※この作品はR-18です。

バーチャル風俗「電燈二次三次」   作:ターキーX

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第五十一話「LoversX・風真」

「えええぇぇっ!? 此方はそういうお店だったのでござるか!?」

「………」

 

 絵に描いたような「びっくり仰天」のリアクションと共に眼前の彼女、「風真」は美しい碧眼を見開いて驚く。

 そのリアクションの意味を探り、そして理解した俺は呟いた。

 

「……マジか」

 

 流石にこれは計算外に過ぎる。俺は思わず額を押さえていろはに尋ねた。

 

「えーっと、その、『風真』さん……ひょっとしてアンタ、処女とかどうとかいう問題以前に、何をここでするか聞いてなかったのか?」

「YESでござる。総帥(ラプラス)殿からは『お客さんに身体を張って奉仕する場所』と言われただけで……」

「言われた……だけ」

 

 素直に頷く風真。今日の研修の予定を脳内で白紙に戻しつつ、俺は絶句した。

 

 

 

「お邪魔するでござる!」

「うおっ!?」

 

 そんな挨拶と共にVtuber、風真いろはに酷似した彼女「風真」が事務所に来たのは例のラプラスが店に来た数日後のことだ。突然の元気で大きな声に思わずソファから腰を浮かせる俺に対し、デスクで書類仕事をしていた尊は知っていたのか涼しい顔でそちらに顔を向けた。

 

「おお、お主が『風真』殿じゃな? ラプラス殿からは伺っておる」

「ラプラス……って事は、例の五人の?」

「そうでござる! 拙者はLoversX五人衆の用心棒『風真』と申す者。以後お見知り置きをー」

 

 俺が尊に問いかけると、その返事を待たずに風真が時代がかった挨拶と共に俺に頭を下げた。

 青い瞳と淡い金髪は欧米系の美少女のそれだが出で立ちは胸にはサラシ、その上から丈の短い着流しに法被、そして法被の色と合わせた草色のスカートという和風よりのいで立ち。「和洋折衷」とはこういうのを呼ぶのだろうか。しっかりと巻かれたサラシに抑えられた胸はそれでも存在を主張できる程度の膨らみを維持しており、プロポーションもなかなかのものだ。

 そんな風に俺が彼女を観察していると、顔を上げた風真は確認するように尋ねてきた。

 

「その風貌……貴殿がこの店の教育係殿でござるな? お噂は兼ねがね伺っておりますー」

「あ、ああ。噂になってんのかは知らねえけど、たぶん俺の事だと思う」

「それは僥倖! 僭越ながら、早速ですが拙者の研修を頼めますかな?」

 

 直情径行というか、何ともストレートな物言いだ。

 まあ、俺も今日は特に研修相手が居る訳でなく様子見で来たような状態だ。クレアや星川も今日は接客中なのかメッセージも届いていない。

 

「分かった。そんじゃ研修用ルームに行くか。何か準備はあるか?」

「大丈夫でござる!」

 

 どん、と胸を叩く風真。裏表の無さそうなその様子は前回のラプラスとは真逆のものだ。その素直な態度に逆に戸惑いを覚えつつも俺は立ち上がった。尊の方を向き、一応の許可を伺う。

 

「……だ、そうなので尊様、ちょっと行ってきます」

「うむ、頑張ってこい」

 

 手にした徳利を振りつつ尊が言う。俺はいつも通りに足元に光のサークルを発生させ彼女を促した。

 

「えーっと、風真さん。やっぱルームの雰囲気は和風のがいいか?」

「可能であれば。ジャパニーズテイスト大好きでござる」

「分かった。それじゃ……ルーム設定、畳敷きの和室。オプションは布団、行灯、シチュエーションは月夜で」

『……設定完了しました。ルーム転送を行います』

 

 俺の指示にナビゲート音声が答え、俺と風真は光の粒に包まれる。

 

「……っと」

「おぉ、これは見事な……!」

 

 次に視界が戻った時、俺達は設定通りの和室で座布団に座り向き合っていた。十畳ほどはあるだろうか。広々とした部屋の中には新鮮な畳のい草の青々とした匂いが漂い、開け放たれた障子戸の向こうでは見事な満月が浮かんでいる。板張りの縁側の先には風流な庭園が広がり、静かな水音に鹿威しの音が時折混じる。何とも月見酒を傾けたくなるようなシチュエーションだ。

 物珍しそうに周囲を見回す風真に、俺は改めて座り直すと言った。

 

「さてと、そんじゃまあ研修を始めさせてもらう訳だが……まずは風真さん、あんたの経験を聞きたい」

「経験?」

「ああ、『ホロラバーズ』ではどの程度の仕事を?」

 

 その辺りの嬢としての熟練度によって俺が教える事も変わってくる。以前に相手した「団長」ことノエルや「先生」ことちょこ級の相手に基礎から教えるのは、それこそ釈迦に説法というものだ。

 だが、俺の言葉に照れ笑いと共に放たれた風真の言葉は逆の意味で予想外のものだった。

 

「それが……恥ずかしながら拙者、こういった仕事はまだ全くの未経験でござる」

「……ちょっと待った、()()()?」

「YESでござる。風真はラプラス殿に誘われて『ほろらばーず』の面接を受け、そのままこちらの店に案内され申した次第で」

「そっ……そう、か。あー、すまない風真さん。少し整理させてくれ」

 

 思わず手のひらを彼女に向け、話を中断して状況を確認する。

 

「(いやいやいや……どういう事だよ!?)」

 

 高級バーチャル風俗店「ホロラバーズ」は伊達に「高級」を名乗っている訳ではない。そこらの常時求人をかけていて余程の問題が無ければ即採用の、一山幾らの風俗店とは格が違うのだ。

 まず求人自体が定期的にしか行われず、その倍率も狭き門。並の店と比べて破格の待遇を提供している同店への転向を望む嬢は実際多いが、採用を勝ち取るのは他店トップの嬢でも簡単ではない。

 そんな店に風真は全くの素人で採用され、そして「二次三次」に出向していると言うのだ。流石に俺もこんなケースは初めてになる。二次三次にもかつてのリゼのような完全な未経験の新人は居たが、彼女のように元のVTuberを再現するクオリティ優先で採用したのだろうか。

 

「……つまり、アンタは今まで客を取った事はない。それでいいんだな?」

「結構でござる。故に拙者としても教育係殿にはイチから教わりたいところ」

 

 驚きはしたが、風真の態度は真剣そのものだ。少なくとも俺をからかおうという気配は無い。

 ならば俺も完全な新人を育てる気持ちで相対しよう。そう切り替え俺は言った。

 

「そういう事なら、もっと基本的な話からだな。ええと……それじゃ()()()の経験の方は?」

「あっち?」

「つまり、その、仕事に関わるスキル的な話さ」

「『すきる』でござるか……今言った通りに仕事として行った事はござらんが、肩もみや耳そうじ、マッサージなどは実家で祖母上や祖父上にいつもしておりました」

 

 誇るようにえっへんと胸を張る風真。

 一方の俺は、その言葉に足元からぞわぞわと這いあがるような嫌な予感を覚えていた。

 

「いや……そういう意味じゃなくってだな、男性とのセックスの経験について何だが」

「え? セッ……な、何を言っているでござるか教育係殿!?」

 

 一瞬きょとんとした風真だったが、俺の言葉の意味に気付くと白い頬を一気に赤くして動揺した。

 

「せ、拙者、せっくすどころか殿方とお付き合いした事もありませぬ! 男女七歳にして席を同じゅうせずでござる! それが仕事に何の関りが……はっ! まさか『せくはら』でござるか!?」

「………」

 

 俺は頭を抱えたくなる衝動を何とか堪え、彼女に言った。

 

「あー……風真さん? この店も、ホロラバーズもなんだが……此処はバーチャルではあるが、あんたが男性とセックスして悦んで貰う場所だってのは把握してるよな?」

 

 語尾を「把握してないのか?」でなく「してるよな?」と知ってる前提にしたのは、ワンチャン俺の勘違いに期待したからだ。

 だが、俺の言葉に風真は目を丸くすると大声で言った。

 

「えええぇぇっ!? 此方はそういうお店だったのでござるか!?」

 

 

 

 ──そして、現在の状況に至る。

 

 

 

「……マジか」

 

 図らずもラプラスが以前に予言した通りの言葉が二度も出てきたがそれを気にする余裕は俺には無かった。この状況は無茶苦茶にも程がある。

 

「(こりゃ、今日はここまでだな)」

 

 要は彼女はバーチャル風俗店が初めてどころか、本当に何も聞かされずここに送り込まれてきたのだ。騙されて風俗送りにされたも同然だ。まだ法整備の途中とはいえ、バーチャル上での強制的なセックスに準強姦罪が適用された判例もある。ここは迷わず事務所に戻り、彼女には何もせずに帰って貰うのが正解だろう。

 俺はどうにか考えをまとめ、風真に言った。

 

「なるほど……大体は分かった。風真さん、研修は無しにしよう」

「無し……でござるか?」

「ああ。こういうのは不意打ちで教える事でもないし、教わる事でもない。アンタだっていきなりセックスについて手解きされるとか御免だろ?」

「そっ、それはそうでござるが……むむむぅ……」

 

 その言葉に風真は言い淀むと腕を組み、悩み始めた。

 こちらとしては些か予想外の反応だ。ここまでの反応的にセックスどころか男性に免疫が無いと思われる彼女だ。素直に俺の提案を受け入れてくれると思ったのだが。

 

「むむむ……」

 

 更に風真は暫くの間悩み、やがて顔を上げると俺に言った。

 

「……その、教育係殿。やはりこのまま研修を続けて下さらんか?」

「は? いやいや、そんな無理にやるモンでも……」

「お願いするでござる! 確かにこの店の『さーびす』がそのような内容であった事には驚いたでござるが、ラプラス殿達がここに拙者をそのように送り込んだ事、必ず意味があるに違いないのです!」

「意味……ねえ?」

「ラプラス殿は傍若無人なお方でござるが、決して意味なくこのような真似はされぬ方ではありませぬ。お願い致します、教育係殿!」

 

 あの未発達の幼女がそこまで深く考えてるとは俺には思えないのだが、付き合いの長い彼女らなりの信頼関係があるのだろう。真剣な表情で懇願する風真に俺はどうしたものかと頭を掻いた。

 

「うぅん……まあアンタがそう言うのなら進めるけどよ、本当に大丈夫なのか?」

 

 言葉と共に、俺は試しにひょいと手を彼女に伸ばしてみた。

 

「ぬぬっ!?」

 

 その挙動に風真は一瞬にして警戒を見せ、座ったまま一畳ほど飛び退る。

 

「……な?」

「あっ……い、いや、これは用心棒としての反射的な反応でござる!」

 

 ハッとして慌てて弁明する風真。予想通りの反応に俺は苦笑する。気持ちに嘘は無いだろうが、男性への免疫の無さというのは瞬間的に取り払えるものではない。やはり彼女は研修を受けられるコンディションではないのだ。

 そんな俺の反応から考えを察したのだろう。風真は困り顔で俺に視線を向ける。

 

「うぅ、拙者どうすれば……はっ! なるほど、この時の為に……!」

 

 ふと急に何かに気付いた風真は自らの懐をまさぐり、法被の袖の膨らみから何かを取り出した。手元を見てみればそれは時代劇に出てきそうな小さな瓢箪である。

 一人で合点がいったように頷く彼女に俺は尋ねた。

 

「それは?」

「こちらに来る前に仲間の科学者『こより』殿から授かった()()にござる! 『予想外の状況になったならばこれを呑め』との事でござった。ではっ……」

「秘薬って……ちょ、ちょっと待った! 風真さん、それを飲むのは待っ……!」

 

 猛烈に嫌な予感を覚えた俺は彼女を制止しようと立ち上がった。しかし先ほどの反応で距離が開いていた事も災いし風真は俺の手が伸びる前に瓢箪の栓を抜き、口に付けると一気にその中身を呷った。

 

「ンッ、ンッ、ンッ……うぇー、苦いでござる! でもこれで何か良い事が……はうっ!?」

 

 びくんと彼女の身体が跳ね、その拍子に瓢箪が手から零れ落ちる。俺は咄嗟にその瓢箪を拾うと口を広げそれを傾けた。幾らか残っていた中身が流れ込んでくる。

 

「ケホッ……畜生、やっぱりか!」

 

 本物の生薬かと錯覚するような苦みと風味、そしてその奥に感じるケミカル臭。以前の冬雪との一件で吸引したものとは別のようだが、間違いなく電子ドラッグの亜種だ。となれば次に起きる事は──

 

「あ、あ、あれ? なんで……ござる、か? これ……」

「おい風真さん、大丈夫か!?」

「大丈夫、で、ござるが……うぅん、風真、何やら、暑くなってきたので、少し失礼をば……ンッ……」

 

 風真の白い肌が急速に紅潮してゆく。俺の問いかけに彼女は戸惑い混じりの声で答えると暑さに耐えかねたように自ら法被を脱ぎ、続けて背に手を回すと固く締めていたサラシを緩める。

 

「いや、そりゃ全然大丈夫じゃっ……!?」

 

 何とか彼女を制しようとした俺は、そこで思わず言葉を失った。

 

「うぅ、まだ暑いでござる……」

 

 更に帯を緩め、男性の前だという意識も薄れているのかその肢体を露わにしてゆく風真。

 俺は第一印象で彼女の事を「なかなかのプロポーション」と評したが、どうやらそれは過小評価だったようだ。体のラインを隠す法被を脱ぎ捨て、胸を締め付けていた拘束を開放させた彼女の身体は──「極上」と呼んで差し支えない代物だった。

 

「ぜ、全然涼しくならないで、ござるぅ……なんでぇ?」

 

 まず胸のサラシだが結構な具合で強く締めていたようだ。緩められた風真の乳房は弾けるようにその存在感を増し、少なくとも3カップはサイズを増したように見える。流石にノエルやニュイ程の大きさではないが、それでもFカップかGカップはあるのは確実だ。

 それでいて全体的にムチムチしているのかと言えば決してそうではない。日頃の鍛錬に依るものであろう、薄く腹筋が浮かぶお腹周りはしっかりと引き締まり、瑞々しい肌は汗を弾き返している。そして形良い腰回りを経て、無駄な肉が一切付いていないしなやかな脚へと続いている。

 これは決して彼女のアバターが優れているというだけの話ではない。肉体へのフィードバックが重要なバーチャル風俗において元々の肉体と乖離したアバターを使用するのは難しい。風真「自身」が優れた肉体を持っているからこそ、眼前の彼女はそれだけの磨かれた身体でいられるのだ。

 

「………」

「ふぇ? ど、どうしたでござるか、教育係殿?」

「え? あ、いや……」

 

 そしてそんな、惜しげもなく肢体を晒し潤んだ瞳で俺を見上げる風真に──俺は明らかに欲情を覚えていた。彼女が男性に免疫の無い、まだ手垢が全く付いていない無垢な存在である事もそれと無関係ではないだろう。なるほど、確かにこの()()に可能性を見出したのなら彼女がド素人でも採用したのは頷ける話だ。

 

「(いやいや、ダメだって俺)」

 

 幾ら彼女の方も研修を望んでいたとはいえ、ドラッグの勢いに任せてこのままセックスに流れ込むのはあんまりだ。俺は自身の中の衝動を抑えつつ空になった瓢箪を床に転がし、風真を立たせようと歩み寄った。

 

「まっ……まあ、とりあえず事務所に戻ろう。立てるか?」

「戻……る、で、ござるか?」

 

 緩慢な動作で首を上げる風真。幸い、こちらの言葉が通じる程度にはトンでないようだ。安心しつつ俺は彼女に手を差し伸べた。

 その手を見て風真も手を上げる。

 

「ああ、戻ればあんたの今の調子も……」

「………」

「……え?」

 

 こちらの手を取るのかと思っていた彼女の指はそれをスルーして──ぺたりと俺のスラックスの股間の上、ちょうど勃起しかけていた肉棒を包むように添えられた。

 

「あぁ、この熱さ、やはりここに……」

「あ、え? 風真さん? 何を……!?」

「教育係殿、失礼っ!」

 

 次の瞬間、突然の浮遊感と共に俺の視界が180度回転した。

 

「お、おあっ!?」

 

 そのまま受け身も取れず畳に背中から落下する。股下から掬い上げるように投げられた事を理解したのは天井を見上げる状態になってからだ。古武術めいた、身構える事すら許さない流麗な投げ技。

 

「ん、しょ……っと」

「おっ、おい、何を……んむっ!?」

 

 更にそこに加わる、成人男性を軽々と投げたとは思えない程に軽い風真の体重。俺は何とか彼女と話をしようと口を開いたが、直後にその口が熱く柔らかい感触で塞がれる。同時に口腔内に流れ込んでくる、それだけで脳髄を蕩けさせそうな程に甘い吐息。

 

「んぱ、はっ、ん、ちゅ、あぁ……!」

「ンッ、ンンッ!?」

 

 馬乗りの状態で風真は上体を伏せ、俺に熱情的なキスを与えてくる。密着することで彼女の乳房の柔らかな感触が胸板から伝わり、溢れる欲情を抑えていた理性が弱まってゆくのが分かる。

 また同時に風真の身体の熱量や断続的な震えも俺に伝わってきた。おそらく今の彼女は急激に快感を引き起こされ、その情動のまま動いている。

 

「あ、ふ、んあっ……ぷはぁ」

 

 呼吸が苦しくなる程までキスを続け、ようやく風真は唇を離して身を起こした。既に意味を為さない程に解けたサラシからは彼女の白く豊かな乳房が覗き、その先端では形良い桜色の乳首が突起して先端で揺れている。

 先ほどの恥ずかしさとは異なる興奮で頬を赤く染め、焦点の合わない瞳で俺を見下ろす風真はそこでようやく言葉を発した。

 

「教育係殿……その、風真、理解(わか)るので、ござる」

「理解るって……な、何の話だ?」

「治し方でござる。んっ、風真の身体は今、どうしようもなく疼き、熱くなっています……それを癒すにはどうすれば良いのか、風真は知らない筈なのに、その答を、身体が教えてくれるので、ござっ! あ、んはっ!」

 

 俺の腰に風真の腰が擦り付けられている。否応なく勃起を強めた肉棒の感触が伝わったのか、風真は言葉の途中で大きく喘いだ。

 

「こ、このままでは風真、おかしくなるで、ござるぅ……教育係殿、後生ですから、ここで、風真の相手をっ……!」

「いや、そりゃ単に薬の影響で……う、おぉっ!?」

「なるほど、このようにして消すと……おぉ、何とも凄いでござるな。昔にお風呂で見た父上のものとは形も大きさも全然違いますし、こんなに、熱くなって……」

 

 こちらの言葉を待たずに風真は跨っていた俺のスラックスを下着ごと消失させ、続けて自身の腰回りの布地を消した。薄い金髪の陰毛に彩られた薄桃色の陰唇は控えめで、まだ誰の挿入も許していない孔は俺の位置からでも濡れているのが分かる。

 剥き出しになった俺の肉棒を風真は物珍しそうに眺めていたかと思えばそれに迷わず手を伸ばし、柔らかく握った。肉親以外のものは初見のようだが敏感な部分と言うのは分かるのだろう。その握り方は丁寧だ。

 

「この形であれば、おそらくは……ん、はぁっ……!」

 

 そう言うと風真は肉棒を扱き始めた。汗に濡れた手が竿を優しく、それでいてしっかりと快感を生むような加減で上下に動く。その手つきは──

 

「ぐ、くぅっ……ど、どうなってんだ、こりゃ!?」

「ああ、まだどんどん大きく、固くなってゆくでござる……やはり、思った通り……」

「思った通りって……ほ、本当にあんた、初めてかよ!?」

 

 ──素人どころか、「二次三次」の手淫に長けた嬢のそれに勝るとも劣らないものであった。

 混乱の中で尋ねる俺に、風真は肉棒を擦る手を止めずに言った。

 

「ほ、本当に初めてでござるっ……でも『どうすれば良いのか』が見えるというか、『こうすれば良いのかな』というのが自然と……あぁ、またビクッって……」

 

 今の風真に嘘を言うだけの理性は残っていない筈だ。だとするなら、彼女は本当に雌の本能だけで俺を悦ばせているという事か。

 格闘技や剣術の達人の世界には「見切り」という言葉がある。その道を究めた者は、初見の相手でもひと目でその癖や練度、また弱点などを見抜くという。風真の持つその「見切り」の眼がセックスにまで通用しているとするならば。

 

「おっ、おおっ!」

 

 だが、その思考は急に強まった快感によって遮られた。しこしこと擦る風真の動きが急に早まってきたのだ。もともと結構な昂りを覚えていた俺の身体は不意を突かれた手淫の変化に一気に射精まで持っていかれる。

 

「ぐ、あ、あああぁっ!」

「ンッ、あぁっ! 凄いでござる、こんな、びゅーって……!」

 

 まるで噴水のように膨らんだ亀頭から精液が真上に迸った。吐き出された精液はそのまま落下し、風真の綺麗な手を生臭く汚してゆく。

 

「はぁ、お。あぁ……」

「こんな沢山……殿方が達する時、このようになるのですか。ん、ちゅ……苦いでござるな、苦くて、生臭い……でも、素敵な味でござるっ……あふっ……」

 

 大きく息をつく俺に跨ったまま、風真は自らの手に纏わりつく白濁液を興味深そうに口に寄せてそれを舐め取った。少し眉をひそめるが、そのまま嚥下して恍惚の吐息を残す。

 

「次は、ここに……挿れるので、ござるな?」

「あ、ああ、だがまだっ、うおっ!?」

 

 射精したばかりだからちょっと待て、そう言う前に俺の肉棒は風真の手に包まれ再度の手淫の餌食となっていた。優しくも容赦ない勃起を促す動きに、忽ち肉棒は固さと大きさを取り戻してゆく。その一方で風真は空いた左手で自らの秘所を弄っていた。こちらはまだ自身の身体の加減が分からないのか、やや穏やかな動きだ。

 

「これなら……では風真、参りまっ……あぁんっ! は、挿いってくるで、ござるぅ!」

「くっ、は、くうぅっ!」

 

 挿入さえすればこちらのペースに持っていけるのでは、そんな俺の予測は竿全体を襲う快感によって吹き飛ばされた。日々鍛えられた身体によって作られた膣内は覚悟していた締め付けを更に上回る強さで、それでいて快感が痛みに変わるギリギリの所を保っている。

 

「んあっ、は、ひっ! いいっ、教育係殿の、太い、のっ! 風真のお腹、突き上げてるで、ござ、るぅっ!」

「(こ、こりゃ、ヤバいか!?)」 

 

 『淫乱な処女』。本来ならばそれは妄想の中にしか存在しない代物だ。

 だが俺の上で腰を振る風真はまさしくそれで、処女としての無知と無垢さを持ちながら熟練の嬢にも劣らぬ淫らさを見せ、そして快感を俺に与えてきていた。

 ここに来て俺は理解した。薬のブーストがあったとはいえ風真、彼女は間違いなく「第二の刺客」だ。

 そんな俺の戦慄を気にする事もなく、艶やかな金髪を振り乱して風真は更に悶える。

 

「あひ、い、いいっ! 風真、かざまっ、おか、おかしく、なるで、ござっ! い、いいっ、いいっ!」

「か、は、あ、あああっ!」

 

 ゆさゆさと激しく揺れる白い乳房、汗に濡れた瑞々しい肌、初めてのセックスだというのに淫蕩な光を宿した瞳。そして精液をねだる締め付け。

 それら全てに圧倒され、俺は彼女の最奥に精液を迸らせた。

 

 

 

──二時間後。

 

 

 

「……それは、大変じゃったのう」

「油断してました。勝ち負けで言うなら、俺の負けです」

 

 ここまでの話を聞き終え、盃を片手に労いの言葉をかけてくれる尊に俺はぐったりとソファに身を任せつつ答えた。

 

『本日は誠にありがとうございました、教育係殿! 二度目の研修は何時でござるか!?』

 

 研修を終えて電子ドラッグの効果もすんなり消えた風真は、まるで遊園地に初めて来た子供が次の来場を楽しみにするような態度で俺に言った。ド素人の彼女が楽しめたという意味では研修としては成功とも言えるが、男としては完敗だ。とりあえず二度目の研修は翌週に設定したが、それまでに俺も反撃の手段を考えなくては。

 またそれに加えてもう一つ。今回の件で気にかかる事があった。

 

「何じゃ、難しい顔をしとるのう?」

「いや、その……ホロラバーズにしては、偉く()()()()()方法だなと」

 

 ホロラバーズの支配人「そら」。彼女は確かに敵とみた者には容赦が無いが、それでも電子ドラッグを使ってまで刺客を送り込んで来るとは思えない。独立チームとは言っていたが、本当にそらは彼女らの動きを把握してないのではないだろうか。だとしたら──

 

「尊様、今回のモニターの結果ですが! おお、教育係殿! ご機嫌如何ですかな!?」

 

 その時、壁の「laboratory」と書かれたドアがおもむろに開き、聞き覚えのある大声と共に白衣にボサボサ青髪の青年が大股で入ってきた。「二次三次」電子ドラッグ対策研究室の室長である「レオス」だ。俺は力なく手を挙げる。

 

「……どうも、レオスさん。まあまあって所さ」

「それは結構! こちらは絶好調です! 何しろ優秀な客員研究員がホロラバーズから来てくださいまして!」

「客員研究員?」

 

 向こうの店でもドラッグ研究を行っているという事か。

 そんな事を俺が思っていると、長身のレオスの陰からピンク色の髪がちらりと覗いた。俺の気付きを待っていたようにレオスは不敵に笑い、サッと一歩横に退く。

 

「ご紹介しましょう! こちら、ホロラバーズにおける電子ドラッグ研究の第一人者『こより』殿です!」

「……()()()?」

 

 風真が言っていたのと同じ名前に警戒心がむくりと起き上がる。

 そんな俺の視線を受け、レオスの陰に隠れていたピンク色の髪にピンク色のネクタイ、ピンク色の獣耳に白衣。桃色と白色だけで構成された少女はにこやかに俺に笑いかけた。

 

「こんこよ~! ホロラバーズ電子ドラッグ研究室主任研究員『こより』です。教育係さん、よろしく~」

「……ああ、よろしくだ」

 

 二人目の攻略も済んでないのに、おそらくは三人目の刺客。

 内心で頭を抱えつつ、俺はせめてもの強がりの笑みを浮かべた。

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