※この作品はR-18です。

裁きの炎   作:XX(旧山川海のすけ)

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15話 後悔してしまいました

北條君がスマホを取り出して電話を掛けていました。

祈るような表情で。

 

私も祈っていました。

繋がって、無事が分かることを。

 

でも

 

「どう!?北條君!?」

 

「ダメだ……全く繋がらない」

 

そんな……!

だったら、すぐにでも確かめに行かないと!

 

でも……ここから北條君の家までは、車でも10分はかかっちゃう……!

今すぐ、行かなきゃいけないのに……

 

最悪の想像が頭を過ります。

何か、何か方法は無いの?

考えを巡らせました。

 

……実はひとつだけ、心当たりがありました。

今すぐ、北條君の家に行く方法に。

 

ディメンジョンゲート。

 

重力で空間を歪めて、自分の知ってる場所と現在地を繋ぐバロールのエフェクトです。

そう。

 

自分の知ってる場所と。

 

私、北條君の家を知ってます。

尾行して、突き止めて、ピッキングして、お邪魔して、盗聴器と北條君のパソコンにスパイウェアを仕掛けましたから。

褒められたことじゃ無いですが、北條君に本気になる前に知っておきたいことだったから、やったんです。

勿論、見聞きしたことを言いふらすつもりなんか無いです。墓場まで持っていくつもりでしたよ。

 

でも。

 

このエフェクトを使うと、それが分かってしまうかもしれませんね。

ディメンジョンゲートと名付けられたこのエフェクトのルール、調べようと思えば調べられますし。

 

そうなったら、私は北條君に嫌われるかもしれませんね。

 

……私の目的は、北條君に選んでもらって、彼のお嫁さんになって、彼の家族の一員になることでした。

彼の傍に、彼の妻として、お義姉さん……琴美さんの義妹として、並びたかったんです。

 

でも。

 

……ここで、秘密がバレるのが怖かったからと、やれることを全力でやらずに居て。

仮になんとかお義姉さんを救出することに成功したとしても。

 

その後、私はどんな顔をしてお義姉さんの隣に並べばいいんでしょうかね?

 

自己保身で家族を危険に晒すって、そんなのありえません。そんなの、どこが家族ですか!?

覚悟は、すぐに固まりました。

 

「北條君!お義姉さんの居場所は、普通に考えるなら自宅でいいのね!?」

 

一応確かめました。

北條君が、予想通り頷きます。

 

だったら、やるしかないですよね。

 

秘密がばれるぞ、やめとこうよ、って言う私の裏の声。

私はそれを叩き伏せました。

 

「だったら、任せて!」

 

私は魔眼を出現させて、地面に片膝を突き、地面に片手を当てて。

このエフェクトを使うときに決めているキーワードを叫びます。

 

頭の中で、北條君の自室をイメージしながら。

 

「ディメンジョンゲート!」

 

即座にエフェクトが発動し、捻じれるように重力で歪められた空間に、北條君の自室へのワープトンネルが出現します。

 

……やってしまった。

でも、後悔なんて、無いです!

 

「重力で空間を歪めて、北條君の自室とここを繋げたわ!早く通って!」

 

私の内心の葛藤なんて知りようもない北條君は、純粋に私のこの行為に感激してくれました。

 

「ありがとう水無月!助かった!」

 

お礼が嬉しかったです。

でも、同時に、痛かった。

違うんだよ、北條君。

この行為には、隠し事があるのよ……

 

 

「あなたって、本当に優秀な子ね。バロールの主要エフェクト、ほぼ全部習得しているのね。使いどころもバッチリだし……時の棺のミスだけで、この田舎に押し込められるのUGNにとっても損失よね」

 

北條君を送り出した私を、背後にいたヴィーヴルが褒めました。多分本気で。

普通なら悪い気はしなかったと思うんですが、このときは、素直に喜ぶ気分じゃありませんでした。、

 

「上に掛け合ってあげようか?クリスタルオーブを田舎に押し込めるのは間違いです、って」

 

「姉さん、今はそんなことを言ってる場合じゃ」

 

あまり聞こえてなかったです。

頭の中で北條君に「え?お前、俺の家に勝手に入ったの?何しに?盗聴?すぱいうぇあ?マジで?」とドン引きされて「ゴメン、無理」と縁を切られる未来予想図がエンドレスで流れていたんで。

そんなときです。

 

「あ、そういえばディメンジョンゲートが使えるってことは、キミは北條君の家には行ったことあるんだね……ん?ちょっと待て、キミ、告白はされてないし、してなくて今は彼の彼女でも何でもないんだよね?友人居ない北條君の家にどうやって入ったの?」

 

……余計な事に気が付く困ったトカゲさんですねえ……!!

 

追い詰められていた私は、薄笑いを浮かべつつ二人を振り返りました。

 

「それが何か?」

 

……二人は、何かを悟ったようでした。

一瞬固まった後、聞かなかったような顔になります。

 

「まぁ、それは深く詮索しないでおきましょう。それよりも、私たちも飛ばして頂戴」

 

ええ。そうですね。

現場は今が大事なところかもしれませんし。

 

この人数を飛ばすんです。

 

北條家の家族のリビングがいいかもしれませんね。

 

私は再度、エフェクトを発動させました。

 

 

空間を歪めて、繋げて。

私たちは北條家の家族のリビングにやってきました。

 

いつかはここに私も加わりたいと思ってた部屋。

 

その部屋は、変わり果てていました。

ソファとテーブル、大きなテレビの傍にあった、大窓がぶっ壊れ。

ガラス片が飛び散っていました。

 

ちなみに、全部部屋の側。

 

外から何かが無理矢理窓を破って侵入してきたのが分かります。

 

北條君は。その部屋で頭を抱えて崩れ落ちていました。

 

……状況が一瞬で分かってしまいました。

 

「……遅かったか」

 

「どうしよう……姉さんが……!ブラックさん!?」

 

「落ち着け。まだ殺されたと決まったわけじゃない!」

 

お義姉さん、お願いです。

私、あなたとも家族になりたいんです!

 

無事で居て下さい……!

 

この状況にパニックに陥りつつある北條君を宥めるため、ブラックリザードが分析結果を口にしました。

 

「藤堂一美については一夫を調査するときに少々調べている。自己中心的で、息子以外の他人について、全く思いやりを持っていない人物だったようだ」

 

小6の一夫がカメラを万引きしたときに、彼女は「万引きされるようなところにカメラを置いていた店が悪い。息子は悪くない」と触れ回り、執拗に店を侮辱する発言を繰り返したらしい。

モラルが元々全くなく、加えて執念深い人物だったらしい。

 

「だから、彼女がキミの姉さんを攫ったとして、あっさり殺すとも思えない。まだ間に合う可能性がある」

 

シャドウストーカーは元々本当に邪悪な人間だから、逆に恨みの相手をすぐに殺すことはしない。

そうは言いますが。

 

……殺されるだけが、人間の「終わり」じゃないんです。

殺さなくても「実質的に終わった」状態にしてやることだって出来るんです。

 

顔を焼く、手足を捥ぐ、子供を作れなくする……

……手段はいっぱいあります。

 

それじゃ安心なんて出来ませんよ!

 

でも、ブラックリザードの話には続きがありました。

 

「多分だが、藤堂家の可能性が高い。お楽しみは、自分の巣でじっくりと行いたい。そういう心理が働くだろうからな」

 

藤堂家……。

悔しい。

 

調べておけば良かった。

後悔しました。

 

藤堂家については、場所すら知りません。

調べようとすらしなかったから。

 

彼のことを調べるときに、彼を知るために連中の邪悪さを調査するとか、そんなことを考えなかった自分。

北條君の痛みに寄り添うのに、必要な事だったかもしれないのに。

 

……どうして、そんな発想が無かったの?

 

彼の人となり、性癖を調べて、自分が彼と結婚した時に何を覚悟しておかないといけないか。

それを調べることしか考えていませんでした。

 

……自分の事ばっかりじゃない!!最低!

 

「クリスタルオーブ、藤堂家に飛ぶことは可能?」

 

そんな私に、ヴィーヴルが確認してきました。

悔しかったし、無力感すら感じていました。

私は答えます。血を吐く思いでした。

 

「すみません。そこは無理です」

 

自分のことばっかりで行動したせいで、肝心なところで使えないなんて!

私は本当に駄目な子です。

 

とても、辛かった。

出来ないことを出来ないというのが、とても辛かったです。

 

……そんな私を前にして、ヴィーヴルが

 

「そう。……じゃあ、しょうがないわね!!」

 

腕をクロスさせ、息を大きく吸い込み

 

クアアアアアアッ!!

 

完全獣化をはじめました。

体中に鱗が浮かび上がり、腕は太く、太腿も肥大。

両手は鉤爪に変わり、脚も恐竜のように変化し。

口が裂け、歯が牙に変わっていきます。

変化についていけない衣服が、どんどん裂けていきます。

 

Tシャツを全部弾けさせながら、背中から巨大なドラゴンの皮の翼が生えて。

 

ジャージを全損させつつ、臀部からドラゴンの太い尻尾が生えて。

 

ヴィーヴルの完全獣化が完了しました。

……なるほど。確かに牝ドラゴンですね。

彼女の完成された完全獣化を目の当たりにし、彼女のコードネームの由来を思い出します。

 

「行くわよ!私が運ぶから!自動車より早くいけるわ!しっかり掴まるのよ!!」

 

ガシッ

 

ヴィーヴルは、私たちを両脇に抱えて、羽ばたいて。

割れた大窓から、夜空に舞い上がりました。

そして、瞬時に、急加速します。

 

!!!

 

あまりの速さに、一瞬焦りましたが、私たちはヴィーヴルにしがみ付く力を強めてそれに耐えます。

ここは耐えるところです。

 

この速さなら、間に合うかもしれないから。

 

……無事で居て下さい、琴美さん……お義姉さん!!

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