御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい 作:ヤングコーン
今回なんて主人公は満身創痍、ヒロインは死亡。どうしたもんだか。
だけど俺は負けない!ちゃんと心温まる物語を書ききってみせる!
新たな搭乗者を得たタナトスラスターの強さは凄まじく、熱線が直撃したイロスゲイン。機体そのものは無事だが、地獄のような熱さとイロスゲインの回復エネルギーの吸収に伴う快感に搭乗者の主人公は意識不明に陥り、急いで本部に回収された。
敵は攻撃の手を緩めてくれない。何とか意識を取り戻した主人公だったが、とても戦える状態ではない。見かねたヒロインは自らイロスゲインに乗ると、タナトスラスターに戦いを挑んだ。
操作の不慣れ、問答無用に襲い掛かる快感に戸惑い上手く操作できないヒロイン。明らかに操縦センスが先程と異なる事から警戒して殺しにかかれないタナトスラスター。
高い出力を要する技を使うたびに、大きな損傷を受けるたびに、あられもない醜態を皆に見られてしまう。誰にも聞かせた事のない情けない声が、表情が神経を逆なでする。高いストレスと不快感と同時に無理やり快楽漬けにされる脳。彼女の理性は摩耗し、心は音を立てて軋んでいた。
『くひひ、いひ、ひひ…』
『もういい、下がるんだ!援助する!帰還せよ!!!』
無線の声が入る。彼女の耳には確かに届いていたが、心には届いていない。
『私…見られてイってる…くくく…、情けない顔をして…涎を垂らして…ふひひ』
コクピットに穴が開いた。死が眼前に迫る。彼女の理性が焼き切れた。
『ふひひあはは、死ね、死ね!皆死ねぇ!ぶっ殺す!!!』
空いた穴が瞬時に塞がり、イロスゲインの背中に生えた羽が触手の様にタナトスラスターの四肢に突き刺さる。そしてそのまま地面に叩きつけた。ヒロインの全身に快感が走る。髪の毛一本の先まで神経が通ったかのように感じる。触れる空気が全ての肌を愛撫する。
突き刺さった触手はタナトスラスターの内部の構造を破壊して浸食する。搭乗者の悲鳴が厚い鉄を越してここまで聞こえてくる。タナトスラスターの自動修復には快楽ではなく痛みが伴う。
『極上の痛みであなたの脳を漬けてあげる!あはははは!』
イロスゲインの腕が鋭く変化する。それをタナトスラスターのボディにズガズガと突き刺す。全身に強い痛みを感じ、修復を急ぐタナトスラスターの装甲は非常に硬くイロスゲインのアームも損傷を加えると同時に壊れた。
搭乗者によるものなのか、元々の性能なのか、イロスゲインの修復はタナトスラスターの修復を上回っている。およそ人間が生涯感じ得るであろう感覚を超えた、快楽の濁流にもまれたヒロインはすでに正気を失っている。
在りし日の彼女の面影はなく、髪の毛は乱れ内容物なき嘔吐を繰り返し、服は自ら引き裂いて手淫をしながら笑っている。操作レバーも全てのスイッチも彼女の思いのまま動いている。もはや、肉体の動作に不便さを感じるほどにイロスゲインと同調している。
ついにコクピットを探り当てたヒロインはコクピットを切り開いた。
『見ーつけた!』
搭乗者は改造が施されたであろう痕のある思ったよりまだ若い青年だった。白目をむいている。ヒロインはイロスゲインのアームを元の拳に戻すと、コクピットめがけて殴りつける。肉のつぶれた音など聞こえない。機械が砕ける音だけがした。
しかし、コクピットに広がる赤い絨毯と修復が進まないその機体を見れば先ほどの生き物がどうなったかは想像に難くない。
『あはは、あは、死んじゃった…。気持ちよかったかなぁ…』
ヒロインはタナトスラスターを掴み上げると、小学生が体操着を入れた袋でも振り回す様に掴み上げては地面に叩きつける。
『主人公君…私、先にあっちで待ってるね…』
イロスゲインはタナトスラスターを抱きしめるそして腹部に高出力のエネルギーを蓄え、放出した。機体を覆うほどの極太レーザーはタナトスラスターを宇宙の彼方へ飛ばしていった。そして、ヒロインもまた絶頂を迎えコクピットに消え果る。
†
「ねえ、ジャンク君。ハートフルって意味を検索した事ある?」
「ああ。調べた。和製英語で、心が温まるって意味だ」
「知っててこうなるんだ…。ねえ、ヒロイン死んじゃったよ!どうすんのこれ!ねえ!」
「しょうがないだろ…。昨日、好きなゲームの続編が出るって聞いてテンションが上がっちゃって…。そして勢いに任せて書いたらこうなったんだよ」
「なして?」
イソフラボンは不機嫌だった。今作のヒロインは彼女にとってお気に入りキャラだったからだ。死に別れを惜しんで何度もヒロインの死ぬ話を読み返してため息をついている。彼女の最新作もできたらしいので読み返しているが、やっぱりちんぷんかんぷんだ。
この文章の作成にどうして推敲がいるのか分からない。
ちなみに、いつぞや彼女の小説の解読を試みた解読班がいた。某動画サイトにアップロードした所、今一番の有力説としてネットを賑わせた。彼女の知名度の向上に一役買った形になったが、その動画のコメント欄に本人登場しては「違いまーす」とだけ書きこんで炎上した。
そんなこんなあって未だに多くのアンチとファンを抱える彼女だが、あの解読班は未だに解読に勤しみ彼女のファンとして活動を続けている。
「それともう1つ不満。男性のエロ描写が具体的なのに対して女性のエロ描写が抽象的過ぎるよ。男性の時はもっと尻がどうとか、先走り汁がどうとか言ってたじゃん」
「しょうがないだろ。俺は童貞なんだ。前に削除したアカウントで具体的に書いて間違いを指摘さあレ、大恥をかいてトラウマになってるんだ」
「草」
あの時は酷い目に遭った。ネットで見栄を張って彼女がいたり既に経験済みって設定だったのに…。あの日の雪辱は今の俺にしっかり継がれている。
「しょうがないなぁ。今しがた初体験をさせてやるから女性パートのエロ表現をもうちょっと気合を入れて書いてよ」
そういってイソフラボンは自分の尻をバシンと叩いて見せるとパンツを脱ぎ始める。
「性行為には順序というものがある。まずは手をつなぐ所からだな…」
「いや、ジャンク君と付き合うつもりはないよ。ただ寝るってだけ」
「えぇ…。俺は交際相手以外との性行為はしない!君だって初めての経験は大切にしなよ」
「いや、私処女じゃないし」
「左様か…」
時間も遅くなってきたので、イソフラボンは家に帰って行った。
俺はソファでひと眠りしようと思っていると、イソフラボンのカップが置いたままになってるのでそれを洗い場に持って行って洗った。片桐といいイソフラボンといい最近は気が付くとお手洗い場に歯ブラシが増えたり私物が増えてるんだが…。俺の家、侵略されてないよな。
まだ先は長くなりそうだなぁ、変態奏功イロスゲイン。よし、気合を入れて頑張ろう。…今更だけどヒロインは死んでしまったし今後の搭乗者どうしよう。主人公は今出撃できないし…新しい搭乗者を複数出すか。
俺は今後のストーリーを考えながらソファで眠りについた。