御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい 作:ヤングコーン
小説を書きたいのに書かせてもらえないぜ!
小説って間隔があくと忘れてる設定とか伏線とか思い出して
後から苦労したりするからできるだけ早めにかいてしまいたいんだよな!
自宅の階段から転げ落ちた。高さはそれほどじゃなかった事と、打ち所が悪くなかった事もあり大した怪我じゃなかった。遊びに来ていた京間が珍しく慌てた様子で無事の確認をしに走ってきた。どうしてもと説得され病院に行った。
結局、特に問題はなさそうだったのだが京間はとにかく心配している。余計な心配をかけたくなかったので家族には話さないつもりでいたが、後日何かあった時のためにちゃんと話をしておくように何度も念を押された。
結局、家族にもかなり心配されたしイソフラボンの心配もかなりものもだった。そんな大げさな…と思ったが、階段転倒での死亡者数はかなりものらしい。今度からスマホをしながら階段の上り下りは絶対にしないでおこうと心から思った。
関係はないと思うが、数日後に熱が出た。深夜にかけて急に熱が上がった。頭痛が酷く何を食べても味がしない。でも翌日には何事もなかった様に微熱まで下がった。
もう元気だと何度も言ったのに結局病院に連れていかれた。やはり問題はないらしい。それを聞くまでみんな安心してくれなかった。
家に帰った後も部屋にパソコンがあると必ずやるだろうといって、京間とイソフラボンはパソコンを部屋の外に持って行ってしまった。スマホからでも書けなくはなかったが、やはり同じ時間を使って書ける文量があまりに違うのでやはりパソコンは欲しい。
ちょっと過保護なんじゃないのか…??
そろそろ元気になったので部屋を出ようと考えていた矢先、ドアがノックされた。やがてスゥーッとイソフラボンが入って来る。
「調子はどう?」
「ノートパソコンがあったらもうちょっと良くなるんだがなぁ」
ノートパソコンがあるのでアレさえあればベッドの上に台を置いてでも書けそうなもんだが。もちろん許してくれそうな雰囲気ではない。彼女はドアから半分だけ体を出してジト目で見ながらつぶやいた。
「ミザリーシリーズなら全部読んだわ」
「おいやめろ」
納得する物語を書くまで監禁させられるヤツ…。
イソフラボンは入り口でそうしたままずっとこちらを見ている。入って来るか、出ていくなりすればいいのだが…楽しいのだろうか。なんとなくジト目のイソフラボンとにらめっこで遊んでいたが、やがてスゥーッと部屋から出て行った。
しばらくするとパソコンバッグを持って戻ってきた。
「京間に見つかるとうるさいし、私も共犯だからね。ちゃんと見つからない様にするんだよ」
「あざす」
イソフラボンは部屋を出て行った。俺は続きが書けるとわくわくしながらパソコンを取り出すのだが…。ACアダプターがない。しばらく使ってなかった事もあり、充電もない。オワタ。
「あのー!すみませーん!イソフラボンさーん!」
俺は大声でイソフラボンを呼ぶ。聞こえない。電話をかける。何故か出ない。このパソコンのACアダプターはここにしまってた記憶がある。何か用事があって他の場所に置いたはずはない。何故…。
「イソフラボンさーん!イソフラボンさーん!」
遠くには行っていないはず。近くにいる。ならどうして応答しない。からかっている!?
「陽子ォォォオオオオオ!!!」
「貞夫ォォォオオオオオオオ!!!!」
俺の叫び声に対してドアを蹴って現れるイソフラボン。何だちゃんといるんじゃないか。
「ACアダプター知らないか?」
イソフラボンはとたたたたとこちらに走って来る。
「どうも、昨晩助けていただいたACアダプターです」
「かたじけのうござる」
俺はそう言いながらイソフラボンの鼻に右手の人差し指と中指を突き刺した。
「ふんがっ!!」
「おかしい。電気が流れてこない」
「ふんががっふががっ!」
必死の抵抗の末に逃げられた。俺はティッシュで指を拭くと、ノートパソコンをそのあたりに置いて不貞寝する事にした。下の階からキュート&ポップなbgmと激しいSEが聞こえてくる。あれは確か…スイートルーパーっていうダウンロードゲームの販売サイト、パグオン専売のゲームじゃないか。
マネーロンダリングのためにクソゲーを作るつもりだったが、そのゲームを作るために依頼した相手が偶然にも有名会社をやめてフリーになったばかりの天才ゲームプログラマーだったため割と良作ができてしまった。そのせいでそのゲームが話題になり、ロンダもバレてゲーム販売も停止になってしまったわけだ。
販売元が逮捕されてしまったのでもう再販は見込めない。極めて短い期間内で買えたユーザーのみが遊べるカルト的な人気を誇るゲームだ。俺も購入を考えていたものの間に合わなかったため、俺のパソコンじゃない。誰かが自分のパソコンを持ち込んでこの家でやっている。
なくなったACアダプター、数か月前に短期間で販売停止になったはずの幻のゲーム、持ち込まれたパソコン…。そうか、誰かが俺のACアダプターを使ってノートパソコンをしているな!
リビングルームに行くと、京間がパソコンに向かってスイートルーパーをやっていた。あのパソコンは…隆盛のものだ。当の隆盛は隣でそのプレイを眺めている。
「兄さん?もう体の方は大丈夫?」
「それはもちろん大丈夫だが…一つ聞かせてほしい。そのパソコンのACアダプターは隆盛の物か?」
「いや、違うよ。兄さんのと型が合ったから使わせてもらってるんだ。兄さん、ノートパソコンはもう使ってないだろう?」
確かに全然使っていなかった。でも今はいるんだ。
「兄さんおはよう。どうしたの?」
…いや、よく考えたらもう俺は微熱程度だ。もうパソコンぐらいやってもいいだろう。俺は飽くまで堂々と「なんでもない」と言うとデスクトップパソコン前に座ってスイッチを押した。俺の部屋にあった俺のデスクトップパソコンがない以上はここでやるしかない。
そう思っているとゲームの手を止めて京間がやって来た。
「まだ微熱だろう?ちゃんと休まなきゃ」
「いいんだよ。俺はもう元気だから」
京間は体温計を持ってきて俺の脇に挟ませた。俺は作業を進めながら体温計の結果が出るのを待つ。やがて音が鳴るとそれを取ってみる。37.5度。やっぱり微熱じゃないか。京間はため息をつくと体温計をしまってから俺を抱きかかえた。
皆驚いて俺達を見ている。さすがに恥ずかしい。
「お、おい離せよ!」
「ダメだ。今日はゆっくり休むんだ。どうせ時間はあるんだから、今日ぐらいゆっくりするんだよ」
そう言って俺は部屋まで運ばれる。意外に腕っぷしあるんだなぁ…。のんきにそんな事を考えてしまった。
「自分で歩けるって…」
「リビングルームに戻っちゃうだろ」
結局部屋まで運ばれてしまった。そしてベッドに寝かせられる。近くに隠してたノートパソコンを見つけるとため息をついた。京間は靴下を脱いで一緒にベッドに入った。
「1人で寂しかったんだね?じゃあ今度は一緒にいてあげるから」
「そういうんじゃねえって!」
京間は俺の背中に腕を回して抱きしめる。うっとおしいだけなのに、俺はこうされると何も言えなくなってしまう。
「おやすみ、貞夫」
「……………」
俺も京間の背中に腕をそっと回して抱きしめると、もうしばらくだけなら寝てもいいかなと思った。