聖櫻番長のセックスフレンドだらけの爛れた非日常 作:クビキリサイクル
新聞部の部室奥には、倉庫として扱われているもう一つの小部屋がある。
学内に配る新聞はもちろん、取材メモなどの資料や、その他書類などが山のように積まれ、中心の机と椅子を囲うように配置されている。外から開けるには鍵が必要。防音設備も整っているらしく、部室からも話し声は漏れ聞こえないようになっているので、密談をするにはうってつけと言えるだろう。
そんな一室の真ん中で。
俺は椅子に座らされ、後ろ手に手錠を掛けられていた。
「まぁ、あなたならその鎖を引き千切るくらい、簡単でしょうね」
俺の前方に設置された机に腰掛け、神楽坂先輩は言う。
俺の目の前では、何故か上履きを脱いだ黒タイツに包まれた先輩の足が組まれている。太腿の先へと繋がるスカートの中身が見えるか見えないかのギリギリのラインを攻めてきて、足そのものも含めて俺の視線を強く誘惑してくる。まだ残されている意志の力で振り払い、先輩の目に視線を固定。
……感触を確かめてみるが、成程。校内ドロケイで用いる手錠のようで、先輩の言う通り引き千切るのはわけなさそうだ。なまじ本物でも引き千切れるし。
けど、それが分かっててわざわざ拘束する意味はなんだろうか。
というかそもそも何故俺は拘束されているのだろう。
いつでも引き千切れるからこそ、手錠を掛けられている事にあまり危機感を覚えられない。
「なので、ルールを設けるわ」
「ルール?」
「これから、私が手錠の鍵を開けるまで、あなたはそれを引き千切らないこと。もちろん他の方法で外す事も駄目。私がこれで外してあげるまで、あなたは大人しく拘束されていて」
そう言って、これ見よがしに摘んでいる鍵を、何故か俺の制服の胸ポケットに仕舞い込む。
……まぁ、流石にこの位置の鍵は、腕を解放したり逆立ちしたりでもしないと取り出せそうにないが。何故自分のポケットに仕舞わないのだろうか。
「それが出来たら、今回の一連の出来事について、公に口外しないと改めて約束しましょう」
「……ちなみに、出来なかったら?」
「そうねぇ。公にはしないけれど、あなたと相手の親御さんには報告してあげましょうか」
「……約束してくれなくても、先輩は口外しないと思いますが」
「秘密を外に漏らさない為に有効な手段。その一つ、教えてあげるわ」
先輩は組んでいた足を揃え、こちらへと屈む。そして俺の顎に手を添えた。
……先程までの不機嫌そうな笑みと違い、唇が妖しく弧を描く艶やかな笑み。この笑顔は、先輩は楽しんでいるが、絶対に良からぬ事を考えている顔だ。この笑みの後でロクな目にあった試しがない。いや、手錠を掛けられている時点でロクな目とは言えんが。
添えた手で俺の顎を撫でながら、先輩は言う。
「秘密を知った相手を
「…………共犯?」
「知っただけなら、その人次第でどうとでも出来る。誰かに密告することも。けれど、同じ秘密を抱えて当事者になった人間には、その秘密を暴露する勇気なんて中々出せないものよ。麻薬の売人がお試しと言って薬を一度飲ませて、気付いた時には既に同じ穴の狢、なんて風に」
……俺が座る椅子と神楽坂先輩が座る机はとても近い距離にある。
どれぐらい近いかって、俺がこうして顎を上げたまま、先輩が今の位置より少し浅く座れば、そのまま頭を振り下ろして顔を激突させられるくらいに。
激突、というか、顔を近付ければ……。
「麻薬だの犯罪で例えると良くない手口に思えるけれど、要は秘密の共有ね。一種の契約なのだから、立場を対等にするのは基本。そう思わない?」
「……あの、まさかとは思いますが」
「何かしら?」
「先輩も、俺と肉体関係を結べば共犯になるから、秘密をより強く守れるだろうとか、そういう話じゃないですよね?」
「……はぁ」
呆れたような溜息。
だ、だよねー。流石にそんな
「ここまでされて
「っ……!」
「はい、もう手遅れ」
風が攫っていくかのように俊敏に、綿のように柔らかく。
先輩は俺の唇に口付けた。
「ん」
舌を捩じ込ませる事はしない、唇同士を触れ合わせるだけのバードキス。
その行為自体はもう何度も、それももっと深いものもやっちゃっているが、相手が違うとなればその行為もまた感触が違ってくるわけで。舐める事も、吸い付く事もせず、唇の柔らかい感触をしっかり刻みつけられて、ちゅぱっと小さく音を立てて離れる。
「……ふ、そう。こういう感じなのね、キスって」
「…………」
「どうしたのかしら? 黙り込んじゃって。……今更、女の子とのキス一つで狼狽える程の経験値じゃないんでしょう?」
「いや、その……」
…………僅かに頬を赤らめて、幸せそうに微笑む姿に、見惚れたのもご多分にあるが。
あの四人と同様、何とも思ってない男に、好奇心や何やらで初めてのキスを捧げる、軽めの貞操観念を持ち合わせている。この人がそんな風には、とても思えないのだ。純情な所や、ロマンチストな面もあることを俺は知っているのだから。
にも関わらず、こうして俺に口付けたということは。つまり……。
「あなた。今のには驚いたけれど、抵抗する素振りはなかったわね」
至近距離で目と目を合わせたまま発言され、少したじろぐ。
もう少し身を乗り出せば、また唇を重ねるのはわけない。そういう距離だ。お互いに。
それが分かっていて、顔を逸らすことも、距離を取ることも出来ない。
「私への信頼は口だけで、約束してもらわないと気が気でないから? いいえ。あなたはそんなことで嘘ついたりなんてしないし、それぐらいの信頼を勝ち取っている自負はある。では何故か。そこが、もう手遅れと言った点よ」
「…………」
「だって、あなたは
視界がお互いの顔で埋め尽くされた、呼吸による吐息がかかる距離のまま、先輩は俺の制服のボタンを外しにかかっていた。器用にも片手で、見もせず、淀みなく、プチプチと外れていくボタン。それを、黙って受け入れている俺。
「椎名さん、笹原さん、村上さんに望月さん。どの子もきっと極上の抱き心地だったんでしょうね。堅物だと思われてたあなたが、今みたいな爛れた関係を続けるようになるのだから」
「…………」
「笹原さんに聞いた限り、一応嫌になったり飽きが来たら関係を終わらせると言って逃げ道を用意しているようだけれど、あなた自身は終わらせるつもりなんて毛頭無いんでしょう? それこそ、終わらせない為に日々テクニックを磨いちゃうくらいに」
「…………」
「そんなあなたが、自ら新しく誰かに関係を持ち掛ける、とはせずとも、相手から迫ってきてるのを強く拒絶出来るかと言えば、答えはノー、でしょう? あの子達と同じくらい友好的、好感度があるのは前提として…………ふふ。私の魅力も、あなたのお眼鏡に適ったと言うことかしら。ねぇ? 新城君」
……言葉の切れ味が現実のものになっていたら、とっくにズタボロの血達磨になっていそうだ。あまりの正確無比な口撃に、白旗を揚げたいくらいである。
図星だった。
いくら綺麗めな言葉で飾ろうと、現状の俺は先輩の指摘を何一つ否定することが出来なかった。
上着とその下のYシャツのボタンを、胸下辺りまで外し終えた神楽坂先輩。顔を少し離し、開かれた俺の胸元をしげしげと眺められる。
「……自覚あったつもりですが、改めて言われるとやっぱ最低ですね、俺」
「あら。別に責めてるわけじゃないのよ?」
「えぇ……?」
「そもそもの切っ掛けが事故だったし、あんなに可愛い子達に好意的に迫られたらそうなるわよねって思うし、むしろあなたにもちゃんと、年頃の男の子らしく、誘惑に弱い部分があって安心したくらいだわ」
だとしたら、ここに来たときの不機嫌オーラは何だったのか。
そんな心の中で思い浮かべた疑問に答えるように、言葉を紡がれる。
「たーだ。……ただ不満があるとすれば、何かわかる?」
「……な、なんでしょう?」
「―――お気に入りの男の子が、私より先に
頬を思いっきり摘まれる。
それはいい。別に痛くもないし。
意識を持っていかれたのは、先輩の笑顔に黒さが現れた事だ。
声も底冷えするような怖気を帯びる。
……コロコロと笑顔の在り方が変わっていく神楽坂先輩を見て、この人も今は中々不安定な状態の事が察せられる。縛られたまま、それを目の前で見せられる俺に及ぶかは分からんが。
「……正直言って、自分でもここまで胸の内を掻き乱されるとは思ってなかったわ。何もせずとも、あなたの初体験は私になるのだと、漠然と思い込んでいたのかしらねぇ。そんなわけが無いのに、ねぇ? そういえば初体験は椎名さんとだったらしいけれど、どんな気持ちだったかしら? お互いの純潔を汚し合う瞬間を、お互いの鼓動を感じて、ドキドキしながら迎えたりしたのかしら? そこのところ、どうなの?」
怖い怖い怖い怖い!
「…………まぁ、言っても仕方無い事よね。そのお陰で私にも思い切りが出来たし」
抓っている手を離し、頬は開放される。
代わりに、神楽坂先輩の両手は俺の腰の方へと伸びていった。
「あ、ちょ」
「動かないの」
止めようとする声もぴしゃりと遮られ、机に座ったまま椅子に座る俺のベルトを外しに掛かる。
そうすると、当然先輩は前屈みになり、頭頂部が俺の方へと向けられる形になる。先輩の髪からラベンダーのようなシャンプーの香りが漂ってくるのも嗅ぎ取れてしまったが、それ以上に意識を持っていかれたのは視覚だ。なまじ目を合わせようと視線を意識して向けていたから誘導された。こうして屈まれれば、自然と先輩の身体が視界に入ってくる。主に、制服に包まれた胸が上体と膝に挟まれて、横に広がるように形を変える様が……。
「……ふふ」
愉快そうに笑みを浮かべる先輩。
視線に敏感な人だ。俺が先輩の豊かな乳房に視線を吸い寄せられた事を察しているのだろう。というか、屈んだ時点でそういう罠を仕掛けられた感じさえする。
まんまと誘導されてしまった。制服のボタンをきっちり締めてるから谷間がチラっと見えるわけでもないのに、どうして女の胸はこんなにも吸引力が強いんだ。視線の。
そうこうしてる内に、俺のベルトは固定部分を外され、ズボンのチャックも全開にされる。あとは、椅子に座ってる状態でもズリ下げられる所までズリ下げれば、芯が入り出した愚息が晒されてしまうだろうという所まで来ていた。
「あの……本当にいいんですか? これ以上は後戻り出来ないかと」
「いいも何も、今のこの状況ってあなたが脅迫されて拘束されて、これから性的に襲われるのだけれど。その後の責任も取らせようと言うのだから、かなりあくどい事してるわよ私」
「あ、そこはちゃんと分かっててするつもりなんですね……」
「それに、言ったでしょう? お気に入りの男の子だって」
顔を上げた先輩に、さっき抓られた頬に手を添えられ、撫でられる。
慈しみ、愛でるような優しい手つきだった。
「私がこんな事をするくらいには執着しているのだから、嫌な謙遜しないでほしいわ」
再び、口付け。
今度は唇が重なるに留まらず、割れ目からにゅっと舌を差し込まれる。唇を閉じてシャットアウトする気も起きず、口内へと迎え入れる。
とはいえ責められっぱなしも癪なので、せめてもの仕返しにこちらからも舌を絡めに行く。
「んむっ」
少し驚いた様子だったが、負けじと舌を動かしてくる神楽坂先輩。しかしあちらはさっきのあれがファーストキスで、こちらは数日で数を覚えてない程、口淫を交わしているのだ。先輩が拙いとはいえないが、流石に経験値の差がものを云い、舌技はこちらに軍配が上がった。
蠢いていた舌を絡め取り、口内ごと縦横無尽に舐め回す。いつもなら後頭部を捕まえて腰を抱き、快感を逃さないように身体を固定させるのだが、その役目を担う両腕は背中で手錠に繋がれたままだ。向こうが顔を離してしまえばそれまでだが、勝敗は決しても敵前逃亡する素振りを見せない先輩。舐められるがままとなっても、舌を動かすことを止めようとはしない。
「ちゅも、ちゅ……ん…………ふぅ。じゅるる………ちゅりゅ、りゅむ……♡ んく、んく……はぁむ…………ちゅぅ……♡」
重なる唇と絡まる舌の合間から鳴る水音を、静かで狭い一室の中で響かせ合う。耳に聞こえるよりも、骨を伝って脳に響く音の方が大きい気がした。
たっぷり2分程。鼻の呼吸では限界が来たのか、ようやく先輩は口を離す。
「はぁ…………♡」
恍惚とした吐息を掛けられる。
口は離れたものの、俺達の口の間で銀の橋がてらてらと光る。それを少し眺めた後、先輩は肉食獣が舌舐めずりするように唇をペロリと舐め、橋を崩落させてしまう。端を分断させられた橋は、こちらの顎へと垂れ下がって付着した。
にんまりと、楽しそうに笑う先輩。
「そうこなくちゃ♡」
基本的に男上位で進めたい性的Sですが、砂夜様に関してはむしろ手玉に取られたいまである……。