『ルール1・メリッサとプレイできるかどうかはその日の彼/彼女の気分と状態と天気に依ることを了承する』
『ルール2・メリッサとプレイ出来なかったとしても、それによるクレーム行為を行わない』
『彼/彼女の予約には、上記二項への同意が必要です』
──彼、もしくは彼女「メリッサ」を予約しようとする場合、そんなメッセージが表示される。風俗店の嬢としては本来は論外のこの条件に初見の客の大半は戸惑い、別の嬢を選ぶ。
「変わってないな……」
メリッサのデータ、一向に増える気配のない顧客数を見ながら俺は呟き、予約と振り込みを行う。
リアルの仕事でのやらかし等で気分が沈んでいる時に早瀬の姐さんを予約するように、「こんな気分の時にはこの相手」というのが俺には何人か居る。メリッサもその一人だ。
その条件は「気分がささくれ立っている時」。仕事の中で譲れない部分で言い合い、それを呑まざるを得なかった時。理不尽を背負う羽目になった時、決まっていた事柄が相手の気分で一転して潰れた時。そんな、自分の中での苛つきや攻撃的な感情が芽生えている時、俺は彼/彼女──便宜上、あえて「彼女」とここからは呼ぶが──彼女を予約する。
『ご入金を確認しました。ルーム設定はどうされますか?』
「ステージ付きのナイトクラブ。音響オプションは全乗せで」
『承知しました。10秒後に転送致します』
足元に光るサークルが出現し、間もなく俺を包む。
「……いいね」
眼前に広がる、落ち着いた雰囲気のナイトクラブの光景に俺は頷く。
「やあ、お兄さん。久しぶり」
ふと見ると、カウンター席に一人の女性が座っている。
まるで猫の耳のような形に纏められた銀髪の先を金と黒のメッシュで染めた、黒を基調としたシャツとショートパンツ姿の「メリッサ」──VTuber、メリッサ・キンレンカに酷似した彼女が緩く微笑みつつ言った。
「覚えてたのか?」
「そりゃ、この店で僕を予約する物好きは限られてるから。ましてや懲りずに二度三度と指名してくるのはね」
しなやかな脚で椅子を蹴って彼女は立ち上がり、無造作にマイクスタンドが設置されたステージへと向かう。俺は逆に近くの椅子に腰掛け、彼女を視線で追う。
「何か希望の曲はある?」
「いや……メリッサ、今の君が歌いたい曲を自由に歌ってくれ」
「それ、一番困るリクエストだね」
ハスキーな声で彼女は笑い、マイクの前に立った。
「それじゃ、前にお兄さんと逢った後で覚えた曲からにしようかな」
すぅ、と息を吸い──メリッサの表情が変わる。「嬢」でなく「歌い手」としての顔に。
やがて彼女は歌い始めた。最新の流行りのボーカロイド曲。だが常人の音域ではまともに歌えない曲のはずだ。サビ手前には高速歌唱の個所もあり、そこから急激に速度が落ちるのでネット上の「歌ってみた」等ではその辺りをエフェクトや何やらで誤魔化している動画が多い。
「……凄いな」
しかしメリッサは、まるで歌えて当然のように高音、低温を自在に変え、高速歌唱の部分さえも平然と歌ってゆく。
この店の嬢は誰も彼も元のVTuberに酷似しているが、驚くべきことに彼女は歌唱力までも同等かそれ以上に備えている。男性的な声から少女の声までを瞬時に変え、荒々しさと繊細さを同時に俺の耳に届けてくる。
音響設備を用意できて、あとは声が出せるなら誰でも「歌い手」を名乗れるこの時代。かつては血の滲む修練とフィジカルトレーニングを経て得られた「歌唱力」というものは、今ではプログラムで作る事が可能になった。
「どうだった、今のは?」
「驚いた。前よりまた音域が広がったんじゃないか?」
「ハハッ、少しだけどね。それじゃあ次は……」
そんな虚々実々が入り混じる世界の中で、メリッサの歌声は「本物」と言えるのではないかと──別に音楽の専門家ではないが──俺は思っている。少なくとも、彼女の歌声を聞いて受ける感銘と感動は本物だ。
またそのレパートリーも広い。今、歌ってくれたような最新曲から90年代、00年代のポップス、何処で覚えてきたのか分からないようなマイナー曲でもリクエストに応えてしまう。
更に数曲を歌い、ひと息ついたメリッサはステージを降りて俺の横に座った。カウンターに置かれた冷蔵庫を開け、グラスに入ったVRカクテルを取り出して喉を潤す。
「……やっぱり、歌ってのは誰かに聞いて貰わないと駄目だね。張り合いが全然違う」
「そう……っとと」
気付けばカウンターに座っているのは、金髪を短く切った眼鏡の美青年へと変わっている。
何度経験しても、彼女──今は彼の急な変身には驚かされる。俺の反応が面白かったのか、メリッサは薄く笑った。
「フフッ、相変わらずいいリアクションをしてくれる」
メリッサ、彼女には「性」が無い。こうして話をしている間でも不意に彼女のアバターは男性・女性のどちらかに急に切り替わる。
これは単純にアバターを状況に応じて改変しているという訳でなく「彼女自身」が性別が不定で、制御できないのだそうだ。現代VR界隈では決して珍しい話ではなく、セクシャルマイノリティーのアバターに関する問題などは時折ネット上のニュースで散見される。
「そりゃあ、安定させられるなら僕も女の姿で固定するよ。仕事をしたくない訳じゃないからね」
「そうなのか?」
「気にしてるよ、こう見えて。客の少なさでは僕はおそらくこの店のワースト候補だ」
そう語るメリッサは何時も通りの涼しい顔にも見えるが、どこか寂しさも感じさせる。
「そういう意味でも僕はお兄さんには感謝してるんだ。数少ない『常連さん』だからね」
「そうは言うけど、俺も数回使ってるだけじゃないか?」
「僕相手に数回は十分多いさ。大体のひとは事前確認で変更するし、それでも来る人の多くは見世物小屋感覚で来る野次馬もどきで二度は来てくれない」
そう言う間にもメリッサは再び女性の姿に戻っている。
正直、そう言われると有難いと思うと同時に若干の後ろめたさも覚える。俺だってその「見世物小屋感覚」で最初は彼女を選んだのだから。
──あの日、俺は相当に苛ついていた。物事の理解度について個人差があるのは事実だが、それにしてもあの代理店の親父の頭は固かった。あと少しで手が出そうになった程だ。
そんな感じで「二次三次」に入った俺は、憂さ晴らしのつもりで彼女を選んだ。彼女が「メリッサ」を称していても歌唱力までは同じではあるまい。難しい歌を注文して困らせてやろう──今振り返っても、自分自身を殴りたくなるような精神状態だったと思う。
だが、そんな俺の無茶なはずの注文をメリッサは意外そうに、そして嬉しそうに応えた。
「初めてだよ。この店で僕に最初に歌を注文してくれたのは」
そう言うと彼女はスッと立ち上がり、数歩離れて自分周辺をステージに見立てると、そこで歌い始めた。
美女と美青年の間を変化しつつ紡がれる歌は安易に注文した俺が恥ずかしくなる程に見事で、ただただ圧倒された。
「その……悪かった」
彼女が指示したレパートリーを歌い切る頃には意地悪な気持ちはすっかり消え去り、俺は反省と共に彼女に謝った。
「……?」
どうやらメリッサには俺が謝る理由が分からなかったらしい。少し考えた後に、彼女は俺が何曲も続けて頼んだ事に対して「悪かった」と言ったと解釈したのかこう答えた。
「ああ、大丈夫。何だったら時間いっぱいまで歌おうか?」
そう答える彼女は歌う事が本当に楽しそうで──結局その日は最後まで、俺はプレイすること無くメリッサの歌を聞き続けた。
以降、俺はその時の反省の意味も含めて時々メリッサを予約している。
「今も正直お客さんは少ないし、折角出勤してもずっと歌の練習をしてるだけで終わる日もある……」
そう言うとメリッサはVRカクテルを飲み干し、グラスをカウンターに置いた。彼女の脚がスッと上げられる。
「だから……
「おっ……」
彼女の履いていたヒールがいつの間にか消失し、透き通るような色の素足が俺の股間を撫でる。
「歌を聞いて貰うだけでも十分嬉しいけど……やっぱり、こういう店だからね。僕としてもお兄さんにはサービスしたいと思ってる」
「……嬉しいね」
俺は微笑み、スラックスの前を開けると肉棒を露出させた。澄んだ空気の部屋に男臭い匂いが混じる。
「ふふ、こっちも立派だよね、お兄さんは」
メリッサはそう言うとカウンターの椅子に深く座って安定させると両足を持ち上げた。冷たく滑らかな足裏の感触が肉棒を包む。そのまま彼女は脚を動かし、足で竿を扱き始めた。
「んっ、うっ……ふぅっ……」
「よっ……痛かったら、遠慮なく言っていいから……」
そんな気遣いの言葉をかけてくるメリッサだったが、実際彼女の足コキは痛みを感じさせない上手いものだった。勃起が強まり剥き出しになった亀頭を右足の裏で丁寧に撫でてくるのと同時に、左足の裏は竿の根本付近を指先で扱く。俺は小さく呻きつつ、彼女の動きに身を任せる。
「ふふっ、本当、いい反応をしてくれるよね、お兄さん……もうちょっと、強く……」
「うおっ……メリッサ、それ、いいっ……!」
今度はメリッサは椅子のバランスを取ると身体をやや傾け、両足の裏で竿を左右から挟むと前後に肉棒を扱き始める。その最中も時折、まるでモーフィングのように彼女の姿は「彼」へと変貌するが、足の大きさが変わることで絶妙な快感を俺に与えてくる。
「んっ……熱くなってきたね、君の。足裏がヌルヌルしてきてる……」
「あ、ああ……上手い、な、くぅっ!」
実際メリッサは器用だった。親指の腹で亀頭を撫でつつ他の指を小刻みに動かしてカリや裏筋辺りをくすぐり、同時に足裏で竿を刺激してくる。
彼女の言う通り肉棒からは先走りが滲み、メリッサ自身の足汗と合わさって行為をよりスムーズにしてゆく。
「ふぅっ……ん、はっ……」
「おぉ……ふっ、うぅ……!」
次第にメリッサは無口になってきた。より没頭してきた証拠だ。俺も意識をより股間に集中し彼女の足の感触をより感じようとする。
腰の奥から射精感が強まってくる。それを察したのかメリッサの脚の動きがより細かく速いものに変化してゆく。
「メリッサ、そっ、そろそろ……!」
「いいよ……このまま、僕の脚にかけても……」
「ぐっ、ぐうっ!」
どくんと俺の腰が跳ね、亀頭から精液が迸った。メリッサの足を俺の白濁液が汚してゆく。
それをメリッサは不快に感じる事もなく、逆に足裏の精液を肉棒に擦りつけるようにして更なる射精を促す。
「ンッ……いいね、熱くて、量もこんなに……!」
「あぐっ……あ、ああ……凄い、出るっ……」
脈動と共に精液が更に吐き出されてゆく。
やがて射精が完全に治まるまで、メリッサは愛おしそうに足指で肉棒を撫で続けた。
「ふぅっ……あぁ、相変わらず、見事な足技だな。メリッサ」
「僕には『フレン』や『童田』さんみたいな挟める胸も無いからね。自分に出来ることを追求してるだけさ」
そう言うとメリッサは立ち上がった。データである精液を消すことは出来るはずだが、あえて彼女はそれを消さないようだ。白濁液が彼女の足跡を作ってゆく。
「……
足コキでの運動と興奮で、彼女の白い頬が赤くなっている。流し目で俺に簡素に問いかけてくるメリッサに俺は頷くと椅子から立ち上がった。
「ああ、頼む」
「本当に頼もしいね……君の事を気になっている娘が多いのも分かるよ」
「そりゃお世辞か、持ち上げてるだけだろ?」
「どうだろうね、割と『本気』の娘も居るみたいだよ?」
射精感の余韻から抜けた肉棒は再び勃起を取り戻し、逞しく反り返っている。メリッサは微笑み、カウンターに手をつくとショートパンツに包まれた尻をこちらに突き出した。
絶えず男性と女性を行き来するメリッサとのセックスは、必然的にアナルセックスになる。行為の最中に女性器が消えたりしてはとても前への挿入は出来ない。バーチャル世界ゆえにそれでこちらの男性器が消えたり千切れたりする事は無いが、対象者は幻肢痛めいた喪失感に暫くの間は悩まされる事になる。
俺はメリッサの尻に触れ、柔らかく撫でる。ショートパンツの前は既に彼女自身が外しており、それを引き下げる。
「ん……」
ぴくりと彼女が反応を見せる。黒のシンプルな下着。俺はその隙間から手を差し込み、彼女の窄まりへ指を這わす。
かつての笹木の時は彼女へのおしおきを兼ねてあえて乱暴にやったが、バーチャル世界でもアナルは丁寧に弄るに越したことはない。例えスーツにリミッターが掛けられていたとしても、血管が集中している尻穴や直腸周辺はデリケートだ。メリッサのほっそりとした尻にもう片方の手を添え、弄る方の指は窄まりをゆっくりと広げてゆく。
「んはっ……ふふ、割りとその辺り、ねちっこく責めるよね、君は……」
「メリッサは、そっちの方が好きだろ?」
「嫌いじゃない、かなっ……んんっ」
もじもじと彼女の尻が揺れる。汗ばみ始めた肌が次第に火照ってゆくのが指先に伝わってくる。彼女の汗で指を濡らし、俺は尻穴に挿れてみる。
「ふぅっ……あぁ……!」
彼女の反応が強くなる。差し込まれた指が強く締めつけられ、メリッサの喘ぎに合わせてひくつく。
ゆっくりと俺は指を前後させつつ肉棒に手を添えた。
「そろそろいくぞ、メリッサ」
「あ、ああ……構わないよ。遠慮なく、来てくれっ……」
その言葉の合間にも彼女は彼に変わる。俺は自分にホモの気は無いと思っているのだが──メリッサに関しては、正直
俺は指を抜き、彼女の窄まりに亀頭を押し当てた。ゆっくりと小さな孔をミチミチと肉棒が押し広げ、挿入されてゆく。
「ンンッ! んっ、はぁっ!」
「無理するなよ、メリッサ……く、うぉ……!」
「無理するな」とは言ったが、俺の方も彼女のアナルの感触に腰を奥へ進ませるのを止められずにいた。ひんやりとした彼女の肌の感触と対照的な熱さが肉棒全体を包んでいる。カウンターに置かれたメリッサの腕ががくがくと揺れている。体に力が入らなくなってきているのだろう。
根元まで肉棒が埋まったのを確認し、今度はゆっくりと引く。
「あぁ……お、大きくて、捲れそうっ……!」
メリッサの息苦しそうな、それでいて快感が混じる声。俺は亀頭が引っかかる辺りまで肉棒を引くと、再びゆっくりと挿入する。それを何度も繰り返し、アナルがより柔軟になるのを待つ。
「もっと大きく息、吸って……で、大きく吐く……」
「あ、ああ……すぅ……はぁ……んくっ……!」
俺の言葉に合わせてメリッサが深く呼吸する。挿入時の緊張が次第に解けてきたのを確かめつつ、俺は次第に腰の動きを大きくしてゆく。
強い歌唱力のためには、それだけの声を出せるだけの身体と体力が必要だ。彼女は全体的に細身ではあるがそれは決して骨ばっているという訳ではない。しなやかなラインを描く身体は成熟した女性のそれで、白い肌に汗を浮かべ悶える姿は何とも美しい。
「あうっ、んっ、ああっ! 奥、来て……あぅんっ!」
「あ、ああ……メリッサの尻、凄く、いいっ……」
汗と先走り、腸液が混じり次第に抽送を滑らかにしてゆく。それでいて痛みと快感の境界線上ギリギリまで責める締め付けは弱まることなく俺の肉棒を包む。
ついにメリッサは身体を支えられなくなったのか、カウンターに突っ伏すように身体を横にした。限界が近いと察し、俺は動きを一気に速める。
「くっンッふぁあぁんっ! で、出そう、なん、だねっ!?」
「も、もうちょっと、でっ! ああっ、出、出るっ!」
「出して、この、ままっ! あふぅっ!」
射精を求めるように彼女のアナルのひくつく頻度が上がり、同時に締め付けが強くなる。
「あ、あっ、ああぁっ!」
「おっ、おぉっ! くっ、ああっ!」
メリッサが絶頂に達したのを確かめ、俺は抑えていた射精感を解き放った。彼女の尻穴に容赦なく精液が注ぎ込まれてゆく。
「うあ……熱いの、中ぁ……!」
「あぐっ! くぅ……」
どくどくと注がれる精液の熱にメリッサは舌を出し、蕩けるような声をあげる。
数度の射精感を経て、尻穴から押し出された肉棒が彼女の白い尻にぺたりと貼りついた。
「ふぅ、ハァ……どう、
汗に濡れた髪を頬に貼りつかせ、メリッサは俺の方を向いて尋ねる。それがただ「セックスですっきりしたか?」という意味でない事はすぐに分かった。
「……やっぱり、分かってたか」
「最初、怖い顔をしてたからね」
「そんなに?」
「ああ、そんな顔を『るる』ちゃんとかに見せちゃ駄目だよ? 泣いちゃうから」
美青年に変化したメリッサは、尻穴から精液の残渣を垂らしつつそう笑う。
この後は穏やかなジャズ・ソングでも歌ってもらおうか。そんな事を考えつつ、俺はその笑顔に笑い返した。