御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい 作:ヤングコーン
何とか新作の小説を書ききったぜ!
俺は名作だと思っていたが…全然反応が来ない!
理由が分からず苦しんでいる所をイソフラボンが
読んで内容を確認してくれるという…。
何が駄目だったんだ何が…。
†
それからの僕の人生と言えばバラ色だった。クエリは誰にも見えない。だから、どこでも一緒に行ける。疑似デートもした。手もつないだ。一緒に笑いあった。パフェも食べに行った。遊園地にも行った。
仕事だって、いっぱいっぱい手伝ってくれた。エロ本の隠し場所だけが困ったけど、それ以外は本当になんでも楽しかった。
警察との間の誤解もちゃんと解けた。親御さんから感謝もされたし、両親ともあれからは徐々に関係を改善していっている。クエリのいない毎日が考えられない。1年もあっという間だった。しかし、年末にかけて徐々に彼女の力は弱まって行った。
次第に魔法どころか生活も難しくなって行き、今では生活のほとんどを寝床で眠って暮らしている。
「クエリ…」
時はクリスマス。俺は仕事を休み、どこへも行かずただクエリのそばを離れなかった。クエリはパチリと目を覚ました。
「おは…、よう。また眠っちゃってたか…」
「いいんだ。クエリ、よく休んで…」
「君に…言いたい事、聞きたい事がたくさんある…」
僕はうなずいた。彼女の次の言葉をずっと待つ。
「…ロ○コンは好き?」
「……ロ○じゃなくて、ロ○コン?」
彼女はうなずいた。ええっと…好きかと聞かれても…。
冗談を言っているような顔じゃない。いや、考えるんだ。かつては僕は世間に虐げられる側の人間だった。僕と同じ境遇の人間がどうして嫌いなものだろうか。僕はうなずいた。
「ああ、好きだ。仲間だ。犯罪に手を染めていないことが前提だけど」
Yesロリコン、Noタッチ。僕らの理想だ。僕もクエリと長く暮らしているが、むやみなボディタッチをしたりしていない。年齢は分からないけど、少なくともその容姿の彼女に手を出すのは憚られる。
「私がもしいなくなったら、私の代わりにロ○コンを救ってくれる…?」
「クエリ、いなくなっちゃ嫌だ!!」
クエリは首を横に振った。
「…私は君と生涯添い遂げる事はできない。神様の元に帰らなきゃいけないから…」
現れた当初、確かに彼女はわずかに光を放っていた。それが少しずつ弱まって行っていた。役目を終えた彼女は天使としての生を終えるのだという。そしてもう会えないのだと。
こんな残酷な運命…。
僕はただ見つめるクエリの手を両手で握って泣く。みっともないのは分かっていた。それでも、いとしい人を失う悲しみと言うのはすさまじいものだった。
結局、僕は彼女に何もしてやれなかった。それが彼女の最後の願いだというなら、それを捨ておくことができるだろうか。僕はうなずいた。
「分かった。僕は同じ境遇の人間を救うと誓うよ」
「よかった…」
彼女は僕の手の甲に触れた。すると、僕の手の甲に月桂冠のピクトグラムが現れた。手の甲に宿った光が僕の全身を包んで…。僕の姿はクエリになった。何だこれ…。
目の前にいた、クエリだった少女は光を放つと冴えない中年男性の姿になる。
「…これでやっと元の時代に帰れる…」
「????」
「今から君はクエリとしての人生を500年送る事になる。その中で、君と同じロ○コンを救い続けるのだ。500年後、次のクエリ候補を探せ。そうすれば500年前のこの時に戻る事ができる。そして晴れて最高の人生を送る事ができるだろう」
「…次のクエリ?言っていることが分からない。君は誰なんだ??何を言っている???」
「私はクエリだった者だ。薄情だな、手をつないだりあーんしたりしたじゃないか。分からないか、かくいう私も先代のクエリに救われたんだ」
そんなバカな!でも、自身の姿を確認してそれが間違いじゃない事がわかる。僕は確かにクエリになった。すぐそばに僕の形をした何か出現する。それはいかにも僕らしい事をする。スマホをしたり、ゲームをしたり。僕らの事が見えていないし、クエリがいない事をどうこう言ったりしない。
頭が混乱している。これは夢だ…。
「今の君をクエリと呼ぶべきなら、今の私は何と呼ばせるのがいいだろう。まあどのみち長くは話せない。後の案内は神様がしてくれる」
元・クエリだったおじさんは姿が消えかけている。
これまであの人と過ごした毎日は嘘じゃない。僕は確かにあの人に愛情を感じていた。どうだろう。姿かたちが変わり果てた彼をまだ愛しているだろうか。頭が混乱している。
「クエリ、僕は…」
言葉が出てこない。僕が愛していたのは結局、クエリと言う形をした入れ物だったんだろうか。自分が最低な奴に思えてくる。彼は微笑んだ。
「いいんだ。その複雑な感情も、この心も全て含めてクエリなんだろう。さらばだ少年」
彼はそう言って消えた。心が痛かった。自分の醜さも、最後まで愛せなかった事も何もかも。近くで僕がパソコンに向かってエロ画像を見ながら一物をしごいている。
そうしていると、僕の体は吸われるように天に昇って行った。
光が下りてくる。これが神様と言う事なんだろうか。その神様は僕の前に降り立つと、ゆっくりと姿を明らかにする。
「…か、母さん!?!?」
「神様も同じでねぇ。あんたもクエリとして活動することになったんだろ?」
「い、いやごめん頭の理解が追い付かない。お母さんは神様だったの!?」
「あんたが無事に生まれる様に頼んだら神様が叶えてくれて、うまい事問答に引っかかってしまって神様にさせられちまったのさ。お前も心覚えあんだろ?あと120年で今の時代に帰れるよ」
【「ロ○コンは好き?」「私がもしいなくなったら、私の代わりにロ○コンを救ってくれる…?」】
そういえば似たような問答があった…。アレは継承のために必要だったのか。なるほど嵌められた…。というか、もしその話が本当なら僕が見ていたあの母は一体何者なんだ?今さっきの僕みたいなものなのか?わからない。
クエリとして活動するのにあたってロ○コンが人格になるのは、最もロ○コンの好むロ○を演じるのが得意なのがロ○コンだからと言う冗談のような事実だった。分かるような分からないような…。都にもかくにも僕もこれから500年はクエリとしてロ○コンを救わなきゃこの時代に帰ってこれない。
とんでもない事になってしまったな…。
詳しい業務内容とか、人の救い方とかしていい事してはいけない事などの説明を聞く。380年間神様として生きている母と会う事になるだなんて思いもしなかった…。
僕は435年前にこれから飛ばされる。そこでロ○コンを救わなきゃいけない。僕がこれだけ愛し、こんな目に遭わせる事になったクエリの姿をしているというのは非常に奇妙な気分だった。
…これからクエリとして生きていく。僕はこの何とも言えない気持ちを胸にしまい、これから救うロ○コンの元へ飛んで行った。
†
「…できた。これ名作来たんじゃね?」
俺はテンション上がっていた。名作の予感がしたからだ。一時はどうなる事かと思っていたが、これは良いオチなんじゃないか?俺は誤字脱字チェックがてらに読み返す。
間違いない…名作だ。ロ◯コンでないながら、こんな怪作を作れる自身の才能が恐ろしい…!
俺はわっくわくてっかてかで小説を投稿した。それから数時間は小説サイトに張り付いて通知欄を観察していた。食事中も、お風呂中も、寝る時も何度もサイトを確認した。
投稿してしばらくはそこそこ伸びたがあっという間にいつもの通りの伸び具合になる。
…これはアレだ。しばらくして発掘される埋もれた名作タイプだ。間違いない。俺はサイトに張り付いて何度も更新したい気持ちを抑えて眠った。
それから、何日経っても反応がない。実は続編さえ考えていたのに…。これなら他の新作を書いた方がマシだ。
更に数時間。俺はひょっとして、おかしなテンションで書いたからアレを面白いと勘違いしてしまったのかもしれない。そう思って数話読み返す。
…やはり面白い。小気味良いギャグ、テンポ、ト書きとセリフの比率…どれをとっても良い。何故なんだ、何故伸びない…。非公開にはしていない。SNSに拡散もした。なのに伸びない。
「何故なんだ!」
俺は叫んだ。隣にいたイソフラボンがビクッと飛び上がって驚いた。
「ビックリシタナモー…。何さ急に叫んで」
「この間書いた小説、最終回を迎えたんだ。名作を作ったはずだった。なのに伸びない!」
まだ俺がそこそこ小説を読まれていた頃、集めたフォロワーがいる。確かにフォロワーのTLに流れたはずだった。何回もシェアした。それでも伸びない。俺の感性がおかしくなってしまったのか…。
昔、ネットで見た事がある。売れた漫画家のある話だ。その漫画家はこれが面白いという漫画を描いた。そしたらすぐに反応が返って来て、面白い面白いと楽しんで読んでくれたそうだ。そして、飽きられて行くとどんなふうに書いても反応が返って来なくなった。
次第に何が面白くて何が面白くないのか描いてて分からなくなっていった。具体的な感想がないからどう改善していいのか分からない。まるで沈み続ける水の中をもがくように…。
あの時は気にもしなかったが、今の状況がまさにそれなのかもしれない。「これが面白い」が分からない。
「…読んでみようか?」
イソフラボンは困惑しながら言った。俺は彼女の両手を両手で握った。
「頼めるか!」
「いいよ…。でなきゃ新作を書いてくれないんでしょ?」
そういえばイソフラボンとしては早く新作を書いて欲しいんだった。彼女は乗り気じゃなさそうだったが、俺の書いた小説を読み始めた。隣で小説を読んでいるのをまじまじと観察してると思うが本当に読むの早い。俺は次の言葉を楽しみに待った。
そして数十分後、彼女は静かにスマホを閉じた。
「ジャンク、どこか旅行行こう?」
「旅行?」
「きっと疲れてるんだよ」
「????」
良く分からないが、本気で心配された。
俺はどうしても今すぐに内容についての感想と意見が欲しかったので、気分転換とかは後にする事にして今はそれを尋ねた。彼女はあまり快さげではなかったがようやく感想を教えてくれた。
イカソーメン食べたい。