※この作品はR-18です。

バーチャル風俗「電燈二次三次」   作:ターキーX

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第二十二話「椎名」前編

「はい、おでこ出して」

「うおっ!?」

 

 「二次三次」のロビーにログインした瞬間、突如出現した筋骨隆々のエルフにスキャナーめいた機械を突き付けられて俺は思わず後ずさった。

 

「え? あ、だ、誰?」

「……用心棒(バウンサー)

 

 微動だにせずその「エルフ」は俺の問いに答える。否、ひょっとするとエルフではないのかもしれない。耳が尖っているから俺は彼をエルフと判断したが、それ以外は一般的な「エルフ」のそれとは大幅にかけ離れていた。

 190㎝近い背丈は俺より高く、緑のメッシュがかけられた黒髪はまるで弁当のバランのように尖っており目元には濃いサングラス。素肌に黒の革ジャンを羽織っただけの上半身は厚い胸板が圧倒的存在感を見せ、同じ色のレザーパンツもパツパツだ。尖った耳を除けばゲイバーの用心棒にしか見えないだろう。

 

「ん? あー……ひょっとしてお兄さん、支配人が言ってた新人教育係の人?」

 

 そこで初めて彼は俺が誰なのか気付いたようだ。低い声で言うとサングラスを取り、碧色の瞳でしげしげとこちらを見る。

 

「あ、ああ……今日、その新人教育の日で……」

「そっかそっか。ごめんね、驚かして……ただまあ、形式ではあるけどおでこ出して。これちょっと当てるだけだから」

 

 外見よりは割と穏やかな人(エルフ?)なのかもしれない。改めてスキャナを突き付けてきた彼に素直に額を見せる。そこにスキャナを軽く当て、数秒後に電子音が鳴ると彼は頷いて手を下ろした。

 

「……はい、オッケー」

「その……あんたは?」

「さっきも言った通り、この店の用心棒。『チャ……あ、やっぱ『シャア』でいいや。『シャア・アズナブル』って呼んで。それで通るから」

「(ほんとかよ?)」

 

 内心でツッコミを入れるが、それとは別に気になった事を俺は尋ねた。

 

「バーチャル内で体温測定って……何かあったんですか?」

「ん? あー、これ、体温計じゃないの。アバターのデータに()()()が混じってないかを確かめるためのチェッカー。お陰様で最近はこの店、会員さんも増えて繁盛してんだけど面倒な連中も増えてきててね。その警戒」

「面倒な連中?」

電子ドラッグ(おくすり)を持ち込んで嬢にキメようとしたり、あるいはツールを使ってウチの娘のアバター情報をぶっこ抜きしようとしたりね。この業界、競合も多ければ変なのも多いから」

「そんなのが……」

 

 これまで「二次三次」は会員紹介制システムで危険な客──いや、既にそんな連中は客とも呼べないか──を防いでいたが、拡大によってそういったリスクも出てきたということか。

 店の情報、特に客の相手をする嬢のアバター情報はどの店でも最高機密として扱われ、幾重にもセキュリティが掛けられている。現実の嬢であれば掛け持ちでもしない限りはその店でしかお相手できないが、データで構成されるバーチャル風俗においてはデータさえ有れば「中の人」は無理でもガワは同じものを複数体用意できるのだ。競合と比べても数段上のクオリティを誇るこの店の嬢のデータであれば、それこそ数百万積んでも釣りが来るだろう。

 

「ま、そういう荒っぽい事は私とか“エンジニア”や“ホスト”がやる仕事だからさ。お兄さんはお兄さんで自分の仕事を頑張ってくれればいいから……今日は、誰が相手なの?」

「えっと、今日は『椎名』って娘です。分かります?」

「あ~……椎名、椎名ね……」

 

 「シャア」は何とも言えない声を漏らし、そのまま数秒沈黙するとぽつりと言った。

 

「……頑張ってね、色々な意味で」

 

 

 

 新人研修用のルーム設定は、基本的にデフォルト的な少女めいた部屋で固定されている。これはバーチャル風俗初心者である嬢候補らにプレーンな状態で「VR風俗とはどんなものか」を知って貰うためだ。

 そんな訳で俺は今日もそんな部屋、白く丸いぬいぐるみとゴリラのぬいぐるみが各所に置かれた、ピンク色を基調をした部屋で「椎名」を待っていたのだが──

 

「……遅い」

 

 研修開始予定時間から既に10分が経過したが、椎名は未だにログインしておらず俺だけがベッドに腰掛けて待っている状態が続いている。やはり予測通りに彼女はVTuber、椎名唯華──にじさんじライバー内でも屈指のアバウトさを備えた、自他共に認めるクズキャラ──に似た性質(たち)の少女のようだ。既に彼女のアカウントにメッセージは送っているが、既読すら付いていない。

 

「うーん……」

 

 最初からなかなかに頭が痛い。ひとまず俺は彼女が来てからの研修の組み立てを考える。初手遅刻に対して怒るのは支配人のジョーや副支配人の尊の仕事。俺がすべきは彼女にバーチャル風俗の仕事がどんなものかを理解して貰い、同時にそれに対して興味を持ってもらう事だ。とりあえずは──

 

「どぉもぉ」

「わ!?」

 

 丁度思考を巡らそうとした瞬間、いきなり背後からかけられた声に俺は驚き振り向いた。

 

「わっ……ど、どうもぉ、遅くなりました……」

 

 気が付けばそこには薄桃色の髪をした白い肌の少女が立っていた。俺の反応に少し驚きながらも、のんびりした口調で言う。

 全体的にふっくらとした印象の少女だった。とはいえ「ぽっちゃり」という訳でもなく、高校の制服を思わせるクリーム色のブレザーを大きく押し上げる胸元から緩やかなくびれ、そしてそこから再び豊かな膨らみを見せる腰回りはその内側のプロポーションを容易に想像させ得るものだ。

 そのまま彼女は俺の前に来ると、ぺこりと頭を下げた。

 

「どーも……竈門炭治郎です」

「……?」

 

 一瞬どう返して良いか分からず、数秒を経てようやく彼女がボケたのだと気付き俺は言った。

 

「……いや、椎名さん……だよな?」

「あ~……まあ、そうなんやけど……遅刻したから、せめてものまね位はした方がいいかなって」

「ものまね……だったのか?」

 

 全く寄せる気が感じられなかったが、彼女の中ではそうなのかもしれない。

 

「ところで、何か不都合でもあったのかい? 時間は連絡してたと思ったんだけど」

「すんません、寝てました」

「………」

 

 何やら始める前からペースを握られつつある。俺は切り替えるように椎名に言った。

 

「ま、まあ始めるとしようか。支配人さんから説明は受けてる?」

「あ、はい。よろしくお願いします。それで、あの、()()()()からお願いがあるんですけど……」

 

 口を開け切るのが面倒なのか、「あたし」の「た」が「ち」と「て」の間になっている。ツッコミたい気持ちを抑えつつ、俺は彼女に問い返す。

 

「お願い?」

「はい。寝坊はしたけど今日に備えて自分で練習してきたんで……試してみて、えぇですか?」

「練習って……」

「口で、とか……その、そっち系の本とかを読んで、勉強してきたから」

 

 ベッドに座ったままの俺におずおずと椎名は言う。

 意外ではあったが仕事に対して前向きなのは良いことだ。俺は笑って答えた。

 

「分かった、椎名さん。それじゃまずは、その練習の成果を見せてみてくれ」

「ありがとうございます~……えっと、ここ、座りますね……」

 

 脚を広げた俺の間に椎名が腰を落とす。

 

「バーチャルセックスは初めて?」

「はい、えと、服は消せるんでしたっけ?」

「ああ。データだからね。ただ、今回は試しに普通に脱がせてみてくれ。お客さんによっては、その辺りの雰囲気を気にする人も居るから」

「分かりましたぁ……んっ、よっ……と」

 

 俺の言葉に椎名は頷き、特に緊張することなく眼前のスラックスの留め具を外し、ジッパーを引き下ろした。

 かつてのリゼのように新人の中には男性に触れる事すら抵抗を示す嬢も居るが、どうやら椎名は()()()()()行為への抵抗は思った程は無いようだ。そのまま彼女の指はトランクスの中へと分け入り、まだ勃起していない肉棒に振れる。

 

「わっ……こ、これです……よね?」

「ああ、まだ固くはなってないから強くは握らずに引き出してくれ」

 

 ぴくんと反応を示す肉棒に椎名は小さく驚く。俺は彼女が動きやすいように脚をもう少し広げ、次の動きを指示する。細い指が竿に絡みつき、肉棒を外気に触れさせる。

 

「おぉ……」

 

 眼前で震える肉棒を興味深そうに見つめつつ、椎名は声を漏らす。

 

「とりあえずは椎名さん、あんたの思う通りにやってみてくれ、歯を立てないようにだけ……え、お? うおっ!?」

「あむっ、ちゅ、じゅるぅ……」

 

 ひとまず彼女に任せて様子を見ようとした俺は、肉棒を突然に包んだ暖かな滑りに戸惑いの声をあげた。

 見てみれば、俺の指示を待たずに椎名はその口を精一杯に広げ、亀頭どころか竿の根元まで呑み込んでいる。

 

「んぷ、ンッ、んふっ……!」

「く、うぅっ!」

 

 厚めの舌がカリを、更に竿全体を舐めしゃぶり始める。その動きは初めてとは思えない程に大胆で、同時に肉棒のツボを心得たものだった。唾液を塗り付けるように幾度も上下する舌の奉仕に肉棒は急速に充血し、椎名の口腔内で膨れ上がる。

 すっかり勃起しきったのを確認し、一旦椎名は口を離した。

 

「ぷはっ……ど、どないですか?」

「……驚いた。上手いもんだ」

 

 それは正直な感想だった。

 

「そうですかぁ……ありがとうございます。ん、ちゅ……」

「うっ……!」

 

 俺の言葉に椎名は嬉しそうに微笑むと再び深く肉棒を咥え込んだ。今度は舌先で鈴口をくすぐるように弄りつつ、唇をすぼめて竿の根元を締め付ける。緩やかに動くやや大きめの頭に手を置いて撫でつつ、俺は椎名が与えてくれる快感を驚きと共に享受する。

 

「じゅ、ンンッ、じゅぷっ……!」

「おっ、おぉっ!?」

 

 次第に頭の動きが早くなってきた。唇の端から唾液と先走りが混じった粘液が零れる。部屋の中に粘りある水音と息苦しげな椎名の吐息、そして俺の喘ぎだけが響く。

 次第に射精感が強まってきたのを覚えつつ、俺は椎名を見下ろして言った。

 

「くっ……な、なあ、椎名さん」

「ん、ぱっ……な、何です?」

「口だけじゃなくて、胸も使ってやってみてくれないか?」

「うぇっ!?」

 

 俺の要望に椎名は予想外の動揺を見せた。ここまで大胆なフェラチオが出来てパイズリが出来ないとは考えにくいのだが。

 

「む、胸……ですか?」

「ああ。椎名さんも自覚はあると思うが、あんたの胸はこの店の嬢の中でもかなり大きい方だ。実際に入店したらパイズリを希望するお客さんも出てくる。それを試したい」

「わ……分かり、ました……」

 

 やはりパイズリに抵抗があるようだったが、それでも椎名は俺の指示に従い制服とシャツのボタンを外し、前を開けた。

 

「うぉ……」

 

 思わず声が漏れる。

 椎名の印象としてどこか「大福」を連想していたが、露わになった胸はまさに出来立ての、巨大な大福を思わせるそれだった。ハーフカップの桃色のブラに包まれた乳肉は染みひとつなく白く、フロントホックを弾き飛ばしそうな程に窮屈そうに深い谷間を作っている。

 

「その、胸は、恥ずかしくて……」

 

 胸に注がれる俺の視線を避けるように身をよじりつつ、椎名は自分でブラのホックを外した。「ゆさっ」と音がしそうな程に白い乳房は重そうに揺れ、先端では髪の色と同じ薄桃色の小さめの乳首が震えている。

 無意識に喉が鳴り、それに呼応するように唾液塗れの肉棒が跳ねた。

 

「(いかんいかん。仕事を忘れるな、俺)」

 

 危うく新人研修役としてでなく客としてこれからの行為に期待しかけていた自身に言い聞かせる。恥じらう椎名に、努めて落ち着いた口調で俺は言った。

 

「……綺麗だ」

「そ、そんなん言わんでください。こんなん大きいだけの脂肪の塊やし……」

「そんな事はないさ。立派なもんだ、自信を持っていい……それじゃ、頼む」

「うぅ……」

 

 まるで腫れ物に触れるかのように椎名は自身の乳房に手を添えて身を寄せ、その豊かな谷間に肉棒を据えた。

 

「えと、これからどうすれば……」

「VRローションを使ってもいいし、唾液で谷間を濡らして滑らかにしてもいい。匂いとかは残らないから、好きな方でやってくれ」

「じゃ、じゃあ……ンッ、む、んはっ……」

 

 俺の指示に椎名は口を閉じて舌を転がし、唾液が溜まるのを待ってそれを肉棒に垂らした。赤黒く膨れ上がる亀頭がテラテラと光り、ビクビクと白い乳房の間で震える。

 十分に肉棒が濡れたのを確かめ、椎名はその巨乳を寄せた。

 

「ん、しょ……」

「うっ……!」

 

 柔らかさと張り、その両方をバランス良く備えた乳房だった。早瀬のような鍛えられた張りのある乳房や、かつての童田のように柔らかさに特化した乳房。いずれにも素晴らしさがあるが椎名の乳房はその丁度真ん中あたりの、最も多くの男性を悦ばせられる巨乳だと言えるだろう。

 そのまま椎名は手を動かしつつ、谷間から僅かに覗く亀頭に舌を伸ばした。

 

「え……っと、んはっ、ちゅ……」

「ん、お、んんっ……?」

 

 僅かな違和感。

 気持ち良くないという訳ではない。確かに肉棒に快感は与えられている──しかし、それが思ったより()()

 肉棒をほぼすっぽりと挟み込めている椎名の乳房のサイズと張り、これだけの見事な巨乳であれば結構な乳圧でのパイズリになる筈である。しかしその乳圧は、俺の予想を大幅に下回っていた。

 

「椎名さん……もっと強めに挟んでも大丈夫だ。思い切りやってくれ」

「は、はい……」

 

 そう言ってみるが、それでも気持ち強くなったか程度だ。どうも「おっかなびっくり」というか、まるで異物に触れるかのように椎名は自身の胸を扱っている。

 何か事情があるのだろうか。俺はそんな疑問を抱き、彼女に聞こうとした。

 

「なあ、椎名さん? ひょっとして……うおっ!?」

「ちゅ、はぷっ、ンンッ!」

 

 突然、椎名は乳房を肉棒の根元に寄せて亀頭を露出させると、それを咥え込んで激しく舐め始めた。唇でカリ付近を締めつつ強く吸い上げ、まるで欲しがっていた飴を与えられた子供のように舌で亀頭を無茶苦茶に舐め回す。

 それは強引な手法ではあったが、確実に俺の射精感を押し上げた。仕切り直しでやや治まっていた腰の奥からの衝動が再び強まってくる。

 

「んぶ、じゅるっ、ちゅうぅ……!」

「し、椎名さん! 口、離して、出るっ!」

「……! あむ、んぶっ、れろっ……!」

 

 俺の反応に椎名は更に深く咥え込み、亀頭を口腔内全体で弄る。相変わらず乳圧は弱いままだが、それを補って余りある献身的な奉仕。彼女の頭に手を置いたまま、俺は堪らず限界に達した。

 

「あ、ぐっ、おおぉっ!」

「……ッ!?」

 

 精液が尿道を駆け上がり、椎名の口の中へと放たれてゆく。

 びくんと身体を震わせつつも椎名はその奔流を受け取め、そのまま嚥下してゆく。

 

「ンッ……こくっ、んぐっ……!」

「くっ、あぁ……!」

 

 まだ止まらない。自分でも驚く程の量が溢れ出し、椎名の口の端から零れた白濁液は彼女の乳房を汚してゆく。

 数度の腰の震えと射精を経てようやくそれは治まり、俺は彼女の頭に置いていた手を離した。

 

「っぱ……けほ、けほっ……」

 

 椎名の唇と亀頭の間に粘液の橋がかかる。

 軽く咳込みつつも、彼女は精液と先走りに濡れた顔で俺を見上げた。

 

「ど、どうでしたか?」

「……ああ、上手かった」

「えへ、良かったですぅ……」

 

 俺の感想に椎名は嬉しそうに微笑む。研修前にこれだけの技量を練習してきたと考えれば、それは感心して良い事だし、喜ぶべき事だろう。

 だが──()()()()()()()

 射精の余韻が治まるのを待ち、俺は大きく深呼吸をすると立ち上がり、改めて彼女を見つめた。

 

「な、何ですか?」

「……誰だお前?」

「はいっ!?」

 

 そう、彼女が本当に「椎名」なのであれば──()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺の問いかけに椎名はびっくりしたように高い声で反応を見せる。

 

「(……ん!?)」

 

 その瞬間、俺は強烈なデジャヴを感じた。ここではない、しかしこの店の何処かで聞いた事のある声。これは──

 

「な、何言うてるんですかぁ。あてぃしはちゃんと椎名ですよぉ」

 

 そう言って椎名は俺に笑いかける。だが同時に俺はそのデジャヴの正体に思い至った。口元に笑みを浮かべ、「椎名」に言う。

 

「……そうか、そういう事かよ」

「え?」

「久しぶりだな、()()!」

「ッ!?」

 

 俺の言葉に「椎名」は素早く飛び下がると、怪盗が変装を解くように自分の顔を掴んだ。

 

「……フフン、流石はお兄さんやね」

 

 そのまま顔を引っ張ると、ノイズと共に椎名の顔が取れる。そこに現れたのは見覚えのある、パンダ風のパーカーに身を包んだ──そして全開になった前面から控え目なサイズの乳房を覗かせた──少女だ。

 

「ウチと椎名は声も似とるし、完璧な変装やと自分でも思っとったんやけど……何処で気付いたん?」

「今のパイズリだよ。風呂で身体を洗う時とか、少なからず自分で胸を触る時はある筈だ。それにしてはやけに触り慣れてなかった。あの舌での奉仕、それを誤魔化すためだろ?」

「いや~……まさか、あんなにデカいとはね。ホンマびっくりしたわ」

 

 俺の言葉に笹木は口元を歪ませる。

 とりあえず彼女の正体は分かった。しかし状況は色々と不明のままだ。俺は彼女に尋ねた。

 

「で、何のつもりだ?」

「兄さんがこの店の新人研修役になったと聞いたから、この前のケツの借りの返しに恥をかかせたろうと思ったんよ。新人相手にええトコ無しに搾られたら面子も潰れるやろ?」

「……懲りねえな、手前は」

 

 どうやら以前の事を未だに根に持っているらしい。俺は呆れつつも更に聞く。

 

「本物の椎名は何処だ?」

「椎名? それやったら此処におるよ。おーい!」

 

 俺の問いに笹木はあっさりと答えると、一見無人に見える方向に声を向けた。

 

「……ちょっとぉ、しっかりしいや笹木ぃ」

「な……!?」

 

 すると、そこにあった白く丸いぬいぐるみの一つがモーフィングと共に少女の姿に変わる。それは先ほどまでの笹木と同じものだ。

 どうやらぬいぐるみのアバターで擬装し、既に部屋に居たらしい。俺は改めて本物の「椎名」に尋ねた。

 

「あんたが……本物の椎名さんか?」

「あ、はい、どうもぉ……椎名です」

 

 こんな状況だと言うのに暢気に頭を下げる。

 

「椎名さん、こりゃどういう事だ?」

「いやぁ……笹木とは古い付き合いなんやけど『お兄さんに恥をかかせたいから協力してくれ』言うて頼まれてね。あてぃしとしても研修を笹木任せにして研修代だけ貰えるならええかなって……はい」

「………」

 

 どうやら、俺は椎名の事を色々な意味で甘く見ていたらしい。これは──()()()()だ。

 

「ていうか笹木、何なんよさっきの『大きいだけの脂肪の塊』て。あんまりなんちゃう?」

「実際デカいだけやん、あんなの! アレがもっと小さかったら兄さん騙せとったんやで!?」

 

 絶句する俺を挟んで椎名と笹木が言い合いを始める。俺は静かに言った。

 

「……いい加減にしろよ、手前ら」

「あれ、怒ったん?」

 

 正体がバレて尚、笹木は余裕の態度を崩さない。挑発的な笑みを浮かべつつ俺に言う。

 

「言っとくけど……前のあん時はウチも不意を突かれたからええようにヤられたけど、本気やったらお兄さんを搾るくらい簡単よ? 椎名もおるしな」

「え? あてぃしも数に入っとるん?」

「ちょ、当然やろ! 研修代、貰えなくなってもええんか!?」

「あ~……それは困るねぇ」

 

 この期に及んで椎名は観客に徹するつもりだったようだ。慌てて笹木が彼女に呼びかける。

 俺は湧き上がる怒りを静かに溜める。()()()をもう一度使う機会は無いと思っていたが──どうやら、この二人には容赦は要らないようだ。

 そんな俺の様子を「この後の対応を考えている」と見たのだろう。笹木は不敵に言った。

 

「どないする? こう言っちゃ何やけど……ここで『子供二人に騙されて、怒って支配人に言いつける』って、格好悪いよなぁ?」

「……ああ、そうだな」

「そうやろ? せやったら……」

「俺が悪かった。どうやらお前にも、椎名さん……いや、もう『椎名』でいいわ。椎名にも、()()()にやらないと駄目みたいだ」

「え?」

 

 股間の肉棒がむくりと起き上がり、臍に当たりそうな程に反り返る。同時にそれはメキメキと音を立て、新たにもう一本の肉棒へと分裂する。

 

「え? に、二本? え!?」

「うわ……さ、笹木、どういう事なん、これ?」

「いや、ウチも知らんよこんなん!」

「言っとくが今回、俺もかなり頭にきてる。途中で泣いても許さねえからな」

「……え?」

 

 ようやく笹木は俺が本気で怒ってるのに気付いたのだろう。表情を凍らせる彼女に、俺は二本の肉棒を突き付けるように足を踏み出した。

 

 

 

【「椎名」後編へ続く】

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