※この作品はR-18です。

裁きの炎   作:XX(旧山川海のすけ)

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5話 傷痕

臨時教師の数学の泉先生。

 

最初こそ、スーツ姿でビシッと決めて来ていたが。

いざ、授業がはじまると、クソださい茶色のジャージで授業に臨むようになり。

 

期待していた生徒たちをガッカリさせていた。

 

なんだ、あの凛とした格好で授業してくれるんじゃないんだ、と。

折角、デキる女的女教師の、興奮授業が楽しめると思ったのに、と。

 

まぁ、授業自体は分かりやすいし、質問には的確に答えてくれるしで、文句は出ていないようではあったのだけれど。

そんな当初の予想とは別の意味で有名人になってしまったその先生を、俺は見掛けた。

 

廊下で、俺の姉さん……北條琴美をつかまえて、何かを話している。

あの髪型、あの身長、あのシルエット……姉さんで間違いない。

 

話し込んでいるが、軽い感じではない、けっこうがっつりと。

 

……何をやっているのかな?

 

姉さんは俺と違って優等生だから、教師につかまえられて厳しく指導されるようなことは無いはずだ。

まぁ、だから、俺の悪評が姉さんの邪魔になってるな、と思うとき、自己嫌悪がすごいのだけれど。

 

しばらく話していて、泉先生が姉さんに礼を言う仕草をして、何処かに行ったので。

 

俺は姉さんに駆け寄り「なんかあったの?」と聞いた。

 

「あ、雄二……」

 

俺に気づいた姉さんは「雄二の事を聞かれてたかな」と答える。

 

それも、かなり詳しく聞かれたらしい。

幼少期はどうだったのか、とか。

最近何か変わったことは無いか?とか。

食べ物の好みの変化は?とか。

普段の振る舞いに変化は無いか?とか。

 

……何?あの人?

何、俺の全てを把握しようとしてんの……?

 

流石に恐怖した。

何?

ひょっとしてあのナリで、生徒に手を出す悪癖でも持ってるのかあの女教師……?

それで方々で問題を起こし、一か所で教師を続けられなくなり、臨時教員で飛び回ってるとか……?

エロ漫画だったら興奮のシチュだろうけど、実際にやられると、流石に怖いわ。

 

相手がいくら美人でも、勝手に個人情報を探られるのはね……

恐怖以外の何物でもない。

 

「姉さん、まさか言われるままに話して無いよね?」

 

「え?不味かった?」

 

不味いよ!!

頭悪くないはずなのに、こういうところ、ダメなんだよな、俺の姉さん……。

 

とはいえ、俺もこの程度で大騒ぎし、教師の恨みを買う度胸は無く。

聞かなかったことにすることに決めた。

 

もう、仕方ない。

 

上に訴え出るのは、もうどうしようもないと思えたときにしよう。

 

そのまま「また後で」と去ろうとすると、姉さんは

 

「今日もなるべく早く帰ってきてね……独りで居ると、余計なことを考えておかしな気分になるとき、あるからさ……」

 

グッと胸が詰まった。

 

姉さんは、友達の大林さんの死を、まだ引き摺っている。

無理もないけれど。

最初の事件から、まだ1か月くらいしか経ってないから。

 

それに。

大林さんは、姉さんの幼稚園児時代からの友達だったんだ。

 

俺も、もう一人の姉さんのように付き合わせてもらった。

俺たち姉弟が一番つらい時に、勝手なことを言う連中から俺たちを守ってくれたのも大林さんだったんだ。

 

彼女を失った傷が癒えるのはいつのことなんだろうか。

それを思うとき、俺は暗い気分になる。

 

あの事件の犯人が誰なのか。

分からないけれど、俺は絶対に許しはしないだろう。

 

大切な人を、二人も傷つけたんだから。

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