※この作品はR-18です。

特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) 殺人許可書を持つ「特殊な部隊」   作:橋本 直

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悲しい宿命を背負った女芸人集団

第21話 女お笑い集団と化したバイオロイド『ラストバタリオン』

 

 

 誠は階段を下りて、一階の廊下を歩き、隊長室の下の付近を歩いていた。

 

「まず、運用艦『ふさ』シミュレーションルーム……。運用艦があるのか。さっき、『幼女』と話していた時、そんなのあるって聞いてたけど……あるんだな」

 

 まず一つ目の部屋には入らないことにした。隣に行くと札のところに『千客万来♡」と書いてある部屋があった。

 

「なんだここ?大体隊長室の真下はここだな。じゃあ入るか」

 

 誠はあまりに札の怪しさよりも、位置を優先して部屋に入った。

 

「失礼しまーす」

 

 中はまるで女子高とドラマでよく見る、会社モノドラマを合わせたような感じだった。

 

 見渡す限り女性。全員女性。しかも見た感じ二十代半ばのお姉さんばかり。顔立ちからしてヨーロッパ系なのだが、聞こえてくるのは明らかに日本語。しかも、赤とかピンクとか青とか、変わった色に染められた髪の毛ばかりだった。それが女子高校生のように席を離れて雑談にふけっていた。

 

 誠の声を聴くと、全員が誠に注目する。そしてニヤニヤと笑い始める。

 

「すいませーん、……アゲ!」

 

 頭に物の当たった感覚で、誠は声を上げた。そして落ちてきたものが金だらいと気づいたのは、頭を押さえてしゃがみこんだ誠の足下にそれが転がって金属音を響かせているからだった。

 

「ちょっと、神前君の身長を読み違えていたかしら。あまりいいツッコミが無いわね」

 

「あれじゃない、チョイスが悪かったのよ。前回みたいに水とか、いっそのこと一斗缶なんかだと良いわよ」

 

「流血しながらのツッコミ。体張ってるみたいで、良いじゃない。男らしいギャグよ」

 

 あっちこっちから自分がいかにツッコミとして足りないかと言う自覚を促されそうな雑談が聞こえてくる。

 

「あんたら!何がしたいんだ!」

 

 さすがにいつまでもしゃがんでいるわけにもいかず、誠は立ち上がってそう叫んだ。

 

 同時にあっちこっちからクラッカーが鳴らされる。

 

「はい合格」

 

 ピコピコハンマーの間抜けな音が脳天から聞こえた。誠の死角に回った女子隊員が振り下ろしたらしい。

 

 誠は振り向いた。そこにはニコニコ笑ってピコピコハンマーを手にした東和の平均的女子の背格好のピンクの髪のロングヘアーの少尉、それと少しそれより大柄の水色の髪のあきれ果てたというように頭を掻くショートヘアーの中尉が立っていた。

 

「合格だよ、合格。これまで7人来たけど、合格が出たのは神前君だけ。おめでとう、合格」

 

 ピンクの髪の女性士官は嬉しそうにニコニコ笑っている。

 

「……合格ですか……」

 

 誠は訳も分からずただピンクの女性士官の言葉を繰り返していた。

 

 隣のバカ騒ぎにあきれ果てている多少は常識がありそうな水色の髪の方に目を向けた。

 

「一応、名前は名乗っておくわ。私はローラ、ローラ村本中尉。一応、運用艦のシステム関係の責任者。で、このピンクが……」

 

 言いにくそうにローラが言った後、元気よくピンクの士官は手を挙げた。

 

「サラでーす。サラ・グリファン少尉!通信担当でーす」

 

 満面の笑みでサラはそう言った。

 

「みなさん日本語、お上手ですね」

 

 ローラもサラも日本語。周りの雑談もすべて日本語である。

 

「そうね、私達の脳に知識をプリンティングする言語を切り替えれば何語だって話せるようになるわよ。ベースを日本語に設定すれば、まるで日本語を母国語にしているように見えるわよね。でもこれからは無理よ。ロールアウトしたらもう固定化されちゃうから。普通の人間みたいに洗脳でもすれば別だけど」

 

 ローラの言葉は誠には少し理解しがたいものだった。

 

「プリンティング?設定?ロールアウト?」

 

 誠はローラの言葉に戸惑いながら意味が解らなかった言葉を繰り返してみた。

 

「知らないのね。知らない方が良いこともあるわよね。でも、あなたなら私達を理解できる。私達は『ラストバタリオン』。要するにクローニングバイオロイドね」

 

 ローラは誠と視線を合わせずにそう言った。

 

「『ラストバタリオン』ってなんですか?」

 

 誠は聞き返す。ローラはため息交じりに話を続けた。

 

「知らないんだ……東和はあの戦争に関わってないから知らなくても……当然か」

 

 そう言ってからローラは説明を始めた。

 

「言うわね。『ラストバタリオン』は兵器よ。私達は兵器だった。生体兵器と言ったらわかるかしら。兵隊が足りなくなった、第五惑星系とアステロイドベルトの連合国家『ゲルパルト第四帝国』が、兵器、そしてその理想を持った兵器を生み育てる兵器製造プラントとして私達を作ったの。まさに子供を産む戦争機械、それが私達。まあ私達のプラント自体は製造開始前に遼北赤軍に占領されたから、私達は一人を除いてロールアウトは戦後の話だけどね」

 

 『ゲルパルト』と言えばバイオテクノロジーや兵器開発で進んだ国として知られていた。

 

『第四帝国』は地球人至上主義を掲げていた。同じ地球人至上主義を掲げる第四惑星の『侍の国』として知られる『甲武国』、ほぼ地球人がいないのにも関わらず同盟を結んだ『遼南帝国』の三国は反地球勢力で同盟を結んだ。『地球連邦政府』の影響力が強いとされる国々に戦争を仕掛けたことで第二次遼州戦争が始まった。

 

 所詮は圧勝したゲルパルトと甲武だったが、やたらと宣戦布告しては負けて戦火を拡大する遼南に足を引っ張られ、物量戦が得意の北遼社会主義共和国に勝てもしないのに遼南が攻め込んだことで、次第に戦況は不利に傾く。

 

 そして、機会を見つけた地球連邦が本物の物量戦を仕掛けると、完全に戦いは地球と同盟を結ぶ国に主導権が移った。そして、ゲルパルト本国は北遼に占領され、甲武は休戦協定を結んで戦いは終わった。

 

 当時のまるでナチスのようなゲルパルト第四帝国ならそのくらいのことはやりかねない。そんなことを誠は思っていた。

 

 誠はローラを見つめた。ローラは決して誠と目を合わせようとはしない。

 

「同情は止めてね。こうしてみんな平和に楽しく暮らしているんだから。生み出された形は違っても……感謝はしている……生まれたことに……」

 

 そう言ってローラは背を向けた。

 

「一番奥の大きな机に座ってる紺色の長い髪の少佐がアメリア。あなたのこと気にしているみたいだから」

 

 そう言ってローラは歩いていく。周りではもう誠をおもちゃにすることには秋田と言うようにそれぞれに雑談を楽しみ。その一つにサラが混じっていた。

 

「クローン兵器……もアホになるんだな」

 

 どう反応すれば困る宿命を背負った女お笑い集団を前に、誠はただ困惑していた。

 

 

 

 

 

第22話 ギャグ集団の女団長と誠の触れられたくない過去

 

 

 誠は女芸人の楽屋と化した室内を見回した。

 

 奥には一人、大きな机に張り付いて、じっと誠を見つめている紺色の髪の女性士官が座っていた。

 

 目が合うと彼女、アメリアが手招きをした。そして彼女は隣に置かれた椅子を指さす。要するにここに座って話をしろと言う事らしい。

 

 仕方なく誠はそこに向かった。このアホの頭目である。どうせろくでもない話をしろと言うに違いない。駄目人間の極みや、ちんちくりんな自称『人類最強』、そしてガンマニアの女サイボーグに、何を考えているか分からない小隊長。それらを目にしているので、誠にはもう怖いものは無かった。

 

 大きな管理職らしい机の前まで来て、誠はローラが言うアメリアと見つめあった。

 

 紺色のロングヘアー。そして見えているのかよくわからない細目。パッと見た感じ、笑っているように見える表情と、どうもコント集団の女リーダーらしい雰囲気がそこにはあった。

 

「じゃあ、そこに座って。ああ、自己紹介がまだだったわね。私はアメリア・クラウゼ少佐。運行艦『ふさ』の艦長。流暢に日本語をしゃべるでしょ。本来の母国語はドイツ語なんだけどね。色々あって日本語の方がしっくりくるからそっちで話すの。それと禿は嫌い。言っておくことはそれだけ」

 

 そう言うとアメリアは背もたれに体を預けて伸びをしながら誠を眺める。

 

「前の大戦末期に戦争に行ったんですか?」

 

 そのあまりに周りの女芸人達になじんでいるアメリアに誠は疑問をぶつけてみた。

 

「ローラが言ったんでしょ。あの娘のツッコミは弱いのよね。それで誠ちゃんが来ることになったの。言ってることは事実だから別に私はいいけどね。他の同じ境遇の娘達には嫌がってるのもいるから。そのことは触れないでね。これまで会ったうちの誰か言ったでしょ、『詮索屋は嫌われる」って。嫌われたくないなら触れないでね」

 

 そう言うとアメリアは体を起こした。

 

「まず、誠ちゃんが触れられたら嫌なことで私が知ってることを教えてあげるわね。あなた、高校3年の時、エースで4番だったわよね。城東高校は野球部だけでは試合が成立しないから、助っ人で呼ばれた。そして出ると負けのチームが、誠ちゃん一人のおかげで3回戦まで勝ち進んだ……」

 

 突然降られた話題に誠は呆然とした。

 

「なんで……それを……」

 

 誠はそう言うのがやっとだった。

 

「簡単よ。新聞の東都の地方記事を神前誠で検索している人間ならすぐたどり着くもの。そして、その最後の試合で……誠ちゃんはある事件を起こし、野球部を辞めた」

 

 そこまで言ってアメリアは誠に目をやった。誠は自分の顔が紅潮しているのを自覚していた。

 

「殴りました。キャッチャーを殴って、セカンドを殴って。そのまま試合は没収試合になりました」

 

 誠は思い出した。誠の変化球の取れないキャッチャー。正面のゴロをトンネルする内野。フライを打たせると当たり前のように打球を見失うライト。

 

「そう言う事。今、指摘されたくないでしょ?おんなじ」

 

 そう言ってアメリアは笑う。それまで閉じていると思っていた細い目の間に悲しげな瞳が見えた。過去に触れるという事が時に相手を傷つけるものだと誠は思い知った。

 

 

 

第23話 ザ・トゥルーマン・ショー

 

 

 誠は人の過去に触れることの罪深さを感じながら、ゆかいな表情を浮かべるアメリアの顔を眺めていた。

 

「あと、もう一つ。誠ちゃんの恥ずかしい秘密を握ってしまったんだよね、私は」

 

 そう言うとアメリアは目の前のキーボードをたたき始めた。

 

「恥ずかしい秘密?僕のですか?」

 

 誠は何かとんでもないことを目の前の人造人間女芸人集団のリーダーが言い出すのかとひたすら待つことにした。

 

「男は恥ずかしいと思うかもしれないけど、女だと萌え属性になるのよね。ああ、いたわ、うちにも明らかにそうなのに『硬派』と言う一言で片づける馬鹿が。言っとくわ、そいつサラと付き合ってる」

 

 アメリアの言葉から推測すると、その馬鹿な『硬派』は誠と同じ属性で、女性と付き合っているという事は普通に考えれば男性であることが推測された。アメリアはキーボードをたたく手を止めて誠に向き直った。

 

「もしかして、『童貞』ってことですか?」

 

 確かに誠は『童貞』だった。アメリアはにんまりと笑い満足げに大きくうなづいた。

 

「偉いわねー、さすが良い大学出ている人は察しが良いわね。じゃあ、なんでそんなこと私が知ってるか分かる?」

 

 ニコニコ笑いながらアメリアは言った。

 

「とりあえず言ってみた。それで、僕の表情がどうなるか試した」

 

 相当に食えない女リーダー。今、誠が考えた限りの最高の答えを言ってみた。

 

「半分あたりで、半分外れ。結論から言うわね。誠ちゃんは監視されていた。かなり前から……見る?ちょっとそこに映像を投影するわね」

 

 そう言うとアイシャはキーボードを何回か叩いた。

 

 映っているのはコンビニの防犯カメラ。ジュースと酒類の冷蔵庫の前で悩んでいるの大柄な男が自分であることは誠にはすぐに分かった。

 

「なんで、こんな映像が……」

 

 誠は驚いて映像の向こうがわでニヤニヤしているアメリアに視線を向けた。

 

「本来、流出してはいけない画像が流出している……でも、私が捏造したわけじゃないのは、誠ちゃんもわかるでしょ?……そして、こんなのどうかしら」

 

 そう言ってアメリアはまたキーボードを叩く。

 

 画像はぶれているが、それは高校時代の制服姿の大柄な若者と、女子の制服の制服を着たおさげの女の子の後ろ姿。そこに映る高校生の顔はどう見ても誠自身だった。

 

 

「大昔ね。映画で、普通に生きている人間を完全に監視して、その映像を監視者が大笑いしながら見ているという、監視社会の歪んだ構造をネタにした映画があったの。まあ、誠ちゃんの今の状態はそれに近いわね」

 

 驚くという次元ではなかった。コンビニの防犯システムに意図的に介入しない限り、一つ目の画像は手に入れることができない。二つ目は監視している組織が存在しなければ、撮影されることもない日常。二つの映像がアメリアの手にあるだけで明らかに誰かが誠の生活を監視していることが分かった。

 

「アメリアさん、ゲルパルト出身ですよね。あそこは遼州同盟の発起国に名を連ねていますから、遼州同盟が……」

 

 誠が妄想を連ねようよしたとき。アメリアはさっと手を挙げた。

 

「誤解しないでね。確かにこの映像で、誠ちゃんの性癖を確かめようとしたのは事実だけど……」

 

 またもやアメリアはおかしな方向に話を持っていく。誠はうんざりした顔で彼女を眺めた。

 

「でもね、これは隊長からもらったの」

 

 突然、アメリアの口から変な人物の名前が出てきた。

 

「隊長が……あの人、諜報関係の人なんですか?」

 

 誠は驚いて、自然とそう尋ねていた。

 

「これを見る限り、かつてそう言う仕事をして、コネクションを今でも持っている。そう考えるのが自然よね。あと、付け加えておくけど、私にこれをくれたとき、隊長は『対策はしておいた』と言ったわ」

 

 スパイの大物。そして、今でもそう言ったところと連絡が取れる。とても駄目人間の先ほどの嵯峨の姿からは想像ができない。

 

「対策は恐らく、嘘の情報を流して混乱させること……だと思うわ。私もその辺はよくわからないから。つまり、うちの身内である限り、誠ちゃんは監視網から逃れることができる。本当に自由になれる」

 

「自由に……」

 

 誠はアメリアの言葉を繰り返した。

 

「監視されているという事は、目の前の自由がいつ他人に奪われるかわからないってこと。そんなの自由じゃないわよ。自由が欲しければ……ここに残りなさい」

 

 笑顔の緊張感のない細目のアメリアの一言が誠の心に響いた。

 

 

 

第24話 女芸人の与えてくれた道

 

 

 

 自分は監視されていた。

 

『では、なんの為に』

 

 誠は口には出さないが、頭の中ではそればかり考えていた。アメリアはその様子を察しているようで、笑顔で誠を見守っている。

 

『アレのことか……』

 

 覚えが一つある。しかし、それについては母から考えないように言われていた記憶がある。そして、それが何だったのかも、実は誠は覚えていない。それは夢かもしれない。『剣よ!』と叫ぶと、目の前に剣のような光が浮かんだなんてことはあり得ない。ましてや、実家の道場の庭で、母一人の前でやったこと。その時から監視が始まっていたなら……。

 

「もういいでしょ?考え事は終わり。そういう訳で、私達はみんな誠ちゃんに良い決断をしてもらいたいの。それだけ」

 

 アメリアはそう言うとニコニコと笑う。

 

「いい決断ですか。ここに残ることが良い決断なんですか?」

 

 妄想を止めた誠は、アメリアの笑顔をうつむいて上目遣いで眺めた。

 

「それだけじゃないわよ。例えば、誠ちゃん、危険物取扱免許の1種持ってるわよね」

 

 相変わらず何を考えているか分からないアメリアがニコニコしながら尋ねてくる。

 

「持ってますよ。それがどうかしたんですか?」

 

 誠は渋々そう答えた。

 

「あれ、結構危険物関係ではオールマイティー、ワイルドカード的資格なんだな。例えば隣の菱川重工豊川」

 

 隣が大工場、菱川重工の西東都の最大の工場であることは、ここに来る途中で十分わかった。

 

「あそこで、大量の塗料や化学薬品を使う時に1種じゃなくて、2種か3種がいるの。資格持ってる人がいないと事故が起きたとき違法行為となるわけ。1種だと両方の資格を持ってることになるから、二人分を一人でできるわけ。知らなかった?」

 

 相変わらずニコニコ笑いながらアメリアは言った。

 

「だって僕、メーカー受けましたけど……落としたのはあなた達じゃないですか!」

 

 誠は立ち上がって机を叩く。怒りに満ちた表情でアメリアをにらみつける。

 

「だって、大卒は総合職じゃない。まず数年は営業ね。資格はあっても全く違う場所、例えば経理とかに行ったら簿記とかの資格を一から勉強して取らせる。それが総合職。それよりも何も、どこに行っても英語ができないと課長以上にはなれないわよ、今時。誠ちゃん語学は?私は得意だけど」

 

 アメリアは痛いところを突く。

 

「だめです……足を引っ張ったのが英語ですから」

 

 完全に降参した。そう言うことで誠は椅子に座りなおした。

 

「だから、こういう道もあるんだよ。そう言う考える時間が必要なんじゃないかなーと思う訳よ、お姉さんは。大学院出たと思えばいいの。大学院だって研究やるなら別だけど、大体は一つに没頭して人間形成をした人格の立派な人ってことで企業や役所や軍は採用しているわけ。別に全員に研究者になってほしいわけじゃないの」

 

 アメリアの言葉に誠は何一つ反論できなかった。

 

「何か質問は。全部、その質問の穴を見つけて論理を破綻させてあげる」

 

 ニコニコ笑いながらアメリアはそう言った。

 

「わかりました。残る方向で検討してみます」

 

 誠に言えるのはそれだけだった。

 

「よろしい」

 

 アメリアは満足げに笑うと、画面に目を向けた。

 

「そうだ、うちで誠ちゃんに一番、会いたがっていたのはアイツだわ……」

 

 そう言ってアメリアは誠に顔を向けた。

 

「あいつ?」

 

 誠はアメリアが何を言いたいのか理解できずに首をひねる。

 

「うん、アイツ。童貞。サラの彼氏。別名『永遠の不良少年』(硬派)」

 

 アメリアが珍しく目を見開いてそう言った。

 

「『永遠の不良少年』なんです、その恥ずかしい二つ名」

 

 誠はその二つ名を聞いた段階でその人物と会いたくなくなった。

 

「この建物の後ろにでっかい倉庫と、工場みたいなのがあるのよ。そこには技術部がいるの、本来なら技術部長がいるんだけど、別の仕事で留守なの。結果、その不良少年が腕力で周りをねじ伏せて、技術部長代理に収まったわけ。本来は技術部整備班長で、階級が曹長。とても技術部部長代理なんて務まるがらじゃ無いんだけど、人間性かな?それで他の将校達も納得して奴を支えってる。それが今のうちの状況」

 

 腕力で部下を従えるのと人間性で将校を黙らせる。とても誠の会ったことのある人間と違うもの。誠は少しその人に会ってみたくなった。

 

「面白いのがいるでしょ。うちはここだけじゃないの。面白いのは。ちなみにそいつ、割り算できないし、分数もよく理解できないわよ」

 

 突然、その人物像が誠の中で崩壊した。

 

「すいません……割り算できないのに、どうやって軍に入れたんですか?普通に試験で落ちますよ、それだと」

 

 完全に白けた状態で誠はにこやかなアメリアに尋ねる。

 

「でもね、そいつは自分に必要だとなると、すっごい難しい計算もできちゃうの、不思議と。大学だってそこそこの大学出てるのよ」

 

 またもアメリアの言葉で誠の作り上げてきた人物像が破壊される。

 

「大学……受験通ったんですか?割り算できなくて」

 

 誠はあきれ果ててそう言った。

 

「私立の工学部では結構有名なところ。まあ、誠ちゃんは理科大でてるからね。まあいいわ。会ってみてよ、その28歳になっても不良街道驀進中の整備班長に。人生観変わるわよ」

 

 アメリアの言葉に。とりあえず割り算が出来ないのに技術部のトップを務めている人物に会うべく、誠は立ち上がった。

 

「じゃあ、失礼します!」

 

 誠はそのまま、出口に向かって速足で進んだ。それを見て、なぜかタンバリンや鈴を持った戦闘用バイオノイドの成れの果てがリズムを刻む。

 

「ここはね、そうした出会いがいっぱいあるところ。私もそうやって成長している……」

 

 アメリアはそう独り言を言いながら、画面に映った18禁アニパロ・アドベンチャーゲームの選択肢にマウスのカーソルを動かした。

次回メインヒロインにして欲しいキャラ

  • 西園寺かなめ 
  • カウラ・ベルガー
  • アメリア・クラウゼ
  • ローラ
  • 神前ひよこ
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