「んんっ⁉︎」
てっきりチョコを食べるかと思っていた雛罌粟さんが、突然僕の唇を自分の唇で塞いできた。
は⁉︎どうなってんの⁉︎
混乱する僕に雛罌粟さんからの動きは止まらない。
いつとする時のように、僕の口腔内に雛罌粟さんの舌が入り込んでくる。
しかし今日はそれだけではなかった。何かの塊のようなものまで入ってきた。
その塊は僕の口腔内に入ると、僕の舌の上に乗せられた。覚えのある甘さが広がる。
あ………これ、チョコか。
口移しで食べるチョコは、さっきよりもずっと甘くてゾクゾクッとするような感覚がある。
あぁ………美味しい。
しかしそれだけでは終わらない。雛罌粟さんは僕の首に腕を回すと、ギュッと抱きついてきた。
そして僕の舌にあるチョコを挟むようにして、自分の舌をにゅるっと絡めてきた。
「んっ!くちゅ、ぢゅるっ!んふぅっ…んんっ!」
僕達は自分達の舌でチョコを溶かすようにして味わった。溶けたチョコが僕達の唾液と混ざって流れてくる。
「ぐちゅ、ちゅむっ……じゅぷっ……んぐっ!…んくぁっ!、あむっ…んんっ、くちゅ、ぢゅ〜ッ!ふぅっ、んんっ……んっ、んあっ……んふぅっ…ぐちゅぐちゅっ、ちゅるるッ!」
僕達はいつも以上にねっとりと唇を重ねながらチョコを味わった。
お互い強く抱きしめあっていて、体を押し付ける。身体の擦れ合うところが気持ちいい。
僕は雛罌粟さんの舌にチョコを押し付けるようにして、溶けた部分を吸い取る。すると今度は雛罌粟さんが同じことをしてきた。
チョコが溶けきって無くなっても、僕達は唇を重ねていた。チョコを味わっていた時のように、今度は舌を味わう。
もうチョコと舌の判別もあやふやになり、僕達は貪るようにして味わう。
やがて満足すると、僕達は唇を離した。お互いの唇が唾液によって繋がる。
「ぷぁっ!」
僕達は唇を離すと、お互いに見つめあった。顔がさっきよりも赤くなり、息も弾んでいる。
「はぁ、はぁ………ど、どう?」
「すごい、美味しいです………」
それ以外に返す言葉がなかった。あんなに美味しいものを口移しで食べて、それが美味しくないわけない。
「そ、そう………よかった」
雛罌粟さんは嬉しそうに笑った。本当に綺麗な人だ。僕達の距離は近いままだ。
僕は『また雛罌粟さんに食べさせて欲しい』という欲求を抑え込むかのように、雛罌粟さんの淹れてくれたコーヒーを飲んだ。
何か食べさせてもらうのは甘えてるようで、自分で頼むのはな。
いい苦さのコーヒーが、甘ったるくて理性の飛びかけた僕の中を落ち着かせてくれる。
はぁ、落ち着くなぁ。けどそれ以上にさっきの味を、もう一度味わいたいという思いもある。
雛罌粟さんも顔を赤くしてコーヒーを飲んでいた。何か可愛いな。頭撫でたい。
そんな思いを抑えて僕も目を逸らしながらコーヒーを飲む。この前お酒が入ってたから良かったけど、今はね。
しかし緊張してしまったからか、コーヒーもあっという間に飲み終わってしまった。
それからしばらく何とも言えない空気が漂っていたが、雛罌粟さんはハッと何か決めたように顔を上げると、その場に立ち上がる。
「ひ、雛罌粟さん?」
「竜胆君も………立ってよ」
「は?は、はい」
よく分からないが僕もその場に立ち上がる。
すると雛罌粟さんが身体を前に倒して抱きついてきた。僕はそれを反射的に受け止める。
「え⁉︎な、何ですか?」
僕はわけが分からずに混乱した。どうしたんだ?
「あ、あの………ちゃんと、伝わった、かな?」
「えっと………何が、ですか?」
雛罌粟さんは赤い顔を、僕の胸板に押し付けている。
こういうのは察してあげるべきかもしれないけど、僕には難しい。
「そ、その………わ、私ね………す、好きな人にこういうの…贈るの、は、初めてで!……き、気持ち、ちゃんと伝わったかな……って」
雛罌粟さんは必死に縋るように抱きついてくる。
気持ち、ねぇ………そんな事聞かれても困るんだが。
「その………すごい一生懸命だったのは、分かりました」
わざわざ手作りチョコまで作ってくれて、こんな事されて分からないほど、僕は鈍くない。
たぶん、こう言えばいいのかな?
「ありがとうございます、こんなに頑張ってくださって。すごいですね」
そう言って僕は抱きしめる力を強くした。ここでよしよしする………のはやめとくか。それじゃあ完全に子供扱いだ。
ダメだな。どうしても東風と扱いが同じになりそうになる。
ただこの言い方で良かったかどうかと言われると………どうかな?
僕は雛罌粟さんの顔を覗き込んだ。
その顔は真っ赤なままで、目をいっぱい見開き口をムニムニさせている。
見てて可愛いけど、大丈夫か?
「そ、それじゃあさ!」
すると雛罌粟さんが耳元で大きな声を出した。うるさッ!僕は思わず飛び上がる。
雛罌粟さんは大声を出した事に気がついたのか、音量を下げて言った。
「それじゃあ、さ………バレンタインの日………どこか出かけない?」
「え?それは今日、ですよ………?」
これから出かけるの?別にいいけど特にやる事もないと思うんだが。
「あ、今じゃなくて………ら、来年の、バレンタイン」
僕はしばらくの間ポカンとした。
来年?また遠い予約だなぁ。思わず顔が引き攣る。
「ちょっと気が早くないですか?一年後ですよ?」
「だって………今日、ずっと一緒には、いれなかったし。本当は、どこに行くとかも、考えてた、から」
あ………そうなんだ。そこまで………
「それなら言ってくれれば………そっち優先しましたよ?」
「それは………何かワガママ言ってるみたいで嫌だったし」
はぁ、相変わらず真面目なこって。それくらいワガママでも何でも無いのに。
「けど、その時まで一緒にいるかどうか分かりませんよ?何せ一年後ですから」
僕がそう言うと、雛罌粟さんは顔を上げた。上目遣いで僕を見てくる。
「そ、それじゃあ………来年も一緒にいたら………バレンタイン、一緒に過ごしてくれる?」
その表情は怯えているようにも期待しているようにも見える。それが難しいのは、ちゃんと分かってるはずなのに。
ズルいなぁ。こんな頼み方されたら答えは一つだ。
「そうですね。来年も一緒にいれたら、一日どこか行きますか」
「………ッ‼︎うん‼︎」
雛罌粟さんは破顔して身体を揺らしている。
たとえ難しいとしても、この人の今の気持ちを大切にしたい。
「えへへ………来年、楽しみだなぁ………」
こんな僕といる事を、ここまで望んでくれる人なんだし。面白いじゃないか。
それにしても、来年かぁ………こりゃ、ちゃんと約束守らないとな。
「竜胆君」
すると雛罌粟さんは僕の目の前に顔を出して、僕の唇に自分の唇を押し付ける。そして僕の口腔内に舌を這わせる。
雛罌粟さんとのキス、どんどん夢中になる。僕も激しく舌を絡めた。
「んっ、くちゅ……んんっ、ちゅるるッ!んあっ、はむっ!んぐっ……はぁっ、ぐちゅぐちゅッ!」
チョコが無くても、雛罌粟さんの唾液は甘く感じた。もっと求めてしまう。
短い間キスを堪能すると、雛罌粟さんは唇を離す。
「約束、ね?」
「………は、はい」
僕が返事をすると、僕達は軽くキスをした。そして固く抱き合う。雛罌粟さんの身体、暖かくて気持ちいい。
もう一度キスしていいかな?そう思った時だった。
「んんっ!」
雛罌粟さんが艶やかな嬌声をあげた。その声に僕は驚いた。
「雛罌粟さん、どうかしました………」
僕が気になって目線を下げると、思わず目を張った。僕の目の先には豊満な雛罌粟さんの胸がパジャマに包まれていた。
その胸の先は何かに濡れたようにシミになっている。
「雛罌粟さん、これ………」
僕はつい目線を外さずに聞いた。
「あ………これは、その………ぼ、母乳出てきちゃったのかな。上、し、下着、つけてないから」
そう言われると、たしかに胸の先の突起がパジャマの上に浮き出ている。それで濡れたのか………
「その………さ、最近、搾ってなかったから、かな?あ、あはは………や、やっちゃったなぁ」
そう言って笑う雛罌粟さんは、どこか白々しい。マメな雛罌粟さんがそんな事あるのかな?
こんな状況でも雛罌粟さんは僕から離れようとせず、何かに迷ったようにオロオロしている。
僕は抱きしめたままジッと雛罌粟さんを見た。よく分からないけど、何か怪しい。
僕が見ると、雛罌粟さんはバツが悪そうに目線を泳がせた。それでも時折僕の目を見る。
「えっと………僕に何か求めてる、でいいんですか?」
そう尋ねると、雛罌粟さんはビクッと身体を反応させて何か言いたそうにした。
「あ、あの、僕そこまで察しのいい人間じゃないんで。何かあるなら正直に言ってください」
「そ、それは………はぅぅ」
雛罌粟さんは今にも頭から湯気が立ちそうだった。それでも黙ってしまっている。
う〜ん、非常にツッコミにくいんだけど聞くしかないか。
「あの、何で………わざわざ搾らなかったんですか?」
「う、うぅ………気づいてよぉ」
雛罌粟さんは弱々しい声で呟いた。いや、無理だって。
いよいよ観念したのか、雛罌粟さんは僕の耳に口元を近づけると、そっと呟いた。
「き、今日君に、母乳搾って欲しくて………わざと、そのままにしてたの!………だ、だから、搾って、くれる?」
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