御手洗ジャンクはハートフルシナリオを書きたい 作:ヤングコーン
匙を鋏が誘惑する時、USBケーブルにネギがトロトロと犇めき高気圧のムーヴメントを起こす事となるでしょう。しかし、牛車にまたがる蟷螂の斧が虹彩と耳毛のパレードに明後日の虹手押し車がimpossibleに轍としずくに消えるとなるとサイがレタスと共に毛糸の描くランタンに指先からミカンの甘露味に震えて土管の肌とピンセットの細胞壁です。
箱の中の内臓がポリエステル樹脂と大樹の少年の口頭と電車が陶器のダイヤを回す時、買値で叩かれたズボンの繊維がフォルダの中でブルーレアの火を見る事でしょう。それが合成ピレスロイド剤によせられた殺虫罪で、本趣旨となるのです。
妹と遭遇してしまい、混乱してしまった私は御手洗ジャンクに自身の殺害をしてしまう。普通に困惑しているジャンクと京間。錯乱気味の私を置いてリビングルームへ向かうと、全てを察するジャンク。彼は頷くと筆と短冊と小刀をもってやって来た。
「よし、辞世の句を詠め。介錯は任せろ」
「うむ。かたじけのうござる」
私は京間に、ジャンクは美穂ちゃんに止められた。
まぁ色々あって私は錯乱が解け、ジャンクは冷静さを取り戻した。それからやや変な空気のさなかに私と弟の再会祝いのパーティーが始まった。ジャンクは適当に話を合わせるぐらいの相槌を返し、美穂ちゃんは京間と楽しそうに話をしていた。
私はというと未だにテンパってしまって上手く話せないので、もうこの瞬間が何のための祝い事だったか分からなくなってくる。その後はなんやかんや時間が過ぎて、遅くなったから今日はこの家に泊まって寝る事になった。美穂ちゃんが旅行時用の歯磨きセットを持っていたのでそれを弟に分けてくれていた。
ジャンクの両親がお金持ちという事もあってかこの家は1人暮らしには大きく部屋も余っている。私と美穂ちゃんはジャンクと弟と別れてそれぞれ部屋に向かう。そして寝具を用意する。ああ…。駄目だ駄目だ駄目だ。
「美穂ちゃん、私はリビングルームで寝るよ。ソファあったでしょ?」
「えー、私はイソフラボンさんの話聞きたいな」
そう、彼女は私が書いていたネット小説の読者だったのだ。あんな稚拙な文章が読まれているなどと思うと…。
「あの…迷惑ですか?」
「めめめ、迷惑だなんてそんな」
「そうですか…。じゃあ、もう電気消してもいいですか?」
「はひ」
電気がぱちりと消える。たったそれだけの事なのに、耳につんざくような静けさがやって来る。それはたまらなく不安を煽った。子供の頃、まだお化けが怖かったころにお父さんから「ブギーマンがやって来るぞ」と言われて夜な夜な怖がってた頃を思い出す。
あの頃の不安だ。嫌われてしまうのではないか。粗相をしてしまうのではないか。失望されてしまうのではないか。そう思うと石の様に固くなって動けない。
ジャンク、ジャンク助けて…。
「兄さんの恋人だって聞いた時は驚きました。でも、咄嗟には小説を書く友達だなんて説明難しいですよね」
「あは、あはは…」
それから小説の書き方とか、アイデアを思いつく方法とか、色んな事を聞かれた。こっちは答えられる範囲で答えた。私の小説の解読方法とか、解釈はあっているのかとか聞かれたがそっちは答える事はできなかった。
それから部屋にスマホの光がついて、何かをしている。それからこっちにそれを差し出してきた。
「私もイソフラボンさんに憧れて…書き始めたんです。でも、中々進まなくて。見ていただけませんか?」
「う、うん。いいけど…」
私は美穂ちゃんの小説を読んでみる。これは…。
ううん…。こういう時のアドバイスなら私よりジャンクの方が得意かもしれない。でも妹が小説を書いてるなんて聞いた事がないし、あまり見せたくないのかも。悩むところだ。楽しく書く分にはこれでいい。しかし品質にこだわるのであればこれでは駄目だ。
どうすべきか…モチベーションを保たせるならここは褒めて伸ばすべきだ。しかし、本人が本当に求めているなら助言をすべきで…。
「イソフラボンさん?」
「まだ書き出しでいえる事は多くない。もうちょっと書き進めたらまた読ませて欲しい」
「進まないんです。そこからどうしても」
「??」
分からない。ここからならどうにでも展開を進められそうなものを、どのあたりでつまずいているのか。私は具体的な理由を聞き出す。今後の展開をどうするつもりなのか。話を聞くとありきたりだとか、知ってる作品のパクリみたいだとか、捻りがないとかそんな話しだった。
何より、この後の展開が少し自分の趣味が出ていて執筆が恥ずかしくなってしまうのだという。
私は自分の小説を書いていて、「訳が分からない」の一言を言ってもらえる事を嬉しいと思う事以外に何も思った事はない。その気持ちは理解できなかった。
「書きたいものがあるんでしょ?書かなきゃ。イメージをして、降って来たものを言葉に直して書き込む。イメージの中から、物語を引っ張り出す。そういうもんだよ」
「ううん…」
私は催促して続きを書かせてみる。様子を見ていると、書いたり書き直したり。執筆が遅いわけではない。ただやり直す回数が多いようだ。気になって隣から見てみると、まだできてないからと隠そうとする。私がどうしても見たいと言うと隣から書くところを見せてくれた。
書いて書いて書き直す。文章を推敲しているのではなく、展開も少しずつ変わっている。せっかく数十文字打ち込んだと思うと、また消してしまう。
「まだ羞恥心が滲んでる。己を出し切る!もっと大胆に!」
「イソフラボンさん厳しい…」
「ご、ごめん」
ちょっと熱くなりすぎてしまった。
「じゃあ、今度はイソフラボンさんが書いてる所を見せてください」
グイッとやって来る。ここまで他人にやらせてできませんとは言えない。私はうなずいて彼女にスマホを見せながら入力する。それにしても、物語のない怪文章を目の前で書かれるのを見て楽しいだろうか…。
±
蒙昧な体幹の根差す御宝、非業の浪人の排他する斥候の馬頭。落下する紅葉の引き身の人狼が狼狽する筆記の多幸。三叉路に立つ妖怪ミミズの活火山が楽しく迎合する塵芥のモーニング。光の裸体が描く紳士の真摯のパッケージに、感嘆な夢を映して森に泣く鰯の頭が喜んで。
鑪の銛が蒟蒻に溶かす馬郷が断ち切り、裁断する看過が看取るカエルの腹の中の蛇の最後は桃源に定められた胃腸の快楽。悉皆、様の民が写真に収められククの肩にかかったパン屑の見るカビの夢。
「豆腐の隅にある角度からみた指が差す鎖骨。生柱の人形が見る鼻が鱈に個々に爪先の錨、猫猫猫の消しゴムの舌先から聞こえるヤモリの顕微鏡」
「塊が雲のラムスデン、bitの鳴らすでんでん太鼓が掻き鳴らす蜂蜜兄弟の明太子の遭遇。ピスタチオの双子葉類に見る滴のコトル」
赤がエマルションに描く海のマリンスノウが垢るみになると隕鉄が燦々と弾けて未知の錯乱に蟻の頭とナウマンゾウに耳のついた地の根についたアポクリン汗腺が地下鉄に通る標識の捏造。
±
「こんな感じ」
「おおお…いつも見てるあの文章はこんな風に書かれているんだ…」
凄く感心されてる。私は今らになって、遅れて自分が誰に話をしているのかとか、近くに美穂ちゃんがいるとかそういう事を意識し始めた。今にも触れそうなほどのこの距離…。
「あわ、あわわわわ…。ごめん美穂ちゃん、私偉そうな事を言ってしまって…。私やっぱりリビングルームで寝るね!」
私が部屋から出ていこうとするのを腕を握って止める美穂ちゃん。
「もう、せっかく仲良くなれそうだったのにどうして急にそんな…」
術中にはまっていたという訳だ。なるほど、小説の事になると私もそっちに真剣になるからどぎまぎする事もなくなるのではないかと思ったわけだ。そしてそれは当たった。でも、やっぱり美穂ちゃんと話していると分かると駄目だ。
途中で美穂ちゃんが体勢を崩して倒れかけたのを、私は手を取って支えようとしたのに一緒に倒れてしまった。まるで私が押し倒してしまったかのような形になってしまう。もう何が何だか分からなくて混乱していると、私の背中に腕を回してごろんと一回転させられ立場が逆転してしまう。
私は両腕の手首を抑えられる。美穂ちゃんの顔がすぐそばに迫った。私は恥ずかしくて顔を反らした。彼女は耳元で囁く。
「やります?生まれたままの姿で…相撲」
「あわわ、あわ、あわわわわわ…」
みみみみ美穂ちゃん!?!?
私は頭が真っ白になった。もう何が何だか分からなくて涙がボロボロと出てくる。嘘嘘嘘嘘、美穂ちゃんがこんな…。私の太ももの間にすとん、美穂ちゃんの膝が落とされた。無理無理無理無理ムリ…。口から魂が出ていきそう。
美穂ちゃんが草食動物を狩る肉食動物の目で私を見ている。彼女はただ顔を反らすしかできない私の首元にキスをした。
何というかもう、現実と妄想の境目が分からなくなって頭がこう、パーンってなった。
書きあげようと思っていたのにいつの間にか寝てて、日をまたいでた。もう眠いし寝なきゃ(倦怠感)