 

「俺もさ、そういうまぁ、エロい事。こんな形は正直首を捻りたいけど。俺も若い男だから、出来たらしたいけど。相手が誰でもいいって程、貞操観念捨ててる訳でもないんだ。たださ」

 

 

 言葉を選んでいる、というよりは、気持ちをちゃんと伝えられる言葉を探して、口籠る。

 少し時間を置いて。やがてなんとかそれに近い言葉を探り当て、口にした。

 

 

「お前が相手なら、良い初体験になるだろうなって」

 

「――――――――――――――――」

 

「俺からはそんだけだから……っと」

 

 

 椎名の体が更に密着する。

 というか、正面から凭れ掛かってきた。

 更に言うなら、対面座位の形で俺の胸に飛び込んできた。

 ……俺の鼻先に椎名の柔らかな髪が触れ、匂いが鼻腔を擽ってくる。それで、なんとなく分かった。

 これが『雌』の匂いだと。

 椎名の常にある、癒されるような爽やかなような女の子の匂いではなく、雄を誘い、昂らせる匂いがこれなのだと。

 

 

「駄目です……」

 

「……椎名?」

 

「私……我慢してたんです。迷惑かけちゃ駄目、あなたの優しさを踏み躙ったら駄目、って……。胸が痛いくらいにドキドキして、お腹の奥がきゅるきゅるして、あなたに触れてほしいってずっと疼いてて……」

 

「そんなに思い詰めてたのかよ……」

 

「はい……。それでも、新城さんにお相手してもらおうなんて絶対駄目って、思ってたのに……」

 

 

 椎名の手が俺の背中に回る。

 抱き締められ、制服越しの椎名の乳房が腹と胸の中心辺りに押し付けられ、形を変えているのを感じる。

 それを意識して、頭が更に火照ってくる。

 

 

「そんな風に言われたら……私、もう―――」

 

 

 抑えが効かない。そう言いたいのだろう、と思う。きっと。

 しかしその言葉は、俺の左手が椎名の頬を撫でると、遮られてしまった。

 

 

「あ……♡」

 

 

 代わりに発せられたのは、艶のある歓喜の声。

 俺からの接触に心の底から喜んでいるかのように、俺の手に頬を摺り寄せ、恍惚とした表情を浮かべている。

 こんな状況でもなければ、まるで椎名が俺を好きで好きでたまらないかのようにさえ、勘違いするくらいの嬉しそうな顔だ。

 まぁ、発情しているとはいえ、これだけの接触、これから先の行為まで許してくれようと言うのだ。それだけの信頼を寄せられているのだから、暴走してそれを裏切るような真似はしたくない。

 湯川はああ言ったが、人体実験はまだ行っていないとも言っていた以上、人間相手の投与ならば最後の最後までしなくてもいいかもしれないのだ。

 ……それを言ったら避妊薬として完成してるかも不安材料だが、その辺はあまり深く考えない。

 なので、可能な限り落ち着いて行為を行うべき。

 そう考え、椎名の顔と正面から向き合う。

 

 

「あー……っと。キスはNGだったり?」

 

「だ、大丈夫です……けど、その前に」

 

「? 前に?」

 

 

 発情して赤くなった顔をまた別の事情で赤らめ、椎名は告げる。

 

 

「な……名前で、呼んでください。心実、って……」

 

 

 …………こんな時でもそんな可愛いお願いしてくるとか、こいつは俺に乱暴な感じで抱いて欲しいんだろうか。

 右手を彼女の背中に回し、抱き寄せ、密着度が更に高まる。

 

 

「分かった。けど、そんならお前も名前で呼ぶように。一也ってな」

 

「よ、呼び捨てはちょっと―――」

 

「心実」

 

「! ……は、はぅ」

 

 

 またも茹で上がる椎名―――いや、心実の顔。

 こいつの体温上がっていく一方だな。これも媚薬の効果だろうか。いや、関係ないか。単純に恥ずかしがってるだけだ。

 顔を俯かせようとしていたが、それは俺の左手が許さなかった。

 頬に添えていた手を、顎へと這わせ、僅かに持ち上げる。

 

 

「あ……あの、し……いえ。一也、さん」

 

「ん」

 

「私……その、初めてですから……。優しく、してくださいね……?」

 

「お前さ」

 

「?」

 

「いちいち俺の理性溶かそうとしてくる辺り、むしろ乱暴にしてほしいのかと思うんだけど」

 

「ええっ!?」

 

 

 こうやってちょいちょいムード台無しにしていかないと、獣に堕ちてしまいそうだ。

 

 

「……じゃ、するぞ」

 

「は、はいっ」

 

 

 する宣言を出すと、心実の身体が強張ったのを感じた。

 それをなんとか解そうと、右手で背中をゆっくりと撫でる。しかし心実の発情状態は、制服越しのそれさえも愛撫に変えてしまうようで、一撫でする毎にビクッと、快感に身悶えるように身体が跳ねていた。

 これでは余計に緊張してしまうだけだ。そう考え、口付けを優先することにした。

 

 

「ん……」

 

 

 瞼を閉じ、唇を突き出すこともなく、完全に待ちの姿勢。

 そのキス待ち顔があまりにもいじらしくて、写メって永久保存しようかとついつい頭に過ったが、流石にそれは台無し過ぎるので止めた。

 緊張のせいか、心実も抱き寄せる手に力が入っている。当然密着度合いもどんどん高まり、制服越しの乳房もむにむにと形を変えて、押し付けられる。それに気付いているのかいないのか。多分無意識なんだろうなぁ、とか考えながら。

 心実の唇に口付けを落とした。

 

 

(柔らか……)

 

 

 まず浮かんだ感想がそれ。

 片や発情状態と言えど、お互い掛け値なしのファーストキス。流石にディープキスから始める訳にもいかず、唇を触れ合わせるだけのプレッシャーキスだ。

 しかしそれだけで女子の、彼女の口肉がどれだけ柔らかなものなのかが窺えてしまった。

 その柔らかさと瑞々しさは今まで経験したことがない、まさに未知の感触。

 俺の貧困な頭じゃ例えが上手く出て来やしない。

 

 唇だけでこれだ。

 ディープにやって、彼女の口内を舐め回した時、果たしてどんな味がするのか。

 そんな好奇心に襲われたりもするが、まだ冷静な気持ちの方が勝ち、唇を離す。

 時間にして何秒だったか。体感だと15秒程度だと思うが、2、3秒をそう錯覚してる気もするし、実はもっと長くて5分程重ねていたような気もする。

 

 

「は…………」

 

 

 心実の口から出た艶かしい吐息が、俺の唇にかかる。

 ファーストキスはレモンの味、とか言われてるけど。あんまそんな感じしなかったな。

 感触が心地良過ぎてあんまそっちに気が向いてなかった。というか、プレッシャーキスで味覚感じる要素あるのか?

 ……もしかして、舌は入れないでも唾液交換はするのが普通だったり?

 いや、まぁその辺の踏み込みを間違えて拒絶されるよりはいいし、心実も(ファーストキス的には)満足してるようだから問題ない。きっと。

 

 

「一也さん……」

 

「……たく、なんて顔してやがる」

 

 

 今のプレッシャーキスだと官能的な刺激としては弱弱しいと思うが、心実の表情はとろん、と恍惚としたものになっていた。

 幸福感に満たされたような表情とは裏腹に、もっともっとと、更なる口付けと快楽を求めて視線で訴えてきている。俺の左手に掛かる髪の一房が、艶かしさに更に一役買っていた。

 この段階でこんなとろとろに蕩けていて、この先の行為を進められるのだろうか。

 理性的に考える部分の俺はそうして半ば呆れていたが、しかし本能的(動物的とも言える)な部分の俺はそうもいかない。

 心実のこの顔を、もっと蕩けさせたい。真面目で清純が常の彼女が、だらしなく乱れた姿を見たいと。

 それが俺の本性だと言わんばかりに叫んでいた。

 なんなら今すぐ彼女の制服をひん剥いてやりたいとまで考えている両手の衝動は抑えるものの、先程の浅いキスを繰り返す程落ち着ける訳でもない。

 再び心実の唇に口付ける。

 

 

「んむぅ♡」

 

 

 口を割って舌を侵入させようとしたが、先手を取られた。唇が触れ合った時点で、心実の方から舌を入れてきたのだ。

 さっきまでされるがままだった彼女の積極性に驚いたが、僅かに遅れて俺の舌も、彼女の舌を絡めながら口内に侵入する。

 唇とはまた違った柔らかさと、くにくにとした弾力。

 そして口端から零れんばかりの唾液を舐めとって、その感触を堪能し、味を確かめる。

 

 

(……レモンの味、って風じゃないけど。甘いって言いたくなるのも、まぁ分かるな)

 

 

 本来唾液など味はしない、してもそう良いものじゃないだろう。

 しかし、心実の口内を舌で舐めとり、味覚が訴えてくるのは、確かに甘美だった。

 どう甘いのかと言われても表現しようがないというか、今まで口にしてきた甘味とは類似しない。新感覚かつ、癖になる味だ。やたらと熱を感じるのは、恐らく発情状態のせいで体温が上がっているからだろう。

 

 

「んっ……ちゅぅ……んんっ、ふぅ……はぁ」

 

「はむっ、ちゅる……んくっ、んくっ」

 

 

 唇に吸い付く。

 舌を絡めとる。

 唾液を流し込む。

 口を大きく開いて、お互いに空気を補給。

 唇を覆うように、咥える。

 喉を鳴らし、唾液を啜る。

 初のディープキスとは思えない程、お互いがお互いを貪るような、そんな濃厚な絡み。

 口と口の絡みで考えつくことは全てやってしまおうという試みを、言葉も交わさないまま実行しようとしているのでは、とさえ考える。

 次は舌を吸ってみるかと、心実の舌を甘噛みしようと。

 

 したところで。

 背後で起き上がる気配。

 

 

「ふむぅっ!?」

 

 

 俺の背後ということは、心実の視線の先、ということで。

 俺の顔の横から背後を窺った心実が、驚愕の声が(俺の口の中で)上がる。

 絡めていた舌をひゅぽっと抜き取り、抱き締めていた俺の身体を押して、距離を離す心実。

 俺はまぁ、諦めの境地に達しているというか、起きたら事情話さないとなぁと考えてはいたので、ゆっくりめに振り返る。

 

 

「…………」

 

 

 熱に浮かされた顔で、笹原先輩がこちらをぽぉーっと見ていた。

 顔を赤らめてはいるが、それ以外は読めない表情で、正直何を思っているのかが分からない。

 今の俺達の淫行を見られたのか、多分見られたろうと思うが。果たしてどう行動するだろうか。

 

 

「さ、笹原先輩っ!? これは、その、ですね……」

 

 

 浮気現場を抑えられたみたいな慌て方をする心実。

 しかしまぁ考えてみれば、気絶して起きたら自分の部屋で、後輩二人が自分が寝てる傍らでかなりディープなキスしてる訳だから、頭がショートしてもおかしくはないだろう。

 まずは事情を話そうと、声をかける。

 

 

「先輩。実はですね」

 

「――――――ズルい」

 

「「え?」」

 

 

 

「私も新城くんとちゅーするぅ!」

 

 

 

「えぇ…………」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 という経緯があって、現在に至る。

 

 

「んっ……ぷぁ」

 

 

 唇を離す笹原先輩。

 あの後、問答無用でキスしてきた上に、いきなり舌を入れてディープなやつしてきたんだわこの人。

 味わいとか気持ちよさとか、そういうのは心実と負けず劣らずだったけれど、いきなりだったからあまりそれに浸れなかった。

 が、それも最初だけで。二度三度と連続で繰り返す内に、俺の方からも舌でアプローチするようになる。

 俺と先輩がそれに熱中してる内に、呆気に取られていた心実も負けじと俺の首筋に顔を埋め、そのまま今の状況について、たどたどしく説明していた。

 

 

「……つまり、私と心実ちゃんは、湯川ちゃんの媚薬を間違えて飲んじゃって、えっちな気持ちになっちゃってる、ってことだね」

 

「まぁ……まとめるとそうなりますね」

 

 

 俺と舌を絡めて、幾分か落ち着いたらしい。ちゃんと心実の説明は聞いていたようだ。

 さっき飛び掛かってきた時はトチ狂ったのかと思ったが、媚薬効果で冷静さを欠いていたのだろう。

 

 

「そっか……。私のせいで、ごめんね。心実ちゃん」

 

「いえ、そんな……」

 

「新城君も、ごめんね……? 私も、えっちな気持ちが抑えられなくて、えっと……勝手に、キス、しちゃって」

 

「そういうのはもういいっこなしで。運が悪かったとしか思えないので……」

 

 

 湯川は後日説教確定だが。

 つっても、俺は二人の体調不良にかこつけて美味しい思いをしているようなものなので、そこのところで罪悪感はある。心実は受け入れてくれたと思っているし、先輩も向こうから飛び込んでくるくらいだったが、それも媚薬を摂取するようなことが無ければ起こり得なかっただろう。

 

 

「や、やっぱり、嫌だった……?」

 

「いえ、心実にも言いましたけど、相手が先輩と心実なのは不満ないんです」

 

 

 心実もそうだが、先輩も先輩で俺に身体を押し付けるように抱き着いてくるので、その肢体を余すことなく身体で感じ取れてしまう。えらく贅沢なサンドイッチ状態だった。

 こう言いながらもこうして密着してくれている辺り、媚薬の効果は心実と同じくらいに出ているのだろう。

 それを、俺と心実が淫行しているのを見て、アクセル踏み抜いた感じか。

 先輩も良い意味でボリュームある人なので、こうして密着されると否が応にも性別差を感じて心臓に悪い。

 

 

「ただ、こんな形でこういう行為をするのは気が引けるなぁ……と、思うのです、が……?」

 

「…………」

 

「……笹原先輩?」

 

 

 じとーとした目つきで、頬をぷくーと膨らませて黙ってしまった。

 ゆるふわ系の先輩がそんなことしても可愛いだけなんだが、しかし不機嫌なのは確かっぽい。

 なんだろう。何かミスってしまっただろうか。

 ひょっとして二人相手にして不満が無いとか、節操無しだとか上から目線で偉そうだとか思われた?

 そんなつもりはこれっぽっちも無かったんだが、そう思わせたなら謝らないと。

 

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

 

 密着状態を解いて頭を下げようかとする前に、心実からの声。

 

 

「もしかして、ですけど…………その……わ、私だけ一也さんに、名前で呼ばれてるから、なのでは……と」

 

「……この状況で気になるのがそれぇ?」

 

 

 流石に違うでしょ、と思って、先輩に向き直るが。

 

 

「……心実ちゃんだけ、ずるい」

 

「…………」

 

 

 どうやらそうっぽかった。

 媚薬から始まったこの展開において尚、不満を述べる所がそこって。

 乙女心的に名前呼びって、そんなにも重要なイベントなわけ?

 

 

「人生一度きりの初めてなんだし、そういうムード作りはあって良いと思うなぁ」

 

「こんな半ば無理矢理の状況で、ムードも何も……」

 

 

 しかしまぁ、おこのまま進めても、だろう。

 先程の心実と同様、先輩もこうしておねだりしてくれているのだから、わざわざ断ることもない。

 

 

「えーっと……じゃあ、野々花さん」

 

「……♡」

 

 

 それがよかったのかの是非は、彼女が満面の笑みで頬摺りしてきた事からお察し。

 先輩の頬はもちもちしてて柔っこいなぁ。

 なんて若干現実逃避しても、現実は変わっちゃくれない。

 いや、こうして擦りついてくれるのは嬉しいんだけど、これ媚薬効果なんだよなぁって思うと、ちょっと残念な気持ちにもなるだけ。

 

 

「じゃあ、ね? 一也くん」

 

「ん……はい」

 

「心実ちゃんに乗っかるみたいだけど……私とも、えっちなこと、してくれるかな?」

 

「……薬がどの程度まで効いてるのか分かんないんで、手探りでしますからね」

 

「もー」

 

 

 くす、と小さく笑って、野々花さんは俺の頬に口付けを落とす。

 

 

「そこは、気持ちよくする、でいいんだよ?」

 

「……そういうもんですかね?」

 

「そういうもの、だよ」

 

 

 加減の分からない童貞にはハードルが高い。

 まぁ、痛かったり気持ち悪かったりは出来る限りさせるつもりはない。

 心実と野々花さんから誘われたようなものと考えても、自分の快楽だけを求めてはオナニーと一緒だ。お互いで高め合ってこそ、セックスとして成り立つと俺は思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いわゆるエロマンガ媚薬。

本編ももう一つも全然進めてないのにこんなの投稿するのも気が引けますけど、頑張って書き切りたいと思います。
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