※この作品はR-18です。

バーチャル風俗「電燈二次三次」   作:ターキーX

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第五十二話「LoversX・こより、もしくはタッグマッチ」(前編)

 「二次三次」電子ドラッグ対策研究室。

 まだ法制化はされていないがバーチャル風俗界隈で近年問題視されている電子ドラッグについて研究、及び客の持ち込み等の対策を考案する部署だ。室長のレオス以下、かつて俺と騒動になった冬雪や他にはアンジュ等の何人かでチームが構成されている。

 

「えーっと、これに……こう。ん~、ちょっと配合のバランスが悪いかなあ?」

 

 その様々な実験器具や薬品、静かに明滅する大型コンピュータ等が並ぶひんやりとした室内。

 

「これだとA薬の効果が強くなり過ぎるから中和剤をちょっと入れて……うん、この位なら」

 

 そう呟き、頭の左右に生えている桃色の獣耳をぴこぴこと揺らしながら「こより」──Vtuber・博衣(はくい)こよりに酷似した白衣姿の彼女は、試験管のケミカルな色合いの薬品の具合を灯りに翳して確認する。

 

()()()()、そっちの方はどう?」

「……ぼちぼち沸きそうだ」

「沸騰はさせないでね? 泡が増えてきたらアルコールランプを消して」

 

 そして彼女が実験している横で、やはり白衣を着せられていた俺はセラミック付き金網の上で熱せられているビーカーの中の液体の様子を確かめ、言われたタイミングで火を消す。

 

「これはどうすれば?」

「そのままでいーよ。冷えれば結晶化してゆくから」

 

 俺の問いにこよりはそう答え、手にしていた試験管の薬品を湯気を立てるビーカーに注ぐ。まるで魔女の沸かす釜のように怪しげな紫色の煙がぽんと立ち昇ったと思えば顔を直撃し、独特な刺激臭が鼻をつく。

 

「うおっ!? ケホッ、ケホッ……おい、煙が出るなら先に言ってくれ」

「ごめんごめん。でも、ありがとう助手くん。これってタイミングの難しい実験だから一人じゃ手が足りなくって」

「いや、それはいいけどよ……そろそろ、話をさせてくれねえか?」

 

 礼を言うこよりに対し、場の流れを取り戻そうと真顔で彼女に言った。

 

「大丈夫だよ? こよは何でもお答えします」

 

 しかしそんな俺の態度に気圧される風もなく、こよりはひらりと丈長の白衣を翻した。

 

 

 

 ──俺がこうして研究室に居るのは、当然ながら彼女の実験を手伝うためではない。彼女を含んだ五人のホロラバーズからの出向嬢「LoversX」についての情報と、先日俺が相手をした二番手「風真」の件についてこよりから聞きたい事があったからだ。

 ところが、俺が彼女の所在を確認して部屋に入った時に出迎えたのは焦り混じりの悲鳴だった。

 

「どうしよ、どうしよ! 助手くーん! 助手くーん!」

 

 何事かと思って小走りで奥まで行ってみれば、そこには沸騰した液体を前にカラフルな煙を放つフラスコを両手に持ったまま右往左往するこよりの姿があった。

 

「ああ、丁度良かった! 助手くん、そこの戸棚の青い液体を取って、すぐにこれに入れて!」

 

 俺を確認するなり彼女は俺に片方のフラスコを突き出してきた。反射的にそれを受け取ってしまった俺は言われるままに棚の薬をそれに注ぐ。フラスコを揺らす程に内部で暴れていた液体はそれでようやく治まり、噴き出ていた煙も減少してゆく。

 

「……よしっ! ふぅ、間に合ったー! 危ない危ない。危うくこの部屋を吹き飛ばすところだったよー」

 

 恐ろしい事を軽く言いつつ、もう一方の薬品の処理を終えたこよりはそう言うと白衣の袖で汗を拭い、嬉しそうに俺に言った。

 

「本当にありがとう助手くん! ちょっと同時進行で実験を進めてたんだけど悪いタイミングが重なっちゃって」

「あ、ああ……」

 

 『こよ』というのは彼女の一人称だろうか。出鼻を挫かれた格好になったが、俺は彼女に用件を言おうとした。

 

「えっと、こよりさん? ちょっとアンタに聞きた……」

「っとと、助手くん! その薬は揮発性が高いからすぐに棚に戻して!」

「え!? あ、ああ!」

 

 しかし俺の言葉はそれ以上の勢いで放たれたこよりの言葉に塞がれ、俺は言われるがままに栓をして棚に戻す。バーチャルの世界で揮発性というのも奇妙な話だが、ウィルスやワームめいて他のプログラムに拡散してゆくのだろうか。

 

「おっけー助手くん。ところで……ちょっと感謝ついでに、もう少し協力してくれないかな?」

「……分かったよ」

 

 何ともペースを握られてしまった。

 仕方ない、ここで流れを切って無理に問い詰めれば彼女を非協力的にしてしまうかもしれない。俺は少し考えてから頷いた。

 

「助かるよー。それじゃあ、今度はそっちの薬品を……あ、その前にそこのロッカーから白衣を出して」

「白衣?」

「ファイアウォールを可視化したもの。アバターってデータの塊みたいなものだから、そのまま薬を被ったら危険だよ?」

 

 そう言ってこよりは俺を促す。何とも着慣れない感じだが、俺は指示通りにロッカーの中の白衣に袖を通した。

 

 

 

 ──そんな訳で彼女の実験に付き合っていた訳だが、ようやく話が出来るタイミングを作れた。どこかふわふわした所作で俺の正面に回り込んだこよりに尋ねる。

 

「とりあえず確認からなんだが……あんたも例の五人衆の一人って事でいいんだよな?」

「そうだよ。『LoversX五人衆』三番手・こより……とでも名乗れば、それっぽいかな? ふふっ」

 

 こよりは頷き、神妙そうな顔でそう言ったかと思えばコロコロと笑った。何とも掴みどころの無いリアクションだ。

 とはいえここからが本題だ。俺は彼女に重ねて問いかける。

 

「二人目の『風真』に電子ドラッグを渡したのもアンタか?」

「ちょっとちょっと助手くん、()()()()()()なんて人聞きの悪い言い方はしないで貰えるかな? アレはそんな脱法品じゃなくって()()()()調整した興奮剤だよ。その証拠に風真ちゃん、後遺症も何も無かったでしょ?」

 

 どうやら市井に出回る電子ドラッグと同列扱いされるのは不本意だったようだ。「ちゃんと」の所を強調しつつ、抗議するように頭の獣耳を小刻みに動かしてこよりは答える。

 

「まだ法的なガイドラインも制定されてねえんだ。幾ら後遺症が無いからって、本人に効果を教えずに渡すモンじゃないだろ」

「んー、まあ、そこを突かれるとこよも痛いかなあ。だって先に説明しちゃうと、風真ちゃんもどんなお店か分かっちゃうし」

 

 やはり意図的に風真には事前に何も教えていなかったか。その理由は俺を試す意味だったのか、あるいは。

 

「ひょっとしてなんだが……『アメリア』が持ってた電子コカインも?」

「あの呼び方はアメリアちゃんが勝手に付けてただけなんだけど……うん、アレもこよ製」

 

 やたらケミカルな色合いの、少なくとも安全には見えなかった注射器の中の液体を思い出す。

 俺が思っている以上に眼前のこの少女は危険なのではなかろうか。そんな事を思っていると、今度はこよりの方から質問が投げかけられた。

 

「助手くんはああいうのは嫌いな人?」

「ああいうのって、電子ドラ……薬を使うのを、か? まあ、賛成は出来ねえな」

 

 確かに俺もノエルの時のように少年化modを使いはするが、あれはガワのアバターに影響を与えるもので精神影響は少ない。脳内物質の分泌を過剰促進させる電子ドラッグとはまた別物だ。

 

「もう、カッコいい見た目の割に古いなあ助手くんは。確かに人体に悪影響を及ぼす電子ドラッグは問題視されてるけど、同時に()()()の有用性を探る研究開発も進んでいて、実際にメンタルヘルスの分野で使われてたりもするんだよ?」

 

 まるで出来の悪い生徒に教えるように顔を前で人差し指を揺らしつつこよりは言った。

 

「バーチャルによるリモート治療の発展によって、例えば外出が難しい人や直接には他人と会えない人、そんな人が在宅しながら治療を受けられるようになった。彼ら、彼女らの中には脳の『楽しい』と感じる物質の分泌が不十分な人も居たりするんだけど、それらを促進させる事も出来る」

「………」

 

 何とも社会派な話になってきた。俺は無言でこよりの話を続けて聞く。

 

「どうしてもこういった風俗(おしごと)だと悪い面ばっかり見る事が多くなると思うけど、それを必要としてる人もいる。それでも助手くんは否定する?」

「……使ってる連中の全員に全員がアンタみたいな意識を持ってるなら問題はねえよ、だが実際は違う。その瞬間だけ最高に気持ちよくなれれば、自分だけじゃなく相手の脳もぶっ壊れて構わない。そんな連中が少なからず居るし、弱いと言ってもあんたの薬がゲートウェイドラッグになる危険性はある」

 

 自然回復を待てる外傷に対し、一度損傷した脳の回復は簡単ではない。こよりがそういったドラッグに対しての危険性を把握した上で他の嬢に渡しているのは事実だろうが、それが周囲に正しく広まっているかは別問題だ。

 

「う~ん、なかなか平行線だねー」

 

 困ったようにこよりは小首を傾げ、顔を横に向けたまま俺に流し目を送る。

 

「……それじゃあ助手くん、助手くんはこよをどうしたいのかな? この店から追い出したい?」

「ンな事はしねえよ。俺はあくまで雇われの教育係でそんな権限は無いし、仮にここでアンタを叩きだしても迷惑かかんのはレオスや支配人達だ」

 

 これは本心だ。そもそも俺は彼女と喧嘩するつもりで来た訳ではない。こよりの流し目を真っすぐ受け止めて俺は言った。

 

「だから……これはあくまで俺個人からの()()()だ。アンタが研究するのを止めはしない。ただ、この店の中では誰かに薬を渡したりするのは止めてくれないか?」

「お願い、かぁ……うぅん、そう言われるとこよも揺れるなぁ」

 

 少しは響いてくれたのだろうか。横目だった彼女は正面に向き直り、俺と視線を交わした。ピンクのネクタイと豊かな胸がふわりと揺れる。

 

「それじゃあ助手くん、ここは風俗店らしく()()()の方で勝負ってのはどう?」

「ベッドの上で、って事か?」

「そう! ほら、風真ちゃんの二度目の研修、決まってるでしょ? そこにこよも参加するから、その研修でこよと風真ちゃん、二人とも完全にイカせられたら助手くんの勝ち」

「俺が負けた場合……二人をイカせる前にダウンした場合は?」

「安心して、別に助手くんに店を辞めろとかは言わないよ? こよは助手くんのお願いを断る。それだけ」

 

 こよりは柔らかい表情のまま言うが、実際のところは「それだけ」に色々と付いてくる事になるのは理解できた。彼女らLoversXの目的はこの店への出向だけでなく教育係の俺の実力を見定める事であり、あるいはそれに俺を屈服させるのも含まれているのかもしれない。

 しかしこれは──なかなかに厳しい勝負になる。過去に3Pやそれ以上の人数でのプレイをした経験こそあれその時は相手が協力的だったり、あるいは椎名と笹木の時のように一方が俺側に回ってフォローしてくれていた。果たしてあの、素人ながら恵まれたフィジカルと素質を持つ風真、そしてこの未知数のこよりの二人を俺だけで相手し切れるだろうか。

 そんな俺の感情をこよりはお見通しなのだろう。ぴんと耳と指を立て、俺に提案を投げかけた。

 

「もちろん2対1なんてアンフェアな事は言わないよ? 助手くんの方も必要ならパートナーを連れてきて良し。どうかな?」

「……ありがたいね」

 

 俺はそう言って頷いた。承諾の合図だ。

 何やら妙な展開になってきたが、こうなれば俺も腹を括るしかない。次の研修の日までに──

 

「おっ……?」

 

 その瞬間、視界がぐらりと揺れた。

 

「え? な、何だ……こりゃ?」

 

 急に平衡感覚が薄れ、足元が覚束なくなってきた。危うく床に倒れそうになり、近くにあった背もたれ付きの椅子にどうにか腰を落とす。

 

「おやおや助手くん、大丈夫?」

 

 そんな俺に歩み寄るこよりは──心配でなく、微笑みを浮かべている。

 疑う余地もない。俺は力なく彼女を見上げて精一杯の声で言った。

 

「お、おいっ……畜生、いつの間に……!?」

「さっき助手くんが吸った紫の煙、あったでしょ? アレ」

 

 どうやら俺は初手から彼女の術中に嵌められていたらしい。助手と称して作業に巻き込むのも、その流れで俺に薬を吸引させるのも計算内だったという事か。

 焦りつつも自分の身体の状態を確かめる。まるで痺れ薬でも使われたように全身が動かず、それでいて意識は明瞭だ。ログアウトで逃げるか? いや、アバターがドラッグの影響を受けてる状態で強引に抜ければどんな影響が出るか分からない。

 そんな俺の動揺を煽るかのようにこよりはゆっくりと机を回り込み、眼前まで歩み寄ってきた。痺れる舌を何とか動かして彼女に問いかける。

 

「何をする、つもり、だ?」

「ふふっ、安心して。幾らこよがコヨーテだからって取って食ったりはしないよ? ちょっと()()()()()()()()だから」

「ぎゃ……お、おい! 勝負するんじゃ、なかったのか、よっ!?」

「勿論、勝負は勝負でやるよ? ただまあ、それはそれとして……噂に聞く『二次三次』の教育係のおちんちん、どんなモノか味見したくなって」

 

 何とも軽い理由で薬を盛ってくれたものだ。

 

「さて、それじゃあちょっと助手くんにもこよの薬の凄さと安全性を分かって貰おうかな」

 

 そう言うとこよりは大きく白衣を広げた。見てみればその内側には無数の注射器がずらりと並んでいる。そしてその中には例外なくカラフルな液体が詰まっていた。彼女はそれらを無造作に掴み、まるでコヨーテが爪を剥き出しにするかのように指の股に左右三本ずつ挟んで取り出した。

 

「くっ……!」

 

 何とか身を捩って逃れようとするが、まだ身体の自由が戻らない。

 

「じっとしないと針が折れるよ? ちょっとチクッとするだけだから……よっ」

「ぐううっ……!?」

 

 慣れた手つきでこよりは右手の三本を俺の首筋に、左手の三本を()()()打ち込んだ。 

 

「お、おっ、おおぉっ!?」

「ンンッ……!」

 

 苦悶の声と艶混じりの喘ぎが混じる。

 まるで火を体内に注がれたかのような熱が全身を巡る。そしてその熱は放出されないまま内に籠り、やがて下半身へと集中してゆく。

 

「ふふっ、効果覿面って感じだね。こよも……ん、はぁっ……」

 

 頬を紅潮させつつこよりは俺の反応に満足そうに言うと白衣を脱ぎ、床に落とした。

 丈の長い白衣やピンクのネクタイに隠れていたから今まで気付かなかったが、その内側は非常に煽情的な服装だった。肉付きよい太腿を網タイツで包み、二本の深いスリットの入ったミニスカートは脚の付け根近くまで剥き出しになっている。上のワイシャツも丈の短い設計になっており臍周りは丸出しだ。

 その姿と彼女から漂う甘い匂いに俺の身体は如実な反応を見せていた。スラックスの中で肉棒は痛い程に勃起し、傍から見ても分かる程に布地を押し上げている。

 

「おい、せめて何を打ったかくらいは、教えてくれる……よな」

「【感度強化】と【部分的な感覚遮断】、それと【射精量増強】……他の感覚が鈍ってる分、おちんちんだけ別の生き物みたいに敏感になってるでしょ? で、こよが自分に打ったのは【感度強化】と【体温上昇】、それと……【排卵促進】」

「は、排卵?」

 

 俺は思わず聞き返した。バーチャル風俗では無縁の言葉のはずだ。こよりはほぼ俺に密着する距離まで迫り耳元に口を寄せて言った。

 

「『想像妊娠』って知ってるかな? 妊娠したっていう思い込みが身体に影響を及ぼすんだけど、それの応用……『自分は排卵日だ』と錯覚させる事で現実の肉体にも、んっ、作用させるの……不妊治療への利用も、検討されててっ……!」

 

 ビクンとこよりの身体が震えた。俺の身体に手を回し、抱き着きながら囁く。

 

「だから……今なら本当に妊娠しちゃうかも、助手くんの赤ちゃん」

「……ッ!」

 

 そんな訳はない。そんな訳はないのだ。頭の奥では理解しているがその言葉だけで俺の肉棒はどくんと跳ね、危うく射精しかけた。「雌と交配して繁殖したい」という雄の本能が否応なく俺の中から欲情を湧き上がらせてくる。

 

「ねえ……助手くんもおちんちん、苦しいよね? こよに任せて、楽になろうよ」

「う、くうっ……!」

 

 スラックスの膨らみを撫で回すこよりの手のひら。ここで「ふざけるな」と拒絶出来れば恰好良いのだろうが、俺の意思とは無関係に肉棒は解放と射精を求めて激しく脈動している。

 俺が明確な拒否を示さないのを黙認と受け取ったのか、こよりは一旦離れて椅子に座る俺の前に屈みこむと白衣の前を開けてベルトを外し、スラックスを下着ごと脱がせた。

 

「……うわぁ、凄いね助手くん! こよ、こんな立派なの初めて見たかも」

 

 弾けるように現れて眼前に屹立する肉棒の滾りにこよりが驚きの声を上げる。

 彼女の薬の影響だろうか? 実際、俺自身が少し驚くほどに肉棒は普段よりも一回り大きく怒張して血管を浮かべ脈動している。

 

「ンッ……見てるだけで濡れてきちゃった。それじゃ、いただきまーす……あぁ、むっ」

「うあ、あ、熱っ!?」

 

 桃色の髪をかき上げ、限界まで口を広げてこよりは肉棒を咥えこむ。言っていた通り彼女の口腔内は熱く滾る肉棒をしてなお腰が跳ねる程に熱く、そして潤っていた。口の端から唾液を零しつつ、こよりは更に深くまで肉棒を呑み込んでゆく。

 

「んぶ、ンンッ、ふぅっ……」

 

 股間に吹きかけられる彼女の鼻息がこそばゆい。

 

「ん、ちゅ、じゅるっ……」

「うあ、あ、あぁ……!」

 

 やがて喉奥に亀頭が触れる。こよりは少し眉を寄せたがそのまま緩やかに頭を前後させつつ竿に舌を這わせ始めた。口腔内の熱さに加えて炎の蛇めいた舌が先走りを舐め取り、鈴口をつつき、深く吞み込んだ際には竿を愛おしそうに舐め回す。その口技は確かな経験を感じさせるものだ。

 

「ちゅっ、んはっ、っぱ……ぷはぁ、ほんと素敵なおちんちん、この店の娘が羨ましいよ……ちゅ、ちゅうぅ」

 

 時折、上目遣いに俺の反応を伺いつつこよりは責めを続ける。息継ぎをするように口を離すが、今度はカリの裏側から竿の根元にかけて幾度もキスを繰り返す。もともと限界まで勃起していたこともあり、腰の奥から次第に射精感が強まってきた。

 

「く、ううっ! 出るっ……!」

「ちゅっ……おっとと、ダメだよ助手くん?」

 

 堪らず射精を訴えた俺に、こよりはキスを中断すると立ち上がった。自らの股間に手を伸ばし、ショーツを消失させる。

 

「男のコの精液は、おまんこにズボズボってハメて……膣内(なか)で思いきり出すためにあるんだよ? だから、一番濃いのをこよに頂戴」

 

 そう言うとこよりは椅子に座ったままの俺に跨り、孔と亀頭の位置を合わせるとそのまま一気に腰を落とした。

 

「かっ……ヤベ、焼けっ……!」

「んあぁぁっ! 助手くんのおちん、ちんっ! こよの中、広げ、てぇっ!」

 

 本当に溶けてしまうのではないかと錯覚する程に熱いこよりの膣内に突然包まれ、俺は情けなくも悲鳴めいた声をあげてしまう。一方のこよりは肉棒が与えてくれる快感を全力で味わうかのように大きく背を反らし悶えた。

 

「ンッ……ふふ、どう? 助手くん、凄く今いい顔してるっ……イキそう、なんだよね? もっと気持ちよく、なろっ? 我慢だよ、がまんっ……ああんっ!」

「うぐっ!」

 

 俺の顔に手を添え、潤んだ瞳で見下ろしつつこよりは腰を使い始めた。薬の効果もあり、既にフェラチオの時点で相当に仕上がっていたのだろう。十分に濡れそぼったそこはコーラ缶並みにまで膨れた肉棒をずっぽりと呑み込み、同時に熱い襞で締め付けてくる。時折子宮の入り口に亀頭が触れるが、言っていた排卵促進の効果のせいだろうか。熱く潤ったそこに触れると痺れるような快感が俺にも伝わってきた。

 

「ふぁんあっあっああっ! いっ、いいよっ! 助手くんのおちんちんっ、いい、よぉっ!」

「おっおおっ!? お、おい、いい、加減にっ……!」

 

 流石にこのまま先にイってしまっては余りに情けない。せめて一矢報いようと俺は歯を食いしばって懸命に射精を堪える。彼女が腰を使う度に濡れたピンクの髪が艶やかに跳ね、眼前では汗を吸ったシャツ越しに豊かな乳房が揺れる。ノーブラなのだろう。突起した乳首まではっきりと分かる。

 

「んっあぁっ! イク、こよ、そろそろ、イク、かもっ!」

「ぐうっ! こっちも、限界、だっ!」

「一緒に、いっしょに、イこ!? ふあぁっ! じょしゅ、くんっ! 出してっ! こよの、ことっ! 孕ませ、てっ!」

「お、あ、あああぁっ!」

 

 こよりの懇願に我慢が限界に達する。彼女が腰を落とし、一番奥まで繋がったところで俺は射精感を開放した。

 

「あっ、あ、んあぁぁっ! あふ、すご、凄いっ! 助手くんの、ドプドプ、出てるぅっ……!」

「あぐっ……な、なんだ、こりゃ……止まら、ねえっ……!」

「あぁんっ! しゃ、射精量も、増やしてるから、全然、出るよっ……凄い、熱いぃ……!」

 

 精液の奔流は治まる気配もなくこよりの膣内を満たし、結合部から溢れたそれはボタボタと床に精液溜まりを作る程まで出てようやく止まった。眩暈がするような快感と脱力感が同時に襲ってくる。

 

「んっ……うわ、お腹、タプタプだぁ……本当に妊娠しちゃったみたい……」

 

 そこでようやくこよりは腰を上げ、秘所から精液を零したまま立ち上がった。まだ身体の自由が戻らない俺を笑顔で見下ろして彼女は言った。

 

「ご馳走様、助手くん、勝負の日が楽しみだよ」

「ハアッ、ハアッ……そりゃこっちのセリフだ。この借りは、返す」

 

 射精したばかりで何ともな格好だが、俺は精一杯の反応を返す。

 俺の言葉にこよりは更に嬉しそうに微笑むと身を翻した。

 

「……体の自由はあと数分もすれば解けるよ。それまではちょっと休んでおいて。こよは先に行くね」

「そりゃ……どうも」

 

 一応の気遣いなのだろうか。そう言い残すと彼女はノイズと共にその場から姿を消した。精液と汗の臭いの漂う研究室内に俺だけが残される。

 このタイミングで誰か来たらどう弁明すれば良いのだろうか。そんな不安もあったが彼女の言葉通りに身体の痺れは暫くすると治まり、俺は多少ふらつきつつも立ち上がった。

 

「……ふぅ、えらい目に遭った」

「全くだな青年。よもやあの『こより』嬢があそこまでのやり手だったとは」

「ええ、その通りです……って、おおっ!?」

 

 一瞬まともに受け答えをしてしまったが突然に後ろから投げかけられたエニーカラーの声に俺は思わず飛び退った。いつも通りのマスクマンレスラー姿の彼は腕を組み、白い歯を見せている。

 嫌な予感を覚えて俺はおずおずと尋ねた。

 

「あ、あんた何時から居たんだ?」

「安心しろ青年! このエニーカラー、他人が致しているのを覗く趣味はない。話自体は青年とこより嬢が電子ドラッグについて言い合っている辺りから聞いていたが、事が始まりそうになったので一旦戻り、彼女がログアウトしたのを確認して来たまでだ」

「信じていいんだよな?」

「ふっ、当たり前だ……それより青年、あのこより嬢に加えて例の風真嬢まで同時に相手するとの事だが……流石に一人では荷が重いのではないか?」

 

 特に意味は無いであろう不敵な笑みを浮かべたエニーカラーはふと真面目な表情に戻り、俺に尋ねた。

 

「それは……俺もそう思います」

「誰か手を借りるか? 何なら俺が手伝ってもいいが」

 

 エニーカラー、確かに彼ならば頼りにはなるだろうが──この勝負の難しいところは「最終的に『俺』がこより、いろはを屈服させねばならない」という点だ。

 その点を含めて俺は考え、彼に言った。

 

「それなんですが、連絡を取って欲しい人が……」

「……?」

 

 

 ──数日後。

 

 

「え? え? 一緒に……?」

「風真ちゃんの筋がいいから、こよの研修も兼ねて一足飛びで多人数プレイの研修をしようって事になったの。こよも驚いたけど、よろしくね」 

「こちらこそよろしくでござる、こより殿!」

 

 やはり事前に説明を受けていなかったのか今日の研修内容を聞いて驚く風真と、逆に「今日になって初めて知った」風を装うこより。

 事務所の中、何とも対照的な二人を前に俺は向き合っていた。ふと何かに気付いたのか風真が口を開く。

 

「はて、教育係殿? 我々は二人で、其方は一人でござるか?」

「いや、こっちも助っ人を呼んでる。そろそろ来る筈なんだが……おっと」

 

 入り口のドア付近の空間にノイズが走り、一人の人物が姿を現す。その人物にデスクで作業をしていたジョーは懐かしそうに語りかけた。

 

「……お久しぶり、どう、調子は?」

「悪くないね。ジョーさんも元気そうで」

 

 そして歩みを進め、俺たちの所へ。

 申し訳なさ半分、感謝半分で俺は言った。

 

「悪いな、()()()()()()()あんたを引っ張り出して」

 

 黄色のメッシュの入った美しい銀髪が揺れる。

 

「いいよ。元常連さんの頼みだからね」

 

 細身の身体をフォーマルスーツに包んだ元二次三次フロアレディ「メリッサ」は、俺の言葉にそう微笑み返した。

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