御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい 作:ヤングコーン
家族がいると思う様に創作が進まないな!
とはいえ,家族に会えるのは嬉しいもんだ。
困った。未来という時代背景あって治療は早く進んでいるけれど主人公が戦線に復帰するまでにはまだまだ時間がかかる。相手はその間にも次の搭乗者をつれて戦いに来ると言うのにこれじゃ…。
俺はしばらく考えたが、ふと思いついた。
「こういう時は主人公の肉親とか親友とかそういう関係者を代わりの主人公にする事で間をつなごう。しかしどうするかなぁ…」
何か斬新なアイデアが欲しい。ただ登場して、主人公の代わりに乗ってくれじゃなぁ。今の所、主人公の周りにイロスゲインに乗せるにあたっていい理由がある人物がいない。
司令部の連中もイロスゲインに乗せるならちゃんとしたパイロットを選出するはず。うーん…。
…ガチャガチャ。ピンポーン。
誰かが来た。俺は玄関を開ける。先には妹の美穂がいた。
「おお、来たか」
「どうせ不摂生な生活をしてるであろう兄のために可愛い妹がやって来てやったぞ」
「そりゃどうも。何でもいいけど俺の私物に許可なく触ったり漁ったりするなよな」
美穂は俺の可愛い妹だ。俺とは違ってとても人間として優れている。何といっても穢れがない。俺の部屋の各所にあるのは、彼女の純真な心を汚してしまうアレなものばかりなのだ。
これから、きっと数々の出会いが美穂を純真ではいられなくするだろう。しかし、そのきっかけは俺でありたくないのだ。できる事なら、1秒でも長くそのままでいてほしい。それが俺の願いだ。
「それで、隆盛は?」
隆盛は俺の弟だ。こいつは豪胆で、数々の窮地を大胆さと慎重さで乗り越えていくやつだ。ただ、俺の認めるヤベー奴なのであまり一緒にいたくない。
「潮花は今さっき空港についたって」
「空港?旅行に行ってたのか?」
「漫画やアニメに対する表現への不当な圧力を絶対に許さない。国の抱える問題のスケープゴートにしている件について抗議してくるって言ってた」
「どこに抗議しに行くんだよ…」
確かに思う所がないでもないけど。
俺は妹を家に入れた。そしてリビングルームでくつろぐ。
「兄さん、やっぱり片付けした方がいいよ。私も手伝うから」
「これは散らかってるんじゃない。全ての物があるべき所にあり、今すぐに使うために適した場所に存在しているんだ。片付けると元あったものがどこにしまわれたか分からなくなる」
「…ふーん。それじゃ、そこの脱ぎかけのシャツも?」
「洗濯が面倒になったらアレを着ようと思ってな。後2日は持つぞ。俺は殆ど家の中にいるから汗をかかないし」
「不衛生!」
いい子ちゃんめ、大人になると程よい不摂生は妥協しなければならない事もあるのだ。まあ、ニートである俺に関してはただの自堕落の他に理由はないのだが。こう見えてもこの散らかりようも、元あるプライベート空間。つまりホンニャラホニャララなアイテムはこれでもちゃんと片付けだんだぞ。
そうこうしていると、ピンポンと音が鳴った。弟だろう。俺は玄関を開けると、イソフラボンがいた。おかしい。こいつは今日は予定があると聞いていたのだが。
「妹さん、来るの今日って言ってたよね!」
「いや、来れなくなった。通りかかったUFOにアブダクションされてしまってな」
「キャトルミューティレーションされちゃう!助けなきゃ!!」
「確か(自主規制)に向かったらしい」
「ちょっと(自主規制)に渡航してくる」
そう言ってイソフラボンは(自主規制)に向かった。彼女は初めて俺の家族の写真を見た時、美穂に一目ぼれしたらしい。それから何かと会おうとするのだが「この子と相撲がしたい」と言い出してからは俺の方から避けさせている。すまない、イソフラボン。悪く思わないでくれ。きっとお前なら大丈夫。
入れ違うように弟がやって来た。キャリーバッグの中にはどんなお土産が詰まっているのか楽しみだ。俺は荷物を持ってやって家の中に入れた。相変わらず元気そうだ。
「隆盛ー!お土産は!」
美穂はパァーッと明るい表情でお土産をねだりにいく。
「ごめん姉さん。お土産はないよ。旅費でいっぱいいっぱいだったんだ」
「ショボーン(´・ω・`)」
「兄さんごめん、ちょっとベッド借りていいかな。飛行機の中はあまり眠れなくて」
「おう。でもその前にシャワーは浴びておけ」
俺は着替えをやると隆盛はお礼を言って浴室へ向かった。美穂は退屈そうにスマホをぽちぽちと弄っている。俺はそろそろ小説を書こうかなぁ。
「兄さん、暇だしゲームか何か貸して」
「そこのモニターの前にあるやつ好きに使っていいよ」
「…どのタイトルも古いなぁ。コントローラ汚れてない?ウェットティッシュは?」
そういえば、最後にプレイしたときはお菓子を食べながらで、それからは小説執筆に打ち込んでたからそのままになってたんだった。俺は近くの買い物袋からウェットティッシュの1つのパックをとって渡した。美穂は1つ摘まみだしてコントローラを隅々まで拭く。
俺は自分の部屋に戻ろうとすると呼び止められた。
「せっかく遠路はるばる来たんだから話の1つでもしようよ」
「遠路はるばるって…自宅からそう遠くないだろ」
今書いてる小説の内容がアレなんで正直妹の前では執筆したくなかったが、まあ文字表示を小さくして執筆すれば偶然見かけたところで内容まで把握できまい。俺は仕方がないのでリビングルームの隅にあるパソコンを起動した。
こっちのパソコンは俺の部屋にあるパソコンと違って少し性能が悪いので立ち上がりが遅い。こんな事なら少し前につけてスリープモードにでもしておけばよかった。
美穂はゲーム機を起動して、ソフトの1つを入れる。
「アップデートぐらいしといてよー!」
「仕方ないだろ、最近はやってないんだ。アップデートを入れずにやればいいだろ」
「できないですー。アップデートぐらい後回しにできるようにしてくれればいいのに」
愚痴を言いながらアップデートを開始する。その間の待ち時間にスマホゲームを始めたかと思うと、スマホゲームにさえアップデートが来て「ぐえっ」と小さくつぶやいていた。
「暇だからゲームをやるのに、ゲームをやるのに暇になるってどういうことなの」
「そのおかげでバグが解消されるんだから文句言うんじゃない」
「正論だけどニートに言われたくない…」
「いいか、妹よ。俺の事はニートじゃなくてレイトブルーマーと呼びなさい」
「でも就職意欲ないじゃん」
いつの間にか大きくなったな、妹よ。適当に難しい事を言っておけばうなずいてたあの頃の面影はなくなってしまったというのか。またネットを漁って浅知恵をつけるとしよう。でないと兄としての沽券に関わる←
やっとこさ立ち上がったパソコンを操作して共有フォルダを開き、そこからいつも書いてる小説のファイルを開いた。
「兄さん、小説を書いてるんだっけ。小説家にならないの?」
「俺の小説は仕事にはできない。作品を作る事と商品を作ると言う事では訳が違う。俺に売るための商品は作れない。だから仕事にはしないし商品にもしない。消費者のニーズに応えながら自分の作品を作るというのは非常に難しい事なんだぞ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんなの」
そう言いながら俺は小説を書きだした。えーっと今どのへんだっけ。今朝の2時まで執筆してたけどそろそろ設定が多くなり過ぎて何が何だか分からなくなってきた。メモ帳にまとめておいた方がいいのかなぁ。
最近作っておいたあらすじのメモを見直した後に新しい文章ファイルを作って書き出した。暇をしている妹がこちらにやって来る。
「ねーねー、見せてよ。今暇だしいい話題になりそう」
「ならん。いいか、男には荒れ狂う稲光の様な自分の世界があるんだ」
「その稲光の名を劣情と言ったりしない?」
「分かっている事の中から言っていい事といけない事を区別できるのが大人なんだぞ妹よ」
「そうやってまた子ども扱いして!大人を気取るなら、社会人の義務を果たしてからにしたらどうなんだ!」
「俺はプロレタリアにはならん。お金持ちが熱心にお金を稼ぐと庶民がルサンチマン感情を燃やして私刑にしたがるからな。生まれる環境が選べないのは皆同じなのに、お金持ちの子供に生まれるとどこに行っても親の名前がついてくるし庶民は粗探ししてくるし大変だわ。俺は皆のためを思ってニートしてんのよ」
「プロ…ルサンチ?ああもう、変な横文字を多用したって、ちゃんと相手にわかる言葉で説明できなきゃそれを理解したとは言えないんだからね!それに、いつまでも親の脛を齧って生きるつもりでいる兄を持つ妹の気にもなってよ」
まぁその辺の横文字は俺もネットで調べただけだからよく分からんのだが、とにかく美穂は分かってない。両親は晩婚で、親父は病気を患っててもう老い先長くない。跡取りは俺じゃないけど、葬式は派手にするだの何だの言ってるし親父の死後は何かと非常に大変になる。今時、普通の会社で長い休みは取りづらいし熱心に自営をやっても親父の息子の肩書が何かと邪魔になる。
更に、弟妹は両親の事を過信しているが俺がまだ若い頃より既に心身共に老衰が進んでいるからいつ俺がこの家を手放して介護に回らなきゃいけないかわからない。親父は特にプライドが高いし、筋力はあるから職員に暴力をふるったりしかねない。友達は爪のひっかき傷の痕が残ったと言っていた。
会社の機密の事もあって、今後の親父のサポートに関しては次期社長に頼まれたりしてる。こんな状況かで俺が今すぐに職に就いた方がいい理由がない。そして、全てが済んだら遺産相続で一生慎ましやかに金を使って過ごす。それが俺が学生時代に見た夢なのだ。それに関しては次期社長が協力してくれると言う話だ。
ただ、母が隠れてホストに入れ込んでる事に関してもあるから、今後は親父と遺言の内容について聞いたり遺産分配について考えたり、弁護士に相談した方がいいかもしれない。…一度、多額の金をつぎ込んだのが分かって親父の目につかない様に工作するのが大変だった事がある。あれに懲りたと思っていたが、高校の頃の先輩の話によると最近また通っているとの話だ。
もちろん、人の趣味にあれこれ言うつもりはない。俺も道楽に耽ってるニートだ。しかし、いずれも節度を守って行うものだと思っている。これが原因で家庭崩壊を起こしたりした日には、離婚の際にどっちにつくのかとか、可愛い弟妹とどうなってしまうのかとか考えなきゃいけない。
母の事に関してはそろそろ父が会社を跡取りに任せて引退して、寂しがらせない様にすべきなのだが…如何せん若い頃の自分から抜け出せないでいる。既に何度も説得を試みたのだが…。
そうこう思っているうちにアップデートが終わったようだ。美穂も気づいてゲームをしに行った。さて、俺は小説を書くとしよう。