※この作品はR-18です。

どことなく壊れていて、どことなく甘い生活   作:MC RAT

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第127話 大好き

「くっ!………逃げられたか………」

 雛罌粟さんを襲っていた男が『Cafe Red Poppy』から逃げていくのを捕まえられなかった僕は、拳を握った。

 あと少しだったのに、まさか横槍が飛んでくるとはな。けど誰なんだ?外に気配は無かったのに。

 こうなったら仕方ない。とりあえず今は雛罌粟さんと分の安全が先だ。

 僕は短刀を懐にしまうと、二人の方に近づいた。けど近寄りにくいなぁ。怖がられてそうで。

「二人とも、大丈夫?」

 見た感じ少し怪我をしてくるくらいではあるけど、心配だなぁ。

「………う、うん………何とか」

「えっと………アンタ………えぇ?」

 二人ともまだ少し混乱してるみたいだ。面倒な事になったなぁ。どうしよう。

 すると『Cafe Red Poppy』の扉が開いた。

 騒ぎを聞きつけた野次馬かと思ったが、違った。入ってきたのは東風だった。

 僕の頼んだ事を果たして来てくれたのだろう。来る必要は無かったのに。

「りん兄‼︎大丈夫です………ひゃあぁぁッ⁉︎」

 勢いよく入ってきた東風は、目の前にある殺し屋(らしい)の死体を見て倒れそうになった。

「おい!心配しに来た人間が心配かけるなよ!」

 僕は慌てて東風の身体を支えて外に出した。まったく、だから来る必要はないんだよ。

 そして東風を追うようにしてもう一人お店の中に入ってくる。

 パンツスーツを着て長い髪を後ろでまとめている女性だ。全体的にキリッとした印象を受ける。

「まったく、いきなり呼びつけて何事………って、また派手にやったなオイ」

 その女性は部屋の死体を見ても倒れはしなかった。

「説教は明日辺りいくらでも受けるから。今は雛罌粟さん達を」

「雛罌粟さん?………って、そこにいる人?」

「あぁ、ちょっと手伝って」

 僕はそう言って女性を雛罌粟さんのところまで引っ張る。

「えっと………竜胆君?」

 

 

「あぁ、この人は流鏑馬 鯨波さん。一応刑事で今の僕の保護者です」

 

 

「ほ、保護者………?」

「何で一応なんだよ………どうも、警視庁組織犯罪対策部の流鏑馬 鯨波です。ウチの竜胆がお世話になってるみたいで」

 鯨波さんが警察手帳を出して自己紹介する。この人が東風に呼んでもらった人だ。

「あ、い、いえ………」

 雛罌粟さんは戸惑いながらも何とか声を搾り出す。無理しないでよ。

「とりあえず雛罌粟さんも分も立てる?」

「う、うん………何とか………」

 二人はよろめきながらもその場に立った。とりあえず歩けるには歩けるか。腰抜けてなくてよかった。

「鯨波さん、後で分を僕の家まで送ってやって」

「分かった。そこのお姉さんは?」

「あの人はこのまま。あぁ、それと今回の事は………」

 それから僕は手早く鯨波さんに今後のことを話した。どんなことかはまた今度。

「了解。こっちは任せな」

 鯨波さんの説明を終わらせると、僕は店の外に出た。

 くっ、さっきの窓が割れたせいで人が少し来てるな。そこは鯨波さんに任せよう。

 僕は扉の近くにいた、やや貧血気味の東風の肩を揺する。

「おい、しっかりしろ。ちょっと頼みがあるんだよ」

「ん………?何ですか?」

 僕は東風にも手早く頼みを伝えた。

「えぇ⁉︎い、いやたしかにそうなるかもしれませんが………いいんですか?」

「あぁ、アイツなら構わない。頼めるか?」

「………はい。分かりました」

 僕は用件を伝え終わると、お店の中に戻る。さてと、ここからだ。

 

 

 

 それからはあっという間だった。まず本格的に警察が来たので僕なり(・・・)に状況説明。

 本来は雛罌粟さんと分がやるべきだが、色々と混乱していてるという事で控えてもらった。

 お店の死体も片付けられて窓にも応急処置、それから分が怪我をしていたのでその手当て。

 なんて事をやってるうちにあっという間に夜だ。というわけで詳しいことはまた後日となった。

 とりあえず分と東風を鯨波さんに預けて、僕は雛罌粟さんと一緒にお店に残った。外にもう人はいない。

 あれだけの事があったにも関わらず、お店はそこまで大きな規制などはされていない。まぁこれも詳しくは後ほど。

 

 

 

 雛罌粟さんを部屋に向かわせると台所のコップに水を入れて、雛罌粟さんの部屋まで持っていく。

 僕は部屋のドアをノックした。

「雛罌粟さん、入りますよ?」

「う、うん………」

 僕は部屋に入ると、コップを渡した。ソファーに座っている雛罌粟さんは水をゴクゴクと飲む。

「落ち着きましたか?」

「ちょっとな………ううん、まだ混乱してる」

 だよなぁ。ここからどうしたものか。ってやる事は分かってるんだけどね。

「雛罌粟さん。隣座っても、いいですか?」

「………うん」

 さっきの事もあり、僕は緊張しながら雛罌粟さんの隣に座る。

 重苦しい沈黙が僕達を包む。えっと、まず何から話そう………

「えっと………その、身体は、大丈夫ですか?」

「うん………その………助けてくれて、ありがとう」

「い、いえ………」

 それからまた沈黙が流れる。

「あの………その、えっと………き、君こそ………」

「僕は全然………」

「そう、なんだ………なんか、すごいね」

「い、いえ………その………怖く、ないんですか?だって、僕………人殺したのに………」

「そりゃ、ちょっとは、怖いよ?………でも、私の事助けてくれたのも、本当だし。こうしてるといつもの竜胆君だし」

 すごいなこの人は。たったそれだけの理由で隣にいさせてくれるのか。

「その………竜胆君」

 雛罌粟さんは僕の方を向くと深く頭を下げた。

「酷いことしちゃってごめんなさい」

「ちょ、やめてくださいよ!言ったでしょう、僕には僕で別の目的があって来たんです。あの殺し屋殺した事も、別に気にしてませんから」

「そうじゃなくて………君の事、フッたりなんかしてごめんなさい。本当はそんなつもりなかったのに」

 それに関してはさっき分から聞いた。家族を人質に取られて、僕と別れるように言われていたらしい。

「そんな………仕方ないですよ。家族のためだったんでしょう?」

「でも、私………君の事………」

 そう言って雛罌粟さんは顔を伏せた。その目からは涙が流れていた。

「本当にッ………ごめんなさいッ………私のせいで………竜胆君に、辛い思いさせて………ごめんなさいッ」

「雛罌粟さん………」

 そりゃたしかにショックだったよ。けどあんな状況で僕を振る以外の考えを、雛罌粟さんが選ぶはずがない。

 半年程度付き合ってる子供よりも、自分の家族を優先するなんて当たり前のことだ。

「竜胆君………私の事はもういいから………分達の所に行ってあげて」

「いや、でも………雛罌粟さんを放っては行けませんよ」

 あんな事があったんだ。精神的にも不安定だろう、心配になってしまう。

「何で………」

「え……?」

 雛罌粟さんはバッと顔を上げた。

 

 

「何で優しくしてくれるの‼︎もっと酷い事してよ‼︎もっと冷たくしてよ‼︎………君の事、傷つけた人に………何で寄り添おうとするの‼︎」

 

 

「雛罌粟さん………」

 そうだ。僕はこの人と別れなきゃいけない。今がその絶好のチャンスだ。

 傷ついた事で言いたいことはたくさんある。

 それでもまだこの人に固執する理由………今でも雛罌粟さんと一緒にいたいと思うのは………

「もう………私は君と一緒にいちゃいけないんだよ。もう、きっぱりと別れよう………」

 そう言われた瞬間、僕は体が勝手に動いていた。

 

 

 雛罌粟さんを抱きしめてソファーに押し倒した。

 

 

「ひゃッ⁉︎」

 ボフッと雛罌粟さんの身体が後ろに倒れる。そういえば初めて身体を重ねた時も、こんな事があった。

「竜胆、君?」

「僕は………」

 こんな事、僕が言っていいのかは分からない。いや、たぶんダメだな。

 でも、そんな事知らない。自分で決めた正しさだから。

 

 

 

「僕は………あなたの事が大好きなんです‼︎離れたくない………これからも、側にいて欲しいんです‼︎」

 

 

 

 何とも自分らしくない発言だとは思ってる。けどたぶん、今の僕の気持ちを言葉に表すと、こうなるんだと思う。

「竜胆君………」

「何があっても、あなたの側にいたい。だから、別れるなんて言わないでください」

 どんなに傷つけられても、その理由で一緒にいたいと思う。それが『好き』って事なんだと思う。

「けど、私は………」

「そんな事で泣かないでください。助けた人には笑っていて欲しいものです」

 雛罌粟さんの笑顔、すごい綺麗だから。一緒にいて落ち着くし。

「私………君の側に、いてもいいの?」

「というか………いて欲しいです」

 恥ずかしくて顔が熱い。心臓の音がうるさいほどに鳴っている。

「そっか………私、一緒にいて、いいんだ………」

 雛罌粟さんの目からは涙が流れ続けていた。でもそれはさっきまでとは違う涙なのは、ちゃんと伝わってきた。

「初めて………君の口から、『好き』って言ってもらえた………」

 そうだな。僕はそれを無意識に避けていたのかもしれない。僕が人を好きになる事が許されるのか、分からなかったから。

 

 

 

「私も、竜胆君の事が大好きです。私と………付き合ってください」

「………はい」

 

 

 僕達は強く抱き合った。たったそれだけでこんなに満たされるなんて。

「雛罌粟さん………その、いいですか?」

「………うん。けど、せっかく付き合ってるのに名字でさん付けって、よそよそしくて嫌だな」

「え?あぁ………」

 基本これが癖だからさ。雛罌粟さんは訂正されてこなかったからずっとこのままだったんだよね。

 けど、そうか………

「そ、それじゃあ改めて………」

 僕はコホンと咳払いすると、最愛の人の目を見つめる。

 

 

 

罔象(みずは)………大好きだよ………」

「うん。私も………来て♡」




 最後まで読んでいただきありがとうございました。ようやくベッドシーンに入ります。無さすぎて離れてしまった人は戻って来てください。
 評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。
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