特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) 殺人許可書を持つ「特殊な部隊」 作:橋本 直
第30話 趣味に突っ走る姉ちゃん達(内、1名は幼女)
ひよこの医務室っぽい部屋を出ると、誠はとりあえずいるところが無くなって、女性パイロットが三人住み着いている例の部屋に向かった。
扉を開けると三人は椅子に腰かけていた。かなめとカウラの向かい合わせの席につけられたお誕生日席のような机。その上に誠の荷物があることから、どうやらそこが誠の席らしい。
「失礼しまーす」
そう言った時かなめがニヤニヤしながら誠を見つめていた。
席に座ってとりあえず、小隊長のカウラを見る。初めてあった時と同じように彼女はキーボードを叩いて入力作業を続けていた。
「おい、アパ。『アパム1号』」
相変わらず上機嫌でかなめが誠に声を掛けてくる。それは面白がった島田が誠の綽名『アパム1号』を全員の携帯端末にばらまいたことを教えてくれた。
「この緑の髪の姉ちゃん。何をしていると思う?」
かなめを見ると、まず、脇の下に実銃の刺さった革のホルスターが目に付く。それに少々おびえながらカウラに目をやった。
カウラは聞こえない程度の音量で何かぶつぶつつぶやきながら一生懸命キーボードを叩いている。
「なんですかね、プログラムの入力とか」
とりあえず言ってみようと誠はそう言ってみた。
「まあ、色々やってるが大体そんなもんだ。いい金になるんだと、そのバイト」
メカ姉ちゃんまたとんでもないことを口走った。
「今、バイトとか言いませんでした。聞き違いでなければ『バイト』って聞こえましたけど」
誠は口元を引きつらせながら、素手で銃の構えをして遊んでいるかなめにそう言った。
「だってバイトだもんな。本業ではないどころか、仕事と全く関係ない仕事。普通それをバイトって言わないか?」
あまりに当たり前に言うかなめの言葉で誠の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになった。
「良いんですか?仕事中でしょ?」
そう言いながらカウラに目をやった。急にカウラが誠に顔を向ける。
「少々金のかかる趣味があってな。仕事中は何をしてもかまわないのがうちのルールだ。そういう訳でバイトをしている」
カウラは再び画面に顔を向けて入力を再開した。
「何をしてもいいんですか……」
そう呟きながら誠は机の上の置かれた大きめのバッグを床に置いた。
「だってうちの模範にならなきゃならない、中佐殿があれだぞ」
かなめは銃をホルスターから抜いて、スライドを弾いたり戻したり、時々引き金を引いたりして時間をつぶしていた。
「中佐が……ってここからじゃ見えませんよ」
誠は伸びをしたり左右に体をひねったりするが、じっと一点を見つめて固まっているランが、何を見ているのか分からなかった。
「考えろよバーカ。お前の身長なら立てば見える。少しは頭を使え!」
銃を構えてポーズを決めながらかなめはそう言った。誠は渋々立ち上がった。
ランは四角い板に並んだ木片に向かって、ぶつぶつ言いながら考えを巡らせていた。
まさかと思って席を立った誠は、ランの席の間近にまで近づいた。そして、驚くべき事実をそこに発見した。
「本当に将棋、お好きなんですね」
そこには当たり前のように将棋盤が置いてあった。
「することねーから頭の体操でやってんだ。アタシがこの部屋を預かっている人間だ。アタシの決定がこの部屋の法だ。明日からは好きなことやりな。上の連中が文句言うようなら、仕事をよこさないオメー等がわりーって逆に抗議してやる」
そう言うと一つの駒を手に取り、敵陣に銀を打ち込んだ。
「要するに暇なんですね?」
誠はあーだこーだとぼそぼそ独り言を言っているランを見下ろしながらそう言った。
「見ようによってはそう見えるかもな。お前も趣味があったらやってていーぜ。アタシが許す」
要するにこの人達は暇人。それが誠の導き出した結論だった。
第31話 あるスポーツに憑りつかれた女サイボーグ
ランがじっと将棋盤を見つめている。
「なんだ、珍しーか。そう言えば、神前。将棋は?」
そう誠に言うとランはじっと駒を見つめる。そして、手元にあった角を握りしめて何回か盤に置いては持ち上げるという動作を続けていた。
「とりあえずルールぐらいは」
遠慮がちに誠はそう言った。
「そう言うのはできるとは言わねーんだ。ある程度の基礎的な形って言うか、手筋だな。そう言うものを頭の中で考えられるようになってはじめてできるって言うんだ。例えば、アタシなら棒銀」
そう言ってランは盤に置かれていた銀将を手に取る。
「アタシはこれにこだわる。かつて関西を代表する偉大な棋士はこれにこだわり、負けていった。だがよー私はいずれ勝つよ。アタシはそれを超える」
ランは顔を上げ、誠を見つめ、そう言ってニヤリと笑う。
「おい、ちんちくりん。お前の将棋は別のゲームなんだよ。銀はあくまでおとりで、色々手駒を増やして反対側責めるとか、できるだろ。銀取られたら負けってもう別のゲームじゃねえか」
相変わらず銃を構えながらかなめが誠にも聞こえる大きさのつぶやきを漏らす。
「そう言えばかなめさんは銃で人を射殺するのが好きなんですか?」
どうやらここではボケるのがルールらしいので誠はボケてみた。
「それは仕事。好きなのは……ちょっと待て」
そう言いながらかなめは銃を置いて、引き出しからコードを取り出す。そしておかっぱ頭の下にコードの先を持っていく。
「何をしてるんですか?」
かなめの首の後ろ側にそのコードが刺さっている。
「コードが……」
誠はかなめがサイボーグであることを思い出した。
「お前にはアタシの頭の中が見えねえだろ?だから首のジャックから引き出して、このモニターに映像を出すの。こっち来い、じゃなきゃ見えねえ」
手招きするかなめを見て誠はかなめの後ろに回った。
画面の中には表が記されていた。しかし、野球経験者ならそれが何か一発で分かった。
「スコアーブック……」
誠は少し困った顔をしながら上機嫌のかなめを見た。
「そう、先週のアタシのチームと豊川市役所のチームのスコアーブックがこれ。たまたまうちのエラーが少なくて、結構競ったが目の前の緑髪が二回を0点に抑えて8対でうちが勝った」
勝ったと言った後、かなめはニヤリと笑う。
「かなめさんのチーム……野球部があるんですか?」
誠はただただ心から感心して、嬉しそうに笑うかなめに目をやった。
「隊長が『日々の暮らしを充実させることが大事』と言う事でクラブ活動が充実しているのがうちの売りだ。私も野球部でピッチャー、または内野を守ることになっている。決めたのは西園寺だがな」
それまで入力に集中していたカウラが口をはさんだ。
「女子野球ですか……かなめさんのポジションは?」
誠はそう言ってかなめを見つめる。
「アタシは監督。この体じゃ出場できないんだと。あと女子野球じゃねえよ。男子もいる。この試合も先発は島田だ。あの体力馬鹿、球は早いがノーコンだからな。すぐランナーが貯まるんだ。それと言っとくこれは軟式だ、軟式野球」
軟式野球。地球の日本を発祥とした特殊なゴムのボールを使用する野球である。
「軟式ですか……試合を申し込んでやるんですか?」
誠は少し興味を持っていた。野球をやめてもう5年が経つ。でも、見るのは大好きで、ニュースはいつもチェックしていた。
「豊川市の企業とか役所と勝手に集まったチームが8チームあって、そいつ等が試合をしてリーグ戦やってんだ。リーグ創設25年の伝統あるリーグなんだぜ。うちは三年前から参加していて初年度は5位、去年は4位、今年は現在2位をめぐって4チームが団子状態。次の試合でうちが勝てば、他のチームの勝ち負け次第で一気に二位。そうなるための勉強をこうしてしている。いい監督だろ」
かなめはそう言いながら画面のスコアーブックをスクロールさせながら見つめている。
「野球ですか……」
誠は遠慮がちに、つぶやいた。
「楽しいよ……野球。お前もやってたんだろ?勝ち負けなんて関係ねえんだ。野球やろうよ」
かなめはそう言いながら置いた銃を再び手に取りニヤリと笑って誠を見上げた。
第32話 誠のトラウマ
誠はじっとかなめを見つめていた。かなめは見つめている視線を外して、画面にうつされたスコアーブックに視線を移した。
「趣味は大事にしろ。お前が野球にトラウマ持ってるのは知ってる。夏の東都予選の3回戦がお前のせいで没収試合で城東高校が、野球名門校に負けた。その事実は消せねえ」
そう言ってかなめはキーボードを叩くと、画面が暗転する。
「知ってるんですね……かなめさん」
誠はそう言いながら唇を噛みしめてかなめをにらみつけた。
「東和共和国で野球やってる奴はみんな知ってるよ。あまりにショボい守りにブチ切れて大暴れして試合が中止、そして審判の判断で没収試合でお前のチームは負けた。1回戦、2回線と完ぺきな投球をしてきたエースで四番が名門校の名前にビビッて固くなってミスを繰り返してブチ切れる。アタシから言わせりゃ当然の話だ」
そう言いながら、かなめは首の後ろに刺さっていたコードを引き抜いて引き出しに戻す。
「自分にイライラしていたんです。正直、もう肩が限界でした。その後、肩の張りが気になって鍼灸院に行ったんですが、やはりもう限界だったそうです」
味方のミス、次第に遅くなる自分の売りのストレート。そして、圧倒的な技術と戦略をもって挑んだ強豪に感じた圧倒的威圧感。誠の気分はあの試合が行われたあの都立球場のマウンドの上にいた。
「神前。貴様は勘違いしているな」
突然、画面の向こう側から声が聞こえた。カウラの声だった。
「私達だって常に勝ちたい。負けるつもりで試合をするのは八百長と言って反則だ。だが、負けても試合をした事実は消えない。そして、それが人生の糧になることもある。だから、一生懸命試合に臨む。それが真面目に遊ぶという事だ。明日、練習がある。……西園寺!」
画面の後ろに見えるカウラの表情は、バイトをしている時とはまるで違う真剣なものだった。
「ジャージを用意するんだろ?もう手配済みだ。という訳で、神前。とりあえず明日の終業の後の時間の予定はすべてキャンセルしろ。上官命令だ。本当の遊びってのを教えてやる」
そう言ってかなめは不敵な笑みを浮かべて誠を見上げた。
次回メインヒロインにして欲しいキャラ
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西園寺かなめ
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カウラ・ベルガー
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アメリア・クラウゼ
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ローラ
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神前ひよこ