※この作品はR-18です。

「私の卵、買ってください……」 ~生活苦で卵を売らざるを得ない有翼人少女に迫る毒牙~    脚本・撮影・演出:バイナバナナン   作:tanu3

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「私の卵、買ってください……」 ~生活苦で卵を売らざるを得ない有翼人少女に迫る毒牙~    脚本・撮影・演出:バイナバナナン

「生卵とベーコンエッグとプレーンオムレツ、お待たせしましたー」

 

昼時の食酒亭、千客万来の中を滑るように飛行して天使の少年が一つのテーブルに卵尽くしの料理を運ぶ。

 

「サンキュ、いただきまーす」

 

ラミアのナルガミが生卵を殻ごと口に放り込んでそのまま丸呑みにする。

喉で殻を砕いて白身と黄身の喉越しを味わうのも忘れない。

 

「前々から思ってたんだが、ラミアってどいつもこいつも卵はそんな食い方するのか?」

 

イエローボアのベーコンをナイフで切り分けつつ卵と絡めながら聞くのは人間のスタンク。見てくれはどう見ても色狂いのチンピラではあるものの、ナイフもフォークも全く音を立てないその所作は上流階級のそれで、どうにも違和感があるのだがそれに気づいている者はいるのだろうか。

 

「んなこたあない。殻は残して中身だけ丸呑みする奴もいるし殻に穴開けて啜る奴もいる。お前らだって色んな調理法で食うだろ。好みの問題だ」

「ふむ、それも道理だな」

 

わかったようにエルフのゼルが頷きながらオムレツを口に運ぶ。

 

「ラミアにも生よりゆで卵が良いって変わり者だっているしな。卵嫌いはまずいないけど」

「俺はやっぱり肉と合わせてえな。ゼル爺さんは薄味の方が好みみたいだが」

「だから俺は二百歳のピチピチボーイだっての。オムレツは先代女将の頃からの名物だからたまに味を見ときたくなるんだよ」

「いつの話だよそりゃあ」

「お前が親父さんの金玉の中に発生するよりも前だったわ」

「気持ち悪い言い方するんじゃねえよ」

 

食事中にする話としては下世話な方面に話題がシフトしてきたが、それで食事の手が止まるような繊細な者はこの卓にはいない。普段ならば周囲のテーブルに配慮せよと教育的指導を執行する有翼人の給仕がいるのであるが、彼女が苦手としているラミアが居るため普段よりも下ネタへの遠慮がない。いつしか卵の食べ方から始まった話題はただの下ネタトークになりつつあった。

 

「あ、あのー。他のお客さんもいるしもう少し、その、ボリュームを落としてですね……」

「クリムはどんな卵料理が好きなんだ?」

 

メイドリーに代わっておずおずと注意にやってきたクリムヴェールにナルガミが最初の話題に回帰した質問を投げかける。彼らにとってはどちらも日常会話の一つだということなのだろう。

 

「んー……ボクは、サンドイッチですね。ゆで卵を刻んでマヨネーズと和えたのが」

「あー、あれ美味いよな」

 

スタンクたちには「企業秘密」として語っていないのだが、天使は本来は然るべき立場の存在が聖別した供物しか口にできない。だが、輪を欠いてしまったクリムは何でも食べることができ、他の天使たちから密かに羨まれている。そして、サキュバス街巡りと同じぐらいあれこれ食べ歩くのも彼にとっての楽しみになっていた。サラマンダーの女体焼肉の味と魔石焼きの肉の味を比較できるほどには。

 

「とにかく、もう少し周囲に配慮して喋ってください!ただでさえメイドリーさんがピリピリしてるんで!」

「いやまぁそれはお前が午後半休取ったからじゃん」

「そうですけど……仕事だからしょうがないじゃないですか」

「そうだ、立派な仕事だ。胸を張って堂々と俺達と比肩すれば良い」

「産卵ショーのレビューだからな!産卵!!……ぐへっ」

 

ナルガミに近づきたがらないメイドリーを煽るべく敢えて大声を出したスタンクの顔面に高速で飛来したトレイが凄まじい音を立てて突き刺さった。

 

彼らが何故このようなことになったのか、話は数日前に遡る。

 

 

 

 

「あなた達のレビューに言いたいことがあるわ!!」

 

いつも通り猥談をアテに酒を飲んでいたスタンクたちのところに、一人の女性が乱入してきた。

眼鏡をかけていて頭部の角や蝙蝠じみた羽根を見るに悪魔族かサキュバスと思われる。

 

「はぁ、何か用ですか」

 

彼らのレビューに対してお気持ち表明がなされることはこれが初めてではない。かつては全ての女性は等しく魅力的だから低い点をつけるべきではないとインキュバスロードが意見を述べにやってきて貢がせた女性に刺されて早々に出て行ったこともある。故に彼らもまたかとばかりにやる気なさげに謎の闖入者に反応を返した。

 

「これよ!これッ!」

 

卓上にどんと置かれたのはかつての彼らのレビュー。名義人はスタンクとゼルの他はクリムヴェールとナルガミの名前もあった。店舗名は「ナマタマゴ」。素人の産卵を目の当たりにできる店だ。産みたての卵を食べられるという点で高得点をつけたナルガミ以外の点数は奮っていない。

 

「特に上二名よ!ストリップと比較してるわね!」

「あ、はぁ。そうね」

 

まさか女性の口から遠慮なくストリップというワードが出て来るとは思わず、スタンクもゼルも生返事を返すのみである。

 

「『ストリップの方があらゆる面でマシ』とあるけど、当たり前じゃない!ストリップはプロフェッショナルの提供する芸術よ!素人が産卵するだけの店とは比べるべくもないわ!」

「えーと、どちら様ですか」

「よくぞ聞いてくれました!」

 

ハイテンションでまくしたてる女性の目的がクレームの類ではないとわかってスタンクが誰何すると、女性は莞爾として笑った。

 

「私はバイナバナナン!サキュバスムービー監督よ!」

「あー……そういやいたね。百合映画撮ってた人だ」

 

思い出したカンチャルが声を上げる。かつて、スタンクたちのレビューを剽窃したエロレビューが一斉に出現した時に、一際異彩を放っていた自作のサキュバスムービーの製作者である。なお、作品そのものの出来は悪くなかったものの、途中で画面外から聞こえる水音と喘ぎ声に関しては賛否両論であったという。

 

「フッ、知られているのなら話が早いわ!あなた達の認識を改めてあげる!そう、プロフェッショナルによる本物の産卵ショーよ!!」

「本物……ってことは、プロの女優がガチ産卵するってことか。そりゃ確かに見たことねーな」

「イエス!この娘が産みます!」

 

バイナバナナンが呪文を唱えるとビジョンが浮かび上がる。少女と見まがうほどのロリ顔かつ細身の有翼人の女性の姿である。流石に未成年は使っていないだろうから、そういう種族なのだろう。食器を下げるついでにやってきたクリムがビジョンをチラ見するのをスタンクは見逃さなかった。

 

「羽根の形からして……スズメ系の有翼人かな?」

「この娘見たことあるぞ。サキュバスムービー出てたわ」

「ショーは、あなた達のレビューしたナマタマゴを借り切って公開撮影するわ!無料で招待するから見に来てちょうだい!レビューしてくれたら記録水晶を一人一つ進呈するわ!」

 

つまるところはレビュー依頼であった。最初に怒ったようにまくしたてると見せかけて自分のペースに有無を言わさず持ち込む辺り、割と図太くかつ抜け目のない性格なのだろう。まあ、そうでなければスタンクたちの企画の丸パクリに手を出さないわけだが。

 

「えーと、じゃあ前のと比較できるように同じ面子で行った方が良いかな?」

「丸投げかよ。まあ、こっちの出費がないんなら俺は良いけど。ナルガミだけ呼ばなきゃな」

 

以前にナマタマゴに行かなかったカンチャルは興味ないとばかりに経験者に押し付ける。彼からしたら自分たちの誰がレビューしたところで写しの売り上げの一部が懐に入ればそれでよかった。そもそも、異種族レビュアーズの収入の大部分は他のレビュアーが輸送隊ギルドを利用するときのマージンなのだ。

 

「ま、ガチ有翼人は前に見れなかったからそこは楽しみだな」

「デリーちゃんがいただろ」

「あの寸胴体型が気になるんだ……おーい、クリム、仕事の話だから来いよ!」

「あっ、はーい」

 

仕事ならば仕方ないという風にふよふよと近づくクリムだが、その足取りと言うか羽根取りと言うかは軽い。メイドリーがそんなクリムに冷たい視線を投げつける。

 

「じゃあ、後はラミアの人にも伝えておいてちょうだい!プロフェッショナルのショーをお見せするわ!」

「あいよ。まあ、後はあんたの作品の出来次第ってとこだな」

「そこは期待してくれて良いわ!これ、パンフレットね。じゃあよろしく!」

 

最後までハイテンションのままバイナバナナンは嵐のように去って行った。残されたパンフレットをスタンクたちは検める。

 

「私の卵、買ってください……」 ~生活苦で卵を売らざるを得ない有翼人少女に迫る毒牙~

 

田舎から出て来た有翼人の少女パロウ。だが、都会は物価が高く、安定した仕事も見つからなかった。

金に困った彼女は産卵ショーで生活費を補填することにしたが……?

 

有翼人のガチ産卵をバッチリ撮影!漏れる吐息、ひくつく総排泄孔!いつしか羞恥の吐息は興奮に変わり……

 

更なるお楽しみも!乞うご期待!!

 

 

主演女優のポートレートとともにいかにもな惹句が紙面に踊っている。一番後ろから覗き込んでいるクリムが無言で見入っているのを見て取った悪い大人たちがにやにやと厭らしい笑みを浮かべる。

 

「お、どうしたクリム。前のレビューは低得点だったがやっぱり気になるのか」

「可愛い有翼人だもんな。それも、産卵を見せてくれる」

「クリムなら頼み込めばメイドリーだって見せてくれるんじゃない?」

「見せませんッ!!」

 

椅子でもって横薙ぎ一閃、セクハラ親父三人は酒場の床に沈み、一人残されたクリムは氷のような視線を浴びながら仕事に戻ったのであった。

 

 

 

そして、現在。

 

「ったく、メイドリーめ。あいつの攻撃力日に日に上がってってねーか?」

 

腫らした顔をさすりながらスタンクが零す。

 

「攻撃力もさることながら投擲の精度がやべーわ。給仕するよりも冒険者やった方が儲かるかも知れねーな」

「お前ら懲りないよな……」

 

四人は食事が終わると追い出されるように食酒亭を出て、バイナバナナンプロデュースの撮影会へと向かっていた。

 

「まぁでも基本的に一発殴ればチャラってスタンスだからそこは付き合いやすいよな。カンチャルのアレはともかく」

「そもそも殴られるようなことを言っちゃ駄目だと思いますよ……」

 

会場のナマタマゴは皆が皆産卵で興奮する人魚族の存在を考慮に入れて海辺に存在する。向かうにつれて潮の香りが漂ってきた。

 

「割と人通りが多いですね」

「普段はいつ誰が来るかわからんけど、今日は時間決めて公開録画だからな。しかもキャストまで決まってると来てる」

 

道中には以前にバイナバナナンが置いて行ったものと同じパンフレットがあちこちに張り出されていた。これだけ大々的に宣伝していれば嫌でも目につくのは間違いない。一行はパンフレットを追うようにして海辺の野外劇場を思わせる建物まで辿り着いた。

 

「いらっしゃいませー。本日の公開録画は入場料四千ゴールドで……ああ、レビュアーズの皆様ですね」

 

首を異様な角度に向けながら無表情で出迎える受付兼用心棒のミミズク有翼人にも二度目ならば慣れたものだ。スタンクに限っては一度彼女の双子の妹を猛禽類専門店で抱いているので三度目になる。いきなり首が百八十度回転してももう事の最中でなければ怖くない。たぶん。

 

「ほぉー。すげえな、千客万来じゃねえか」

「普段の倍払ってでも確実に有翼人の産卵が拝みたいって層がここぞとばかりに来てんのかねえ」

 

会場を見回せばいつも通りのラミアだけではなく人間やエルフなど普段はあまり見ない層も目立つ。そして、人魚用の水中ブースは既にみっしりと男の人魚で埋め尽くされていた。

 

「恐らく上乗せ分は会場とあの女で折半ってことにしてるんじゃないか?」

「マジで商売上手だな。こんだけ入ってたら折半でもかなりのもんだぞ」

「いや、そこまでじゃないかも知れん。見ろよ」

 

ゼルがステージの少し手前を指差す。そこには何やら魔法陣がステージを囲むように描かれていた。

 

「ありゃたぶん音を一方通行させる術式だ。ステージから客席への音は全部聞こえるけど客席からステージには音が届かねーって寸法だ。あの規模だと相当高くつく。それに、記録水晶も安いもんじゃねーがたくさん仕入れて沢山売らなきゃ儲からないしその分元手がかかる。伸るか反るかの大博打を打ったって感じだろうな」

「卵はどうするんだろうな」

「流石にこの人数でオークションとかやるとえらいことになるし、くじ引きだと良いんだけどな。一人五百ぐらいで抽選権を買って、当たった奴にご進呈。売り上げは嬢と監督と会場で分配、とかかねえ」

「あー、ありそうだな。会場内のラミアが全員買えばそれだけでひと財産になるわな。ぼろい商売じゃねえか」

 

自分たちの方がもっとぼろい商売をしているのでは、というツッコミがクリムの喉から出かかったが、そのぼろい商売の上がりで食っていけている身ゆえに寸前で心の内で呟くに留めた。

 

「はーい、皆様ー!公開収録にこんなにお集まりいただきありがとうございまーす!事故等あってはいけないので収録が終わるまでは舞台に近づいたりはしないでくださいねー!」

 

席の大部分が埋まった頃にバイナバナナンがメガホンを片手に現れ、相変わらずのハイテンションで注意を告げる。上空をばっさばっさと羽音が旋回し、ナルガミが居心地悪そうに身震いをした。万一があったら文字通りつまみ出されるのだろう。

 

「では皆様、間もなく収録を開始いたします。最後までお楽しみくださいませ!」

 

バイナバナナンが指を鳴らすとステージが漆黒の闇に包まれる。闇の中でごそごそと何やら音が聞こえ、闇が晴れた時にはセットが完成していた。闇を見通せるドワーフ辺りをスタッフに雇っていたのだろう。ステージの上に簡易的な部屋のセットができており、その真ん中では有翼人の女性が椅子に座っていた。ビジョンよりも小柄で確かにゼルの見立て通りスズメがベースらしい。違法じみた年齢にも見えるが人間に対してのハーフリングのようなものだろう。会場がわっと湧く。

 

(ロリを抱いたことはあるが、こんなちっこいのが産卵するってのは初めて見るな)

 

スタンクはどのような種族やシチュエーション相手でも臆さずまずやってみるのがポリシーである。たまに地雷を引いたり大変な倒錯趣味に精神をやられかけたりどうしようもないボッタクリ店に引っかかったり見た目だけ若い嬢を選んで他の仲間にドン引きされたりすることはあるが、今回は単にタダで産卵ショーを楽しめておまけにサキュバスムービーとレビューの売り上げがついてくるというぼろい商売だ。後はあのハイテンションなやばそうな監督の腕次第と言ったところか。

横目で仲間たちの様子を見てみる。

 

(ゼルは……なんかわかったように頷いてんな。この満員御礼の中で臆してない女優のプロ根性に納得してんだろうな)

(クリムは……もう前かがみになってんな。あいつほんと有翼人好きだな)

「良いなあの娘……丸呑みしやすそうで……」

 

ナルガミは欲望がダダ漏れであった。ちろちろと二股の舌が口から覗いている。ラミアは巻き付いたり喉奥に突っ込んだりというプレイを重視するので、小柄な種族の方が好きなのだという。

 

「えっと、まずはお名前から聞いておこうかしら」

「は、はい……パロウです……」

「パロウちゃんね。産卵ショーに出るのは初めて?」

「は……初めてです……」

「そう、じゃあ交尾は?」

「そ、それもまだ……です……」

 

水晶の撮影範囲を外れて声だけ入るように位置取りしてバイナバナナンが主演女優に質問を投げかける。顔を真っ赤にして答えるパロウだが、勿論それは演技だろう。そもそも素人であれば満員御礼の劇場で衆人環視の中産卵などできようはずもない。

 

「ほんと?パロウちゃん可愛いから彼氏とかいるんじゃない?」

「い、いませんよぉ……いたこともないですし……」

「今日は大丈夫?皆見てる中で産卵してもらうのよ?可愛い総排泄孔から卵がころんって出てくるのが皆に見られちゃうのよ?」

「すっごく……恥ずかしいですけど……でも、都会は家賃とか、物価が高くて……」

「それで、出ちゃうんだ、サキュバスムービー」

「は、はいぃ……」

(ちょっと、なんですか、これ、スタンクさん)

(あん?)

 

パロウとバイナバナナンのやり取りを聞いているところに小声でクリムが話しかけてくる。百戦錬磨のスタンクたちに連れられて様々なサキュバス店に出入りして一人では辿り着くべくもない都市伝説の店やこげつき亭なども体験してきた彼だが、やはりサキュバス店以外の経験がないためエロ全般に対する知識がない。性転換の館でインキュバスボーイの用語を知らなかったりもした。いや、地上の宗教知識もなくて酷いことになったりもしたのだが。要するに、サキュバスムービーのお約束と言うのがわかっていないのだ。

 

(こーゆーのは素人ものっつってな、プロを使っててもその辺でスカウトした素人がムービーに出てるって体で撮るもんなんだよ)

(そんでもって最初にこういう風に自己紹介から入るわけだ。サキュバス店でも入ってすぐいざ本番ってわけじゃねーだろ)

(なるほど……ありがとうございます)

 

周囲の迷惑にならない程度の小声でのやり取りを済ませた頃にはパロウが上着に手をかけていた。

 

「あ、あの……卵を産むだけだったら脱がなくても……」

「ダーメ、ちゃんと可愛いちっぱい見せてちょうだい。それ込みでお金を払うって契約書に書いてあったでしょ?」

「そ、そんなぁ……」

 

赤面しながらパロウはブラウスのボタンを上から一つ一つ外していく。羞恥に手が震えるという体で所作はあくまでもゆっくりと。それが観客たちにとっては焦らす形になっていて歓声が巻き起こる。そして、現れた飾り気のないブラも外された。

 

「うひょー!可愛い!撮影忘れてしゃぶりつきたい!でもダメ!ダメ!まだまだお楽しみは先なんだから!次は下も脱いでね!!」

「はいぃ……」

 

バイナバナナンのテンションが早速おかしくなってきて、歓声を上げた観客の中に戸惑いの空気が漂うもパロウがスカートを脱いでこれまた飾り気のないパンティが露になるとまた熱狂へと回帰する。

 

「あ、あの、本当に脱がなきゃ……駄目ですか?」

「駄目よ!半脱ぎで産むのもロマンがあるけど記録しないと駄目だもの!パロウちゃんの可愛い総排泄孔を永・久・保・存!するのよッ!」

「あー……わ、わかりました。あんまり見ないでくださいね……」

 

パロウが一瞬素に戻りそうになったのをスタンクは見逃さなかった。自分にも経験がある。ノリノリで淫語責めをしているときに素で返されることが。傍から見るとこんな感じだったのか。確かにこれはドン引きである。

パロウは上同様下着もゆっくりと脱いで観客を焦らす。最後の一枚が取り払われ総排泄孔が丸出しになるや否や歓声はもはや轟音かと思うほどの勢いとなっていた。

 

(やべえ、ロリのスジにしか見えねえ。これホントに産むのか……?)

 

パロウの総排泄孔はその矮躯にふさわしくぴっちりと閉じていて和毛や羽毛すら一本も生えていない。スタンクの脳裏を今までに見たロリ系の嬢の下半身がよぎる。ピルティア、ヤチヨ、チミナ、ロゼ、クリトリム、チャル美……途中から変なのが混ざった。

 

「じゃあ準備も出来たしすっぽーんと産んじゃいましょうか!」

「あうぅ……が、頑張ります!」

 

バイナバナナンがクッションを入れた籠をパロウに向かって滑らせる。パロウは籠に跨って逡巡するように動きを止めた。観客に総排泄孔をしっかり見せるための演技だろう。

 

「ん……んん……っ!」

「普段はどういう風に産んでるの?」

「普段は……っ、こんな恥ずかしい体勢しません……っ!」

 

二人のやり取りを見ながらスタンクは一つの疑問が浮かんだ。クリムのレビューには「五分ぐらいで終わる」という不満点があった。実際に産卵自体は人間などの出産と違い、すぐに終わる。嬢によってはステージに上がっていきんで卵が出るまで2分とかからない場合だってあった。ここから5分で終わってしまってはサキュバスムービーとしても盛り上がらない作品になるだろう。その辺、あの監督はどう考えているのか……。

 

「どう?普段と違う体勢で皆に見られて産んじゃうのよ?」

「やだぁ……言わないでぇ……恥ずかしくて……死んじゃいそうです……」

「そんなこと言って、入り口がひくついてきたわよ?出るの?出ちゃうの?ロリ総排泄孔から無精卵出しちゃうの?」

 

言葉責めで引っ張るにしてもこの先どうやって場を持たせるのだろうか。スタンクの疑問を他所に、パロウの総排泄孔から卵が顔を出し……

きゅぽん、とあっさりとクッションの上に落ちた。生態もスズメに寄せているのか、卵は鶏卵よりも小さいサイズで殻に独特の模様がついている、

会場はどっと沸いてはいるし人魚用の客席からは早漏な客がやらかしたらしく悲鳴も聞こえてくる。

 

「出た出た。ほっかほかの卵。皆の前で産んじゃったわねぇ」

「あうぅ……この卵、どうするんですかぁ……?」

「どーしよっかなー」

 

パロウの発言に周囲がざわめく。ナルガミも勿論半身を乗り出して、バイナバナナンの次の言葉を待つ。オークションか、くじ引きか、はたまた……

だが、次に出た言葉は彼らの誰もが予想していないものだった。

 

「実はー、卵の買い手はもう決まってるのよねー」

 

バイナバナナンが指を鳴らすとセットの陰から素早く何者かが這い出てパロウに絡みついた。

 

「きゃっ!?」

「紹介するわ!今回の卵を全部買ってくれるラミアのクチナちゃんでーす!」

「あはぁ、卵も貴女も美味しそうねぇ……」

「ひぃ、や、やだぁ!?」

 

次の瞬間、歓声と怒号が会場を包み込んだ。

 

「おいおい、何事だよこれは」

「異様な空気で怖いです……」

 

スタンクたちは戸惑い辺りを見回す。ナルガミは怒号側に入っている。見るに、ラミアはだいたい怒号を上げ、ラミア以外の一部が歓声を上げているようだ。怒号の上から威圧するかのように羽音が旋回し、辛うじて物を投げたりステージに雪崩れ込んだりという最悪の事態は回避されそうではあった。

 

「ふざけんな!!金返せ!!!」

「あんな文章で騙しやがって!ペテン師が!!」

「やっぱりバイナバナナンの作品はこうでないと!」

「俺も百合ップルの部屋の観葉植物になりてえ!」

 

そんな客席の悲喜こもごもをよそに有翼人に絡みついた妖艶なラミアは卵を眼前に見せつける。

 

「まずは、卵ね。いただきまぁす」

「ま、まずはって何よぉ……」

 

クチナは卵の端を爪で砕き、口をつける。そこから中身をじゅるりと啜り上げ、そのまま嚥下した。

 

「ふふ、美味しいわぁ」

「やだぁ、こんなの聞いてないですよぉ……」

「契約書には書いてるわよ?まあ、古い部族の象形文字だけど見落としたのは貴女のミスだし?」

「あ、悪魔……」

 

壇上では捕食者と被食者の百合が繰り広げられているが、それはそれとしてスタンクの並びからはしゅうしゅうと唸り声が聞こえてくる。ある程度は落ち着いたもののそれでも腹の虫がおさまらない様子のナルガミだ。

 

(ナルガミ、悪い、なんでラミアがキレてるんか俺らにはわからんのだが)

(あのな、あのクソアマ、主演女優つってあの有翼人を出しといて他に誰か出るとは言わずにパンフには『更なるお楽しみも』ってあったじゃねえか。だから俺らラミアは産みたて卵が手に入ると思って来たわけだ。俺は招待だからまだいいけど他のラミアは倍額払った挙句卵が手に入らないってなったらそらまあキレるわ。最初からあの二人の絡みってわかってたらそれはそれとして楽しめるとは思うが)

(要するにラミアを呼ぶためにペテンまがいの説明をしたってわけか。で、あいつの作品のリピーターなら更なるお楽しみってのは産卵のみならず得意の百合だって思って来たら予想通りだったからここからが本番だ、と)

(スタンクに共感してもらいやすいように喩えるとだな、事前に何も言われずにめっちゃ好みの嬢のパネル見せられて入ったら実はNTR専門店で好みの嬢がやってるのを見ながらマジホで一人でシコれって言われるような……)

(わかった、皆まで言うな)

 

商売上手だと思ったのは大きな勘違いで、どうにも詐欺スレスレの危なっかしい商売だったらしい。だが、それはそうと百合作品になるのであればナルガミには悪いがこのまま最後まで楽しめそうな気がしてきたのでスタンクはステージに集中することにした。喩え話とは言えNTR専門店のことを脳裏から追い出したかったというのもある。あれはもうごめんだった。

 

「卵味のキス、しましょうねぇ」

「やだやだやだ、やめ……~~~~っ!?」

 

クチナは片手で軽々とパロウの矮躯を持ち上げ、唇を奪う。パロウはじたばたと身をよじるも圧倒的な対格差がそれ以上の抵抗を許さない。その抵抗すらももう片方の手で押さえられてねじ伏せられ、パロウの身体はクチナの豊満な胸に乗せられる形で固定された。その間中もずっとラミアの長い二股の舌が口内を蹂躙しているのだろう。時折パロウの身体がびくりと痙攣する。

 

「ぷはぁ、どうだったぁ?貴女の産んだ卵の味が口いっぱいに広がったでしょう?美味しかった?」

「うぇぇ……」

 

えずきながら肩で息をする他できないパロウ。その反応を楽しむようにクチナは長い舌で彼女の唇をぺろりと舐めて次の凌辱へと移行した。

 

「一個だけってことはないでしょう?次、産んでねぇ」

「やだ、駄目ぇ……」

「一人で産むのが無理なら手伝ってあげるわよぉ?」

「チ、チチッ!?」

 

クチナはパロウの身体を左腕一本でロックして、右手を総排泄孔へとやった。

 

「ほーら、貴女の卵ちっちゃいから一個じゃ足りないのよぉ。早く早くぅ」

「やめ……てぇ……」

 

身をよじろうとするパロウだが、脱出はかなわずクチナの胸がぽよんぽよんと揺れるばかり。その間にもクチナの指はパロウの総排泄孔をなぞり、人差し指がその中に侵入する。

 

「あらぁ?あっさり指が入っちゃったわねえ。キスで蕩けちゃった?」

「そんなことないぃ……」

「いやらしい音出しちゃってるわよぉ?産卵以外でも使っちゃってるのかしらぁ?」

「してない、してないってばぁ……!」

 

クチナの指の往復はスムーズで、潤滑が十分であることを示している。

 

(客席からだと音が聞こえねえし肝心なとこもアップで見れねえな。オペラグラス持って来てる奴はいるけどそれでも限界はあるだろうし、こりゃクリスタル売れるわな)

 

二人の絡みを楽しみつつスタンクは分析する。少なくとも報酬の一部のクリスタルは即売らずに何度かは楽しんでみてもいいかなと思う程度にはスタンクにとっては当たりだった。

 

「貴女の無駄な抵抗が胸に当たって私もしたくなってきちゃったわぁ」

 

豊かな胸を覆っていた薄絹をクチナは脱ぎ捨てる。露になった双丘に客席が大きく湧いた。

 

「だから、パロウちゃんを使って私も気持ちよくなることにするわねぇ」

「ん、何を……ひゃんっ!?」

「うふふ、こりこりして気持ちいいわよぉ」

 

クチナは片手でパロウの矮躯を上下させ、お互いの胸の突起を擦り合わせる。体格が違いすぎるので、両方同時とはいかず、右へと左へとパロウは動かされ翻弄され続ける。しかも、総排泄孔に侵入した指は止まらない。

 

「んっ……んんっ……貴女の胸……っ、良いわぁ」

「やだぁ……離してよぉ……」

 

それは情事ではなくパロウの身体を淫具とした自慰。だが、それでも産卵で敏感になった身体は胸への刺激に時折びくびくと跳ねる。そして、

 

「ん……あはぁ……」

「ああああああああっ!!」

 

二人の嬌声が重なった。絶頂に有翼人とラミアの身体が痙攣する。だが、それでも二個目の卵は出てこない。

 

「ねぇ、まだぁ?」

「うるさい……っ!もう諦めなさいよ……っ!」

「じゃ、こうしちゃおっかぁ」

「わ、わぷっ!?」

 

弱弱しく抗議するパロウを抱き寄せクチナは自身の胸に押し付け、口に乳首を含ませた。

 

「さ、このまま窒息する前に産んでちょうだいねぇ」

「~~~~~~~!!」

 

空気を求めてじたばたと足掻くパロウだがクチナは意にも介さない。せいぜい先端への刺激に身を震わせるのみである。そうしているうちに、クチナの直接の愛撫が奏功したのか、パロウの総排泄孔が少しずつ開き始め……

 

「あはぁ、出たじゃないのぉ」

「やだぁ……やだよぉ……」

 

二個目の卵が外界へと産み落とされた。だがそれはクッションの上にすら落ちることは許されず、妖艶なる捕食者の掌中に収められた。クチナは自身の乳房の上にパロウの身体を横たえる。

 

「……な、何をするんですか……?」

「うふふ、こうするのよぉ」

 

クチナは卵をパロウの身体の上で割り、余った殻はそのまま呑み込んだ。薄い胸に落ちる異物感に上げたパロウの小さな悲鳴などは意に介さず落ちた中身を塗り広げていく。

 

「んん……やだぁ……こんなの……」

「料理の下拵えしてるみたいねぇ。美味しくなーれ、美味しくなーれ」

「やめてぇ……美味しくないからぁ……」

 

小さな卵ではそこまで広範囲を汚せないものの、パロウの両胸を覆う程度には卵液が塗りたくられた。クチナはカメラに見せつけるようにパロウの身体を傾ける。

 

「ほぉら、美味しそうに仕込めたわよぉ。それじゃ、垂れちゃう前に実食に移るわねぇ」

「実食って……やだ、やめ……チュン!?」

 

二股の舌が肉の平皿の上を滑り、卵液を舐め取る。時折皿が跳ねるのは、恐怖からか、それとも突起をなぞられた快感からか。一滴たりとも残すまいと丹念に舌が蠢き、少しずつ卵液は唾液へと入れ替わっていく。

 

「ふぅ、ご馳走様でした。美味しかったわぁ」

「あ……お、終わった……じゃあ、私はこれで……」

「待ちなさぁい」

 

ふらつきながら退場しようとするパロウの脚を尻尾が絡め取った。

 

「貴女、もう一個入ってるでしょう?さっき、出る時に殻の当たる音がしたわよぉ……」

「チュン!?」

 

三つ目の卵という産卵界隈垂涎のワードに客席のラミアと人魚が一斉に沸く。卵の処遇が決まった瞬間とは逆に、百合目当てだった客が何事かと辺りを見回し……数瞬の後に、人魚専用席の歓声は悲鳴に変わる。だが、魔法で仕切られたステージには客席の狂騒は聞こえない。ステージにあるのは捕食者と被食者、それと興奮のあまり端で一人おっぱじめた傍観者のみである。

 

「うふふ、3つだなんてエッチな娘ねぇ。溜まってるなら言ってくれたら最初からねっとりしてあげたのにぃ」

「誰が……そんなことぉ……チュピィ!」

 

尻尾から逃れられぬままパロウは両脚を掴まれ、逆さ吊りにされる。そのまま両脚が開かれ露になった総排泄孔にクチナがむしゃぶりつく。内部では舌が縦横無尽に蠢いているのか、幾度もパロウが痙攣しては声を上げる。

 

「んー……まだ出ないのぉ?」

 

クチナが不満の声を上げるがパロウは肩で息をするのみで返事すらできない。そんな彼女を見てクチナは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「あ、わかったぁ。さっきは息を塞いだら産んでくれたわよねぇ。やっぱり、生命の危機に瀕したら本能で産んじゃうのかしらぁ」

「え……や、やめ……あああああああっ!?」

 

クチナの尻尾がしゅるしゅるとパロウに巻き付き、締め付ける。パロウの胴ほどもある尾はたった二巻きで哀れな獲物を拘束してのけ、ぎしぎしと嫌な音が響く。

 

「ほぉら、落ちる前に産んでちょうだいな。ほらほら」

「うぎ、いぎぃぃぃぃ……」

 

急に趣向が変わり、客席の間に困惑の声がちらほらと上がる。クリムなどはもはや目を覆ってしまっている。ショーと銘打っている以上いくら監督が最中に一人盛っているイカレポンチだろうと止めない以上は台本通りなのは間違いないだろうし、スタンクもゼルもSM系のショーを鑑賞したことは幾度もある。ただ、方向転換があまりにも唐突で理解が追い付かないのが問題だった。一方、ナルガミをはじめとするラミア勢は割と興奮している辺り、明らかな失敗とは言えないあたりが難しいところだった。

 

「早く早くぅ。パロウちゃんのスケベ卵食べさせてぇ」

「ぁ……ぁ……」

 

蛇体がぐいぐいと哀れな獲物を締め付ける。もはやくぐもった悲鳴すらも弱弱しくなってくる。だが、クチナは意に介さずに総排泄孔にむしゃぶりついた。

 

「ほら、ほら、ほらほらほらぁ」

「…………」

 

締め付けは更に苛烈さを増し、パロウの身体は糸の切れたパペットのようにくたりと脱力する。クチナは拘束を解いてパロウを自身の顔の上まで持ち上げる。意識を失い弛緩した身体からずるり、と最後の卵がひり出された。それをクチナはそのまま口でキャッチして嚥下する。

 

「あは、最後はやっぱりこの食べ方がいいわねぇ。そう思わない、パロウちゃん」

「…………」

「パロウちゃん?パロウちゃーん?……そうだ、親子丼にしちゃおっと」

 

クチナの顎が外れ、かぱりと大きく口が開き妖艶な表情から一気に人外の様相へと変貌する。そのまま、パロウの身体は足先からクチナの口内へと消えていく。

 

「ん……あはぁ……イっちゃったぁ……」

 

パロウの姿が見えなくなり、喉を滑り落ちていく瞬間、クチナの身体が大きく震える。ラミアの中には喉が性感帯になっている者がおり、そういう個体は獲物を丸呑みすることに快楽を覚えると言われている。腹を膨らませたクチナの姿は一見すると妊婦にも見えなくもないが、その中身は卵だけではなく哀れな有翼人の少女が丸ごと入っている。

 

「ふふ、美味しかったわよぉ。ご馳走様ぁ」

 

膨らんだ腹をひとさすりして、クチナはステージのセットの隅へと消えていった。

 

「はーいカット!!」

 

観客たちが唖然としている空気を全ての元凶、バイナバナナンの声が切り裂いた。妙につやつやしているように見えるのは気のせいではないだろう。先刻まで撮影をしながら自慰に耽りまくっていたのだ。

 

「如何でしたか皆様!禁断の扉が開いた方は!記録水晶の方もお買い求めくださいね!人数が多かったら抽選になります!!」

「ありがとうございましたー!」

 

いつの間にやらパロウとクチナも戻ってきておりバイナバナナンの傍で観客たちに向かって深々と礼をする。

 

「そらまぁ、いくら落ちたからって卵まで垂れ流しにはならねーわな」

「ほれクリム、終わったぞ。最初から最後まで演技だから心配すんなって」

「前と同じメンバー指定ってのが災難だったな。ま、まぁ苦手なものって誰にもあるから気にすんなって」

 

あまりの展開に目と耳を塞いでいた純真な穢れまくった天使をスタンクとゼルとナルガミはフォローする。クリスタル販売の列に並ぶ必要はないのを幸いと席を立とうとした、その刹那

 

「おい、ふざけんな!!」

「産卵で釣っといてこれかよ!!」

 

腹の虫が収まらなかったラミア達がステージに向かって怒鳴りつける。販売列にはラミアの姿もあるので、完全に卵目当てで来て好みが一致しなかった者達だろう。

 

「二人での絡みなら予告にそう書いとけ詐欺師!」

「そうだそうだ!なんでハブったんだ!」

 

何か所かから上がった怒りの声に続くようにラミア達が声を上げる。納得しきれなかった者達が便乗して騒ぎがどんどん大きくなっていく。集団心理の恐ろしさである。

 

「えー、今回の予告に関して説明させていただきます」

 

拡声器を手に告げるバイナバナナンに怒りの声は少し小さくなる。その反応を見て取ったバイナバナナンは言葉を続けた。

 

「今回の主演女優のパロウさんは何度もサキュバスムービーに出演している花形女優です。クチナさんも実力は十分にあるのですが、今回が初出演ということで、ネームバリューを考えて敢えてパロウさんの作品ということにさせていただきました!それに、キャッチコピーの『お楽しみ』は女の子同士の甘美な絡みを意図したものであって、それを勝手に卵が手に入ると勘違いしたのはそちらではないでしょうか。事実、ラミアの方も趣旨を理解して並んでくださってますし」

 

理詰めで説明しているように見えてまともな説明になっていなかった。眼鏡をかけていても実際に頭がいいわけではない。相手は自分の撮影中にいたすイカレポンチなのだ。

 

「ですからー。バイナバナナン悪くなーい」

 

挙句ピースまでして煽りだした。客席を沈黙が支配する。地獄めいていた人魚専用席すらも。

 

「バイナバナナン悪くなーい」

 

二回目煽った。二回目なのでダブルピースだった。イカレポンチどころか、ただただ何も考えていないだけなのかもしれない。

 

「もう我慢ならん!金返せやぁ!!」

「ふざけやがって!通報してやるこのクソアマ!!」

 

怒りのあまり我を忘れて数人のラミアがステージへと駆け出す。が、その怒りがステージに届くことはなかった。

 

「暴力行為はお控えください」

「駄目ですよー。落ち着いてー」

「ひぃぃぃぃぃ!!」

「ぎゃああああああ!!」

 

いつの間にやら猛禽系の有翼人が幾人も上から飛来して暴走したラミア達を制圧していた。スタンクたちは彼女たちの顔に見覚えがあった。

 

「お、確かあんたは……」

「ミミルです。お久しぶりですね、お客さん」

 

ナルガミは怯えた様子で後ろに隠れ、クリムは逆に表情が緩む。彼らがかつてレビューに出向いた猛禽系サキュバス店“ミネルヴァ”のサキュ嬢たちが勢揃いしていた。クリムは一緒に空を飛ぶプレイで快感のあまり禁じられた空中射精をしてしまい罰金を支払う羽目になり、ナルガミはドMの同族の依頼でこわごわ出向いて『いっそころせ』と一言だけレビューを残したという思い出があった。

 

「なんで店のメンバー全員こっち来てんだ?」

「入場許可の申し込みの人数が3人になっていたので、何かしらトラブルがあるかもしれないと思って私がミミルに助っ人を頼みました」

 

用心棒のミミロが無表情を崩さぬままスタンクたちに説明する。スタンクがミネルヴァで抱いたミミルの姉である。

 

「予感が当たったのは良いのですが、正直今は呼ばなきゃよかったとも思っています」

 

無表情ながら不機嫌さが見て取れた。確かにまぁ身内の性事情はあまり知りたいものではないだろう。

 

「お客様方、納得できない気持ちはおありでしょうが、四千ゴールドの入場料が法外というわけでもないでしょう。ハズレ店舗に当たったと諦めてはいただけませんでしょうか。勿論、バイナバナナンは出禁にいたしますのでそれでお収めいただければ」

 

無表情のまま深々と礼をするミミロに地上に下ろされたラミア達はぶつぶつと文句を言いながらもステージから踵を返す。

 

「ご納得いただけて幸いでございます。それと」

 

礼をしたままミミロの首がぐるりと正面を向く。慣れたつもりだったスタンクだが、不意打ちを受けて声が出てしまう。

 

「私の周期があと一週間以内ですので……それだけご報告を」

 

途端にラミア達にどよめきが走る。

 

「まじか。これ、オークションやばいことになりそうだな」

「ま、最悪の事態にならなかったし帰ってレビュー書こうや」

「またうちにも来てくださいねお客様。私も楽しめましたし」

「うるさい黙れミミル」

「クリムも行かなきゃな。今度は罰金払うなよ」

「い、言わないでくださいっ!」

「俺は遠慮しておきます」

 

言いたいことを口々に言いつつ一行はナマタマゴを後にした。なんやかんやでクリスタルの第一陣は予想以上の申し込みがあって抽選になったようだ。

 

 

次の日、食酒亭にレビューが貼り出された。

 

「私の卵、買ってください……」 ~生活苦で卵を売らざるを得ない有翼人少女に迫る毒牙~

 

スタンク:6

 

百合監督のバイナバナナンの新作だ。百合作品としてはSM行けるやつならアリだが、イチャラブ好きだと駄目だと思う。産卵シーンがアップで映ってるんでそっちがいけるなら加点要素か。あと主演がロリなんでそっちが好きならそこも加点か。俺はどれも特にって感じだからこんなもんだ。まぁ、好きなシーンをリピートして使う分にはなくはないかな

 

 

ゼル:7

 

百合に産卵にSMにリョナに丸呑みととにかくいかれた監督が性癖のままに詰め込んだごった煮状態なんで、取っ散らかった印象が否めない。どれか刺さる奴はいるだろうけど全部刺さるって奴を見つけるのは難しいんじゃないかな。でも、卵3つ仕込んで出てくる主演の根性に免じて2点足そう

 

 

クリムヴェール:2

 

お芝居だとわかっていてもこういうのは見てられないです

 

 

ナルガミ:

 

やっていいことと悪いことを弁えろ!!

出来自体はそこそこ良いのが余計に腹立つ!!

 

 

レビューを見て何人かが二次生産分を手に入れられないものかと店を後にする。写しもそれなりに出ているようだ。テーブルを囲んでレビュアーたちが今日も猥談に興じる。

 

「実際見返したら遠くから見るのとはまた違って悪くはなかったんだよな」

「アングルとかはしっかりしてたしな。まぁ、腐ってもプロってとこか」

「だからこそ腹が立つんだよ……最初からラミアと有翼人の絡みだって聞いて行ったら俺だってちゃんと採点するわ。丸呑みシーンで実際抜けたし」

「お待たせしましたー。エールと生卵と焼き鳥盛り合わせです」

 

相変わらずナルガミに近づきたがらないメイドリーに代わってクリムが料理を運ぶ。当のメイドリーはクソド変態、死ねとばかりに冷たい視線を遠くから送ってきているのだが。

 

「クリムはどうよ。クリスタルの方の感想は」

「いや、無理です……」

「一個目の産卵までとか気に入ったとこだけ見ても良いんだぜ。俺も実際ラストは割とどうでも良いし」

「俺はむしろラストが良いんだけど」

「どうしても二個目以降の無理矢理ってのが浮かぶんでダメです」

「二個目と言うとアレか」

 

スタンクとゼルが下種い笑みを浮かべた。

 

「卵を胸に塗り込めて舐めるやつな。アレはラミア向けのシーンだと思うが、一般向けに考えてみたらどうだ?」

「……ろくなこと考えてませんよねスタンクさんゼルさん」

「想像してみろよ。メイドリーが自分の産んだ卵を使ってお前の好きなゆで卵のサンドイッチを作ってくれるんだよ」

「そんでもってそれを胸に挟んで『はい、召し上がれ』って」

「…………えっと、その」

「やるか!!!ボケェ!!!!」

 

ラミアへの本能的な恐怖を怒りが塗り潰したメイドリーの鋭い蹴爪がスタンクとゼルの顔面に突き刺さっる。

 

「ほら、クリム君!アホどもに付き合ってないで8番テーブルの注文行ってきなさい!」

「は、はい!」

 

慌ててクリムは空いたトレイを片手にスタンクたちのテーブルを後にする。サンドイッチを胸に挟んだメイドリーの妄想を頭を振って忘れようとしたのは誰にも言えなかった。

 

「メイドリーも猛禽に近くなってきたよなぁ……」

 

倒れ伏したスケベ二人を見つつナルガミは身震いを一つして卵を丸呑みした。

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