特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) 殺人許可書を持つ「特殊な部隊」 作:橋本 直
第33話 武装警察の日常 昼飯編 (上)
かなめの不敵な笑みを見つめていた誠。
そんな永遠とも思える時間を感じていた誠の耳にチャイムの音が響いてきた。
「昼だな」
かなめはそう言うと立ち上がる。
「昼にチャイム?ここ、学校じゃないですよね」
誠はそう言ってまずランに目をやった。
小さなランは器用に将棋盤上の駒が動かないように右に移動させると、袖机の引き出しを開けて何やら取り出そうとしている。
視線を緑のポニーテールのカウラに移すと、こちらは一仕事終えたというように両手を挙げて体を椅子の背もたれに預けて伸びをしている。
「とりあえず自分の席で待っていろ。……ところで……」
とりあえずお誕生日席状態の自分の席に座ってカウラの言葉を待った。
「ところで、なんです?」
ちょっと見つめられるとドキドキしてしまうほどの美人のカウラの言葉に誠は頬を染めながら応えた。
「カレーが嫌いとは言わないよな」
突然、食べ物の好き嫌いの話が出てきた。
「嫌いじゃないですよ。でも、本格的なインドカレーには合わないのがあるので……」
誠がそこまで言ったのを聞くとカウラはランの方に顔を向ける。
「カレーは大丈夫みたいです」
「まあな、蕎麦屋のカレーは誰がどーみても本格カレーじゃねーからな……ってまた遅れてやがる。あそこのバイト使えねーな。島田に言ってうちの整備班に手の空いてる奴に取りに行かせることにした方がいーや。また遅刻だ」
そう言って愚痴るランの机の上には、引き出しから取り出したのであろう携帯に便利な小型魔法瓶が置いてあった。
そこでドアが開いた。
「出前来たぞー」
入ってきたのはかなめだった。相変わらず左わきには実銃入りのホルスターが見える。そのかなめの後ろに普通の若者が入ってきた。手に提げているのは岡持ちである。メガネをかけてTシャツにジーンズと言う普通過ぎる格好をしている。誠の缶では年は二十歳前後の若者、どう見ても蕎麦屋の出前には見えない。
「すいませーん。色々あって遅れましたー」
とりあえず謝ってはいるが、その表情に謝罪の色は見えない。
「箱そばは?」
若者はそう言って塗り物の箱を岡持ちから取り出す。その言葉を聞くとランが手を挙げた。若者はちんちくりんの幼女が大きな責任者席に座っている事実を認めたくないのか、何度も首をひねりながらその塗り物の箱をランの机に置いた。
「天丼、松の方!」
この言葉にすぐにかなめが手を挙げる。
「貴様、そんな贅沢するならこの前の勘定をどうにかしろ」
カウラがかなめをにらみつけて凄む。
「アタシの勝手。欲しけりゃ取ってみろ。バーカ」
そう言いながらかなめはバイトが自分の机にどんぶりを乗せるのを見守っている。
「カレーライス」
バイトがそう言う。カウラが何も反応しないのを見て誠が手を挙げる。バイトは誠の何もない机の中央に皿を置いた。
「海老天重、松……」
そう言って最後に残ったカウラを見るバイト。カウラが机の開いているところに指さすと、バイトはそこに置く。
「失礼しました!」
バイトはそう叫んで部屋の外に消えた。
誠が三人の女性を見るともうすでに食べ始めていた。誠は皿にかかったラップをはがしてみた。
それはカレーライスだった。具は……見た感じ無いように見えた。
「カレーにライス。確かにカレーライスですね。確かにこれはカレーライスだ」
そう言うと誠は『カレーライス』に添えてあったスプーンを突き立てた。
第34話 武装警察の日常 昼飯編 (下)
誠がカレーライスのルーの中に具が入っているかどうか、スプーンでかき回して確認していると、ため息が聞こえてきた。
顔を上げた誠はすぐにこのため息の主は、この部屋のトップである『人類最強』こと、クバルカ・ラン中佐であることが分かった。
「駄目だ。蕎麦は色々試したが、今回で分かった。蕎麦は駄目だ。少なくともここに出前を出している店はどれも駄目」
ランはそう言うと半分死んだ表情で蕎麦を啜った。その様子をうなづきながら見つめていたかなめが口の中のものを飲み下すと、いつの間にか手にしていた缶入りの日本茶を飲んで一息ついて口を開いた。
「んなもん決まってるわな。蕎麦は『つきたて、打ちたて、茹でたて』って決まってんだ……豊川工場抜けてる間に伸びるわ……当たりめえだ」
そう言ってかなめは自分のどんぶりに取り掛かる。誠は具に期待することをあきらめてカレーを食べ始めた。
「次回は私か」
そう言ったカウラの机の前を見る。5分しか経っていないのに、すでにそのお重の中身はカウラの消化器の中に消えていた。
「ピザとかハンバーガーとかは止めとけ、アタシはあー言うの食わねーんだ。それ食うぐれーなら、コンビニで麺類買って持ってくるから」
誠がカウラの早食いに驚いている視線の向こうで、蕎麦の残りをどうするか悩みながらランがそう言った。
ゴトンとどんぶりを叩きつけるような音がかなめの席の付近からしたので、誠は驚いてそちらに顔を向けた。
「アタシなら……そうだな。うちご用達の『沖縄料理、みやこ』の一択だな」
これもまた尋常でない速度で食べ終えたかなめがそう言った。
「あそこは出前やっていないぞ」
カウラがこれもいつの間にか取り出したコーラのペットボトルを飲む合間にそう言った。
「なあに、島田をこれで脅せば一発。アイツ直下の兵隊がなんとかするだろ……ふっふっふっ……」
ニヤニヤ笑いながらかなめはショルダーホルスターの銃を抜く。誠は三人の顔芸に付き合っても意味がないと思ってカレーを食べることに集中した。
「撃つなよ……頼むから撃たないでくれよ……」
さすがにいかにも撃ちそうな雰囲気をかなめが放っているのだろう。カウラが心配そうにそう言った。
「島田の馬鹿は、撃っても復活するから大丈夫。フルメタルジャケット弾で手のひらとか撃てば……ほら、貫通するから。摘出とかの手間がかからない。アイツならすぐ再生するだろうからあとは何もなかったようになる。おびえたアイツと、おびえたアイツの兵隊。そして弾が当たった壁が残るだけ。コンクリで跡を消して、口裏合わせるという事で結局は目的は……果たせる」
かなめのとんでもない謀略に、プラナリア並みの生命力を持っていても不思議ではない島田の行く末を心配しながら誠はカレーを混ぜながら口に運んだ。
「そうか、島田を脅せば何でもありなんだな」
今度は機動部隊長であり、本来ならかなめの危ない発言を止めてしかるべき地位にあるランがとんでもないことを言い出す。
「じゃあ、島田の兵隊で、ここの近くに下宿している連中から、一番おいしい店を上げさせて、上位10位から選びます」
カウラは完全に島田がこの三人に怯えていることを前提に話を進める。
誠はまだここに残ると言う決断をとりあえず言うのはまだ先にしようと思いながらまずくて具の無いカレーをスプーンで口に運んだ。
次回メインヒロインにして欲しいキャラ
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西園寺かなめ
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カウラ・ベルガー
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アメリア・クラウゼ
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ローラ
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神前ひよこ