※この作品はR-18です。

御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい   作:ヤングコーン

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俺の名前は檜木貞夫。
貞夫の物語はこれでおしまいだ。
じゃあ何で最終回じゃないのかって?それはだな…。


32話 俺の物語

翌朝、俺は早く起きた。そして服を着るとリビングルームに向かう。そして、昨日買っていた煙草っぽい形状の駄菓子を加えて一息ついた。コーヒーを沸かす気力はない。昨日の事が色々と頭によみがえる。あんなことになるならもっと事前準備をしっかりしておくんだった。

 

あれは失望されても仕方がない。沙織さんは優し過ぎる。正直…、俺が言う事じゃないのだが性行為が怖い。相手を傷つけてしまうかもしれないという事も、上手くやれるのかという事も。行為中の運動量は思ったよりあるので体力づくりが必要かもしれない。

 

行為中の勃起を継続させる事も。興奮を維持する難しさとか考えた事がなかった。ううん…。

 

コトッ…。

 

俺の前にコーヒーが置かれた。イソフラボンだった。俺は驚いて飛び上がる。

 

「起きてたのか…随分早いな」

 

「いや、チャレンジするなら絶対に昨晩だと踏んでてさ。初体験がどうだったのか気になったわけよ」

 

「…人に聞くもんじゃなくないか?イソフラボンも聞かれたくないだろ」

 

そういえばイソフラボンは前に処女じゃないと言っていた。経験済みとの事。俺が初体験を語りたくない様に、イソフラボンだって話したくないはず。

 

「私の初体験はだな…ボールペンなんだ」

 

「ボール…ペン??」

 

俺の頭の中で、B級映画にありそうな怪人ボールペン男という謎のクリーチャーが想像される。どういう事??

 

「いや私、処女膜がなかったらしいんだよ。だから考えるとボールペンで無くしたとしか考えられなくて…。それって経験回数に入るだろ?だから私は処女じゃない」

 

「…異性、あるいは同性と性行為の体験は?」

 

「ないな」

 

「処女じゃん」

 

言われてイソフラボンはしばらく考え込む。次第に何か気付いたようで顔が赤くなる。

 

「おいさっきの忘れろ!」

 

「私の初体験はボールペンなんだ…」

 

「やめろバカ!私の純情を汚すな!」

 

イソフラボンが顔を真っ赤にして俺をぼかぼかと叩く。かーわうぃー!!!!

 

充分にからかってやったので、俺は昨晩の出来事を話した。普通に性行為って何をすればいいかわからなかった所から、コンドームが厚めの方が良かった事とか、沙織さんを痛がらせてしまった事とか。

 

「まぁ初経験なんてそんなもんだよ」

 

イソフラボンは俺の肩をぽんぽんと叩いて慰めてくれる。

 

「腰を振る時はこう…突くというより弧を描く感じにするのがいいらしいよ」

 

「弧?」

 

イソフラボンは紙の上に絵を描いて説明する。人によって感じるポイントが若干違う事とか、ペースはこのぐらいの方がいいとか、およそこの辺がねらい目とか、細かなテクニックとか。後できる事ならしない方がいい事とかそういうのも聞いた。

 

こういう時に女友達的な人がいる事の心強さよな…。俺はしみじみ思った。

 

「色々とアドバイスありがとう。回数を重ねて少しずつ探るとするよ。…俺からイソフラボンに対してアドバイスとかそういうのができないのが申し訳ない」

 

「お前は早く新作を書いてくれればそれでいいんだ。それに、美穂ちゃんに関しては向こうが完全にペースをつかんで来るから私はただ寝てるだけでいい」

 

「……いや待て、美穂はそんなキャラじゃないだろ」

 

「割とお前の前じゃ猫かぶってるからな。まだ本番はまだだが、その一歩手前の時の美穂ちゃんと来たらまるで蛇だ。私は全身を丸のみにされるような感覚に陥った」

 

「にわかには信じられん…」

 

あのおてんばで純真そうな美穂が…。いや想像もつかない。まあしたいとも思わないが。

 

 

…誰かが階段を下りてきた。隆盛だ。

 

「おはよう隆盛。起床の時間にはやけに早いな」

 

「徹夜した…」

 

あれ、もしかして…。いやそんなはずはない。俺の部屋は隆盛達の部屋からは遠い所にある。沙織さんの声も割と大きくなかったしベッドだってそこまできしむ音は…しなかったとはいえないか。

 

「ウルトラダリオスターズ・ゼノバースのRTA(バグ技込み)で最速記録出してきた」

 

話しによると世界最速より20秒も短縮できたらしい。そんな馬鹿な。

 

「後から編集して動画を出すから嘘だと思うなら見ておいて」

 

お湯が沸いてるのを確認するとコーンポタージュを作って飲んでいる。まぁその事自体が相当凄いが、まぁ性行為の音が聞こえて眠れなかったとかそういうのじゃなくてよかった。これからはそのことについてもちゃんと考えないといけない。

 

 

 

 

俺は新作のネタが何となく形になりつつあった。パソコンに向き合ってはスリープして、またパソコンに向き合ってはスリープしてを繰り返している。今日もパソコンをスリープさせた。その時、スマホにメッセージが来た。馬鍬からだ。

 

『今日、菊紋寺継雄に戦いを挑む。あれから鍛錬を続けた。記録上では既に勝っている。しかし、未だに恐怖を拭えずにいる。この恐怖を振り払うにはどうすればいい?』

 

俺は電話をした。彼はすぐに出る。

 

「馬鍬、恐怖は振り払うな。臆する己を勇気で抱き克己せよ」

 

『わかった。必ず打ち倒して勝鬨を上げる』

 

馬鍬は電話を切った。あいつなら必ずやれる。

 

少しすると沙織さんからメッセージが来る。少し前にレンタルビデオ店で借りていたビデオを見ようとの事だった。結局、沙織さんを携帯会社で契約させるのが少し怖かったので俺はもう一つのスマホを契約してそれを沙織さんに貸している。

 

俺はリビングルームに向かった。沙織さんは既に準備万端で待っている。

 

ソファに座ると再生ボタンを押した。テーブルに置いてあるのはジャイアントマシュマロ。そのまま食べるつもりらしい。

 

映し出されたのはラブストーリー物の映画。俺らしくない気もするが、沙織さんが見たいと言ってたいので借りた。果たして面白いのだろうか。そもそもドラマ映画とか自体ほとんど見ないので少し新鮮だ。沙織さんは映画を見ながら俳優についてとか、舞台裏の話とかを教えてくれた。

 

登場人物の配役はこれでいいのかとか、展開が少し早くないかとか、今のセリフの声の抑揚はこうがいいんじゃないかとかそんな風な事ばかり気になる。あまりそういう事を言っては興が醒めてしまうので、できるだけ沙織さんの意見に沿った感じで同調する。

 

作中のカップルは何とか恋愛を成就させるも、ちょっとしたトラブルから亀裂が走ってしまう。そのきっかけとなる誤解が解けると、やがてまた仲を取り戻して徐々にまた熱を取り戻していく。最初はちょっとベタだな、って思ってたけど中盤からの展開は普通に燃える。

 

そう思ってると、沙織さんはもたれ掛かって来た。俺は彼女の頭を撫でる。

 

やがてエンディングに突入すると、熱い視線を送って来るので俺はキスをした。

 

「貞夫さ…、こほん、貞夫は私の事好き?」

 

「もちろんだ。沙織は?」

 

「分かってる癖に」

 

悪戯っぽく笑う沙織を押し倒して何度もキスをした。視線が交差する。情欲が尾を引いたが、今はここまで。今日は一緒にドライブに行く事になっている。沙織さんは念入りに変装を、俺は周りに気を付けつつ車に乗った。そうして2人で出かけた。

 

ずっとこうしていられるといいな。いや、それは皆で実現させていく事なんだろう。信号が赤になって止まる。俺はギアの上に手を置いたまま待つ。その手の上に沙織が手を置いた。信号が青になると沙織は手を放して、俺は少し走ってギアチェンジをする。

 

俺達は地平線の向こう、さらに向こう…。ずっとずっと先を見据え車を走らせて行った。

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