「オーライ、オーライ……はーいストップー!」
建築現場の監督めいた黄色いヘルメットを被ったジョーがコンテナを誘導する。服装自体はいつものスーツのままなのが何ともシュールだ。
「おバンですー。確認お願いします」
「砂、塩、水、木材、羊毛、ダイヤ、塗料各種……ふむ、予定通りの納品量じゃの」
やけに体格の良い作業員からバインダーを受け取った、やはりヘルメット姿の尊がコンテナ内の資材を確認して納品書にサインを書き込む。
「すまんのう、ひょっとするとあと少し必要になるかもしれん」
「何、構いませんよ。まだまだ唸るくらい在庫はありますから、必要なら何時でも言ってください」
鍔付き帽子を目深に被ったその作業員はそう言って微笑み、ルームを後にする。
「これが『ルームの素材』って奴ですか。何と言うか……割とゲーム的なんですね」
「実際はもうちょっと複雑化されたデータなんですが、分かりやすいように加工されてるんですよ」
積まれたキューブ状の物体のひとつを手に取り眺める俺にジョーが言う。
俺たちが今いるのは白いブロックに包まれた広大な空間──何も設定されていない状態の、素のルームだ。「二次三次」のサーバー内の空き容量に設けられた仕切りの中と思ってくれればいい。
「で、ここに何を作るんですか?」
「お兄さんが教えてくれた、ホロラバーズの海水浴場があったでしょ? あれがいいヒントになりましてね、ウチでも夏らしい事をしてみようかと」
俺の質問に、キューブのひとつを指先でクルクルと回しながら答えるジョー。
「夏らしい事……って、じゃあ二次三次でも海水浴場を?」
「それでは丸パクリになってしまうからのう。別の角度から攻めるつもりじゃ」
コンテナの上にぴょんと飛び乗った尊が言う。
「別の角度……ですか」
「総合的な技術力では
愉快そうに笑う尊。果たして何が出来上がるのやら。
「……なるほどね」
そんな事を思いつつ納品を手伝い終えた数日後、俺は事務所の大きなポスターを前に立っていた。
【納涼「二次三次」夏祭り!】
筆文字で大きく書かれたそんなタイトルの下には浴衣姿の男女や祭り提灯、神輿などの祭の定番のイラストが描かれている。更にその下にはイベント開催期間。通常オープンの更に前にプレオープンも行うようだ。
「ウチは人数の多い賑やかさが売りですからね。海やプールよりかはこっちの方がウケるんじゃないかと。合わせて、女の子にはみんな浴衣姿のアバターを予定してます」
「いや、実際良いと思いますよ。なかなかリアルの祭りには出かけ辛いご時世ですし」
ポスターを眺める俺にジョーが声をかける。
「このプレオープンってのは何です?」
「内々のお披露目って奴です。スタッフの皆やスポンサーさん等の上得意の方々、あとまあ、ウチの
「分かりました。調整してみます」
日付は平日のため日中は難しそうだが、夜なら何とか来れそうだ。そう思い俺はジョーに答えた。
──まあ、そういう日に限って自分と関係ない筈の所のトラブルの皺寄せが来て残業になったりするものなのだが。
「あー……疲れたー」
予定外の仕事を何とか片づけて日頃より大幅に遅い時間に帰宅した俺は、ぐったりとチェアに身を預けた。まあトラブル自体は丸く収まってくれたのが幸いか。
「うわ、もうこんな時間かよ」
時計を見て思わず声を漏らす。例の祭りのプレオープン日とはいえ、この時間までやっているだろうか。体の疲れは残っているが、一般公開前のルームにはやはり興味がある。
「よい……しょ!」
俺は休みたがる身体を叱咤し、冷蔵庫から取り出した精力剤を一本飲んでログインの準備に移る。果たしてセックスの機会があるかは分からないが、スーツに加えて習慣として股間パーツも装着してからチェアに戻る。
「ログイン。『電燈二次三次』、特別招待ルームへ直通させてくれ」
視界に広がるワイヤーフレームの世界が現実味を帯び始め、光を放つ。その光が強まり──
「……おお」
──再び視界が戻った時、俺は
気が付けば俺自身も普段のシャツにスラックスでない、青の浴衣に草履履きの姿へと変わっている。だが──
「ああ、やっぱちょっと遅かったか?」
神社に続く道の左右に設置された数々の屋台は既に明りが消されており、石畳を歩く人の姿もまばらだ。どうやら既に片づけの段階に入っているらしい。
このまま帰るか少しは覗いてからにするか。どうしたものかと俺が思案していると、ふと背後から声が聞こえた。
「あちゃ……もう終わっちゃったかな」
「ん?」
振り返ってみると、そこには一人の浴衣姿の少女が立っていた。見知った顔ではない──はずだ。
身長は160㎝に届くか届かないか。肩口で揃えられた紺色の髪は白と水色で彩られた浴衣と似合っており、全体的に落ち着いた印象を与える。年のほどは10代後半にも見えるが、その印象が正確な年齢を測らせない。
「あれ……?」
そこで向こうも俺に気付いたようだった。スッと歩み寄ってくると、暗がりの中で俺の顔を確かめるように顔を近づけてくる。
「ん~……」
「な、何です?」
「あ、ごめんね。話に聞いていた人と同じか不安だったから」
俺が尋ねると、そこで彼女は初めて自分が顔を近づけ過ぎた事に気付いたようだった。少し離れ、頭を下げる。
「お兄さん、研修担当の人……だよね、このお店の」
「え? あ、ああ。その、君は?」
「私? んー……」
聞き返された少女は形良い顎に指をあて、少し考えてから言った。
「この店の関係者……って言えばいいかな? ほら、そうでないと今日のプレオープンには来られないでしょ?」
「なんだそりゃ?」
何とも雑な身元の隠し方だ。
まあ、確かにここのルームに来るにはログイン時のセキュリティを通過して許可を得る必要がある。ここに居るという事は、少なくとも「ホワイトハッカー」は問題ない人物と判断したということか。
「私の事は『凛』か『しずりん』とでも呼んでくれればいいよ。私もお兄さんの事は『お兄さん』って呼ぶから」
「……分かったよ、『凛』さん」
どうやら「ここで別れてさようなら」で済ますつもりは無いようだ。相好を崩し、俺は彼女に尋ねた。
「その感じだと、あんたも今来たのか?」
「うん、ちょっと配し……じゃなくって、前の用事が思ってたより長引いて」
「その辺りも俺と同じか。どうする、もう祭りのメインは終わったっぽいぜ?」
俺が境内の様子を指し示すと、凛はこちらに目線を向けて言った。
「そうみたいだけど……ちょっと、行ってみない?」
「いいのか? 屋台とかも終わってそうだけど」
「祭りの後の空気って割と好きなので。お兄さんが良かったらだけど」
この流れで「いや、遠慮しておく」は付き合いが悪すぎる。俺は頷いた。
「そうだな……行くか」
「あ、お兄さん、ダメだよ!」
そう言って俺は鳥居へと足を踏み出した。そこに慌て気味の凛の声。
「え?」
「鳥居は神様の通り道なんだから、入る時は頭を下げて、真ん中を通らずに右側をくぐるの。逆に出る時は左ね」
「そんなのがあるのか?」
「神社の礼儀作法。リアルの方でうっかりやっちゃうと、お爺さんお婆さんに怒られるよ? まあ、ここの神様なら許してくれるかもだけど」
澄まし顔で俺に語る凛。年上としてなかなか恥ずかしい所を見せてしまったが、ここは素直に彼女の言う通りにする。頭を下げて、それから右側を歩いて境内へ。同様に凛も続く。
「へぇ……」
「ふふっ、なかなか再現度高いね」
既に多くの屋台が明りを落としてはいたが、左右にならぶそれらは「定番」と呼ぶべきラインナップだった。
たこ焼き、イカ焼き、お好み焼き、じゃがバター、りんご飴にチョコバナナにハッカパイプ。金魚すくいに射的に最新ゲームハードの模型が飾られたスピードくじ。
「知ってる? あのスピードくじ、ほとんどの場合は1等や特賞の当たりクジは入ってないって話。昔、『リオン』ちゃんがお祭りに行った時にあんまり当たりが出ないから、その店のクジを全部買っちゃったんだって。そしたら……」
石畳を歩きつつ、凛は俺の横でそんな話をしてくれる。祭など男友達と騒いでばかりで彼女連れで来た事などなかった。成り行きの同行とはいえ、何とも新鮮な気分だ。
それにしてもこのルームの再現度は高い。匂いに意識を向けてみれば焦げたソースの香りや花火の火薬の残り香。それらが現実と変わらないリアルさで鼻腔をくすぐる。
「凄いよね、本当。ジョーさんや尊様が相当頑張ってくれたんだと思う」
「建築の達人が居るって言ってたけど、そっち方面のスタッフはあまり知らないんだよな……凛さんは?」
「何人かは知ってるよ。例えばアブラゼミ……あっ」
ふと、凛は何かに気付いたのか言葉を途切らせた。
「どうした?」
「しっ……お兄さん、そこ」
俺の問いに口元に人差し指をあてて返す凛。歩みを緩めつつ、その視線は俺のやや斜め前、屋台の裏の雑木林へと向けられている。
その視線を追ってみて、俺は彼女のリアクションの意味を理解した。
「あれは……!?」
「ふふっ、
誰かまでは判別できないが、木陰で絡み合う浴衣姿の男女の姿。体の揺れ方からも話をしているだけでないのは明確だ。
そういえばこのプレオープンには上得意の客も招かれていると言っていた。彼らからすれば、浴衣姿のお気に入りの嬢と真っ先に相手が出来る場でもある訳だ。
穏やかに笑う凛に何と返して良いか分からず、妙な恥ずかしさを覚えつつ俺は彼女に小声で言った。
「あー、その、何だ。戻るか?」
「せっかくだから奥まで行ってお参りしてからにしようよ。気付かない振りをしてあげた方が、あの人たちも燃えるだろうし」
何とも腹が据わっている。落ち着き払った態度で答える凛に、本当に自分の方が年下なのではと錯覚する程だ。
「……不思議なものですよね」
「えっ?」
再び歩み始めた凛がぽつりと言った。その目は俺でなく前を──いや、もっと遠くを見ているようにも思える。
「いえ、このバーチャル風俗が。あの娘もお客さんも、互いの
「まあ……そうかもな」
それは風俗業に限らず、ネットを利用したあらゆるサービスに言える事だろう。携帯のひとつさえ有れば小学生でも全世界の人間を相手に対戦ゲームで競え、能力があるなら世界の情報を動かす事が出来る。そんな時代だ。
俺がそう言うと、凛は小さく首を振った。
「それらと私たちの仕事は違うと思う。特に、VRセックスとは」
なかなかに言葉を選ばずに言ってくる。
「どれだけ濃厚なセックスが出来ても、それで子供が作れる訳でもない。現実に引き戻されれば汗まみれのスーツに汚れた股間パーツが残るだけ……対戦ゲームなら『ゲームで遊んだ』という事実が残るしマネートレードなら現実のお金が増える。でも疑似セックスは、バーチャル風俗は何処までも現実には勝てないんじゃないかなって、そう思うの」
「……何年か前なら、そうだったろうな」
一部だけ同意し、俺は彼女に言葉を返す。
「確かに初期の電脳風俗は現実の風俗にネットのガワを被せたような代物だったさ。だが今は違う。現実では不可能だったり危険だったりするプレイも可能になったし、アバターだって只の人型ってだけじゃなく角や獣耳、尻尾くらいなら生やしてセックス出来るようになった。『現実のセックスの代わり』で使ってる連中もそりゃ居るだろうが……『ネットでしか会えない相手と、ネットでしか出来ないプレイでセックスしたい』って奴も相当数いる」
「……なるほどね」
頷く凛。俺は言葉を続ける。
「卑下するどころか、むしろ俺はこの仕事を誇りに思うべきだと思うぜ? 『本物のVTuberを守るために
「ふふっ、ありがとう……聞いてた以上にいい人だね、お兄さんは」
「聞いてたって、何をだ?」
「それは秘密……あ、ほら、あそこにも」
俺の疑問を微笑みではぐらかした凛は小さく指で屋台の裏を指し示す。そこで交わり合う男女の姿。彼ら、彼女らにとって祭りはこれからなのだろう。
そんな事を思っている内に俺たちは神社の本殿の前に来ていた。祀っている神様が何かは分からないが、バーチャルとは思えない歴史を感じさせる古びた建物だ。
「やっぱりこれも、正しいお参りの仕方があるのか?」
「うん、二礼二拍手一礼。まず二回お辞儀をして……」
凛の言葉に合わせて、本殿に向けて頭を二度下げる。
「……次に二度手を鳴らす」
ぱん、ぱんと手を鳴らす音が夜の闇に響く。
「で、お願いを祈る」
そう言われ、今更ながら俺は何を祈るのか決めてない事に気付いた。
「(えー、『二次三次』がより繁盛しますように)」
とりあえず咄嗟に思いついた事柄を頭に浮かべ。祈る。
「最後に神様に深くお辞儀をして……終わり」
「……ふぅ。改めて意識してやると、割と緊張するもんだな 」
考えてみれば、ちゃんと意識して神社参りしたのは初めてかもしれない。
少し疲れた風の俺が面白いのか、凛は笑いながら聞いてきた。
「ねえお兄さん、何をお願いしたの?」
「ん? ああ、『二次三次がもっと繁盛しますように』って。普通すぎるお願いさ」
「そんな事はないよ。こういう場所で自分以外の事でお祈り出来るのは、自然に他人の事を考えられるって事だから」
「そりゃ……どうも。そういうあんたは?」
「私? 私も普通かな。『この後でお兄さんと最高に気持ちいいセックスが出来るように』って」
「なるほど、そりゃ……!?」
余りに当たり前のように出てきた言葉に最初は気付かず、無難な返事をしようとしていた俺は言葉を失った。
そんな俺の反応は予想済みだったのか、驚く俺に静かな微笑みを浮かべ凛は短く言った。
「
──彼女が誰彼問わず誘う、いわゆる「軽い」女でない事は理解できていた。そういった人間性は一見隠せていても、細かな所作や雰囲気から見え隠れしてしまうものだ。特に考えた事が精巧なアバターに反映されるVR世界は実は現実以上に嘘が難しい。
おそらく凛は俺がこの店でどういう働きをしていたか、どんな人物かを知った上で誘っている。その目的までは不明だが、ここまであからさまな挑発を受けて逃げ腰になっては教育係どころか男として失格だ。苦笑しつつ俺は彼女に言った。
「なあ、ここでセックスってのは神様に不敬にはならないのか?」
「日本の神様はセックスには寛容だから。言うでしょ? 『産めよ、増えよ、地に満ちよ』って」
「……そりゃキリスト教だ」
何ともここまでの蘊蓄が胡散臭くなるような事を言ってくれる。
俺は凛の手を取り、本殿の横に回り込む。流石に提灯の下で照らされて交わるのは大っぴらすぎる。光が届かない建物の裏あたりまで来たところで俺は立ち止まり、改めて彼女を抱き寄せた。
「ンッ……」
「ちゅ、んっ……」
腰に手を回された凛はスッと動きを合わせて俺と密着する。俺はキスを重ねたまま彼女の浴衣の隙間から手を差し込んだ。
「(うお、これは……)」
浴衣に合わせてだろうか、下着の感触は無く、差し込んだ手は直に彼女の乳房に触れた。だが驚いたのはその事ではない。
「結構……あるんだな」
「ふふっ、意外でした? こう見えて、割と自信あるんです」
ゆったりと着ていた浴衣と暗さで気付かなかったが、直接に揉んだ凛の乳房は想像以上に大きく、重かった。手に収まらないサイズのずっしりとした重みが伝わってくる。
俺はそのまま彼女の胸を揉みつつ、更にキスを繰り返した。
「ちゅ、はっ、あぁ……」
「んっ、んはっ……お兄さん、もっと舌、出してっ……」
凛の口腔内に舌を差し込むと、肉厚な彼女の舌が愛おしそうに吸い上げてくる。同時に彼女の乳房の温度が上がり、弾力が増してくるのが分かる。
「あふっ、ンッ……おちんちん、もう、固くなってる……」
「く、うぅっ……」
一方で凛の手もするすると俺の股間に伸びてきた。浴衣の上から撫でさすり、やがて隙間から指が侵入してくる。こちらも下着を付けておらず彼女の指は直接に肉棒に触れる。セックスの誘いを受けてから既に勃起の兆候を見せていた肉棒はしなやかな指を絡められてビクンと反応し、充血してゆく。
「うわ、おっきい……これ、まだMAXじゃないんだよね。楽しみ……」
そう囁きつつ凛は肉棒を優しく扱き始めた。その動きには淀みが無く、男性を悦ばせる技術の熟練を感じさせる。
とはいえ俺も責められっ放しとはいかない。一時的に彼女の唇から舌を抜き、胸への責めを続けつつ首筋に強くキスをする。
「ああんっ……駄目、だよ……跡、残っちゃうっ……!」
「んぱっ、んっ、ちゅうぅ……」
「ンンッ……!」
ビクンと凛の身体が震える。
しかし感じつつも彼女は彼女で肉棒への奉仕を止めない。充血して肥大化した肉棒を指だけでなく手全体で包むように握り、竿の根本から柔らかく、しかし途切らせること無く上下に扱いてくる。
次第に固く突起し始めた凛の巨乳──下手すればニュイやドーラ級はありそうなこれは、爆乳と呼ぶべきかもしれない──に対して控えめなサイズの乳首を指先で弄りつつ、俺は更に首筋へのキスを繰り返した。
「ンンッ……お兄さんの手、いやらしい、ねっ……んあぁっ!」
「ちゅ、っぱ……あんたも、な……ううっ!」
胸を弄っていた手を離し、今度は彼女の下半身の方へと伸ばす。浴衣の裾を割って手を入れると、乳首と同様に控えめな陰毛の感触と共に熱を帯びた湿り気が指先を包む。
「んあ、あっ……指、挿れて、いいよっ……お兄さ、ああっ!」
彼女の言葉を待たずに俺は陰唇を撫でて指を湿らせ、孔へと指を二本差し込んだ。ムッチリとした肉厚な膣内は侵入者である俺の指を包み込むと同時に根本を強烈に締め付ける。包容力と貪欲さを兼ね備えた秘所の感触に、ここに肉棒を挿入したらどれだけ気持ち良いかを想像するだけで竿が跳ねる。
そのまま暫くの間、俺と凛は互いの秘所を弄り続けた。言葉もなく、喘ぎと吐息だけを交わす。
「う、く、くうっ……!」
「あっ、ふぁ、ンンッ……!」
完全に勃起した肉棒が浴衣の隙間から引き出され、外気に晒される。血管を浮かべた赤黒い竿を美しい凛の指が擦り、扱き、ひと息つくように時折優しく撫でる。
俺は俺で首筋から胸元へと舌を移動させる。襟元を広げると彼女の乳房が生み出す深い谷間が露わになり、そこに顔を埋めて深く息を吸うと凛の甘い匂いが流れ込んでくる。
「ふっ、ふふっ……おっぱいは、出ないですよ、赤ちゃんっ……」
喘ぎつつ凛は笑みを浮かべる。
「余裕あるのも、今のうちってな……なあ、そろそろ」
「うん、私も……ねえお兄さん、横になって。任せてくれて、いいから……」
俺の促しに答えると凛は肉棒から手を離した。縁側のような作りになっていた本殿裏の床板に上がり、そこで俺は横になる。凛は着崩れた浴衣を直すこともなくそこに跨る。
「いくよ、お兄さん……ん、あ、んあぁっ! ふと、太いぃっ……!」
「ぐ、お、ああっ! くううっ!」
俺の胸板に手を置き、凛は屹立する肉棒へと腰を落としてゆく。血管を浮かべた柱めいた肉棒がズブズブと彼女の中に呑まれてゆくのに合わせ、俺の方にも堪らない快感が湧き上がってきた。
凛は多少苦しそうにしながらも動きを止めず、そのまま肉棒を根元まで呑み込んだ。大きく息を吐き、潤んだ瞳で俺を見下ろす。
「ン、ふふっ……挿れただけで、ちょっと、イっちゃったかも……凄いね、お兄さんのおちんちん。
「はぁっ……アンタのまんこも、大したもんだ。ふっくらと包まれてるのに、凄え、搾られるっ……!」
先ほどの指の挿入で予想した通り、否、それ以上に凛の膣内の感触は気持ちよいものだった。根元から捩じり上げるような締め付けを加えつつも、決して快感と痛みのラインを超えない。男性を悦ばすのに長けた、磨かれた動きに肉棒は応えるように激しく脈動している。
「うっ、動く、ねっ……あっ、ああんっ!」
「ああっ、うっ、ううっ!」
俺の上で凛の腰が淫らに踊り始めた。着崩れた浴衣が肩口から零れ、彼女の巨大な白い乳房が露わになる。先端の桜色の乳首は固く突起し、汗を散らしつつ腰の動きに合わせて揺れる。俺は手を伸ばし、両の乳房を下から揉み上げた。
「んあ、あ、ふぁっ! い、いいよっ、もっとおっぱい、揉んでっ……!」
陶磁器のように白く、それでいて極上のパン生地のように柔らかく、尚且つ強い弾力で指を押し返す。片手で収まらないサイズでありながら重力に逆らうように張りのある凛の乳房を俺は夢中で揉んだ。彼女もそれが快感になっているのだろう。肉棒を包む愛液は量と粘りを増しており、腰が持ち上がり、再び打ち付けられる度に水音が鳴る程だ。
しかし驚くべき事に凛はそれだけ感じながらも俺を気持ちよくする事を忘れないでいる。単純に上下させるだけでなく腰の動きに捻りを加え、膣内の動きと合わせて貪欲に肉棒を搾り、同時に俺に快感を与えてくる。
「く、ううっ……こりゃ、効くっ……!」
「あっんんっ! 今、深いとこ、来たぁっ……!」
歯を食いしばり、努めて股間から意識を逸らして射精を堪えつつ凛を突き上げる。一方で彼女も大きな絶頂を堪えているようだった。次第に凛の腰の動きは速まり、肉棒を締め付ける動きも断続的に強くなってくる。
流石にそろそろ厳しくなってきた。ゆさゆさと重く揺れる乳房に手を添えたまま、俺は呻いた。
「わ、悪い、もう、出そう、だっ!」
「あっ、あと、ちょっと! ちょっと、我慢、してっ! 私も、もう、イク、からっ……!」
玉のような汗が凛の身体に浮かぶ。グチュグチュと淫らな水音が結合部からは響き、一気に絶頂へと自身を、そして俺を昂らせてゆく。
「ぐうぅっ! で、出る、かっ、ああぁっ!」
「わた、私も、もうっ! あ、んあ、イっ、イク、あっあぁぁっ!」
凛の身体が大きく跳ねたのと、俺が彼女の膣内に精液を吐き出したのはほぼ同時だった。ドクドクと溢れた白濁液が溢れ、俺の腹を汚してゆく。
心地よい脱力感を覚えつつ、俺はまだ跨ったままの凛を見た。
「うっ、ふぅ……気持ち良かったよ、凛さ……」
「……ンンッ!」
「お、おおっ!?」
彼女に挿入されたまま、半勃起にまで戻っていた肉棒が再びきゅっと締め付けられる。
「ふふっ……
「……!」
優しい微笑みと共に俺を見下ろす凛。しかしその瞳の奥には有無を言わせない情欲の炎が確かに灯っている。
心の中に生まれた一瞬の戸惑い。それを俺はかき消して笑い返す。
「そりゃ……上等っ!」
「んあぁっ!」
下腹に力を籠め、先ほどとは逆に肉棒に意識を集中させる。再び勃起を取り戻した怒張に嬌声を上げる凛の膣内を間髪入れず突き上げ、俺たちは抜かずの二発目を開始した。
一度射精した事で多少は余裕が出てきた。彼女の爆乳を捏ねるように揉みつつ、こちらからも微妙に角度を変えつつ腰を使う。
「あっああんっ! すご、お兄さんの、凄いっ! まだ、こんな、元気、でっ! いいっ、おちんちん、いいぃっ!」
「お、く、くううっ!」
対して凛の方も負けてはいない。絶頂を経て精液と愛液に塗れた膣内はより滑らかになり、擦られるだけでも気持ち良いところを無数の襞が先ほど以上に貪欲に射精を求めて肉棒に絡みつく。
油断をしては今度こそ先にイかされる。ちょっとここは
「スゥ……んっ!」
「あふ、あ、ああっ!? 熱っ、熱い、のっ! おっぱい、熱く、なってっ、んあっ!」
俺は凛の乳房を揉む手に意識を集中させ、「感覚の共有」を行う。こちらの快感を
「あっあっあぅんっ! うそ、これ、イクっ! イクっ! イっ……!」
「ううっ、締まるっ!」
ぶるんとひと際激しく凛の胸が揺れる。同時に急激に強まった締め付けが肉棒を襲うが、今度は何とか堪えきる。
「あ、ふ、あぁ……」
俺の上で二度目の絶頂に達し、凛はぺたりと俺の上で崩れ落ちる。胸板に押し付けられる乳房の弾力を感じつつ、俺も大きく息をつく。
流石にこれで満足したろうか。そんな事を俺は──
「……っ!?」
──考えようとした時、挿入されたままの肉棒が三度締め付けられた。
むくりと凛が顔を起こし、汗に濡れた髪をかき上げ唇を押し当ててくる。
「ん、ちゅ、ちゅうぅ……」
「っぱ、んっ、じゅるっ……?」
侵入してくる彼女の舌を驚きつつも受け入れ、俺たちはディープキスを交わす。
「……ぷはっ」
じっくりと俺の口腔内を味わった後、凛は唇を離して言った。
「あふっ……ふふっ、
「……了解、三回戦と言わず、十回戦といこうぜ、凛さんっ!」
「あっああんっ! してっ、もっと、してっ! お兄さんのおちんちんの味、覚えさせ、てぇっ!」
どうやら彼女にとってはここまでが準備運動だったようだ。俺は覚悟を決め、三度目の注送を開始した。
──まさか本当に十回戦まで続くとは思わなかったが。
その次に俺が二次三次に出勤したのは数日後、凛との一戦、いや十戦の疲労から完全に抜けきってからの事だった。
「おはようございます、ジョーさん」
「あ、どーも、おはようございます~……すいませんお兄さん、ちょいとお仕事前に聞きたい事があるんですが、良いですかね?」
事務所に顔を出した俺にジョーは挨拶もそこそこに、彼にしては少し焦った風で尋ねてきた。何かあったのかと多少緊張しつつ答える。
「は、はい、何でしょう?」
「ああ、そんな緊張しなくていいいですよ? この前の祭りのプレオープンの日って、結局来られたんでしたっけ?」
「ええ、行きました。かなり遅い時間になっちゃいましたけど」
「その時なんですが……『凛』さん、もしくは『しずりん』って名乗ってた娘と会いましたかね?」
「……会いました。なんでも彼女も都合で遅くなったとか言ってて、一緒に境内を歩いたり、色々あったりで」
ジョーの質問に素直に答える。
「ああ……それで合点がいきました。いきなり
「あの方?」
えらく仰々しい表現である。俺は逆にジョーに尋ねた。
「えっと……あの凛さんって、ここの嬢じゃないんですか?」
「嬢……ではあるんですが、まあ、ひと言で表すなら『この店の創設者』でして」
「創設者?」
「この店『電燈二次三次』を立ち上げた三人の少女……その一人です。あの方が居なけりゃ、俺も尊様も支配人なんて出来てやいませんよ」
口調こそ軽いがジョーの表情は大真面目だ。
「この店で数少ない『客を選べる嬢』でもあります。それこそ単純に金を積んだだけで相手できるような娘じゃありません」
「……凄いですね」
「凄いですよ。いやホントに。で、その凛さんからお兄さんに
既に嫌な予感がしていたが、俺は問い返した。
「言伝……何でしょう?」
ジョーは口を閉じ、胸ポケットから一枚のメモを取り出した。それを受け取り、広げる。
【お疲れ様でした。私の判定は“合格”。あと二人は私以上に大変だけど頑張ってね。しずりん 追伸・また機会あれば十回戦よろしく♪】