「うっ……ぐっ、あぁっ……!」
「んあ、あ、あぅっ!」
開け放しの窓から緩やかな雨音が聞こえてくる。
『このように太平洋側の大気が不安定になっており、関東地方では強い雨を伴った急な雷雨の可能性があります。逆に日本海側は──』
机の上に置かれたラジオからはノイズ混じりの天気予報。湿り気を帯びた空気の重さに押し負けている予報士の声が偉く遠くに聞こえる。
俺はそんな声をBGMに、自分に裸で跨る少女「つぐ」の膣内を突き上げた。
「ふぁあっ! は、はぁっ……」
安い作りのパイプベッドが二人分の体重を受けて苦しそうに軋む。
身長130㎝にも届かない小学校高学年──否、低学年かもしれない──くらいだろうと伺わせる未成熟な身体。それが赤黒い怒張を受け入れ、俺の動きに合わせて喘ぐ様は酷く背徳的だ。
透き通るような白い肌には玉のような汗が浮かび、下から俺が突き上げる度にそれが弾けるように散る。同様に汗に濡れたショートカットの亜麻色の髪は彼女の頬に貼りつき、幼い顔に女性の色気を加えさせている。
「う、くうっ、締まるっ!」
だが、その一方でつぐも俺に任せているだけではない。2/3ほどまでしか挿入を許さない狭い膣内を健気に締め付け、肉棒に快感を与えてくる。
俺の腹に手を置いて体を支えつつ、つぐは喘ぎ混じりに言う。
「ンッ……い、いい、ですよ? いつでも、んはっ、だ、出して、ください……っ……!」
「あ、ああっ……」
つぐが感じているのは身体の震えや熱量、断続的に強くなる締め付けが教えてくれている。
しかし彼女はそれを隠すかのように出来るだけ喘ぎ声を抑え、恥じらうように目を伏せる。それが逆に俺の中の加虐欲を刺激し、もっとつぐの幼い体を感じさせたくなる。
「よっ……」
「えっ、あ、ああっ!」
俺は挿入したまま上体を起こし、つぐの羽根のように軽い体を抱きかかえると対面座位へと体位を変えた。彼女の最奥までぐりぐりと亀頭が押し付けられているのが分かる。より深くなった結合につぐは抑えきれない嬌声をあげ、小さな手を俺の背に回す。
「ふっ、ん、ぐっ……!」
「あ、ひ、いいっ!」
そのまま俺は彼女の身体を軽々と持ち上げ、まるで等身大のオナホールを扱うかのように上下に揺らす。つぐの甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐり、コンクリート打ちっ放しの殺風景な部屋の中に青く、それでいて淫蕩な空気を漂わせてゆく。
『速報です。19時20分頃、東京都三鷹市で落雷があり、これにより15000戸が停電となり、現在も──』
ラジオの声が相変わらず場違いに流れ続けている。だが止めようとは思わない。この雑音を含めての交わりが俺とつぐの
「おおっ! そ、そろそろっ……!」
「あぅ、あ、か、はぁっ……!」
次第に射精感が高まってきている。もはや俺の動きに合わせて喘ぐだけになったつぐの中をひと際強く擦り、俺は彼女の中に精を放った。
「お、おおっ……!」
「あぁ、で、出て、ますっ……」
小さな膣内はたちまち一杯になり、溢れた白濁液が結合部から逆流してゆく。ごぽりと無毛の秘所からまだ熱を残した精液が零れ、俺とつぐの身体を汚してゆく。
「ハァッ……あ、ふぅ……」
「あふ、んっ、ンンッ……」
更に溢れてゆく精液の感触につぐの背中が震える。暫くの間、俺たちは繋がったままセックスの余韻を味わった。やがて彼女の狭い孔から押し出されるように肉棒が抜け落ちる。
それが合図だったかのように俺の腹がぐぅと鳴り、一拍遅れてつぐのお腹が小さく鳴った。時計を見てみれば既に昼を結構な具合で過ぎている。
「……腹、減ったな」
「あ……そう、ですね。冷蔵庫の中のもの、切れてたから買いに行かないといけません」
「そっか……一緒に行くか? 荷物持ちくらいはするけど」
「ありがとうございます、助かります。ベッドは直しておきますから、お兄さんは先にシャワーを浴びてください」
まだ白い肌に汗を浮かべたままつぐは俺から身を離すとベッドから降り、裸のまま汗と精液に濡れたシーツを外そうとする。
俺はその姿と態度のアンマッチにどこか面白さを感じ、少し微笑んで立ち上がった。
──俺がこの街「西荻窪」に記憶喪失のまま流れつき、「つぐ」に助けられて一緒に住むようになってから数日が経つ。
何でも俺は行き倒れのように彼女の家の前で倒れていたらしい。それをつぐは引きずりながらも頑張って中まで運び込み、介抱してくれたのだそうだ。
「いつもの雑貨屋か?」
「はい、あと……ちょっと、寄り道していいですか?」
「らしい」「だそうだ」と曖昧な言い方しか出来ないのは俺がこの街に来る前の事を何も覚えておらず、自分の名前くらいしか思い出せないからだ。そんな記憶喪失で正体不明の俺をつぐは警戒する事無く迎え、受け入れてくれた。それは生活的な意味でもあるし、肉体的な意味でもある。精神的には──どうかは分からない。
『大規模停電についての続報です。修復作業により約半数の区域では既に電力が復旧していますが、今もなお約7000戸で停電が続いています。更なる落雷の可能性もありますので、地域の皆様は──』
この街の天気はいつも曇りか、あるいは弱い雨だ。ネオンの切れかけたアーケード、錆びたシャッターが下ろされたままの肉屋、薄暗いゲームセンター、紙魚の匂いが外まで漂ってくる古本屋、老婆の経営する雑貨屋。それらのどれもが朧気で、古臭く、そして何処か懐かしい。
「いつもありがとうね、つぐちゃん」
「いいえ、こちらこそありがとうございました」
常連なのだろう。笑顔じわを緩めて笑いかける老婆につぐが深々と礼を返す。おそらく外見通りの小学生か上に見積もっても中学に行ってるかどうかの彼女だが、その態度は常に礼儀正しく慎ましやかだ。それが微妙に彼女の年齢を分からなくさせている。
カレールーやらジャガイモやらが詰め込まれた袋を下げつつ、俺はつぐに聞いた。
「それで、寄り道したい場所ってのは?」
「『りべんじ』したい場所があるんです。それだけ……」
黒の革靴に白いニーソックス、サスペンダー付きの黒のスカートに白のブラウスに黒のベレー。おでかけ用の彼女は「良いところのお嬢様」といったいで立ちだ。そんな格好のつぐは俺の問いかけに答えると、今度は雑貨屋の近くのゲームセンターへと足を向けた。怪しげな中に入るとかと思いきや、その瞳は店頭のクレーンゲームへと向けられている。
「あれか?」
「チャレンジ1回500円までと決めてるんですけど、前回それで取れなかったんです」
そう言うとつぐは財布から旧500円玉を出すと機械に入れた。顔を上に向け、ケース内のデフォルメされた卵型の兎のぬいぐるみを見詰める。
「んっと……この辺り、かな……」
彼女からすれば見上げる形になるケース内は見づらく、位置を合わせるのも大変そうだ。案の定アームのクローは微妙に位置を外し、ぬいぐるみを掴み損ねて調子はずれの電子音と共に元の位置に戻ってくる。
「あぁ……」
残念そうに眉をしかめるつぐ。500円6プレイなので残りは5回だ。買い物袋を下げたまま俺はそれを後ろから見守る。
2回目、3回目、やはり失敗。ぬいぐるみを掴むアームのパワーは足りているようなので、あとちょっと位置を正確に狙えれば──
俺がそんな事を思っていると、つぐはくるりと俺の方に振り向いて言った。
「あの……お兄さん。残りを代わりにやって貰えませんか?」
「えっ?」
「前に来た時より高く積まれてて、私だと見づらくて……」
「……分かった。ただ、あんまり当てにはしないでくれよ?」
上目遣いに頼んでくるつぐに、俺は断り切れず位置を交代した。そこそこ遊んでいた学生時代の勘が活かせれば良いのだが。
俺は改めてケース内をじっくり見た。積み上げ方は密度こそあれ、そこまで意地悪な配置はされていないようだ。山を崩して持ちやすくさせればイケるかもしれない。
『この停電による現在判明している被害ですが、転倒により3名が軽傷。また〇〇社においてサーバーダウンが発生し、これにより一部取引に影響が──』
商店街のスピーカーからだろうか、電子音にラジオの声が混じる。
俺はそれを聞き流しつつ4回目のチャレンジを行った。まずは直接には狙わず、本命の周囲を崩すようにアームを動かす。
「んん……やっぱり、難しいですよね」
「大丈夫、あと2回で……」
何も掴まず元の位置に戻るアームを見るつぐ。俺は彼女を安心させるように答えると、今度は本命の位置に細かく合わせる。あとは重心をちゃんと持てるかどうかだ。
5回目の挑戦では確かに掴めたが、持ち上げられた拍子にぬいぐるみは途中で落下した。思ったより重心に偏りがあるようだ。
「それなら……」
穴の近くで落ちたぬいぐるみを今度はやや位置をずらして掴む。不安定そうにゆらゆらと揺れつつも今度はアームは最後まで持ちこたえ、ファンファーレ音と共に景品口にぬいぐるみを落とし込んだ。
「わぁ……!」
つぐは嬉しそうに目を輝かせ、ぬいぐるみを手に取った。
「ありがとうございます。お兄さん、凄いですね」
「そんな大した事はしてねえよ。まあ、また欲しいのが出てきたら言ってくれ」
律儀に礼をするつぐに軽く手を振って返す。
彼女の手のひらよりちょっと大きめのそのぬいぐるみを大事そうに抱え、つぐはそのまま俺と共に帰路についた。
「じゃあ、お昼作りますね」
俺がテーブルに買い物袋を置くと、ベレーを脱いだ彼女は手洗いを済ませてから早速袋の中身を出してキッチンに向かう。俺はベッドに腰かけ、大きく伸びをした。
古びたキッチンテーブルに2つの椅子、パイプベッドに書棚、壁際にスチール机と何時のものか分からないPC、そして年代物のラジオ。それがこの部屋の全てだ。小学生の少女が独りで済むには殺風景に過ぎるし、彼女の両親の姿も俺は見たことが無い。しかし今の俺がその辺を探る事に意味は無いし、つぐもそんな質問を望んではいないだろう。
「あつつ……はい、お待たせしました」
程なくして室内に香ばしいカレーの匂いが漂い始め、つぐはいそいそとテーブルにカレーライスと麦茶の入ったコップ、水差し等を置いてゆく。
俺はベッドから立ち上がり、椅子を引いて食事を前にした。向かい合わせにつぐも座る。
「はい、いただきます」
「……いただきます」
しっかり食前の合掌をする彼女に合わせて俺も礼をする。どちらかと言えば食事の神様よりも眼前の少女への感謝を込めて。
まだつぐは辛いのがダメなのだろう。カレーはなかなかの甘口だったが、決して不味いものではなかった。他愛ない会話を挟みつつ、食事を進める。
『続報です。三鷹市の大規模停電ですがほぼ復旧した状態です。ただごく一部の地域において──』
ラジオは相変わらず雷雨による被害を流している。都内でそんな豪雨が降っているなら多少はこちらにも雲が来そうなものだが、何故かその雨がこの街に降ることは無いと確信している自分がいる。
「………」
「……どうしましたか? 私、何か付いてます?」
「え? あ、いや……綺麗に食べるなって思っただけさ」
フリルの付いた白のブラウスはカレーを食べるには勇気の要る服装だ。つぐはそれを気にする風もなく丁寧にスプーンを動かし、米ひとつ零す事無く食べてゆく。その姿はきちんとマナーを教えられた人間のそれだ。
「……あんまり、じっくり見ないでください」
俺の言葉に、つぐは恥ずかしそうに顔を伏せる。
「ご馳走様でした」
「……お粗末様でした」
やがて俺たちは食事を終え、やはり合わせて合掌する。食器を片付けにキッチンに戻るつぐの背を視線で追い、俺は小さく息をつく。
何と言うか──この街に来てからの俺はどこか
それはこうして面倒を見てくれている事もそうだし、加えて──
「ふぅ……さてと」
その時、つぐが片づけを終えて戻ってきた。椅子に座ったままの俺に近づき、それで丁度高さの合う視線を交わす。
「お兄さん……
「ああ……頼む」
彼女のあどけない声にそう答えると俺は椅子を引き、彼女の方へと座り直した。まるで服従するようにつぐは俺の前に跪き、ジーンズの留め具を外してジッパーを引き下げると躊躇なくトランクスの隙間に指を差し入れてきた。既に半勃起していた肉棒が外気に晒され、湿り気のある空気に雄の臭いを放つ。
「失礼します……あー……あむっ、んっ……」
「くうっ……!」
余所行きの綺麗な服装のまま、つぐは小さな「おくち」を精一杯に広げて赤黒い肉棒を咥えこんだ。それだけでビクリと背筋に快感が走り、俺は身体を震わせる。
飯を食うか、買い物に行くか、寝るか、セックスをするか──それが俺とつぐがこの数日間で行っていた全てだ。
不思議な事に彼女とのセックスには疲労感が全く無い。むしろつぐを抱けば抱く程に、犯せば犯す程に癒され、ふわふわしていた自身がより明確になってゆくようだ。
「んぷ、ンッ、ンンッ……」
「あぁ、いいよ、つぐっ……!」
亜麻色のサラサラした髪を撫でつつ、俺は彼女の行為に身を任せる。唇で竿を締められ、口腔内では熱い舌が亀頭を舐め回す。息苦しさもあるだろうに鼻で息をしつつ肉棒に奉仕する様は実に献身的で、それが更に俺の興奮を昂らせる。
その興奮が伝わったのだろうか。つぐは俺の両ひざに手を置いて身体を固定させると、頭を大きく前後させて肉棒全体を刺激し始めた。
「ふっ、ンッ、んぐ、ンンッ!」
「く、ぐうっ!」
喉奥に亀頭がゴツゴツと当たっているのが分かる。喘ぎの合間に
まるで頭を抑えずにイマラチオをさせているかのような錯覚を覚える程の激しい口淫に、急激に射精感が強まってゆく。
「で、出る、出すぞ、つぐっ!」
「ンブッ、ンッ、ンーッ!」
俺の訴えにつぐは逆に目を細めて更に頭の動きを速める。
「このまま出して」という無言のメッセージに応え、俺は遠慮なく彼女の喉奥で奔流を解き放った。
「あ、ぐ、ああぁっ!」
「んぶっ!? ぶっ、ぐ、んぐっ……!」
彼女の頭を押さえ、そのままドクドクと精液を流し込む。一瞬戸惑うように身体を硬直させたつぐだったが、抵抗する事なく苦し気にそれを嚥下してゆく。
「く、お、おうっ……」
「……ぷはっ、ケホ、ケホッ!」
どれだけ続いたろうか、ようやく射精を終えた俺はつぐの頭を解放した。息継ぎをするように肉棒から口を離したつぐは激しく咳込み、呑み切れなかった白濁液を床に零す。
流石にやり過ぎたか。そんな罪悪感が今更ながら浮かんできた俺は彼女に声をかけた。
「……すまない、苦しかったろ?」
「ケホッ……い、いいえ、大丈夫です。それより……」
まだ咳を残しつつもつぐは立ち上がり、黒のスカートの裾を持ち上げた。
「むしろ、今ので私も……」
子供らしい、兎のプリントが施されたコットンパンツ。そのクロッチの部分に小さな染みが出来ている。
「……えっちだな、つぐは」
「うぅ……」
どうやら彼女にはMの気があるらしい。俺の言葉に表情こそ恥じらいを見せるが、震える身体が更に熱くなっているのが分かる。
「続きはベッドだ。先に横になりな」
「えっと、脱ぎますか?」
「いや……今日は、着たままのつぐを抱きたい」
彼女をベッドに促し、ころんと横になった彼女を組み敷くようにその上に身体を置く。つぐは俺の言葉を待たずにスカートの中に手を差し入れ、下着を脱いで丸める。
先ほど射精したばかりというのに俺の肉棒は早くも次の快感を求めて昂り、勃起を取り戻していた。華奢な脚を持ち上げ、スカートを捲る。
「あっ……」
恥ずかしそうなつぐの声。無毛の秘所は既に薄く濡れ、まだ陰唇とすら呼べないスジを照り光らせている。俺は肉棒に手を添え、孔に亀頭を押し当てた。
「……いくぞ、つぐ」
「は、はいっ……来て、くださっ、ああっ!」
彼女の言葉を待たず、乱暴に挿入する。未成熟な秘所は熱い男根をそれ以上の熱で迎え入れ、収まり切らないサイズの肉棒を何とか受け入れようと健気に蠢く。
そのまま俺はまるで臼に杵を突くような勢いで抽送を開始した。小学生のつぐの身体には余りに荒っぽいセックスだが、それを彼女の身体は痛みより快感として受け止めてくれている。孔の奥からは更なる愛液が滲み、よりその動きを滑らかにしてくれている。
「ふあ、あ、ああんっ!」
そしてそれは彼女の反応にも表れていた。苦悶より悦びが勝る嬌声をあげ、杭打ちめいた肉棒の蹂躙を受け止めてくれている。
清潔感のあるお嬢様然とした姿のままの幼女を犯している。その事実は否応なく俺の中から倒錯的な興奮と支配感を湧き上がらせてゆく。
「どうだ、どうだ、つぐっ!?」
「は、はいっ、いい、ですっ! お兄さんの、凄く、いいっ!」
汗に濡れた髪を振り乱しつぐが答える。同時に彼女の狭い膣内がひと際強く肉棒を締め付け、軽く達した事を俺に教えてくれる。
もっと彼女を感じさせたい。この幼い身体を貪りたい。その衝動のまま、俺は更に腰を振った。
「う、ぐっ、ぐうぅっ!」
「いぎっ、い、ひゅ、ひゅうっ!」
丁度呼吸のタイミングで奥を抉ったからか、つぐの口から苦し気な呼吸音が漏れる。肺の中の空気を全て吐き出したか。
「くっ、ううっ! ま、また、出るっ!」
「ひゅっ、ひ、は、ああぁっ!」
だが俺の方にはそんな彼女を気遣う余裕も無くなっていた。再び高まる射精感をそのまま解放しようと。遠慮なく肉棒を打ち込んでゆく。
「うぐっ! お、おおぉっ!」
「あぐ、はっ、ひ、ひゅうぅ!」
か細い笛のような音がつぐの喉から漏れる。
既に一度射精したとは思えない量が腰の奥から溢れ、それは忽ちに彼女の膣内に流れ込んでゆく。
「……ふぅ」
「ンッ……」
堪らない快感の余韻と共に、俺は身体の力を抜いてつぐの上に伸し掛かった。重いだろうに、彼女はやはりそんな素振りも見せず俺を受け止めてくれる。
その時、またラジオからの声が耳に届いた。
『──続いては明日の天気です。明日の天気はアー……全国的にアー、アー、聞こえてる?』
「……?」
いつもの女性アナウンサーの声ではない、別の声が混じる。俺が身を起こすと下にいたつぐは寝たまま顔をそちらに向けた。
『……どーも』
気怠そうな若い男性の声がラジオから流れる。いや、これは──放送ではなく、俺達に直接話しかけているのか。
初めての事態に警戒する俺に対し、つぐは汗を拭う事もせずその声に答えた。
「……どうも。
『まあね。あの状況から
「この人なら……もう
「迎え? 大丈夫?」
二人の会話の意味が分からず、俺は問いかけた。しかし二人はそれに答える事無く話を続ける。
「戻れば記憶も回復します。これ以上いると逆に戻れなくなるから、今の内に」
『話が早いね、そんじゃ……よっと』
「え? な!?」
眼前のラジオが突如光を放ち、肥大化し、やがてそれが人の形を作ってゆく。
痩せた青年にも見えるその光の人型は茫然としている俺の手を掴み、予想外の力で俺の身体を持ち上げた。
『悪いけど時間が無いから……ちょっと乱暴に戻すんで』
「ちょ、ちょっと待て! こりゃ一体……つぐ、何がどうなって……!?」
言い終わるのを待たず、視界が急激にぶれる。物凄い勢いで上に向かって投げられたのを理解したのはその直後だ。
「……ぬいぐるみ、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げるつぐの姿が眼下に見える。そしてそれが、急激に遠ざかってゆく。
天井に叩きつけられると思った俺の身体はあっさりとそれを透過し、更に上空へと持ち上げられてゆく。
つぐの家が、街が、小さくなってゆく。西荻窪、既に現実には名前の存在しない街が。
『──教育係殿!』
「……え?」
「おお、気付いたか!」
次の瞬間、俺の眼前に広がったのは「二次三次」副支配人である尊の心配そうに見下ろす瞳だった。
「はぁ~……良かった。どうやらまゆっ……『ホワイトハッカー』は上手くやってくれたようですね」
その横でやはり不安そうな表情を見せていた支配人のジョーが大きく息をつく。
「え? あ、あれ? ここは……」
「全く驚いたわい。事務所に現れたかと思ったら次の瞬間にぶっ倒れて」
「落雷によるサーバーダウンに巻き込まれたんですよ。特に兄さんはタイミングが完全に一致してたみたいで……」
俺は起き上がり、周囲を見回した。見慣れた二次三次の事務所の風景と、ソファに寝かされていた自分を確認する。
「……つぐ?」
「ん? 誰の事じゃ?」
「あ、いえ……何でも」
何故か口から漏れた言葉。
その言葉の意味を、俺は思い出せなかった。
こんなうわさ話がある。
ネットの広大な海の深淵。そこには一人の少女が失われた記憶の街で暮らしており、事故やエラーなどで精神に傷を負った者を癒してくれるという──まあ、ネット時代の都市伝説って奴だ。
「ログイン、『電燈二次三次』」
取るに足らないお話ではあるのだが、そんな幻想が電脳世界にもあって良いと俺は思っている。
「おう、おはよう教育係殿……珍しいのう、お主、そんなアクセサリーを持っておったのか?」
出迎えた尊が俺の腰に付けられた飾りに目をつける。デフォルメされた兎の、小さなぬいぐるみのアクセサリーを。
「まあ、その……何となく、ですけどね」
何より──その噂は実在する。そんな気がしてならないのだ。
更新お待たせしております。
ブランクが空き過ぎて「しっとりしたHシーン」とはどんなだったかの勘を取り戻すためのリハビリ的な番外編として書かせていただきました。Holox編や他のVのエピソードも引き続き書いてゆきますので、暫くお待ちください。