御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい 作:ヤングコーン
そろそろ変態奏功イロスゲインを書き終えたいんだが!
一向に進まないぜ!
片桐家に双子が生まれた。片桐家は、今まで第一子は必ず男の子だった。これは今までにない事だ。双子で、ましてや先に生まれたのが女の子。前例のない出来事にお家は揉めに揉めた。
片桐京間…それはこの家の当主の名だ。この名を継がせるべきは…。
祖父と祖母は陽子を殺し、いなかった事にする様に工作するように言った。しかし、両親はどちらも大変愛おしく殺しはしなかった。既に権限も大きくなっていたこともあり、刺客を仕向けて祖父母を暗殺させた。
これを余所の組の者のせいにして、大義名分を得てさらに抗争をして縄張りを拡大していった。
やがて時が経ち、姉弟が10ほどになる頃…。将也は文事に長け、陽子は武事に長けていった。特に陽子は親の性格や容姿に少しも似ていなかったため、鬼子と囁かれた。実際に、自身の年より2つも3つも上の男の子を喧嘩で打ち負かし、小さな怪我も他の子よりも早く治った。
ある日、両親はどちらが京間の名に相応しいかで揉めた。話し合いはついに、伝家の宝刀である『猿轡簓棒(さるぐつわささらのぼう)』という刀を鞘から抜かせる事で決める事になった。この刀は、代々当主の資格を持った者しか抜けない。
片桐家の宝刀、猿轡簓棒に選ばれたのは…陽子だった。
彼女は父親と共に飛行機で、正当な当主である証の入れ墨を彫るべく飛行機で海外へ飛んだ。
そして、帰りの飛行機は墜落してしまったのである。父親の死体は発見された。陽子の死体は見つからなかった。母は嘆き悲しんだが、泣く泣くままに京間の名を持つものは将也となった。
しかし、陽子は死んでいなかった。彼女は奇跡的にも…
「待ってくれ」
俺は止めに入った。
「何?」
「すまない。1つ聞きたいのだが、その話はあとどのぐらいかかる?」
イソフラボン…もとい陽子は京間と話し合う。しばらくすると京間が答えた。
「言葉にして話せば6時間ぐらいかな」
続いて陽子がにっこり笑う。
「小説文字に変換すると、10万文字以上の20万文字以内の文字数で書かれる事になるよ!」
「却下だ!却下!その話だけで『御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい』が終わってしまうじゃあないか!やるんだったらスピンオフで頼む!」
この作品は飽くまで小説を書く俺と、俺が書く小説がメインの物語。主人公交代とか、俺に関係ない話がだらだら続くのは却下だ。却下に決まっている。
ただでさえ1話の尺に俺の小説が入らない話が増えつつあるのだ。通らんぞ。通らんぞ。
陽子と京間はお互いに顔を見合わせると、肩をすくませて笑った。
とは言え、全く語らないわけにも行かないので2人の話を俺は聞いて要約する事にした。本当に6時間コースは勘弁なので、積もる話は2人きりの時にしてもらうとして手短に聞かせてもらった。
要するに将也は京間として生き、外国で記憶を失っていた陽子は別人として生きていた。しかし、記憶を取り戻した陽子は今更なれどホームシックになり戻って来た。
しかし、組争いで規模が小さくなり壊滅に追いやられた片桐家は宝刀だけを何とか死守しつつ家を手放してしまった。今は元々片桐の傘下にあった組から手厚い保護をうけ、カタギとして生活する様に努めている。
既に片桐家として生きる事を諦めた陽子は、詳しい話はしてくれなかったが何とかこっちで片桐陽子ではない人間として生活することができるようになったらしい。(俺が本名を名乗らないので、陽子の改名後の名前を教えてくれない)
そして、ここに来て運命の再会を果たしたと言う訳である。
「私が記憶喪失になったことも、片桐家が壊滅した事もまた運命。将也も京間となったように、私も陽子ではなくなったのよ」
「せめて、お母さんに会ってやってくれないか」
「実の当主の資格を持った私が帰れば猿轡簓棒は黙っていない。再び血で血を洗う抗争になる。母のためにも、お前のためにも私は帰らぬ方が吉」
「帰ってやれよ陽子。今会えないと死に目にも会えんぞ」
俺も京間と同じ意見だ。
「ジャンク、お願いだから私の事はイソフラボンと呼んで。何というかむず痒い」
その後、家に戻れないならせめて再会を祝いたいと京間が言い出したので俺は京間と一緒に買い物に行ってケーキか何かを買う提案をした。イソフラボンは遠慮していたが、京間に頼み込まれると断れない様子だった。
友達とは言え赤の他人を自宅に残していくのは少し不安だが、何だかんだ信頼している。1人でいても何か余計な事をしたりはしないだろう。何せすぐに戻るし。
そういう訳で、俺達はイソフラボンを残して家を出た。
陽子かぁ…。そう呼ばれるのは久しぶりだなぁ。将也に…、京間に会えたのは嬉しいけれど会えてよかったのかは分からない。
これでまた抗争とかになったりしないといいけれど。縁は何を呼び寄せるか分からない。
私は首の後ろの片桐家の家紋の入れ墨のあたりを触る。きっと、今は京間の首の後ろにもこれがあるんだろうな。
ソファで思い切り背伸びをした。少し寝ていようかなぁ。
…ピンポーン。
今寝ようと思っていたのにぃ…。あ、でも私はこの家の家主じゃないし。
「兄さん~開けて~。ちょっと手荷物多くってさぁ。兄さん~」
兄さん?私は玄関に近づいてカメラを覗いてみる。この子は…美穂!御手洗ジャンクの妹の美穂ちゃんじゃあないか!!
私は思うより早く体が動き、玄関を開けてドアを開いてしまった。その後の事も考えずに。
「…兄さん、じゃない?」
ああ…どうしよう。開けちゃった。写真で見るより断然かわいい。いつもなら緊張しないのに、この子を前にすると緊張してしまって言葉が出てこない。あっと、えっとこの場合はどうしたらいいんだろう。頑張れ私!
やばい、顔が私を怪しんでいる。このままじゃ、私は空き巣かなにかと思われて通報されてしまいかねない。テレビに映った自分の事を想像すると怖くなる。
「わ、私はその…兄さんの恋人です!」
「ええっ!?!??」
あーっ…しまったぁ…。いらん事を口走ってしまった。後で絶対にジャンクから怒られるゥ…。もう頭の中が真っ白になってパンクする。
「あ、あの…荷物を下ろしたいんですけど…」
「あ、ああ!もちろんですとも!私が持ちます!持たせてください!」
私は半ば強引に美穂ちゃんの荷物を取って中へ移動させる。若干困惑気味の美穂ちゃんも抱っこして家の中に入れた。お互いにソファに向かい合って座る。
「あ、あの…どうも…。知らなかったです、兄にまさかこんなに綺麗な恋人さんがいただんて」
美穂ちゃんは微笑んだ。き、ききき綺麗…。ヤバイ、顔が熱くなってきた…。私は頷いてお礼を言う。しばらく何も話す事ができず、ただジャンクの帰りを待つことになった。彼女は時折スマホをちらちら見ていたが、弄りはしなかった。
私は背筋をピンとして動けないでいた。ああもう、なんでこんな時に限ってこんななの私は!
何か、何か喋らないと…。
「あ、あの!」
「は、はい!!」
大声で叫んだもので、美穂ちゃんもぴしゃっと背筋を伸ばしてこちらを見る。えーっと、えーっと、話題…話題…。
「あの、一緒に相撲をしませんか??」
「??????」
あーっ!私のバカ!今のどういう意味だよ!初対面の相手に相撲を挑むってなに!?私のバカ!ええ、どうしよう…。えっと、誤解を解かなきゃ…。
「いえ、別にやましい気持ちなんてないんです!ただ、生まれたままの姿で相撲したいって…」
ああもう、誰か今すぐ私を殺して…。美穂ちゃんはしばらく呆然としていたが、急に笑い出した。
「面白いですね。何というか、兄さんの恋人だなあって。私、美穂って言います。さすがに服は脱げないですけど、相撲なら構いませんよ」
美穂ちゃんは立ち上がると机と椅子を退けて四股を踏みだした。既に構えて待っている。
「さあ!いつでもどうぞ!」
ダメ…この子、超天使。キュン死しそう。
そう思ってると、ジャンクが帰って来た。私は急いで駆け寄ると、ジャンクの両肩を掴んで懇願した。
「胸が苦しくてたまらない。今すぐ私を殺して」
「は?」