当初、支配人のジョーからは「本業に影響が出ない程度の、週に1、2回程度、数時間で良い」との話で、俺は「二次三次」の教育係の仕事を引き受けた。ただ、その状況は最近は変わりつつある。
「ふぅ……ご馳走様でした、と」
土曜の昼前。弁当を食い終えた俺は食後の合掌を終えて片づけ、デスクのPCを立ち上げる。クローゼットのVRスーツに着替え、股間パーツを取り付け、身体を解してからチェアに座る。
うちの会社は週休二日制で土日休みだが、少なくともそのどちらかの一日と本業の仕事終わりの数時間、週の半分くらいは「二次三次」で過ごすようになった。
誤解のないように言うと、これはジョーや尊から強要された訳ではない。「二次三次」は支配人をはじめとするスタッフの陰の努力や嬢たちの優秀なサービスで実際高級VR風俗店として広く認知されつつあるし、会員紹介制ながらその客層は急速に拡大している。
しかし規模の拡大が良い事ばかりではない。嬢の数が変わらないまま予約が殺到すれば彼女らへの負担は増えるし、どうしてもサービスの質は低下してしまう。
「設定よし、接続……よし」
そんな中、「二次三次」にはより多くの、しかし既存の嬢たちと比べて決して質で劣らない新人が求められている。それに少しでも貢献したいという俺からの要望で、こうして勤務日数を増やさせてもらっているという訳だ。
バイザーを下ろし、ワイヤーフレームの世界が展開される。
「ログイン、『電燈二次三次』」
これは、そんな週末の──比較的、普通の一日の出来事だ。
11:55 「二次三次」ロビー
「……よし」
「あら、おはよ。今日は一日仕事?」
見慣れたロビーにワイシャツとスラックス姿で降り立ち、カウンター前に仁王立ちしていたチャイカからの挨拶を返す。
「ええ。今日は『チグサ』ちゃんの二度目の研修ですし、細かい事も片づけたいんで。チャイカさんの方こそ、この時間から門番役ですか?」
「まあね。最近は混みだす前の時間を狙ってやってくるお客さんも増えてきたから、変なのを持ち込ませないようにしないと」
黒の皮ジャンを素肌に直接着込み、黒のサングラスで目元を隠したチャイカは立っているだけで威圧感がある。初見の客で彼から問い詰められて怯まない者はいないだろう。
「……あ、そうだ。ちなみに近いうちに私以外の
「男性ですか?」
「いや、女の子。『レイン』ちゃんって娘で、普段はボディガードをやってるんだって」
そう答えるチャイカはどこか眠そうだ。今まではチャイカのみが警備として一定のシフトで入り、非番の日は警備なしという緩い状態だった。その辺りの体勢も強化するという事か。
「無理はしないでくださいね、それじゃ」
「ありがと。そっちも頑張ってね」
互いに労いの言葉をかけ合い、その場を離れる。
次に向かうのは事務所だ。フロントは言ってみれば「二次三次」サーバーへの出入り口で、そこから嬢たちの各ルームや休憩所、事務所などへと繋がっている。
「おはようございます、ジョーさん」
「あ、どーも。おはようございます~」
デスクでノートPCを広げて作業をしていたジョーが顔を上げて俺に言った。事務所内には他にも何人かの姿があり、電話対応している者もいる。
無論、これらのパソコンや電話機は実際にそれを使っている訳ではない。VR空間内におけるデータ作業や音声通信をビジュアル化したものだ。VRと現実のギャップが生活に支障を生む、いわゆる「バーチャルボケ」防止のためにこうしたツールは重要とされている。
「何か忙しそうですね?」
「最近、風俗情報誌の取材が増えてるんですよ~。あとアダルト系チャンネルからの出演依頼とか。実際メールでの申し込みも多くて」
「なるほど……尊様は今日は休みですか?」
「夕方から来ると思います。今日は『ホロラバーズ』とのコラボの打ち合わせに行ってまして」
この店のスタッフが出揃うという事はあまり無い。現実の仕事との兼業をしている者や、完全に裏方に徹している者が多いからだ。例えばこの店のシステム面担当の「ホワイトハッカー」などは何度か名前を聞いた事こそあれ、未だに会えていない。
「えっと、チグサちゃんは……」
「もう先にルームに行ってますよ。部屋設定も済んでるとか」
「分かりました。それじゃ、行ってきます」
今日は研修の二回目。基礎は前回で教えたので、今日はより実践的な内容にするつもりだ。足元に出現した光のサークルに俺は足を踏み出した。
12:10 研修用ルーム(設定・学校のロッカールーム(夕方))
「こんチグこんチグ~! 先輩、今日もよろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそよろしくだ」
壁周りに整然と並ぶ縦長のロッカー。長方形型のベンチが幾つか並び、窓の外を見ると夕陽が差し込んでいる。
白のパーカーに青のショートカットの小柄な少女。VTuber・西園チグサに酷似した彼女「チグサ」はルームに入ってきた俺に元気な挨拶を投げかけてきた。俺は挨拶と共に笑い返す。
「それにしても……やっぱり俺は『先輩』呼びなのか?」
「だって先輩じゃないですか! 他の先輩たちに聞いても『お世話になった』ってみんな言ってますし」
赤い瞳をキラキラさせて言ってくるチグサはまさに「元気で快活な後輩」をそのまま形にしたような少女だ。会社でも「先輩」呼びされる事はあるが、見た目高校生ほどの女子に「先輩」と呼ばれるのは何処か気恥ずかしい。
とはいえ彼女は新人としては驚くほどに緊張もなく、俺の指導を素直に吸収してくれている。俺が照れていてはいけない。そう思いつつチグサに向き直る。
「ンッ……さてと、前回は座学が多かったが、今日は実践になる。大丈夫か?」
「はい! でも……この設定で良かったんですか?」
「チグサちゃんの場合、通常ルームより学校とかのシチュエーションの方がお客さんを悦ばせられると思う。なんでまあ、今日は本当に学校の先輩だと思って相手をしてくれ。ちょっと年が離れすぎてるけどな」
「そんな事ないですよー! 先輩、カッコいいですし」
軽い冗談を交えて俺が言うと、チグサは笑って手を振った。
「えっと、シャワーを浴びたりとかはいいんですよね?」
「ああ。ただお客さんの中には『夏の日の汗だくでのセックス』なんてのを希望する人もいる。その場合はスーツの設定で匂いや蒸し暑さを再現する事も可能だ」
「はあ~、分かりました! それじゃあ……
チグサの「先輩」の響きが僅かに変わる。ここからは「仕事上の先輩」ではなく「学校の憧れの先輩」という事か。俺は学生時代の感じを思い出しつつ彼女に言った。
「……じゃあ頼むよ、
「本当、先輩ってえっちですよね。私の家じゃなくって学校でしたいとか……」
「まあ、その、この時間なら部活も終わってるし、鍵もかかってるからさ」
「ふふっ、いいですよ。私も……ちょっと、興味ありましたし」
そう言いつつチグサは俺の座るベンチの前に腰を落とし、スラックスのベルトへと手を伸ばしてきた。ちょっとだけ
「ええっと……触るだけで消せるんでしたっけ?」
「ああ、例えば相手のアバター衣装が複雑な作りだったりした場合はその方がいい。もたつくのは相手も嫌だしな。ただ普通の服装なら、ちゃんと手順を踏んで脱いだり、脱がせてもらったりした方が良いだろう。その辺りの『雰囲気』ってのも大事だ」
「了解です! それでは……っと、ちょっと腰を上げてください、先輩」
再び「後輩」に戻ったチグサに促され、俺は腰を少し上げた。彼女の小さな手がベルトの留め具を外し、スラックスのファスナーを下げ、そのまま下着と一緒にずり下ろす。
「うわ……先輩の、もう大きくなりかけてる。期待してたんですか?」
「そりゃ、まあ……」
カーテンは引いておらず、俺とチグサを夕焼けが照らしている。外からは帰宅する生徒達の声が微かに届く。あくまで演出用のエフェクトで本当に第三者に見られる心配はないが、それでも人の声が聞こえるというだけで言いようも無い緊張感と──同時に興奮を覚えてしまう。
「それじゃ先輩、舐めますけど……私、こういうのってあんまり経験なくて、痛かったら言ってくださいね。あぁ……ンッ」
「うっ……!」
おずおずとチグサが口を広げ、俺の半勃起した肉棒を咥え込んでゆく。ベンチの背もたれに体重をかけて腰を突き出すと、それに合わせて彼女はより深く竿を呑み込み、竿に舌を這わせてきた。
「ん、ちゅ、れろっ……ふぉ、ふぉうれふは、へんぱい?」
「あっ、ああ、いいよ、チグサっ……! もう少し手前のあたり、舐めてみて、くれっ……」
「……♪」
口腔内で完全に勃起した肉棒が、チグサの小さな口を押し広げる。肉棒から口を離さないまま感想を聞いてくる彼女の頭を優しく撫でつつ答えると、チグサは嬉しそうに目を細めて亀頭に舌を絡ませてきた。
「じゅぷ、ンッ、ンッ、じゅるぅ……」
「くうっ!」
「ッ!? ぷはっ、い、痛かったですか、先輩!?」
俺の体が大きく跳ねる。それをチグサは痛みからと思ったのか、慌てて口を離して心配そうに俺を見上げた。慌ててそれを否定する。
「え!? あ、いや、その逆で……急にツボっていうか、気持ちいい所を舐められたから、勝手に身体が反応して……」
「……だったら、良かったです。今のところ、もっと舐めてあげますね。あむっ……」
「うぉ、チグサっ……!」
俺の言葉にチグサは口の端を唾液で濡らしたまま嬉しそうに笑い、再び口を開けると亀頭を咥えこんだ。
「後輩力」とでも言うのだろうか。相手を立て、献身的な奉仕をするのがチグサは上手い。また同時に自身がその奉仕を楽しめている感じもある。嬢の性格によって得意なプレイの方向性は変わってくるが、彼女の場合はそういった献身的なプレイを中心にしてゆけばすぐに常連も定着するのではないだろうか。
「おっ、ぐ、おぁっ……!」
「んふっ、ふぅっ、ふぅ……ンンッ」
そんな事を考える間もチグサは丁寧に口腔内で肉棒を舐め回す。先ほど俺が「良かった」と言った個所を特に重点的に舐め上げ、同時に歯を立てないように注意しつつ頭を緩やかに前後させている。中学生と言っても通用するであろう幼さを残した少女の口に唾液に塗れた怒張が出入りする様は、何ともいえない背徳感を俺に覚えさせる。
「じゅるっ……ちゅ、ん、んむぅ」
「あぁ、チ、チグサ、その、そろそろっ……」
「んはっ……いいですよ、先輩。このまま、私のお口に出してくれても……ちゅっ」
そろそろ射精感が強まってきた。俺の言葉にチグサは少し口を離すと亀頭に愛おしそうにキスをして、再びフェラチオを再開する、
「じゅ、じゅぷっ、ふぇんぱい、ふぁひへ、ふぇんぱっ、ンッ、ンーッ!」
「おぉっ!? チグサ、もう、出っ、あ、ああぁっ!」
「……ッ!」
彼女の頭を思わず押さえつつ、俺は絶頂に達した。どくどくと精液が腰の奥から溢れ、チグサの小さな口腔内に吐き出されてゆく。
「んぶっ!? ンッ……ごくっ、ごくっ……」
「くっ、あ、あぁ……」
しかしその精液をチグサは迷わず嚥下してゆく。彼女の頭を撫でながら、俺は絶頂の余韻が治まるまで快感に身を任せていた。
やがて肉棒の脈動がようやく止み、チグサは唇と亀頭の間に粘液の橋をかけながら口を離した。口腔内で舌を動かして唾液を分泌すると、それと一緒に残った精液を呑み込む。
「んぐっ……ぷはーっ! せんぱーい、ちょっと射精し過ぎですよ? 窒息するかと思いました」
「ごめんな、チグサの口があんまり良かったから」
「そっ、そんな事言わないでください! なんか、今更恥ずかしくなってきたぁ……!」
俺のストレートな賞賛にチグサは顔を赤らめて照れる。そんな彼女に俺は笑いと共に手を差し伸べた。
「悪い悪い……それよりチグサ、今度はお前を気持ちよくしないとな」
「先輩……もっと、ムードを出しましょう?」
どうやらチグサ的にはまだ「らしくない雰囲気」の言葉だったようだ。ちょっと考えてから、言い直す。
「……チグサ、もっとお前を感じたい。いいか?」
「ん~……まあ、ギリギリ合格ってトコですかね」
悪戯っぽくチグサは微笑み、座っている俺に跨ってくる。
彼女の股間が押し付けられ、唾液と精液で濡れたままの肉棒が再びむくりと起き上がった。
16:00 「二次三次」事務所
「……ふぅ」
「お疲れ様でした~。チグサちゃん、どうだった?」
「はい! すっごく勉強になりました!」
その後、挿入からの幾つかの体位についてのレクチャーを終えた俺とチグサは事務所に戻っていた。デスクに居たジョーに報告して、接客用の──実際はスタッフの利用率が非常に高い──ソファに俺は座る。
「本出勤の日程は明後日までに連絡するからよろしくお願いしますね。それじゃ、お疲れ様」
「支配人さん、お疲れ様でした! 先輩も今日はありがとうございました!」
4時間近い研修を終えた疲れも感じさせない明るさでチグサはジョーと俺に挨拶すると、先にフロントへと移動していった。彼女がいなくなったのを確認してからジョーが俺の前のソファに座る。
「さてと、それで今日はどうでした?」
「そうですね、まず今日の研修内容なんですが……」
ひとりの少女を「嬢」として仕上げるには、ただ一方的に教えて終了という訳にはいかない。支配人であるジョーや尊へ今日の教えた内容、そこで分かってきた研修相手の長所や短所、プレイの向き不向きなどの共有を行わなければ正しいケアは難しい。俺が思い出しながら語る内容を、ジョーは頷きつつ胸ポケットから出したメモに書き込んでゆく。
「……まあ、そんなところですね」
「なるほど……ウチにはそういう後輩系のキャラは少ないですから、独自性は出せそうですね~。『フレン』さんとか、本人は新人を自称してますが実際は先輩格ですし」
「はは、言いそうですね……ん?」
ふと、横に別の気配を感じて俺はそちらを見た。
灰色の髪に日焼け肌、青のフード付きノースリーブを着た少女が──何故か頭に豚の貯金箱を乗せて──俺を見ている。俺は彼女に言った。
「おう、どうした『葉山』?」
「おはやま~……ねえねえ兄さん、この貯金箱、イケてない?」
自身の頭上に乗せた貯金箱を指さして「葉山」が言う。VR空間の中だと思えない程に古臭い、陶製の豚の貯金箱だ。ところどころの塗装が剥げているのが何ともアンティークっぽさを感じさせる。
俺は何となく先の展開を予測しつつ答えた。
「あー、まあ、イケてる……かな?」
「うへぇ、でしょ? そんじゃイケてるついでにぃ、この貯金箱にいい音を出させたくない?」
独特な声と共に葉山が笑う。俺は苦笑しつつ財布を出し、10円玉をそれに入れた。チャリンと澄んだ音が鳴る。
「うはっ、ありがとー! 支配人さ……」
「葉山ちゃん、俺とお兄さん、ちょっと大事な話の途中だから待っててね。後でちゃんと音は鳴らすから」
「あーい」
今度はジョーに話を向けようとした彼女だったが先手を取られ、それ以上は粘ることなく別のところへトコトコと歩いてゆく。
彼女の名は「葉山」。VTuber・葉山舞鈴に酷似した少女であり──良く分からないが、この事務所に入り浸っている座敷童めいた存在だ。とりあえず嬢ではないらしい。
初対面の頃はああやって托鉢僧めいた手段で小銭や食品を集めたり、事務所内で長時間ゲームをやってたり、寝ていたりする彼女に俺も戸惑ったが「
「えーっと、どこまで聞きましたっけ?」
「後輩感を出してゆけば良さそうって所からですね。で、彼女とのプレイの中で気付いたことなんですが……」
気を取り直して話を続ける。説明や話し合いがひと段落ついた頃には、気付けば一時間ほど経過していた。
「……っと、もうこんな時間でしたか。すみません、引っ張ってしまって」
「いえいえ、これも大事なお仕事です。チグサちゃんの事は俺の方からもしっかりケアしますよ」
頭を下げる俺にジョーは満足そうに笑うと立ち上がり、デスクへと戻った。
とりあえずこれで
『メッセージが届いています』
ロックを解除して、発信者の名前を見る。俺はジョーに言った。
「すみません、何人か様子を見てから帰ります」
「……すみません、
俺の出勤日には既に通例になったこの流れに、ジョーは察するように会釈を返した。
17:30 「クレア」用休憩室
「ふぁ、あっあひっ! くださいっ、おちんちん、もっと、くだっ、さいぃっ!」
「ぐうっ! クレア、さんっ! 前より締め付け、強く、なって、ませんかっ!?」
「あ、貴方のが、太く、なったんだと、思い、ますっ! ああんっ!」
これだけ
──少し前に行われた、六つの部屋の突破イベント。あの時に最後の障壁として立ちはだかり、
『あの……ごめんなさい、私、熱くなっちゃって変な事を言ったと思いますが……忘れてください。貴方とは今のままでも、十分に助けられてますから』
正直、怒られるよりも堪えた。だが彼女の言葉を「ウソだ」と否定してあの時の想いを全部受け止める事が俺に可能かと言えば、それも難しい。
そんな訳で、なし崩しに近い関係修復ではあったが──クレアの過度な性欲を発散させるための手伝いは、今もこうして続いている。
「うおっ、く、が、あぁっ! 出しますよ、クレア、さんっ!」
「ふひぃっ! くだ、さいっ! 精液っ、精液、全部、なか、にぃっ!」
「あ、あ、おあぁぁっ!」
彼女の願うままに熱い膣内に精液を浴びせる。だが、俺は射精感が治まるのも待たず更に腰を使い始める。
「んあぁっ! そ、そんなっ、射精した、ままっ! 熱いの、かき混ぜられ、てぇっ!」
「このまま二発目、いきますよ、クレアさんっ!」
「んあっ! あっ、あぁぁっ!」
激しい動きにフードが外れ、金髪を振り乱してクレアが悶える。
彼女には悪いが、ペースを速めねばならなかった。この後、
何とかその限られた時間でクレアが満足できるよう、俺は更に腰を大きく打ち込んだ。
18:20 「星川」用プレイルーム
「……あの、なあ、星川?」
「ふんァ?」
ベッドの上、全裸でだらしなく寝転がる星川の前で胡坐をかきつつ俺は尋ねた。
「お前、この前の雑誌紹介から予約が順番待ちになる程には人気になったよな?」
「そうだよ? まさにこの店の一番星だよねー」
「で、その『一番星』さんが勤務時間中にお客にキャンセル入れてまで俺を呼んだ訳は?」
「そりゃ当然、気分転換で」
俺の問いかけに軽く答えて起き上がる星川。
「気分転換?」
「そう! だってここ最近のお客さんってば『〇〇して欲しい』とか『〇〇やって』とか、自分だけ気持ちよくなれれば良いって感じで、星川の事を何にも考えてないんだもの! お兄さんみたいに『一緒に気持ちよくなりたい』って人がマジで居ないの! 『まつり』ちゃんは違うけど、この所は『ホロラバーズ』が忙しいみたいだし」
「あー……まあ、そりゃ溜まるモンもあるとは思うが……」
パンパンとシーツを叩きつつ星川は言う。彼女の鬱憤も理解は出来た。奔放な星川の性格からすれば、一方的に与えるだけのプレイでは実際ストレスは溜まる筈だ。
「だからぁ、お店の娘のメンタルケアって事で付き合ってよ。お兄さんのちんぽ、あのイベントの時も先に帰っちゃったからご無沙汰だし」
「うっ……」
そう言いつつ星川は遠慮なく俺の股間に手を伸ばし、下着ごとスラックスを消失させると肉棒を直接握ってきた。クレアからの連戦で多少の疲れを見せていた愚息だが、それでも星川の手に包まれた事で勃起を取り戻してゆく。
どうやら言葉だけでは片付かないようだ。俺はワイシャツを脱ぎ、星川の背に手を回した。
「……分かった。しっかりイカせてやるから、暫くはそれで満足しろよ?」
「ふんァ! だからお兄さんって、大好き……ん、ちゅ……」
「ちゅ、ふっ、ふぅっ……」
星川の方から仕掛けてきたキスを受け止め、舌を絡ませ合う。金の陰毛に彩られた秘所に指を進めると、むわっとした熱気と湿気を感じる。確かにこれはなかなか溜まっているようだ。
互いの秘所を弄る手を止めぬまま、俺と星川はベッドに倒れ込んだ。
19:40 「夜見」プレイルーム
「……なので、その実験台になって欲しいんです」
「………」
俺は無言でプレイルーム中央に置かれた、木製の
「その、もう一度だけ聞いていいか? これで
「はい、チンチンです。一見切り落とされたチンチンが遠隔操作できるようになり、生ディルドーみたいに使えるって手品なんですけど……って、ああ、待ってください!」
ルームから出ていこうとした俺を慌てて止める夜見。
「大丈夫、大丈夫です! テストは何回かやって成功してますから!」
「……成功率は?」
「50%です。失敗したら酷い喪失感に苛まれますが、ちょっとすれば治りますから」
恐ろしい事を平然と言う。流石に逃げようと思ったが、夜見は縋り付くように俺に言った。
「お願いしますぅ! お客さんに一発勝負は出来ないですし、お兄さんだけが頼りなんですよぉ!」
「……一回だけな」
泣かせる訳にもいかない。俺はごくりと息を呑み、断頭台へ足を踏み出した。
20:20 「詩子」用休憩室
「よく来てくれましたね。実は貴方用に取り寄せていた園児服が」
何とか50%を潜り抜けた俺は無言で逃げ出した。
20:25 「二次三次」事務所
「おう、お主まだおったのか?」
「……色々と、ありましてね」
どうやらジョーは帰ったらしい。入れ替わりでデスクで作業をしていた尊の言葉に、ぐったりとソファに身を任せつつ俺は答えた。
「二次三次」の営業時間は23時まで。普通の店ならばそろそろ締めの準備に入るところだが、この店の賑わいはこれからだ。
「何じゃ、景気の悪い顔をしとるのう……ほれ、これでも飲め」
疲れが顔に出ていたろうか。尊はそう言って指を鳴らすと、ソファ前のテーブルに徳利と枡が出現した。
「ははっ、すんません……いただきます」
「なに、コレくらいしか妾には出来んからの」
尊の微笑みを肴に、俺は枡に酒を注いで傾ける。
まだメッセージの相手は数人ほど残っている──どうやら、今日は時間いっぱいまで