※この作品はR-18です。

裁きの炎   作:XX(旧山川海のすけ)

14 / 44
14話 初陣

「ワーディングよ!」

 

水無月がすぐに反応した。

瞬時にスイッチを切り替え、駆け出す。

 

ワーディングが張られた地点に向かって。

 

ワーディングとは、周囲のオーヴァード以外の生物の自由意思を奪い、人形のような無力な存在に変えてしまうエフェクトで、これはオーヴァードであれば誰でも使用可能なエフェクトなのだが。

使用した際、必ず周囲のオーヴァードに、大まかな位置を含めて気づかれてしまうデメリットがある。

 

俺を泉先生がオーヴァードの判定する際使用したのは、この件が組織立ったものではなく、犯人単独であるから、と睨んでいたせい。

組織立った相手だと想定していたら、到底やれなかっただろうと予想できる。

 

何故なら、藪蛇的に今回のジャームにとっての水無月のような、敵勢力に見つかって、こっちが逆に襲われる可能性があるから。

 

俺も水無月を追う。

現場には、すぐに辿り着いた。

植え込みに囲まれ、死角になってる少し開けた場所だった。

 

そこには。

 

「うあああ……」

 

呻きながら足首から血を流して倒れている男と。

 

ふしゅるるるるる……

 

そこに群がる大型犬サイズの。

蜘蛛みたいな生物がいた。

 

全部で4体。

 

大体のフォルムはタランチュラのよう。8本の脚があり、その先端が金属でできた蟷螂の鎌のようになっていて、鋭利な刃物として使えるのか。

一匹のそれのひとつが、すでに赤い血で濡れていた。

おそらく倒れている男の血だろう。

 

その蜘蛛のような生物は、ふしゅるるる、ふしゅるるるる、と独特の呼吸音のようなものを発しつつ、牙と複眼めいたものを蠢かし。

こっちに気づいた。

 

4体のうち、2体が俺、1体が水無月に飛び掛かってくる。

 

「水無月!」

 

俺はすぐに火炎の拳を発動させ、一匹を叩く。

拳を打ち込んだそいつは、一瞬で炎上し、動かなくなるが、もう一匹が俺に被さって来た。

俺に圧し掛かり、刃物のような脚を打ち込んで来る。

攻撃を避けるべく揉み合うように俺は抗うが、その間に水無月は俺の見ている前で。

 

まず一匹の襲撃を華麗にひらりとかわしながら魔眼を出現させ。

アクロバットに前回りで身体を回転させつつ、着地と同時にバロールのエフェクトを発動。

自分を仕留め損ねた蜘蛛の化け物を高重力で捉え圧し潰し、そのまま左右の手で魔眼を押し畳んで、魔眼槍を生成。

 

流れるように跳躍し、俺を襲っている蜘蛛を背後から槍で突き殺して

 

ピギャ!!

 

ノールックで後ろに片腕を伸ばし、残った片手で化け物を刺し貫いている魔眼槍を握りしめつつ。

倒れた男の傍に残った最後の蜘蛛を、高重力で圧し潰した。

 

こうしてあっさり、俺の初陣は終了した。

 

「大丈夫?立てる?」

 

魔眼槍を消滅させて、水無月が俺に手を差し伸べてくる。

その顔には気遣いの色しか無い。

嘲り、侮蔑は全然無かった。

 

しかし。

 

……うわ、かっこ悪い……。

4体のうち、3体を水無月があっさり倒し、俺が仕留めたのはたった1体で、しかも襲われているのを助けてもらうありさま。

情けなかった。しかも気になってる女子に助けてもらうなんて……。

そりゃさ、実戦経験は今がはじめてさ。それでもな……。

 

「……すまね。そこまではいらんから」

 

別にやせ我慢ではないけれど、水無月の手は丁重にお断りし、自分で立った。

そして、別に誤魔化す意図は無かったけれど、聞いた。

 

「こいつらがシャドウストーカー?なのか?」

 

「ううん。多分違う。こいつらは『従者』だと思う」

 

倒れた男の手当てをしながら、水無月は言う。

ハンカチと、自分の制服のスカーフで傷口を縛っていた。

 

「従者?」

 

俺も手助けすべきだと気づいたので、自分のハンカチを出しながら彼女に近づく。

 

「血液を操るシンドローム『ブラム=ストーカー』の代表的エフェクトよ。自分の血液を使用して、自分の意のままに動く疑似生物を創造するの」

 

差し出したハンカチを受け取りながら、水無月はそう答えた。

そういえば、水無月にオーヴァードの講義を受けたとき、習ったような気がするな。

 

思い返していると、従者たちの死体が溶け出して、赤い染みになって消えた。

なるほど。確かに血で出来てるみたいだ。

 

「そして、こいつら蜘蛛っぽい従者、脚を金属質の物質で強化してた。多分、物質創造のシンドローム『モルフェウス』も持ってるわね」

 

だから、シャドウストーカーはブラム=ストーカー/モルフェウスのクロスブリードか、それプラスアルファのトライブリードでしょうね。

モルフェウス持ちとなると、最初の事件の死体遺棄の謎も説明がつくわ。

 

男の手当てをしながら、今の戦闘で得た情報を整理して俺に話してくれた。

部分的に分からないところがあった。あとで、先生たちにも話すだろうから、そのときにブラックさんにさりげなく聞くか……。

今は分からないことを教えてもらう暇は無さそうだし。

 

「その人、大丈夫なのか?」

 

「ええ。命に別状はないと思う。アキレス腱をぶった切られてるだけだから。それで……」

 

この人、さっき北條君に謝りに来た人よ。そして、攻撃を受けたのはアキレス腱。

最初の被害者大林さんは全身めった刺しで胴体真っ二つ。それ以降の被害者は頭部を一撃で破壊されるか、心臓を貫かれて一発で仕留められてるっていうのに。ここにきて、アキレス腱。

変よね。どうしてかしらね?

 

俺を見て、水無月は言う。

その目には、含みがあった。

 

……そう。さっきから水無月が手当てしてたのは、さっき俺にしつこく許しを乞うてきたあの男だったんだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。