前から書こうと思っていたのですが、かなり遅れました。
これでお終いです。
──────────────────数年後
「はぁぁぁぁっ!」
バシュっ!
「ピシャァァァァッ!?」
とある大晦日の夜の街中、人気も無いこの場所で、マガバッサーはマガジャッパと共にシャドウの討伐を行っていた。頻度は激減したとは言え、時たまこうして残党が出現しているのだ。
「ピシャァァァァァァッ!」
「!?」
突如、マガバッサーの不意を着いた1匹のシャドウが彼女の背後に回り込み、鋭い触手を突き立てる。
「えぇぇい!」
「ピシャァァァ!?」
しかし寸前のところでマガジャッパが放ったマガ水流によりシャドウは吹き飛ばされる。
「うおぉぉぉぉ!!」
「ピギャァァ!!!」
そしてマガバッサーが放ったマガ衝撃波(鎌鼬入り)をモロに受け、シャドウはその身を爆ぜさせた。
「よし!これで全部だ!」
「やったね!」
マガバッサーとマガジャッパは笑顔でハイタッチをする。GIRLSに入隊してから早数年、新人だったマガコンビも、今ではその能力を開花させ、ベテラン隊員として活躍しているのだ。
「後は本部に報告して終わりだな」
「うん」
ピルルルルッ
「ん?」
突然、マガバッサーのスマホに連絡が入る。画面を確認すると、そこには『自宅』という文字が表示されていた。
「……やっべー……」
マガバッサー…………ヨウは顔を青くして、急いで通話に出る。
「はい、もしもし……」
『ママー、まだ帰って来ないのー?』
『遅いよー』
「ああ、ごめんねー。ママもう少しお仕事しなくちゃいけないんだー」
『早くしないとお正月きちゃうよ』
『一緒に年越しのお蕎麦食べようよ』
「うん、大丈夫だよー、お正月が来る前には必ず帰るからねー」
『でもクリスマスは約束破ったもん!』
『パパもママも帰ってこなかったもん!』
「ごめんね、今日はちゃんと帰るから」
ヨウは電話越しに、手刀を顔の前に立てて謝る。ヨウは毎年のようにイベント事がある日には、こうして要と遥から帰宅コールを鳴らされているのだ。
『こら要!遥!ママはお仕事中なんだから、電話しちゃダメって言ったでしょ!』
『あ!返せー!』
『パパのバカー!』
『あ、もしもしヨウ?ごめんね仕事中に』
「ううん、大丈夫」
『この子達ったら隙をついては電話するんだ…………あ、年越しそばはちゃんと用意してあるから安心して、茹でるだけだから』
「うん、ありがとう」
『いいよいいよこれくらい……ヨウも仕事で忙しいもんね』
「陽の方も仕事は大丈夫なの?」
『うん、大丈夫、会社の人達と頑張って早めに終わらせたから。やっぱりみんなも家族と過ごしたいんだって』
「そっか……私も早く終わらせないとなー」
『『グエェェェェェェッ!』』
『おっと!……と、とりあえず待ってるよ』
「うん、ありがとう」
ピッ
「ふぅ……」
「お疲れだね」
「……結構辛いかも」
ヨウは腰に手を置きながらため息を吐く。要と遥を産んでから早数年、小さくて可愛かった2人も、いつの間にか駄々を捏ねるママっ子になってしまったのだ。
「あんなに小さかった2人も、飛んだワガママっ子に育っちゃった……」
「でも可愛いよ、ママーって」
「ジャッパは4歳児の恐ろしさを知らないからそうやって言えるんだよ」
「そうかな?」
「いずれ分かるって……あんたは赤子時代を大切にしなよ」
ヨウはユカの肩を叩く。ユカに子どもができれば、ヨウと同じように悪魔の時期が訪れるのだ。その時、ようやくヨウの気持ちが理解出来るに違いない。
「はあ、おまけに遊び盛りで気づいたらどっか行っちゃうし……ほんと、誰に似たんだか」
「(多分……うん)」
ヨウがため息を吐く横で、ユカは色々と察した。
「……さて、早く戻って仕事終わらせますかー」
「そうだねー」
──────────────────
『ジョ〇ー、げ〇き〇だしな』
「ねえパパ、ママは?」
「もうすぐ帰ってくるから安心して」
ヨウが本部で仕事を片付けている頃、風吹家では、陽が要と遥に挟まれながら、とある子ども向け(?)番組を視聴していた。
台所には、出来上がった年越しそばの汁が入った鍋が置かれている。
「でもクリスマスは来なかったよ」
「約束破ったもん」
「大丈夫、絶対帰って来るから」
今年のクリスマス、ヨウと陽は仕事が忙しく、家族4人でのクリスマスを迎えることが出来なかった。そのため、要と遥は今回も帰ってこないのではないかと不安になっているのだ。
その不安を解消するため、陽が早めに帰ってきたわけだが、どうやらあまり効果はないらしい。
「要、要はママのこと好き?」
「うん!パパより大好き!」
「(おう……なかなかきついなぁ)よ、遥は?ママのこと好き?」
「ううん」
「え?」
「私はね、ママとパパ、どっちも大好き」
「(遥は優しいなぁ……)……と、とりあえず。ママのことが大好きなら、ママを信じて待ってよ?」
「「……うん」」
2人はやや不満ながらも頷いた。
「ただいまー……」
と、そこへタイミング良くヨウが帰宅する。その声は何処か疲れているように弱々しい。
「あ!ママ!」
「ママ!」
要と遥はすぐさま立ち上がり、ヨウを出迎えに玄関まで駆ける。
「「ママー!」」
2人はヨウに抱きつく。余程ママが帰ってきたことが嬉しいようだ。
「おーよしよし、いい子にしてた?」
「「うん!」」
ヨウも2人を抱きあげ、応えるように力強く抱きしめる。
「おかえり、ヨウ」
「ただいま、陽」
遅れて陽がヨウを出迎える。
「要、遥、ママは疲れてるんだから降りなさい」
「「やー!」」
2人は声を合わせてそう言うと、ヨウにさらに抱きつく。2人はママの事が大好きで仕方がないのだ。
「もう……」
「大丈夫、これくらい平気平気」
「ほんとに?」
「大丈夫。それよりもさ、早くお蕎麦作ろ」
「うん、分かったよ」
陽は台所に向かい、ヨウはそのまま2人を抱き抱えたまま、少しふらつきながらソファへと腰を下ろす。
「……ねー、これって」
「あーそれ?エレさんからだよ。良かったらご家族で見てくださいってプレゼントしてくれたんだ」
「エレおばさんがね、面白いから見てって」
「面白いよ!」
「そっかー(もうおばさんでいいや……)」
ヨウは心の中でため息を吐く。もはや訂正する気力すら残っていないのだ。
「ママ、今日もおしごとお疲れ様」
「うん、ありがとう」
「今日も人だすけしたの?」
「うん、助けたよ」
要と遥はヨウの胸に顔を埋めながら、ヨウを上目遣いで見つめる。
「さっきね!お歌の番組にサッちゃん達が出てたよ!」
「ミッちゃんもかっこよかった!ギターぎゅいーんって!」
「そっかー……とうとうデビューしたんだ……良かったねー……」
2人が楽しそうに話す中、ヨウは半目でテレビをボーッと眺めながら、2人の話に返答する。
「ママー?」
「ねむいのー?」
「……うん。大丈夫……眠くない……」
そう言うとヨウは目を瞑り、頭を俯かせる。
「ヨウ?お蕎麦だけど2人の分は少なめが「「しーっ」」……ど、どうしたの?」
「今ママ寝たの」
「おこしちゃめ」
陽は気になり確認すると、ヨウはソファの腰掛けにもたれ掛かる形で、寝息を立てながらぐっすり眠っていた。どうやら仕事で疲れ切ってしまったらしい。
その寝顔は、若い頃の彼女と全く変わっていない。
「……それじゃあ、お蕎麦が出来るまで寝かせてあげよっか」
「「うん」」
陽の言葉に、要と遥は小さな声で頷く。
──────────────────
『……ん?どうしたの?』
『……元気にやってるかって?』
『…………うん、大丈夫、元気にやってるよ』
『傷だって平気、今はあの人とあの子達がいるもん』
『ジャッパもちゃんと元気にしてるから』
『…………いつか逢えるといいね』
『そしたらみんなで…………またひと暴れしようよ』
『勿論、子どもたちも一緒にね』
『大丈夫、きっと逢えるよ』
──────────────────
「「ママ」」
「…………ん、あれ、もしかして寝てた?」
「うん」
「ぐっすり」
ヨウが目を開けると、心配そうにこちらを見つめる要と遥の姿が映った。
「ヨウ、おはよう」
「ごめん、寝ちゃったみたい」
「大丈夫、まだ年越しまで時間はあるよ」
そう言いながら、陽は蕎麦を4つのお椀に盛っていく。
「…………いい匂い……」
ヨウは目を瞑り、漂ってきたおつゆの匂いを嗅ぐ。毎年、年越し蕎麦はヨウが作っていたのだが、今年は陽が腕をかけて調理してくれているのだ。
「みんなー!お蕎麦できたよー!」
「「わーい!」」
──────────────────
「「「「いただきます」」」」
数分後、テーブルの椅子に座った4人は、目の前で湯気を出しながら美味しそうな臭いを漂わせる年越しそばに手を合わせる。
「さ、パパ特製の年越しそばだよー」
「わーい!」
4人は箸を持ち、麺を啜る。
ズルズルッ……ゴクンッ
「「「「………………」」」」
…………そして蕎麦を飲み込んだ4人は、その味に沈黙する。
「…………まずい」
「……うん」
「……あれー、おっかしいなー。レシピ通りに作ったんだけど……」
4人は苦い顔をする。陽が作ったこの年越し蕎麦、恐ろしい程薄味なのだ。悪い言い方をすれば、普通に不味い。
「……もしかして、出汁の量間違えた?」
「……多分、そうかも」
ヨウの言葉に、陽は俯きながら小さな声で答える。
「ママのお蕎麦の方が美味しい」
「う……」
「……ごめんねパパ」
「うぐ……」
要と遥からの容赦ない言葉は、陽の心にグサグサと突き刺さる。
「…………ごめん」
「うご…………っ」
ヨウの言葉がトドメとなり、陽はその場で真っ白に燃え尽きた。
──────────────────
「「…………すぅ……zzz」」
さらに時は流れ、年越し数分前。
何とか年越し蕎麦を食べ終えた4人は、仲良くソファに座りながら、除夜の鐘が鳴らされるのを待っていた。
テレビには大きな鐘が映し出されており、撞木が打ち付けられるのを今か今かと待ちわびている。
「寝ちゃったね……」
「流石にこんな時間まで起きるのはキツかったかな……」
そんな中、要と遥はヨウと陽に挟まれる形で眠っている。それぞれパパとママに寄り添いながら、寝息を立てている。
「…………今年も色々あったね」
「……そうだね」
「今年どころか、ここまで来るのに色々ありすぎた気がする」
「確かに」
ヨウと陽は今までのことを振り返る。突然やってきたヨウの悲劇、それをきっかけに2人は出会い、泣き会い、愛し合った。そして結婚し、2人の子どもに恵まれ、今日もこうして4人で仲良く不味い年越し蕎麦を食べた。
年数から見ればたった数年間の出来事だが、ヨウと陽にとっては、何物にも変えられない、濃い思い出なのだ。
「…………ねえ、陽」
「ん?」
「……ありがとう」
「……僕の方こそ、ありがとう」
「……変なの」
ヨウははにかんで笑い、釣られて陽も微笑む。
ゴ────ンッ
テレビから除夜の鐘の音が鳴り響く。
「……あけましておめでとう」
「……今年もよろしくお願いします」
そう言うと、ヨウと陽は互いに顔を近づけ、
…………チュッ…………れろっ……ちゅっ……
「「ん…………」」
深いキスを交わす。まるで要と遥がいることを忘れているかのように、舌を絡ませ、互いの歯茎を舐め合う、情熱的なキスを。
これは、とある少女と男の出会いから始まった、ちょっと数奇で幸せな物語であり、とある家族のちょっとした日常でもある。
「(……ねえ遥、もーそろそろ起きようよー)」
「(ダメ!今パパとママがいい感じなの!)」
「(むー)」