※この作品はR-18です。

転生ラウルの愚行   作:亀と兎

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エウリュアレ・ファミリア編
プロローグ


 俺の名は■■ ■■。

 仕事帰りに、信号無視して歩きスマホしている女子高校生を目撃した。

 スマホを見るのに夢中になっていた彼女は、横から迫るトラックに気づかなかった。

 

 とっさに体が動いた俺は身の危険も顧みず、その子の体を突き飛ばした。

 点滅する視界、ボヤける景色。

 閉ざされる意識の中、辺りから聞こえる悲鳴も遠ざかっていく。

 

 次に目が覚めたら、俺は知らない天井で目覚めた。

 謎の白い空間で異界の女神を名乗るフィアナから受けた説明では、たった一つの命を粗末に扱ってしまったことはいただけないが、最期に善行を積んだ(?)ことで特別に流行りの異世界転生をさせてもらえるとか。

 ちなみに、反射的に体が動いただけで善人でもなければ、それまで徳の高い人生を歩んできたわけではない。

 

 フィアナから渡されたカタログには『種族』『サポーター』『特典』の項目があった。

 これは好きな種族に転生したり、転生してから老衰するまでサポートしてくれるものを選んだり、転生特典を選ぶことができる。

 

 種族にはヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、小人族(パルゥム)、アマゾネスなどのラインナップが並んでいた。

 ヒューマンはバランスが良く、エルフは魔法種族で、ドワーフは力強く頑丈である。

 獣人も鋭い五感と高い身体能力、種族によって固有のスキルや魔法を修得できる。

 アマゾネスは女性しか生まれないが、男勝りな身体能力と技量が身につきやすい。

 小人族だけは他の種族と比べても身長が低く、他とは見劣りしてしまうそうだ。

 

 俺は人間を辞める気はないので迷わず、ヒューマンを選択した。

 

 サポーターは転生する前にフィアナが創造して異世界へ送り込むらしい。

 

 俺は好みの問題でFateシリーズのエウリュアレをリクエストした。

 

 最後の特典は三つまで選べるらしいが、早く転生したかった俺は適当に【擬神の目】【魔法スロット拡張】のスキルと【ヒプノーシス】の魔法を選んだ。

 

 こうして全ての準備を整えた俺は、異世界へと転生していった。

 

 ―――――

 ―――

 ―

 

 生まれ変わって十五年。

 俺はラウル・ノールドという名を授かり、故郷の村でスクスクと育っていった。

 物心つく頃には前世の記憶も思い出していたが、転生特典やサポーターとは無縁の生活を送っていた。

 間違っても貴族でもなければ、村長の息子などでもなく、農家生まれの三男だ。

 

 気になってフィアナについても調べたが、小人族が信仰していた偶像女神だったらしい。

 つまり、騙されて転生されたってマ?

 

 正直、俺なんかを騙してあの女神に得があるのか知らないが、時間の流れと共に気にならなくなっていった。

 

 調べたついでに知ったことだが、どうやらこの異世界では天界に住まう神様が娯楽を求めて外界に降り立つらしい。

 特に迷宮都市オラリオでは一獲千金を求めた者たちが神の眷属(ファミリア)となってダンジョンに潜っているようだ。 

 家族に悪いが、俺だって二度目の人生を農民として費やしたくない。

 貯金をしつつ準備を整えたら村を出ていくつもりだった。

 オラリオについて知ってから体も鍛えてきた。

 

 ところで俺がオラリオに固執する理由は何か。

 恵まれない家族の生活を豊かにするため?

 ファミリアとなってダンジョンに未知を求めるためか?

 否、断じて否!

 力を手にして滾る欲望を叶えるためだ。

 前世では金や女、地位や名誉なんてもの一つもなかった。

 力を手にして確固たる地位を築き、金や女を手に入れ好き勝手できる自由が欲しい。

 そのために積み上げてきた十五年、そのためのこれからだ。

 

「どうしたんだよ、ラウル? ボッーとして」

「ん? いや、何でもねぇよ」

 

 俺がこれまでのことを振り返り、思い出に耽っていると背後から声をかけられた。

 振り返るまでもなく、それが唯一の親友カイだと分かっていた。

 転生者だった俺は、村の子供たちと馴染めず距離を置いていた。

 

 そんな俺に声をかける気まぐれ野郎こそがカイだった。

 

 カイだけはそんなこと気にも留めず、気さくなに接してくれた。

 

 振り返ると予想通り、赤毛の髪にイケメンフェイス。

 間違ってもザ・平凡な俺とは天地の差がある男だった。

 

「ラウルはオラリオに行くんだよな」

「ああ、言ったはずだぜ。俺は成り上がる。

 命を賭けて地位も名誉も女も金も、全てを手に入れるんだ!」

「羨ましいな。俺も一緒について行ったらダメか?」

「お前にはアナスタシアがいるだろう。

 一緒に行ってくれるなら頼もしいが、許嫁を一人にするのは不味いだろ」

「だよな。お前とならどこまでも行ける。

 なんだって出来る。そんな気がするんだ。

 それでも、アナスタシアを選んだ……」

「それで良いんだよ。

 俺のような無鉄砲といるより未来の嫁さんを大事にしな」

「スマンな、ラウル……」

「なんで謝ってんだよ」

 

 顔面だけでなく、メンタルまでイケメンなこの男は村長の孫娘アナスタシアの許嫁だ。

 カイの親父は元冒険者で村長は彼を繋ぎとめるために孫娘を許嫁に出した。

 

 それを知るまでは二人揃ってオラリオに行って冒険しようと約束していた。

 俺は冒険より成り上がりさえすれば良かったが。

 俺たちがマジでオラリオに行く気だと知ったカイの親父が秘密を打ち明けたのだ。

 

 大人たちが決めたことだが、カイとアナスタシアは両想い。

 カイは俺に負い目があるみたいだが、命を賭けた博打よりもずっと良い。

 

 それに俺も……アナスタシアに片想いをしていた。

 どこぞの馬の骨のものになるくらいなら、カイと結婚してくれた方がずっと良い。

 カイならアナスタシアを幸せにできるはずだ。

 

 ―――――

 ―――

 ―

 

 嘘だよ。

 なに男の約束破って「私達幸せになりました!」だ!

 ふざけんな!

 今明かされる衝撃の真実ゥ! を知った直後は放心していたが、沸々と嫉妬と怒りが湧き上がったほどだ。

 

 妬んだところで仕方がない。

 カイには悪いが、冒険者として成り上がったら、アナスタシアを寝取ってやると心に誓った。

 それまで束の間の幸せを噛みしめるがいい。

 そんな負け惜しみに悩まされながら去年を過ごしていた。

 

 貯金と準備はそれなりにある。

 それでも出て行かなかったのは、カイのために二人分の用意を進めていたことや村に訪れる行商人の馬車に乗せてもらおうと機会を伺いっていたからだ。

 カイの裏切りによって貯金や準備にも余裕が生まれた。

 そろそろ潮時だろうか。

 そんなことを考えていた頃、俺にも転機が訪れた。

 

 行商人の護衛としてオラリオの探索系ファミリアが村に訪れたのだ。

 ここで自分を売り込めば、オラリオについてからファミリア探しする手間が省ける。

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「貴方が私の勇士を希望する子かしら?」

 

 護衛の一人に事情を話し、お目通りの叶ったファミリアの主神を見て俺の表情は固まった。

 純白ドレスに紫色の髪、男の理想を具現化したような美少女。

 紛れもなく、エウリュアレだった。

 

「二人っきりでお話しましょう。

 席を外して頂戴」

 

 俺を馬車へ連れてきた護衛と馬車の中にいた人も彼女の一声で出ていき、俺とエウリュアレの二人きりとなった。

 

「アンタは……」

「初めまして、そして遅くなったわね」

「やっぱり、俺が予想している通りの……」

「ええ、私が貴方のサポーター。

 そして、ファミリアの主神になるエウリュアレよ」

 

 どうして今になって俺の前に現れたのか。

 疑問について尋ねると、意外な答えが返ってきた。

 

 天界にいたエウリュアレは俺が転生してからすぐに外界に降りた。

 地盤を固めるまでオラリオで活動しつつ、俺の様子を見守っていた。

 俺が重い腰を上げてオラリオに旅立とうとしていたので迎えに来たのだ。

 

「通りであの護衛も、コミュ障プレゼンかました俺を素直にアンタと会わせてくれたのか」

「貴方を連れてくるように指示していたのは私だけど、貴方そんなことしてたの?」

 

 呆れた視線を向けてくるエウリュアレだが、こっちは友達一人なんだよ。

 

「さっさと事情を話していてくれていれば、こんな苦労しなくても済んだんじゃないのか?」

「今のオラリオに貴方を行かせるわけにはいかなかった。

 オラリオは暗黒期と呼ばれるほど治安が悪いの。

 ようやく貴方を迎え入れても安心できる戦力を整えることが出来たわ」

「そうなのか。

 いや、その事情も含めて教えて欲しかったわ。

 それか、せめて神の恩恵(ファルナ)とやらは欲しかった」

「平行線ね。

 貴方がそれでもオラリオに行きたいと思ってしまえばそれまでだもの。

 それに恩恵なら、貴方はもうフィアナから授かっているはずよ」

 

 エウリュアレの説明では転生した時から俺にはフィアナの恩恵が授かっていたらしい。

 恩恵にはロックが掛かっており、目に見えなくなっているだけとか。

 エウリュアレにロックを外してもらうと、改宗(コンバート)できる状態になっていた。

 改宗してもらいつつ、ステイタスの更新も行われた。

 

ラウル・ノールド Lv.1

力:I 0 → H 118 耐久:I 0 → I 54 器用:I 0 → H 101 敏捷:I 0 → I 62 魔力:I 0 → I 0

 

《魔法》

【ヒプノーシス】

・精神魔法

・呪詛(カース)

・詠唱式によって効果変動

・魅了付与(エンチャント・チャーム)

 

【】

 

《スキル》

【擬神の目】

・ステイタス閲覧。

 

【魔法スロット拡張】

・魔法スロットの枠を増やす。

 

「俺のステイタス……低すぎ?」

「ただ生きているだけで上がっているなら儲けものよ。

 実践で積む経験値(エクセリア)とただ鍛えただけの経験は違うもの」

 

 どうやら思っていた以上にシビアな仕様のようだ。




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