「私の卵、買ってください……」 ~生活苦で卵を売らざるを得ない有翼人少女に迫る毒牙~ 脚本・撮影・演出:バイナバナナン 作:tanu3
「さーて、ナルガミ先生の今日のおすすめはどこじゃいなっと」
「先生言うなよ」
レビューを終えた四人はクリムも含めて食酒亭を追い出されるようにして足をサキュバス街に向けていた。クリムは結局あの後メイドリーの胸を意識しすぎていたのを察されトレイで叩かれた。
「まぁ、折角だからバジリ娘倶楽部以外のおススメも教えてくれよ。レビューにもなるしな」
「よっしゃ、じゃあハダカデバネズミ娘の店で」
「もうちょい他に候補はないのか」
「まぁそう言われると思ってたわ」
「ラミアはよく丸呑みしやすそうな嬢が良いとか言うけどそりゃなんでなんだ?」
肩をすくめてため息をつくナルガミにゼルが問いかける。
「ラミアは喉が敏感でな、ものを呑み込むことで快感を得るんだ。だから、オプションで丸呑みアリの嬢なら喉に入ってもらうんだよ」
「ほー。だからあの女優も呑み込んだ時に感じてたわけか」
「でも、ああいう風に胃まで呑み込ませてくれる店はまずない。逆はよくあるんだけどな」
「あるのかよ!!」
「まぁ、この面子だと厳しいけどな。ゼルがひょっとしたらいけるか、程度か。カンチャルとかならだいぶいける嬢が増える」
「フェアリー店と同じようなもんか」
「ボクを見ながら言わないでください!」
話に入って来ないクリムをスタンクは強引に弄って巻き込んだ。ナルガミは咳ばらいを一つして続ける。
「やるにしても事前に体格を確認された上で安くないオプション料を払った上に誓約書を書かないといけないんだ。嬢が事前に中和剤を飲むからな」
「なるほど、だから胃まで行っても溶けないんだな」
「喉まで、とかだったら嬢によってはタダでやってくれる。……が、まあ、ぶっちゃけミミック店で全部事足りちまうんだよな。あっちは空間弄れるからある程度は体格差を無視できるし」
「だからあんなにそういう連中が集まったわけか」
確かに、パロウが呑み込まれるところで歓声を上げていた観客がいなくはなかった。だいたいはドン引きしていたわけだが。
「ちなみに、客が嬢を呑み込んだりが難しいってのはアレだ。どうしても丸ごと信用できないからだ。クリムがもしちゃんと飛べるようになったとして、サキュ店で小柄な嬢に空を飛びながらしませんかって聞いても絶対断られるのと同じだ」
「そもそも小柄な嬢だとクリムのジャンボフランクは無理だろ」
「いちいちボクを引き合いに出さないでください!ナルガミさんも!思い出して怖がりながら言わなくても……あ」
真っ赤になって否定するクリムだが、何かを見つけてふと真顔になる。
「どうしたクリム、良さげな店でも見つけたか?」
「スケベから離れてください!あそこのカフェですけど……」
クリムの示す先にはオープンエアーのカフェがあった。カフェそのものはどうでも良いが、席についている客に見覚えがあった。昨日のショーに出演していたパロウとクチナである。しかも、対面で普通に飲み物を手に談笑している。
「まじか、ちょっと気になるな」
「盗み聞きとかダメですよ……」
言いつつも気になるのか抜き足差し足でカフェに近づく一向に合わせてクリムも超低空浮遊でついていく。
「あのう先輩、私の演技どうでしたか?」
「あのギャラリーの中で初出演でアレなら私の初回よりよっぽどすごいわよ。自信持ちなさいって」
「」
ショーの台本とはうって変わってクチナは控えめな印象だった。
「で、でも、私が無名なせいで先輩にご迷惑を……」
「あれはあの監督が全部悪いから。クチナは全然悪くない」
思わず物陰でスタンクたちもうんうんと頷く。
「そんなことより、夕飯終わったら中和剤飲んどきなさいよ」
「えっ、き、今日もするんですか?」
「当たり前よ。卵3つ仕込むのにどれだけ禁欲したと思ってんの。貴女だって昨日は人目がないからってあれだけ声を……」
「わー!わー!」
衝撃的な会話が聞こえて四人はお互いの顔を見回す。パロウとクチナは単に共演しただけではなく、「そういう」関係らしい。
「あら?変な形の羽根があると思ったら……」
「ご、ごめんなさい!!」
気を抜いた瞬間に物陰から出てしまった翼を見咎められ、声をかけられたクリムが馬鹿正直に謝ってしまう。こうなっては仕方ないと愛想笑いをしながらスタンクたちもおずおずと顔を見せる。
「レビュアーの人たちね。聞いてた?」
「悪い。顔見かけたからつい気になって……」
「き、聞かれてた、あわわわわ!?」
昨日の妖艶さはどこへやら、真っ赤になってクチナはおろおろしている。これはこれで可愛げがあるな、とスタンクは益体もない感想を抱いた。
「けっこう売れてるらしいわね。あのイカレ監督の悪名も広がったでしょうけど」
「あー、まあそりゃあな。台本は全部あいつが書いたのか?」
「クチナの演技以外は全部いつものプレイだけど」
「先輩!ちょっと!!」
普段の性事情を晒されたクチナと初心なクリムが真っ赤になる。
「ま、そんなわけだから失礼するわね。クチナ、行くわよー?」
「は、はいぃ……」
クチナの背に乗って去っていくパロウを四人は茫然と見送った。
「……さて、どの店にする?」
「悪いスタンク、その前に俺は酒場で飲みてえ。俺もあんな好きに呑ませてくれるパートナーが欲しい……」
「奢るわ。クリムはどうだ?二人の関係を知った後ならもっかいムービーを見返そうって気になったんじゃないか?」
「な、なりませんよ!!」
今日一番の真っ赤な顔で叫ぶクリムをからかいつつ、四人は酒場へと向かっていった。