どこか湿った後のような感覚のするものの上で、私は目が覚めた。
いつもの家のベッドの上と何か感覚が違うな。………あ、そうだ。私帰省してるんだった。
私はゆっくりと目を開けた。薄ぼんやりと周りの景色が見えてくる。
私の目の前に一番最初に見えたのは、竜胆君の顔だった。
まだ起きてないのか、ぐっすりと気持ちよさそうに眠っている。その左腕が私を抱きしめているのが見ないでも分かった。
いつもとは違って少し表情は緩んでいる。
ふふっ、可愛いなぁ。
私は何となくそのまま視線を下に落としていく。しかし首の下の辺りで視線を止めた。
あれ?竜胆君、服着てない………?
開けかけていた目がその違いからパッと開かれる。どうなってるの⁉︎
私はそこでようやく帰省している家で竜胆君と寝ていることの不自然さに気がついた。
というかここ私の部屋じゃない!ここって………竜胆君に貸してる、昔の勉強部屋だ!
寝起きの気だるさからか体は起こさなかったが、私はそのまま辺りを見渡す。間違いないな。寝ている場所もベッドではなく布団だし。
となると………。私は自分の身体を見下ろした。
うん、当たり前のように何も着ていず裸だね。毎度のように真っ赤な痕がついている。
え?という事は私昨日ここで竜胆君と………シちゃった、のかな?
別にそれは変なことでもない………はずだ。未だに慣れないのは傍に置いておく。
とにかく昨日なにがあったんだっけ?何か記憶があやふやだ。
「………ッ⁉︎」
そこで私は頭が少しズキっと痛んだ。
うぅ………痛い………ん?部屋の隅にお酒の缶が。
そうだ。昨日藹達から貰ったお酒を飲んだような。
私は昨日の事を思い出していく。
えっと………昨日藹達のところから帰ってきたら竜胆君と
どういう心境の変化かは大体察しがつくけど、露骨すぎるんだよねぇ。私に見せつけてるとか?
って、この辺関係ないか。
それで夕ご飯の後お風呂入って………その後にお酒飲んだんだよね。お母さんお風呂入ってたから、その時は一人で。
結構飲んじゃったんだっけ………べ、別に竜胆君が
それで飲んで酔ってるうちに竜胆君に会いたくなって、竜胆君の部屋に来たんだ。
それで竜胆君とちょっと話して、その後は…………
「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ⁉︎⁉︎」
その後の記憶が全て蘇った私は、顔を手で覆って悶えた。私何してんの〜〜〜〜ッ‼︎
お酒の勢いに任せて竜胆君とシちゃったんだぁ!しかも何か竜胆君にも飲ませちゃったような。
やっちゃったなぁ………
一応私もこれまで何度かお酒は飲んだことがある。ただ私は人より少しお酒に弱い。
そして酔った私はとにかく人に甘えちゃう。近くにいる人にベタベタしちゃう。
昨日の自分の痴態が嫌でも頭に蘇ってくる。
ずっと抱きついて竜胆君の事舐めちゃった。それで頭撫でてって頼んで、その後はもっとヤバい事お願いしちゃって………
「うぅ〜〜〜ッッ‼︎‼︎どうしよう………」
犬じゃないんだから………ホント何してんだか。
竜胆君にお酒で乱れたところなんて見られたくなかったし、だらしないって思われたくないから隠してたのに………
絶対竜胆君にめんどくさいって思われたぁ。ましてや未成年の竜胆君にお酒飲ませちゃうなんて………ガッツリ未成年飲酒だ。
たぶんそれで竜胆君も酔っちゃって、それでお互い歯止めが効かなくなっちゃったんだな。
アソコが若干ヒリヒリする。昨日最後に一回だけめちゃくちゃに繋がった記憶がある。でもその痛みが何故か心地よい。
いつもに比べたら短い時間だったけど、それでも鮮明に思い出せる。
その前も酔った竜胆君にめちゃくちゃに身体イジられたんだっけ。何とか竜胆君に声抑えてもらいながら、何度もイッた。
「気持ち良かったなぁ………」
またシたい、なんて恥ずかしくて言えないけど、何でこの時はこんなにも満たされるんだろう。竜胆君以外見えなくなる。
それ以上に彼が
やっぱりそういった独占欲めいたものはあるわけで。
竜胆君の中で私だけが特別でありたい。他の誰かとベタベタしてほしくない。ワガママかな?
今回の帰省だって、好きな人と実家に行くのって恋人みたいって思ってたし。その辺の期待はそれなりにあるわけで。
すると、私の目の前で竜胆君が目を覚ました。
「ん………あ、
竜胆君は私を捉えると少したじろいだ。まだ慣れないんだなぁ。それから周りの様子を見て状況を察する。
昨日のこともあり何となく気まずい雰囲気になる。しばらくして竜胆君が口を開いた。
「えっと………昨日の事なんですが………」
「あ、そうだね………ごめんね、迷惑かけちゃって………」
元はといえば私が酔っちゃってたのが問題だったわけだし。
「い、いえ………ちょっとびっくりしましたが」
だよね。これからは気をつけよう。
「でもよかったです。あぁいう雛罌粟さんも見てみたかったので」
「え?そう、なの?」
あんなベロベロに酔った私なんか見て楽しいのかな?
「なんていうか………見ていてすごい落ち着きます」
「そ、そう………ありがと」
ただの甘えん坊が落ち着くんだ。変わってるなぁ。
「えっと………今からどうしますか?」
竜胆君が私の方をチラチラと見ながら聞いてきた。
「そ、そうだね………とりあえず、今日はさすがに朝は無しね。お母さん達の迷惑になるし」
「あ、はい………もちろん」
嘘だぁ。起きてからちょいちょい私の胸見てるの知ってるんだから。別に普通に見ててくれてもいいのに。何なら、ちょっとだけなら………触っても………
竜胆君昨日一回しか出してないし、本当はシて欲し………じゃなくてシてあげたいけど、今シたら絶対スイッチ入って取り返しつかなくなる。
だから……
私は竜胆君の上に軽く寝そべるようにした。重く、ないよね?
私の胸が竜胆君の胸板で潰れる。うぅ、なんか恥ずかしい。でも、これは私もしたいし。
「こ、これくらいなら………いいでしょ?」
そう言って私は竜胆君と唇を重ねた。触れるだけのささやかなキスをじっくりと楽しむ。
それから唇を離すと、竜胆君にギュッと抱きついた。あったかいなぁ、今はもうちょっとこの熱が欲しい。
「ちょ、い、今そうされるとマズいんですが」
「え?あ………そうね」
それでも竜胆君はちょっと焦った様子で抱き返してくれた。お互いの熱がじんわりと交わる。
「そろそろ起きますか?」
「うん、そうだね」
本当はもうちょっとこうしていたいけど、お母さん達がいる中でそれは無理だし。
私達は身体を起こして向き合う。最後にギュッと抱き合ってキスをして一旦別れた。
私はこっそり自分の部屋に戻ってお着替えだ。
昨日のセーターをそのまま使うわけにはいかない。ちょっと濡れてるし、何よりそれじゃあついたキスマークが隠せない。すごいつけられたからなぁ。
結果としてハイネックのセーターを着て何とか誤魔化す。部屋を出たところで竜胆君も出てきた。
一緒に一階に降りると、既にお母さんが朝ご飯の準備をしていた。
「罔象おはよう」
「おはよう。手伝うよ」
「あぁ今日はいいわ。それよりシャワー浴びてきたら?」
「え?」
なんの事か分からずポカンとしていると、お母さんが軽くため息をつく。
「ほどほどにしなさいって言ったのに、酔った勢いなんかでしちゃダメよ?」
「ッ⁉︎」
その言葉の意味を理解した私は、かぁっと身体が熱くなる。
そりゃそうだよね!あんな大声出したら聞こえるに決まってる!
「えっと、ごめん」
「
「う、うん……」
うわぁっ!恥ずかしい!隣を見ると竜胆君も顔を真っ赤にしている。
「ちゃんと避妊してるの?竜胆君まだ高校生なんでしょ?」
「それはもう……はい」
あぁ気まずい。いづらくなった私はそそくさとお風呂に向かう。軽くシャワーを浴びた。
そして竜胆君も浴びたところで
私と目が合うと、
「お、おはよう」
「………ん」
そして私達はお母さんの作ってくれた朝ご飯を食べると、それぞれのために解散した。
竜胆君と私は帰るために荷物をまとめた。今日のお昼前にはもう帰る予定だし。
荷物をまとめて下に降りると、お母さんがテレビを観ていた。
「あれ?竜胆君は?まだ荷物まとめてる?」
「終わったところを分に連れて行かれたわ。勉強教えてとか言ってたし。分も懐いたわねぇ」
また?もうすぐ帰るっていうのに………まぁ竜胆君らしいけど。
「罔象、あんまりウジウジしてたら竜胆君奪われちゃうんじゃない?」
「そ、そんな事………ない、はず」
それから帰りの時間はすぐにやってきた。私と竜胆君は玄関で靴を履く。お母さんと
「それじゃあ罔象、元気でね。竜胆君も」
「うん」
「は、はぁ」
どうやら竜胆君はお母さんとは打ち解けられなかったようだ。まぁだろうなとは思ったけど。
「竜胆、今度来たらまた勉強よろしくね」
「また来れば、な」
分の言葉に竜胆君が返す。竜胆君の表情は柔らかい。夏に連れてくるのはやめようかな。
「それじゃあ」
「うん、気をつけてね」
私達はお母さん達に見送られて車に乗った。そして『Cafe Red Poppy』へ帰る。
お店に着くと、とりあえず自分の荷物を奥の部屋に置いた。竜胆君もお店の中に入れた。
「ねぇ、朝
「あぁ………さっき分に『人ん
「だ、だよね………」
でも元はと言えば分が竜胆君にベタベタしてたからってのも、少しはなくは無いわけだし………やっぱり私が悪いか。
「そういえば、何で分の事呼び捨てになったの?」
会った時はガチガチにさん付けで敬語だったのに、昨日の昼から変わってた。竜胆君ってそんな距離縮めるっけ?
「何か、分にそうしろって言われました。僕としてはアイツならどうでも良かったので」
あ、分が言ったことだったんだ。よかった、竜胆君が自主的にとかじゃなくて。
でも、頼んだらそんな風になるんだ………それじゃあお願いしたら私も………
「それなら、さ……私も………」
そう言おうとすると、どこかでスマホのバイブが鳴った。あれ?私じゃないよね?
「あ、僕のですね」
竜胆君も気がついたようで、自分のスマホをポケットから出した。
「東風ちゃんから?」
「いえ
「あぁ、分から………って、え⁉︎」
私は納得しかけた思わず振り返った。
「竜胆君………分と連絡先、交換したの?」
「え?あ、はい。今朝交換して欲しいって。勉強で聞きたい事あったら連絡したいんだそうですよ」
それがただの口実なのは一発で分かった。
私は言葉が出なかった。そんな、私だってまだなのに………連絡先交換するほど仲良くなったのかな?
「あ、それじゃあ僕はこれで。今回はありがとうございました」
これ以上いるのは迷惑だと思ったのか、竜胆君はお店を出て行った。私はそれを呆然と見ている。
さっきのお母さんの言葉が思い出された。
『罔象、あんまりウジウジしてたら竜胆君奪われちゃうんじゃない?』
それは、たとえ妹でも絶対に嫌。竜胆君を誰かに渡したくない。私の彼氏になって欲しい。
「うぅ……」
これからはもうちょっと積極的にいこう。そう決意した私だった。
こうして今年の好きな人を連れての帰省は、恋敵を作るという形で幕を下ろした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
駆け足になりましたが、この章は終わりです。それと、近々新作を出そうかどうか迷っているので、おそらく今年の二月までこの作品は更新されないと思いますが、お気に入り等はそのままにしていただいたら幸いです。