※この作品はR-18です。

御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい   作:ヤングコーン

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よう!俺の名前は御手洗ジャンク!
今回はとにかく家庭の事情の話ばかりだぜ!
偉そうな態度を取る父さんは気に食わないが、
親の金で生活している上に偉そうな事言ってる俺よりマシなのがな!

…なんかもう簡単なバイトでも探そうかなと思えてきた。


14話 父と母と俺と

「一緒に食事するのはどのぐらいぶりかしらねぇ」

 

久しぶりに見る母の顔は前より少し健康的にふっくらとしていた。久しぶりに会ったためか、あるいは最近の傾向かとても饒舌に最近の事を話してくれる。父とは2泊3日の旅行に出かけた話もしていた。数日間、家を空ける事もあったと聞いていたがまさか一緒に旅行に行ってたとは。

 

そこでカニに関する知識を披露したら、本職の方に訂正されて赤面していたとか。この明るい母からは、とてもあの弟妹の言う団体にハマった母の人物像が一致しない。あの話は本当だったんだろうか。

 

「あれからどう、不摂生な生活をしていないでしょうね。夜はきちんと歯磨きをして早寝を心がけて、早く職につきなさい」

 

「わかってるよ」

 

「それと、いい人は見つかった?」

 

「気が早いよ」

 

「お母さんもいつまでも元気してないからね、早く安心させてちょうだい。…あ、そうだ」

 

ショルダーバッグからパンフレットを取り出した。まぁ…、凛々解脱の会の物だった。嘘ではないらしい。そこでの活動とか、自分が何をしているのかとかそう言う事を事細かに伝えている。あまり興味はないが一応ちゃんと聞いておいた。

 

表向きはやはりそれほど怪しくはなく健全的だ。

 

「ここにね、沙織ちゃんって良い女の子がいるの。その子にうちの息子はどうかって聞いてるんだけどね、今度会ってみない?」

 

「何で俺のいない所で俺の恋愛の話を進めるんだよ。おかしいだろ」

 

「あんたが縁がないっていうからこっちが探してやってるんじゃないの」

 

小さな親切余計なお世話だ。どうせ予定がないからって向こうで勝手に日時を決めてしまったらしく、待ち合わせ場所と時間を記したメモをもらった。果てには実際に会う手はずの子とは連絡先を好感してないらしくこちらから断りの連絡も取れない。

 

正直、会いたくないがすっぽかせば母の立場もある。会って断るぐらいはしなければいけない。俺はため息をついた。

 

それから、活動の内容とか交流があるとか近況とか色んなことを話し続ける。本人は楽しそうなんだが、入団するつもりがない俺にとってはただ話を聞くのが疲れるだけだ。1日当たりの家族との会話が5分未満の家庭は危ないと聞くが、こうして一方的に聞くだけの会話もカウントされるんだろうか。

 

話を適当に聞いていると、とりあえずパンフレットだけでも見る様にと念を押して渡された。そういえば、隆盛は家にシュレッダーを持っていたよな。

 

しばらくすると、店に父がやって来た。

 

「父さん!?何でここに!??」

 

「次郎が俺を年寄り扱いして会社に長居させてくれないんだ。あの若造め」

 

次郎さんは次期社長の人だ。こう悪態を付きながらも、満更でもなさそうに言う。きっと信頼しているんだろう。いや、じゃなくて何でここに?父さんは一緒の席に座って料理を注文する。俺が仕舞い損ねたパンフレットを見られた。

 

それを摘まんでみると、また置きなおした。

 

「なんだ、お前も入団するのか?」

 

「『も』って…?」

 

「俺と母さんは凛々解脱の会に入団してるんだよ」

 

俺は「へー」と生返事を返したが内心は頭を抱えた。離婚よりマシなのか、もっと酷いのか…。父は咳ばらいをすると、トイレへ行くと言って立ち上がった。そして途中で俺の肩のあたりを母に気づかれない様に叩いて行った。

 

呼んでいる、そう思って少ししてから俺もトイレに向かった。父さんはスマホを見ていたが俺が来たのを確認するとすぐに話を始める。

 

「おい、美穂と隆盛をお前の家に連れていけ」

 

「は?」

 

願ったりかなったりだが何を藪から棒に。俺は何かあるんじゃないかと身構える。

 

「俺は凛々解脱の会の会長の議員に用事があるから入団したが、用が済めばすぐに抜ける。問題はどっぷりハマってる母さんだ。今は構ってやれないから放置するが、時が来れば俺から説得する。だが子供は関わらない方がいい」

 

「分かってるんだったら今すぐ母さん連れて抜けてくれよ。会社から身を引いて、母さんと一緒に過ごしてやれば変な宗教とか活動になんかハマったりしない。弟も妹も、安心して生活できる」

 

「黙れ。いいか、社会人になると言う事は社会の一部になると言う事だ。個人が尊重されるこのご時世、ましてやニートのお前にはわからんだろうが一身上の都合じゃ動けなくなるんだ。俺だってそろそろ実を引いて老いらくの余生を楽しみたい。だがお前が思う程簡単じゃないんだよ」

 

俺が子供のころからいつもそうじゃないか。家族の事は後回し。この年になってまでそんな事を言う。

 

色々と言いたい事はあるが、今はとにかく美穂と隆盛を親の許可を得て合法的に俺の家に匿えるようにするのが最優先だ。俺はのどまで出かかった言葉を飲み込んで頭を冷やすように努める。

 

「…分かった。美穂と隆盛は俺の家に泊める。だけど、そっちの用事が済んだら母さんの事は必ず何とかしてくれ。俺も協力する。だからもっと家族の事を大事にしてくれよ」

 

「俺はいつでもそうしている。これまでも、これからも。お前には分からんだけだ」

 

そう言って俺に札束を渡した。今月分の仕送りだ。2人の分もあるので今までより分厚いが、金のやりくりはしっかり考えていかなきゃいけない。特に隆盛は色んな活動で遠くに行くからな…。でも美穂だって多感な時期だ。そのへんの管理は俺がしっかりしなければ…。

 

その後、凛々解脱の会のすばらしさについて白々しく語る父と、それを共感して一緒に盛り上がる母。父さんの真意をしれば母は悲しむに違いない。でも、今は真実を告げる時じゃない。俺もこの時は父の騙しに加担する他なかった。

 

父はまた仕事があるらしく現金だけおいて店を去って行った。

 

食事を終えると母と一緒に並んで分かれ道まで歩く。

 

「母さんはどこか行きたいところとかあるかな」

 

「んー?そうねぇ、皆で一緒に温泉行きたいな」

 

「そっか…。俺が都合がつく様にセットしてみるよ。父さんにも相談するし、美穂にも隆盛にも」

 

「ははは、しばらくは母さんが忙しいから無理だろうね」

 

突然ボケてくるので俺も笑った。昔はこうして一緒に歩いたな。母さんに手を引かれて…。

 

「何もしてあげられなくてごめん」

 

「いいんだよ。生きてるだけで私は満足」

 

目頭が熱くなってきた。今は自身が描く最善のために紆余曲折することもあるけれど、いつも本心には家族を想う気持ちを抱いていたい。自責の念に駆られそうな気持を抑えて今は平生を装う。すでに父さんから適当な作り話をされてるらしく、美穂と隆盛が我が家に来ることは分かっているようだ。

 

たまにはちゃんと顔を出さなきゃと思いつつ、分かれ道で別れた。

 

 

 

 

 

家に帰ると、どうやら京間が来ているようだった。リビングルームで弟妹達と一緒にバランスタワーゲームをしている。京間は追い詰められているらしく、慎重に慎重にゲームを進めていた。俺はわざとらしく大きく音を立てて室内に入る。

 

「おっすおっす」

 

「「おかえり~」」

 

弟妹は明るく迎えてくれたのに対して京間は何も言わず脅威の集中力を以て事なきを得た。

 

「おかえり、貞夫。今はゲーム中だから静かにね」

 

お邪魔していますを言わないあたり、イソフラボンと同様本当にこの家を我が家の様に思い出してるな。まあ構わないけど。

 

弟の番だ。途中までは上手く行っていたが、ちょっとした判断ミスで窮地に陥ってしまう。それ以上切り返しようがない事を悟ると、敗北を認めた。罰ゲームに何かコンビニで買ってくることになってるようだ。京間は大福、美穂はフルーツオレを頼んでるようだ。

 

ゲームには参加していなかったが、ついでに俺の用事も聞いてくる。俺は金を渡すと電子マネーを3000円分買ってくるように頼んだ。最近、クソゲーが豊作なのよね…。

 

色々と問題が立て続けに起きるもんで一時期はどうなるかと思ったが、今はとりあえず丸く収まった…はず。後の事は後で考えるとして、今は愉快な家族が増えたことを喜ぶことにするのだった…。

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